絆の軌跡   作:悪役

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初の自由行動日 後編

「リィン! まずはどうする!?」

 

「よし! とりあえずレイ。奴の攻撃をノーガードで受けて奴の攻撃力とパターンを俺達に教えて倒されてくれ!!」

 

「てんめぇぇぇぇぇぇぇぇーーーー!!」

 

愉快な二人の会話を聞きながらガイウスは相手の魔獣が愉快コンビよりもこちらを先に狙ってきたのを見た。

 

「───!!」

 

巨体の体に似合っている巨大な腕を振り上げ、振り下ろす。

余りにもシンプルな攻撃だが、魔獣の筋力や体重などを加算すると直撃を受ければ十分に自分は重傷を負うのだろう、と冷静に計算しながら。

 

「……ふっ!」

 

冷静に槍を一つ突いた。

その場所は体ではない。体では右手をこちらに振り下ろそうとしている相手には遠いし、時間も足りない。

だから狙ったのはそこではなく振り下ろされる左の腕だ。

狙いは合致した。

 

「───!!?」

 

魔獣は己の手から生えている金属製の槍を見て痛みと驚きに喚き散らしている。

ガイウスは特別な力や技術も使っていない。彼に必要だったものは来るであろう魔獣の衝撃に耐える力と構えだけ。

魔獣は単に己の力と重さに自分から槍に刺されに行っただけだ。

 

「ナイス間抜け!」

 

魔獣は何時の間にか己の右肩に乗った人間を叫ばれてようやく気付いて視線をそちらに向ける頃には既に視界は放たれた足しか映らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「す、凄い……!」

 

エリオットは目の前の戦いに驚きでびっくりであった。

迫ってくる魔獣に対して恐怖せずに槍を突くガイウスも、あの巨体を人間の足で吹き飛ばしているレイも。

そして今も

 

「おお……!」

 

CPを消費しながら刀を突きの構えで倒れた魔獣に対して疾走するリィンの姿。

追撃の為に躊躇わず魔獣に向かって疾走する姿は味方という視点からでは凄く頼りがいがあって思わずこぶしを握り締めてしまうほどであった。

しかし

 

「───!!」

 

魔獣はリィンの姿を視認したのか。ただ単に怒り狂ったのか。

ミノスデーモンはただ足を暴れさせた。暴れさせただけなのだが、それが巨体の魔獣であるミノスデーモンが暴れれば人間であるリィンにとっては巨大な獣に殴られたのと同じ一撃になる。

 

「くっ……!」

 

ここからでも聞こえるリィンの苦悶を聞き───リンク越しで伝えられていた指示を行う。

 

「アクアブリード!!」

 

水のアーツ。

数ある属性の中で一番僕と親和性が高いということで僕はそれを一番使うようにしており、駆動時間も減らすように駆動のクオーツもつけての発動。

過去最速での発動時間に思える水の攻撃は顔面にぶつかる。衝撃として脳を揺らされた魔獣は人間と同じで脳震盪になり、刹那の間だけ痛みと衝撃で体が停止し、その隙にリィンの突きが体の中央に突き刺さった。

 

「───!」

 

甲高い悲鳴が響くよりも先に脱出したリィンを流石というべきなのか。

単純に魔獣が弱いのかもしれないと思いそうになる危機感を戒めるべきかを考えそうになるが戦闘中にそれは駄目だと戒める。

だからアクアブリードを終えた後に直ぐに集中しているアーツの駆動が早まる。

今の自分にはこれが最善手であるのだ。

アーツのみでレイの言う他人の指示とか、逃げることも考えるとかはまだまだ出来ないとは思うがそれでも自分の意志で士官学院に入ったのだ。

ならば、戦闘で自分を弱いと思っても無価値と思うのは自分の思考を止めるだけの愚考という事だけは解る。

アーツの適正は高いとそれだけはサラ教官も含めて褒められているのだ。

ならば、それだけは

 

誰にも負けずに頑張ろう……!

 

そしてアーツの駆動は終了する。

実はリィンが追撃中にアーツの駆動をしていたガイウスとレイよりも先にだ。

駆動の早さに二人も多少驚くが自分達はエリオットみたいに駆動短縮のクオーツもつけていなければアーツの適正レベルも高くもないのでレベルが高い人間だと自分より早いと知っているので驚きはしなかった。

唱えられたアーツが何かを知らなかったから。

 

「ハイドロカノン!」

 

 

 

 

 

 

 

「ご、ごめんっ。リィン……まさかあんなに強力なアーツだったなんて……」

 

「い、いや……エリオットが謝ることじゃないし、それで魔獣も倒せたんだから……うぅ……」

 

「こりゃ見事にびしょびしょだなぁ……報告ついでに学院長かサラ教官に替えの服を借りるのが一番だな」

 

「余りその状態でいると風邪を引くからな」

 

結局ミノスデーモンはエリオットの一撃で消えた。

それも直線攻撃のアーツだったから飛び退いただけのリィンを巻き込む形で。

恐らくアクアブリードみたいな砲弾系だとエリオットは思っていたのだろうけど、まさかレーザー系であるとは知らなかったのだろう。

エリオットは士官学院に来る前までは一般人であったという話だし、アーツとは縁も所縁もなかったからだろう。

リィンも咄嗟に避けたから服がずぶ濡れるだけで済んだだけ、マシというものであった。

 

……それにしても

 

エリオットの才能と努力には驚かされる。

改めてエリオットのオーブメントを見ていると既にマスタークオーツがかなり成熟していることに気付いた。

何でも音楽や用事がないときは出来る限りアーツの練習をするようにしていたらしい。

その甲斐があってかマスタークオーツは見る見る成長するわ。アーツの駆動になれるわだったらしい。

そして何よりもハイドロカノンは上位アーツの一種だ。

そのレベルのアーツをエリオットは大凡七、八秒くらいで組んで発動したのだ。

下位アーツを普通くらいの適性の人間が駆動するのに大体、四、五秒。上位アーツならば十数秒は普通かかるものをとんでもない元一般人である。

遊撃士や軍人でもこれ程レベルの高いアーツ使いはそんなにいないだろうと思う。

この一か月で確かにⅦ組メンバーは全員才能があるメンバーだとは思っていたがもう少し上で見ておくべきだったのだろう。

うかうかしてられねぇなぁ、とレイは苦笑しながら旧校舎から出るメンバーに付き添って歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして旧校舎の報告を終えた後、リィンを替えの服をくれるという保健室に送り、流れ解散になった。

レイは帰るには少しだけ早いかな、という理由で適当に学院を散歩していた。

今日も今日とて夕焼け綺麗な士官学院~と適当に鼻歌を歌いながらグラウンドの方に向かってみると

 

「……ん?」

 

見知っている人物が一人、グラウンドにいた。

というかアリサだ。

見たところ、ラクロス部の後片付けをしているみたいだが何故か後片付けをしているのはアリサオンリー。

確かにこういう地味な後片付けというのは新入生がするものという風潮だが幾らなんでも一人にだけ任せるものだろうか。

先輩からの嫌がらせか、もしくは同級生からの嫌がらせと見た方が正しく思える。

そして動機は残念なことにたくさんあるのが残念。

アリサは容姿も完璧に近いし、能力、学力も学院では上から数えたほうが早いし、更には特科クラスⅦ組などという異端クラスのメンバーだ。

これがラウラやフィーならば二人の雰囲気から狙われるのは少ないのだろうけど、アリサ辺りはその性格が災いになりかねない。

エマはどうだろうなぁ、と思いつつ仕方がないからグラウンドに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「……今日はありがとう」

 

「どーいたしまして」

 

アリサはギムナジウムで着替えを済ました後に帰り支度を待ってくれているレイ相手に礼を言った。

それに対して本人は本気で別に大したことはしていないという表情でヒラヒラと手を振るだけ。

何時から見ていたかは知らないが、後片付けの途中でいきなり彼が出てきたかと思うとあっという間に片付けの手伝いをして止める間もなく流されもう終わっていたというのが現状であった。

感謝するべきであるというのは解っているのだが何というか……微妙に困る。

 

「で? 本当に先輩同級生の嫌がらせじゃないんだな? 遠慮せずに言っていいんだぞ? そいつらを別に痛めつけるとか物騒な事をする気はないんだから。ただ幼少時代の素直さを取り戻すための術を知っていてな……どんな捻くれ者も二秒で自分の愛らしさを思い出す」

 

「……その台詞でよくもまぁ、物騒な話をするつもりがないなんて言えたわね……」

 

この男、身内に対して甘いんだなと考えるが責めるべきでもなければ悪い所でもない。

むしろいい事なんだけど台詞が台詞なだけに頷き難い。

でも、だからこそ肩の力が抜けて自然と笑顔を浮かべることができた。

 

「ありがと……別に先輩は悪くないわ。本当ならもう一人私と一緒に入った子がいるんだけど……貴族の子らしくてね。色々、難しいと思うの。相手も───自分も」

 

「フーーン……まぁその様子だとお人好しを働かすつもりらしいから結論を先に言うけど将来苦労人決定だな」

 

「ずばずば言うわね……否定できないから何も言わないけど」

 

苦笑しながら顧みとを歩きながら、ふと気付く。

私はクラスメイトとはいえ一か月しか過ごしていない異性相手にこうも普通に喋るのは初めてではないだろうか?

家柄上、話しかけようにもやはり家柄というものが周りとの小さな隔絶を生んでしまうし、こちらも気遣ってしまう。

だから自分が地で喋れる人間なんて故郷ではかなり限られていたし、こっちに来てもそういった部分を変えるのに頑張らないと、と思っていたのだ。

それがこうも普通に話をしている。

自分が単純なのだろうか、と思う。

オリエンテーリングでも助けられ、今も助けられたからこの人は大丈夫みたいに思って甘えている。

そう考えると自分が凄い単純に見えて馬鹿っぽくてやっぱり苦笑と微笑の中間みたいな笑顔を浮かべてしまう。

 

「何だ、アリサ? いきなり笑って。今日の夜のメニューの想像でもしていたのか?」

 

「え? え、ええ……今日は誰が担当だったっけ?」

 

「何を言ってんだ。今日は俺とお前がくじ引いて当たってただろ? ……あ、確か冷蔵庫の中身なかったな……わりぃ、アリサ。誘っておいてなんだが───」

 

「もう、何言ってるのよ。私も手伝うわ。私も当たっているんだから遠慮も容赦も無用よっ」

 

「そうかぁ? でもお前……まぁいいか」

 

途中でどうして口を濁したのかは知らないが、本人は口調の通りにまぁいいかという顔を浮かべながらその足でそのままブランドン商品に向かった。

 

「はい、いらっしゃいーー」

 

ブランドンさんの迎えの言葉と同時に入店してとりあえず商品を見る。

 

「む……卵か……米があったし挽肉も今日の旧校舎で手に入れた材料を使えればオムライスが出来るな……」

 

「……ちょっと。今、文章の真ん中辺りで凄い不穏当な言葉があった気がするんですけど?」

 

「気にするな。仕様だ」

 

物凄く納得がいく言葉だったがいいのだろうか、人としてと思うが節約できるならそうすべきだから聞かなかったことにした。

後に他の食品も見てあーでもない、こーでもないと会話しながらとりあえず冷蔵庫に残っている材料と検討して買うものだけ買って今はレイがお金を払っているところだ。

今日は試にやらせているのか。ブランドンさんの娘さんが頑張っていて微笑ましい。

すると店の整理をしていたブランドンさんがこちらに来て何故か眩しいものを見たみたいな表情でこちらに来た。

 

「いやぁ、毎度ありがとうⅦ組の。青春だねぇ」

 

「いや、こちらも世話になってますし……というか買い物で青春って……」

 

これがアクセサリーや服なら確かに青春って感じがするのだろうけど今回は単純に今日の晩御飯についての買い物である。

色っぽさも何もかも欠けている買い物にそんな言葉を付けられてもと思う。

しかしブランドンさんの表情は止まらない。

いやいや、とこちらの言葉に返しながら

 

「まだ若いのにまるでもう新婚夫婦みたいなやり取りだったじゃないか。若い子はいいねぇ……」

 

「───シンコンフウフ?」

 

シンコンフウフ? はて? それはどういう風に漢字変換をするのだろうか。

新古んふうふ? 意味が分からない。

そう思いたいのに、頭の良さが祟ってか、脳内では勝手に正解の漢字変換をして数秒して

 

「……ぶっ!」

 

思いっきり吹いた。

女子として恥ずかしいレベルに吹いて、そして思いっきり赤面した。

流石の事態に会計をしていた二人がこちらに?マークをつけて見てきたが、慌てて何でもないという風に手を振って注意を逸らす。

焦ってはいけないアリサ・ライン……じゃなくてアリサ・R。焦ったら負けだ。

焦ってしまって何回、あのおっとりメイドにしてやられた事か。

だから、今頃母の元で手伝っているメイドの姿を十回くらい思い出すと落ち着いた。

ふぅ、と溜息を吐いて赤面も出来る限り失くして

 

「……残念ですけど私と彼はそういう関係じゃありません。ただのクラスメイトです」

 

「そうかい? その割には随分と……いやまぁこれ以上はただのうざい店主になるから止めとこう。またご贔屓に」

 

流石な長い間学生の支援し続けた町の店主である。学生に対しての引き際を心得ている。

話題が切れて思わずほっ、とするが話題自体を思い出してまた少し顔を赤らめてしまう。

 

……新婚夫婦。

 

新婚夫婦かぁ、と思わず考えてしまう。

最初に思い浮かんだのは恋人通り越してそこまで行く? という思考に思わず額に手を付けてしまう。

そんなに老けて見えるだろうか……ファッションは学生だから髪型とか小さな所で勝負するしかないけど、それ以外が老けているようにも見えるのだろうかと結構リアルにショックである。

そこまで考えその前に彼と夫婦って所に焦点を置こうとする。

いや、別に彼がとっても嫌いとか、願い下げとか思っているわけじゃない。

むしろ性格、能力含めたらかなりお人好しな馬鹿であることは理解しているし、こちらが家名を隠しているとはいえユーシスやラウラに対する態度を見るところ身分などで見る目を変える人ではないのも知っている。

強いて言うなら性格が傍若無人過ぎるのとイヤラシイのが欠点であることかもしれない。

特に後者は大き過ぎる欠点だ。

初日の体育の授業でさえ風で下が見えそうになっている女子勢を遠慮なく見ようとしてブーイングをした所だ。あれは紳士らしくない、うん。

 

……って何よ、この男チェックみたいな思考!

 

何様だ、という思考と違う違う! という思考がぶつかりあってあうあう~~と熱を頭から逃がしていると

 

「……お前、どうしたんだ?」

 

「ひゃい!?」

 

目の前に現れた少年の顔に思わず後ろに吹っ飛ぶように飛び───後頭部から壁にぶつかった。

 

「ぬ……!」

 

頭全体に響く衝撃にアリサはもしかしたら生まれてから三番目くらいの真面目な表情を浮かべて思わず悶える。

これは痛い。真面目に痛い。男の人の前だと言うのに涙が出てきそうなくらい痛い。

痛みというのは最大になるとむしろ感じなくなるが、逆に言えば最大以下だと感じて痛いのだと意味のない事を考えて悶える。

 

「……確かに俺も悪いとは思うけど、流石に今回は俺も予想外と壁までの距離の近さで対処できねえよ。湿布でも買うか?」

 

「べ、別に……いいわ。瘤にはなって……ないみたいだし……」

 

「どれどれ」

 

すると何を思ったのか彼は一気にこっちに詰め寄って頭を抱えてこちらの後頭部が覗け、触れる事が出来る位置に来た。

しかし、それはつまり正面からやられたのならば私の目の前には胸板があって私はほぼ彼に抱かれている、もしくは抱きつかれているような形になっておりずばり赤面ものだ。

 

「な!? ななななななーーーーー!!」

 

「確かになってないな。ま、後で冷やせば問題ないだろう」

 

するとあっさり彼は引いた。

驚きの表情のまま彼の方を見るが彼はまるっきり自然体。焦っているのも驚いているのもどうやら自分だけの特権みたいだ。

このやり場のない怒りをどこにぶつけろというのだろう。物凄い腹が立ってきたし、ストレスが溜まってきた。これが学校のグラウンドなら遠慮なくアーツで吹っ飛ばしていたのに。

そう思い、自重した。

 

……全く

 

何様なのよ、と思う。

別に相手は恋人でもないのだ。しかもあっちは善意でこっちの様子を見ただけ。

逆に下心有りであんな事をしたらいやらしいという事になるのだから彼の対応は何一つとして間違っていない。

ただ自分が過敏になっているだけなのだ。

異性とこういう風に仲良く接することも店のおじさんにからかわれる事などルーレではまずなかった事なのだから。

そう思った結論を思わず口に出してしまった。

 

「……私、楽しんでるのかしら……?」

 

誰にも聞こえない声量で発したから近くにいるレイにも聞こえていない。

でも、口に出した言葉でようやく胸にストンと正しいものが嵌ったみたいな感じがする。

楽しんでいる。

成程、私はこのよくある学生みたいな雰囲気を楽しんでいるのか、と。

そう考え、何度も心の中で頷いていると自然に表情が緩んできた。

やっぱり自分は単純であるという事なのだろう。

このアリサ・Rという士官学院の学生というものを私は目一杯満喫しようとしているのだから。

最初は母への反抗心からここに来ただけだというのに今ではそれを楽しむためにここにいるというのが現状なのだ。

長続きしない自分に呆れも感じるが、楽しいだけマシだろうと結論付ける。

 

なら開き直るのが吉かしらね?

 

ブランドンさんがレイには見えない所からこちらにアイコンタクトをさっきから送ってきている。

どう言っているかはわからないが何となく理解できる。

 

青春だねぇ……ね。

 

まぁ見た目的にはそうなのだろうと思う。

ならばやはり開き直ったほうがいいのだろうと思う。その方が面白そうだし、何よりも幾ら恋人とかではないからといって何一つこっちを意識しないこの鈍感男を懲らしめる必要がある。

下心を抱けとは絶対に言わないが何も思われないのも癪に障る。

 

「ねぇ、レイ? まだ夕飯には時間あるわね?」

 

「あ? そりゃ確かにちょっとまだ時間は余ってると思うけど……それが?」

 

よし、時間も言い訳もゲット出来たので即座に行動開始しないと勿体無い。

 

「じゃあ余っている時間でショッピングでもしない? 代金は全部貴方持ちで」

 

「……待て。この際意味は分からないが前半はOKしてもいい。だが後半は納得も意味も全く出来ない。せめて割り勘だろうが……!」

 

「あら? 女の子に奢らせるつもり?」

 

「くっ……!」

 

まさかこの言い訳で通じるとは思わなかった。

自分の言い分が明らかに滅茶苦茶であることは解っていたがここまで来たのならばテンションで攻めるしかない。

 

「それにほら? 一か月前に貴方の治療に使ったハンカチとかまだ返してもらってないし、このまま買い物だけして帰るのも勿体ないといえば勿体ないでしょう? なら遊ぶのも悪くないんじゃない?」

 

「……まぁ、どれも正論だしハンカチの件もあるからな」

 

仕方がない、と溜息を吐いて重い腰を上げたかのように立ち上がる。

よし、勝ったと思い……少し恥ずかしいが手を取る。

 

「ほ、ほら? 急ぎましょ? もう夕方なんだし時間は少ないわ。ここで短時間且つ面白いコースを組み立てるのに期待するからね?」

 

「……よく考えれば俺はこの荷物を抱えて行くのかよ? しかもコースってデートかよ」

 

言われた内容に少しだけ頬を赤らめるがそういえば昔読んだ漫画か何かでこんな台詞を言ってたのを思い出してそれを言ってみた。

 

「男と女が遊ぶ時点でデートって言うんでしょ?」

 

言って余計に恥ずかしくなったが仕方がない。

もう自棄だ。

これから夕飯もあるのにと思うが今日くらい体重のことは無視して買い食いとかしてみたいし、服とかも見たい。

こういう在り来たりな生活を送ってみたいと憧憬を抱いたことは昔はたくさんあったんだから今、実践するのも悪くない。

まぁ、強いて言うならばこの在り来たりを見せたかった人がここにいないのが少しだけ残念と感じ、私達は町に躍り出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

後日。

レイがユーシス相手に土下座しながら食堂でお金を恵んでくださいと叫んでいたが本人は知るか阿呆と蹴散らしていった光景が見えたが後の祭り。

女の子の買い物は金がかかるという経験を得ていなかった敗者の末路であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




意外にも投稿できましたが流石に一旦ここで打ち止めです。
ミノスデーモン相手に時間かけずに倒せるのはⅦ組メンバーの才能と努力によるものが大きいですね。
特に今回はエリオットの努力家の部分とアーツの天才の部分を出してみました。
序盤でハイドロカノンを出すエリオットマジ鬼畜。問題はまだ出すタイミングを熟知していないのが玉に瑕ですね。
そして後半はヒロインとのフラグ……みたいに書けてますかね?
これ、恐らくかなり誤解を植え付けそうですがアリサはまだレイ相手に恋してません。
まぁ異性の中でも仲がいいというのでは一番ですが、本人としてはまだ友情以上恋愛未満ですね。
アリサとしてはこういった普通の学生みたいな事を楽しんでいます。原作を知っている人は成程と思ってくれると思います。
まぁこの自分が恋愛に対していきなり惚れるのは有り得ないという考えを持っているからか、そういう発展はまだまだですね。
ノルド辺りですかねぇ……
次回は今度こそ時間が空くと思いますし、次はテストです。出来る限り早目にとは思いますが、何分就活で忙しいので長めに見てくれればと思います。
感想よろしくお願いします!!

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