IS x W Rebirth of the White Demon   作:i-pod男

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やはり同時進行する戦闘の描写って難しいですね・・・その所為で短めになってしまいました。

ホントすいません。


収束するB/正義の拳

仮面ライダージョーカーは、かなり苦戦していた。息は肺を患ったままマラソンを完走し終えたランナーの如く乱れている。野生動物のスピードとネコ科の超人的な身体能力に翻弄されて足場に使える遮断物が多い建物の中に追い込まれてしまった。

 

開戦時は人が多い空港から引き離そうとメタルメモリを使った力押しの戦いで近寄らせない様に戦って善戦していたが、顎の力を見誤っていた。得物の棒、メタルシャフトも食いつかれて雨細工の様に拉げて使い物にならなくなる程の力とは想像もしていなかったのだ。

 

情け無い。熟情け無い。目先の事に囚われずに先を見据える事を探偵事務所では先代所長に耳のタコにまたタコが出来る程何度もきつく教え込まれたと言うのに、今度は自分が担う局面———短時間で決着をつける事ばかりに気を揉んで勝負を急いでしまった。結果、ジョーカーにメモリチェンジした後に攻防を繰り返す内、壁を蹴ったジャガー・ドーパントに飛び付かれ、咄嗟の判断で頭をカバーしたが重い横薙ぎの強打をまともに受けてしまった。その際に左肩が脱臼してしまった。

 

「落ち着け落ち着け落ち着け。三つ数えて息を吸い、三つ数えて息を吐く。まだだ。まだ負けちゃいない。」

 

左肩の激痛から気を反らす為にそう自分に言い聞かせた。その言葉を繰り返し、策を巡らせた。

 

ジョーカーメモリを引き抜き、代わりにトリガーメモリを差し込んだ。トリガーマグナムの銃口を素早く動き回るジャガー・ドーパントに向けながらターミナルの渡り廊下まで誘い込みながら今までの戦いを振り返り、それによって得た情報を整理し始める。ジャガー・ドーパントの厄介さは強靭な顎の力と変幻自在のアクロバティックな動きにある。それさえ封じる事が出来れば・・・・・

 

考え倦ねている内に一つのアイデアが翔太郎の頭の中に浮かんで来た。フィリップや竜が聞けば間違い無く心を抉り抜く様な凄まじい暴言が帰って来るお馴染みの考えだった。だが挑む事すら憚られる無謀な一か八かの勝負事は最早切り札(ジョーカー)のメモリを持つ翔太郎の専売特許になっていた。善くも悪くも翔太郎はそんな度胸の持ち主なのだ。

 

「っし。行くぞ!」

 

どんなに無謀だろうと、これ以上の案はもう浮かばない。チャンスは一度きりだ。トリガーマグナムの引き金を引き続けながらもジャガー・ドーパントに迫り、徐々にスピードを上げて行く。普通の歩きから競歩、小走り、最後に全力疾走で走り込む。ジャガー・ドーパントも獰猛な唸り声を上げながら大きくジャンプし、大口を開けて飛びかかって来た。

 

今だ。

 

『Metal!』

 

黒いボディーが再び銀色に変わり、ジャガー・ドーパントの大口に左の二の腕を差し出した。狙い通り深々と牙を突き立てて来る。恐らく骨まで達して尚且つ貫通しているだろう。左腕からボタボタと血が滴り落ちて渡り廊下のカーペットを赤黒く染めて行く。

 

「やっと、捕まえた是この化け猫野郎が。」

 

右手でロストドライバーからメタルメモリを引き抜き、マキシマムスロットに落とした。

 

『Metal Maximum Drive!』

 

「拾い食いは体に悪いから、気をつけろよ。メタルライダー、パンチ!』

 

右の拳を大きく後ろに引き、渾身の右アッパーをジャガー・ドーパントの腹に叩き込んだ。メモリブレイクした時に起こる爆発を至近距離で浴びて、尻餅をついた。スタッグフォンで束に電話をかけるが、幾らコールを待っても電話に出る気配が無い。

 

「まさか・・・・間に合わなかったのか・・・・?!」

 

『大丈夫ですよ。まあ、ほんっっとギリギリセーフだったんですけど。』

 

変身を解除した翔太郎の視界に逆さまのエターナルが見えた。

 

「一夏・・・・!」

 

『いや〜、危なかったですよ?ガス・ドーパント。クイーンでフィリップさんと束さんの周りにバリア張って、気体だからまたクイーンとアイスエイジのツインマキシマムで極寒バリアに閉じ込めて固体に戻してようやくメモリブレイク出来たんですよ。ガスだから充満するスピードが速いのなんの。全部完全に捉えないと逃げられちゃいますから参りましたよ、もう。左腕、大丈夫ですか?』

 

「大丈夫だこれ位。」

 

『直しますんで、腕出して下さい。』

 

言われるままに翔太郎は血に染まった左腕を差し出した。

 

『Yesterday Maximum Drive!』

 

すると、逆再生される映像を見ているかの様に傷が瞬く間に塞がり、シャツの穴も血痕も、跡形も無く消え失せた。

 

『一時しのぎにしかならないですけど。』

 

「構わねえよ。効果が切れる前にあいつら倒せば良いんだ。照井はどうした?」

 

『まだ分かんないです。先にこっち来たんで。翔太郎さんを送った後で迎えに行きますから。』

 

「悪いな。お前、ホントデカくなった。すげえよ。この調子でお前が伸びて行ったら、俺が探偵廃業しちまうかもなあ。」

 

『そりゃないですよ。俺なんか翔太郎さんの流儀(ハーフボイルド)よりも下のクォーターボイルドですから。』

 

「ハーフじゃねえ、ハードだ。ハードボイルド!」

 

昔からやっている何時ものやり取りで、二人は小さく笑った。

 

『Zone Maximum Drive!』

 

翔太郎を事務所の方にテレポートさせると、丁度ワイバーフォンが鳴った。

 

『織斑、俺だ。こっちはどうにか片付いた。迎えに来い。』

 

『了解。どうでした?てこずりました?』

 

〜〜回想〜〜

 

角を前に突撃して来るライノ・ドーパントにアクセルは真っ向から挑んだ。スロットルを捻るとエグゾーストから青白い炎が噴き出し、時速数百キロのスピードで突撃した。ホイールが軋り、摩擦で悲鳴を上げ、白い煙を噴き出し始めた。だがライノ・ドーパントは足に根が生えたかの様に全く動かない。竜は仮面の下で顔を顰めた。

 

(ちっ・・・・・・パワーと馬力は上でも重量は向こうが上か・・・・)

 

動きを止められた所で前輪を横に捻られた。バランスを崩し、ハンマーの様に振り回されると柱に叩き付けられ、バイクモードが解除された。

 

目の奥で火花が散った。恐らく凄まじい外傷を受けて脳震盪を起こしたのだろう。ふらついて頭を抑えながらも立ち上がり、破れかぶれで地面に突き刺したままのエンジンブレードを手探りで探し当てようとした。が、次の瞬間再び突進攻撃を食らって吹っ飛んだ。背中から壁に叩き付けられ、肺から無理矢理酸素を押し出された。息が詰まる。

 

エンジンブレードとの距離も離れてしまう。折れた柱に凭れ掛かりながら立ち上がり、トライアルメモリを取り出した。

 

『Trial!』

 

アクセルメモリとそれを入れ替え、パワースロットルを捻った。赤いボディーが発光して黄色に、黄色いボディーが発行し、青に鳴った瞬間全身を覆うゴツい装甲が一気に弾け飛んだ。ヘルメットの形状と仮面のフェイスフラッシャーの色もオレンジ色に変色した。ライノ・ドーパントを遥かに凌駕するスピードでエンジンブレードを突き刺した場所にたどり着く。

 

アクセルメモリの端子がついていない方の先端に銀色のアダプターを接続した。

 

『Accel Upgrade! Booster!』

 

トライアルメモリを引き抜き、アクセルメモリを再びドライバーに差し込むと、パワースロットルを捻った。蒼いボディーが再び赤に、次に黄色に変色し、フェイスフラッシャーがスリット付きのバイザーに覆われた。今まで無かった噴射口も腕、肩、背中、踝などに大量に出現した。

 

『絶望がお前のゴールだ。』

 

空に飛び上がり、エンジンブレードにエンジンメモリを差し込んだ。

 

『Steam!』

 

剣先から大量の上記が噴き出し、ライノ・ドーパントの辺り一面に立ち込めた。

 

『Engine Maximum Drive!』

 

『もう一度言おう。絶望がお前の、ゴールだ!』

 

ライノドーパントが蒸気の中から飛び出した所で最大出力で肉薄し、斬りつけた。

 

〜〜回想終了〜〜

 

 

『・・・・少しだけだ。あばらが四本は折れたが、この程度大した事は無い。気遣いはありがたいが、俺はお前が思っている程柔な鍛え方はしていない。そろそろ次の局面に移る頃だ。』

 

『さっきの間が凄い気になるんですけど。』

 

『良いから迎えに来い。次の局面に移る。左達はどうだ?』

 

『翔太郎さんは左腕を負傷しましたけど、応急処置で直しました。竜さんを迎えに行ったらマドカの方に向かいます。フィリップさんと克己のハッキング戦もまだ掛かりますけど、全員の平均戦闘時間が十分前後なら上々ですよ。絶対に勝ちましょう。』

 

『ああ。』 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虚空を写す少女の目は、瞬きすらせずに天を見上げ続けた。積み上げられた瓦礫の下には汚れた小さな手足がはみ出しており、作りかけの塚の様に見える。少女の———マドカの虚ろな目から涙があふれて行く。戦いながらも必死にマカイロドゥス・ドーパントに呼び掛けた。戦闘兵器になってしまった心の片隅にもし僅かでも自我の欠片が残っているならと、必死に心の中で祈りながら剣を振り続けた。そして、

 

『エ、ム・・・・・私を、止めて下さい。』

 

か細く、今にも消え入りそうな声だった。だがそれでも持てる力を総動員して絞り出したのは明らかだ。

 

『お願い、します・・・・』

 

もっと早く自分の行動する理由の愚かしさを知っていれば、アイたった一人だけでも救う事が出来たかもしれない。生きているのか死んでいるのかすらも分からない、ただそこにいるだけの状況。もしそこから自分以外で脱する事が出来たならば。無念と怒りに顔を歪ませ、後悔に満ちたたらればの考えしか出て来ない。

 

ナスカブレードがドーパントに変身したアイを貫く感触は相変わらず手に残ったままだ。メモリを破壊しただけなのに、何故か自分が彼女を手にかけてしまったかの様な錯覚に陥ってしまい、錯乱したままナスカブレードをどこかに投げ捨ててしまった。疲労と悲哀に押し潰されて、最早泣く力すらも残っていない。

 

『マドカ。』

 

バサリと後ろから腕とマントが彼女を包み込んだ。

 

「兄さん・・・・」

 

「もう二度とこんな事が起きない様にするのが、俺達の役目だ。もう少しだ。もう少しで、決着がつく。頑張れ、マドカ。」

 




さてと・・・・・ここら辺で思うんですが、Wの原作同様キャラをログアウトさせた方が良いのではないかと

完結まであと少し!頑張れ自分!エタるな自分!

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