IS x W Rebirth of the White Demon   作:i-pod男

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いよいよ一夏が変身&ISを入手します。ドチートです。そして、一夏の身体的なドチート性能も露わになります。

感想欄でフィリップがエターナルメモリを作って渡すのかとありましたが、アレ自体を作った訳ではありません。あのメモリの恐ろしさは充分理解していますので。


E、再臨/ファーストクライアント

時は過ぎて行き、一夏は受験生となった。

 

「さてと・・・・荷物は全部持った、と。後はこれか。」

 

必要な荷物を持ち、家を出た。雑な手書きの地図を頼りに、藍越学園の受験に向かう。学費も安く、就職率もかなり高い絵に描いたような理想的な所だ。ネットでの情報確認や、下見も念入りに済ませているが、一夏は不安と期待で一杯だった。

 

「大丈夫・・・・だよな。」

 

一夏は自分の手を見つめる。改めて束から自分の体の状態の簡潔なレクチャーを受けてから様々な事を試していた。今まで出来ると分かった事は、

 

人体に有害とされる物(毒など)は全く効かず、抗体が出来る

怪我も自己再生でほぼ瞬時に治る

フルパワー状態では乗用車を片手で持ち上げ、両手で持ち上げれば運べる

ウサイン・ボルト以上のスピードを一ゼロ停止で出せる

ゴルフボール等の硬質の物体を握力だけで握り潰せる

聴力と嗅覚は猟犬以上

視力は6.0以上

飛んで来るガス式エアガンの弾を避けられる・掴める程の動体視力・反射神経

 

等である。どれも化け物じみている為、一夏は恐れていた。この力で誰かを傷つけてしまうのではないかと。今までかなり苦労を要して、ようやく調整が利く様になったが、それだけでは一夏の不安は払拭されなかった。体が人間の物でなくなってしまった後、一度喧嘩に巻き込まれて自分の身を守るとは言え手を上げてしまった。その為、相手の足が逆方向に曲げる、複雑骨折、内臓損傷等の冗談では済まされない様な事件も度々起こしてしまっている。それ故期待よりも不安の方が大きかった。

 

「試験会場ってここか・・・・?その割にはデカいな。」

 

だが目指す目的地がここだと言う事を主張するかの様に入り口に看板が設置されていた。そして数分後。

 

「ジーザス、迷った・・・・・・」

 

一夏はそう確信した。これだけだだっ広い建物であるにも拘らず、案内板どころか張り紙一枚見当たらない。この迷路の様な建物の中で延々と彷徨う訳にも行かないので、仮に試験中でも現在地を把握しない限り何も出来ない。そう思って手近にあったドアノブを捻って引いた。

 

(試験会場ってこんなに薄暗いもんなのか?)

 

周りでは精密機械がちかちかと明滅を繰り返しており、コンピューターやその他の物も置いてあった。そして部屋の中心に置いてある物に目を向けた。

 

「これは・・・・・ISか・・・・?」

 

その時、ワイバーフォンの着信音が思考を中断させた。

 

「はい?」

 

『織斑一夏、今すぐそこから離れた方が良い。』

 

「え?フィリップさん、どう言う」

 

『説明している暇は無い!兎に角、今はその建物から一刻も早く脱出したまえ!』

 

その切羽詰まった声に触発されて、一夏は直ぐに行動を起こした。先程通って来たドアを抜けて走り出し、換気用に開かれていた窓から飛び出して着地した。そのまま全力で走り出すが、目の前に現れた人物を見て足を止めた。

 

「やはり、あれから自主的に訓練は続けていた様だね。君を信じるのは間違ってはいなかった様だ。」

 

フィリップの手にはスタッグフォンともう一つの緑色のガジェット、『フロッグポッド』が握られている。そこから、先程のフィリップの声は録音された物だったらしい。

 

「フィリップさん・・・・!」

 

「久し振りだね、織斑一夏。今日は、知り合いを二人連れて来た。」

 

「知り合い?」

 

「やっほー!フィー君のお友達の篠ノ之束さんでーす!フィー君てねー、凄いんだよー、天才の束さんでも知らない事を知ってるんだから凄いよー!だからー、お友達になっちゃいましたー!イェイ♪」

 

フィリップの後ろから見知った女性が二人、姿を現した。テンションはそのままでも、何時もの様にウサ耳カチューシャとフリル付きのドレスではない、大人しい地味な服装の束に、同じく地味な服装の千冬だった。

 

「束さん。千冬姉まで・・・・」

 

「ISの技術や理論の事は全て閲覧し終えたからね。後は、篠ノ之束と織斑千冬の居場所を突き止めるだけだった。僕が出向いて、彼女達に罪を数えさせた。」

 

フィリップの言葉に、二人は俯く。そしてフィリップの何時に無く厳しい顔に、一夏も表情を強張らせた。

 

「皆が知っている白騎士事件は、篠ノ之束によって引き起こされたマッチポンプだ。死者は一人も出なかったと報道されたが、これは政府の隠蔽工作によって不都合な事実が捩じ曲げられただけに過ぎない。死者は僅かだがいたし、怪我人もかすり傷を負った者から、死んだも同然の重傷者、更には廃人までいる。売名の為に何千万と言う数の命を傷つけ、危険に晒したのは、決して許されない事だ。」

 

「じゃあ・・・・これからどうするんですか?まさか警察に」

 

「二人には罪を償ってもらわなければならない。だが、警察に引き渡して自白すれば家族にも累が及ぶ。君や篠ノ之箒と言う、たった一人の下の兄弟にも。そもそも、既に握り潰されて幕を閉じた事件を今更抉じ開けようとしても無駄だ。だから、僕は翔太郎、照井竜、そして亜樹ちゃんと議論した。至った結論は、保護観察期間付きで、二人の様子を見る事。」

 

「「「え?」」」

 

これには束と千冬も驚いた。フィリップは振り向いて二人を冷たい目で睨む。

 

「これ以上世界を引っ掻き回す様な事は慎んでもらおう。織斑一夏、君には姉を監視してもらいたい。」

 

「フィー君、どう言う事?」

 

一夏も驚いていた。翔太郎は兎も角、性格からしてフィリップならば感情を押し切っても二人を警察に出頭させる筈だと勘繰っていた為、驚きは尚更大きかった。

 

「確かに君は織斑千冬と共にこの世界に混乱を齎した。だが、ISを作った本当の目的は称賛に値すると、僕は考える。ただやり方がマズかった。それだけの事さ。」

 

「フィー君・・・・・」

 

「それと、もう一つ。僕ら風都の仮面ライダー達からプレゼントがある。」

 

フィリップはスタッグフォンのボタンを幾つか押すと、リボルギャリーがやって来た。

 

「おーーーーーー!!!凄い凄い!何これ!?何これー!?」

 

束の質問を他所にリボルギャリーの車体が左右に開くと、フィリップはその中からダブルドライバーのスロットが片方欠けたロストドライバー、そしてガイアメモリを取り出し、一夏の前に置いた。

 

「これは・・・・ドライバーと、メモリ?」

 

「そうだ。翔太郎や照井竜と相談した。以前君は、仮面ライダーとして僕達と一緒に戦いたいと、そう言っていたね?その意志は、今でも変わらないかい?」

 

「はい。」

 

「今の君は篠ノ之束が作ったナノマシンの恩恵を受けて生き延びた。それだけでも君は充分人を殺せる力を持っている。勝手ながら、バットショットで能力を検証している現場を撮らせてもらったよ。まさか車を持ち上げられるとは思わなかったがね。今この場で君の覚悟を見せて欲しい。」

 

「覚悟?どうやって?」

 

フィリップの言わんとする事がまだ分からないのか、一夏は首を傾げた。

 

「簡単な話だ。僕達と戦えば良い。ただし、僕達は本気で・・・・エクストリームで戦う。今の君は生身でもドーパントに十分ダメージを与えられる力を持っているからね。」

 

「そう言う事だ、一夏。どうする?」

 

飛来したメカニカルな鳥と共に、トレードマークの帽子を被った翔太郎が現れ、決断を迫った。一夏は鼻から大きく息を吸い込んで早鐘の様に胸を打つ心臓を落ち着けると、口を開いた。

 

「分かりました。やります。でも、約束して下さい。二人の事を、特に束さんの事、よろしくお願いします。」

 

「聞いたかい?翔太郎。」

 

「ああ、しっかりな。行くぞ、一夏?」

 

緑色の光に包まれてフィリップはエクストリームメモリに吸い込まれて行き、翔太郎はダブルドライバーにそれを押し込み、開いた。

 

『Xtreme!』

 

展開した瞬間、エクストリームメモリの中心にあるエクスタイフーンが風を巻き起こした。眩い光に包まれ、サイクロンの緑とジョーカーの黒の中心に粲然と輝く白銀のクリスタルサーバーが現れた。モチーフだった文字のWもXに変わっていく。地球と言う名の無限のデータベースと直結した、Wの最強形態、サイクロンジョーカーエクストリームだ。

 

「これが、」

 

『僕達の力だ。』

 

「『さあ、来い!』」

 

「「変わった・・・・!」」

 

二人が変身したのを惚けた顔で見ている千冬と束を他所に、一夏は先制攻撃とばかりに飛び蹴りを放った。だが、当然予備動作が長い攻撃は避けられてしまい、足を掴まれて地面に引き倒される。まともに受け身を取る事もままならなかったが、両手をついて体を支え、何とか地面に激突するのを防いだ。掴まれていないもう一方の足で器用に拘束を振り解き、距離を取った。

 

「いっくん!!」

 

「一夏!!」

 

『織斑千冬、篠ノ之束。手出しは止めて貰おう。これは彼が自分の意志で決めた事だ。これを止めるのは彼の意思と決意を踏み躙ると言う事になる。

 

「流石に丸腰では勝てないか・・・・」

 

一夏は苦笑した。

 

『織斑一夏、リボルギャリーにもう一つトランクが入っている。その中に入っている武器を取りたまえ。まだ試作品だから、テストも兼ねてね。』

 

言われた通り、リボルギャリーに残っているトランクを開くと、そこにはメカニカルな一振りの剣、そして同じく一丁のメカニカルな銃が収納されていた。剣を掴むと、両手で握って正眼に構えた。重さは感じるが、持てない程ではない。普通の刀と違って反りは無く、落とすとアスファルトが砕け、切っ先が減り込んだ。

 

『それは照井竜のエンジンブレードと重さは殆ど変わらない。およそ三十キロの剣を持ち上げる事が出来るとは、やはり膂力は常人を軽く凌駕しているね。』

 

気合いの籠ったかけ声と共に剣を振り下ろしたが、W CJXは左手を突き出し、剣が収まった円状の楯を出現させた。一夏が放った一太刀はその楯によって防がれ、金属がぶつかる耳障りな音を上げた。

 

「プリズムビッカー・・・・・!!」

 

『Prism!』

 

メモリをプリズムソードの柄の末端に差し込むと、それを引き抜いた。容赦無く振り下ろされるその刃を逆手に持ち替えた剣で受け止めたが、そのあまりの衝撃に手が痺れて感覚が無くなりそうになる。

 

「く、ぉぉのおおおお・・・・・・ハァッ!」

 

だが、ナノマシンによって底上げされた強大なパワーに任せてプリズムソードを押し返し、前蹴りでWを後退させた。

 

『中々粘るね。普通のドーパントなら五分と掛からずに弱体化出来るのに。』

 

「ドーパントと同じにしないで下さい。俺は翔太郎さんやフィリップさん、竜さんみたいになるつもりですから・・・・・仮面ライダーに。」

 

一夏は剣を地面に突き刺すと、トランクに入ったドライバーとメモリを拾い上げた。ドライバーを腹に当てると、ベルト部分が伸び、腰に巻き付いて行く。メモリのスタートアップスイッチを押した。

 

『Shuffle!』

 

すると、突然メモリは一夏の手を離れ、空中で目紛るしく変色しながら輝き始めた。あまりの眩さに一夏は思わず顔を背ける。

 

「フィリップ、何なんだあのメモリ?!」

 

『あれはシャッフル、トランプで言う「切り混ぜ」の記憶を内包したメモリだ。数あるガイアメモリの適合率の高低を一々照合していては時間が掛かり過ぎてしまう。これで、ランダムにあのメモリが持つ能力は変わって行く。当たりか外れかは、織斑一夏の引きの強さに掛かっている。』

 

メモリ制作は基本フィリップに任せっきりの翔太郎は何が起こっているか分からなかった。その困惑した相棒に、フィリップは仮面の下で落ち着いたトーンで説明した。光が収まると、一夏の手にそのメモリが落ちて来た。だが、描かれたイニシャルとメモリの色は 大きく変わっている。

 

「永遠・・・・エターナル。」

 

『Eternal!』

 

そしてそれをロストドライバーの挿入口に押し込んだ。 スロットを斜めに倒すと、一夏の周りで青白い電流が迸り、塵が彼を包んで行く。

 

それは一度は風都を地獄に変えようとした悪魔が変身した姿だった。英文字のEを横倒しにした頭部、青いフレアマークに包まれた二の腕、体中に装備された合計二十五個のマキシマムスロット、そしてまるで切り取られた夜の闇をそのまま布にしたかの様な風に靡く漆黒のマント、エターナルローブ。全てが同じだった。

 

「大道克己と同じ・・・・エターナル・・・・?!運命の悪戯、だな。」

 

瞬きしたその瞬間、一夏が変身した『ソレ』の隣に一人の男の姿が翔太郎の目に映った。赤いラインが入った黒い革の上下を身に付け、髪に一筋青いメッシュが入った男の姿が。不死身の傭兵部隊NEVERの隊長、大道克己の姿が。

 

『どうやら、かつての宿敵は死して尚この世に自分が存在すると言う事を主張したい様だね。中々しぶとい男だ。』

 

フィリップはエクストリームメモリを閉じ、ドライバーから引き抜いた。W の姿は消え、翔太郎の後ろからフィリップが姿を見せて軽い拍手を一夏に送る。

 

「上出来だ、織斑一夏。正式に仮面ライダーと呼ぶ日はまだ遠いが、今日からそのドライバーとメモリ、そしてその武器は君の物だ。厳重に保管したまえ。翔太郎と僕も、一時はドーパントに合わせて四本のメモリを奪われた経験がある。二の舞だけは絶対に避けてくれ。」

 

一夏は頷き、変身を解くと、ドライバーとメモリをリュックの中に押し込んで二人に深々と頭を下げた。

 

「いっくん、やったね。」

 

「束さん。翔太郎さん達との約束、守って下さいね。それじゃ。」

 

「あ、ちょっと待って!」

 

束は一夏の右腕に肉厚な黒い腕輪を嵌めた。

 

「これは・・・・?」

 

「こんな世の中になっちゃったけど、それを変える為にいっくんに手伝って欲しい。これは、その為に必要になる物だよ。大事にしてね。」

 

「一夏、私からも頼む。ここまでの事をしてしまった以上覆水盆に返らずなのは分かっている。今更だが私も束も、こんな住み難い世の中を作ってしまった事を今では後悔している。私達が出来るだけサポートする。だから、助けてくれ。ISを、あるべき姿に導いてくれ。」

 

一夏は目を閉じて頭の中で短時間で起こった様々な出来事を整理して行き、一度深呼吸をすると、その腕輪に触れた。

 

「分かった。完遂までかなり時間が掛かると思うけど、最初の依頼が千冬姉じゃ断れないし。受けるよ。」

 


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