IS x W Rebirth of the White Demon   作:i-pod男

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学園祭のエピソードは一体どうしようか・・・・・?


Rとの出会い/心の温もり

倉持技研で起こったテロ事件は束やフィリップの情報操作によって一夏が殆ど一人で解決した事にされてしまい、一躍話題となった。イギリスからは専用機を奪還してくれた功績を認め、国を代表して女王を始め国会の重役や国家代表であるシャーリー・ワトソンらが来日し、本来はイギリスの軍人でなければ授与出来ない戦功章『ヴィクトリア十字章』とイギリスの市民権を一夏に与えた。

 

その後、破壊された嬉々や屋根の建築作業中にエターナルに変身した状態で降り立ち、イエスタデイとエクストリームのツインマキシマムで全てを元の状態にリセットした。

 

「・・・・にしても、これで暫くの間迂闊には出歩けないな。はあ・・・・刀奈や簪とのデートがお預けとかふざけんなよ。俺もプライベートは満喫したいのに。」

 

メディアでも以前として一夏の事が取り上げられており、学園から一歩でも外に出よう物なら一日中パパラッチに追い回されてしまう。カーテンの隙間からどんよりとした曇り空が見え、雨粒がバラバラと窓を打ち付ける。

 

「文句言わないの。あんたねえ、自分の立場って物を理解しなさいよ。今現在あんたは善くも悪くも有名人なのよ?崑崙山脈にでも行って山籠もりしても追われるから。」

 

鈴は棚の中にしまわれている大量の茶葉の缶の一つを取りだして湯を沸かした。

 

(あいつの言う通りだ。こんな天気の中、一体どこに行く?それに、別に良いんじゃないか?今のお前はビレッジにいた頃の俺と同じ、統率者であり世間の男に取っては正に『英雄』だ。過去の失態で世界中からバッシングを受けて衰退し始めている女性利権団体もこれで更に迂闊な手出しが出来なくなる。それよりさっさと起きろ、的撃ちをしたい)

 

『まだ駄目だ。後一人相談に来る人がいる。えーっと、予約を入れたのが・・・・・あらま。』

 

一夏はクリップボードに挟まれた用紙に書かれた名前と指定時間を見て目を丸くした。

 

「ね、意外な人が相談に来るって言ったでしょ?」

 

鈴はバリスタ顔負けの鮮やかな手付きでお茶の容易をすると、テーブルに置いた。

 

(どうした?)

 

『虚さんが相談か。珍しいな。』

 

(ハッ、あいつか。妹とは違ってあんな肩が凝りそうなチタン並みにお堅い雰囲気を漂わせてる女だ、大方どうすればお前みたいな男が寄って来るか戦術が欲しいんじゃないか?従者なんて堅苦しい立場に置かれてみろ、誰だって羽を伸ばしたいと思う。ああ言う女はいざという時は凄まじい化け方をするぞ)

 

『まっさかぁ。』

 

(お前、忘れていないか?俺はお前であり、お前も俺だ。俺の勘や観察力もお前と同じになって来たって事だぞ)

 

『敵に回す事を想像すると恐ろしいね。』

 

(それは褒め言葉として受け取っておくぜ)

 

そしてやがて扉が開き、そわそわしたIS学園三年の布仏虚が入って来た。

 

「あ、虚さん。お待ちしてました。どうぞ。」

 

コーヒーテーブルを挟んで二人は向かい合った。一夏と鈴はパイプ椅子に座っているのに対して虚は革張りのソファーである。

 

「さてと。どうしました?」

 

「実は・・・・・その・・・・・私でも、だ、男性の気を引ける様な方法があるかどうか聞きたくて・・・・」

 

羞恥に顔を赤く染めた虚は淹れたての冷えたプーアル茶を普段では全く見せない豪快な飲みっぷりで嚥下した。それを見て一夏は開いた口が塞がらなかった。またしても克己の読みは的中したのだ。頭の中で勝ち誇る克己の高笑いが聞こえる。

 

「まあ〜、そりゃ勿論あるでしょ。ねえ一夏?」

 

鈴の言葉に一夏は素直に頷いた。一夏から見て虚は『清楚』が一番似合った。妹の本音とは対極の性格を持つ彼女はどんな時でも慌てる事は無く、冷静に事を片付ける。言うなればキャリアウーマンだ。加えてやはり家柄や年上であると言う事もあって一夏にもまだ完全に会得しきれていない大人びた雰囲気を持ち合わせている。このクールビューティーで後輩などのハートも鷲掴みに出来る可能性はある。

 

「勿論。虚さん綺麗ですもん。それに知ってます?虚さんみたいな人って以外と年下にモテるんですよ?」

 

「年下、ですか・・・・」

 

「まあまず、どんな男が好みか書いてみて下さい。それが分からない事には何とも言えないんで。」

虚は直ぐに制服のポケットからメモ帳を取り出して箇条書きで簡潔に守備範囲内の男の特徴を書き留め、ページを破ると二人に差し出した。

 

「えーっと、年下、背丈は自分と同じか少し上。なるほど。」

 

「料理が上手い、で努力家・・・・・」

 

二人してリストを読み上げ顔を見合わせると、ニヤリと笑顔が浮かんだ。そう、二人には久しく会っていない異性との交流を切実に求めている親友にして悪友を思い出した。彼は眼鏡が似合う清楚な感じの年上が好みだと言っているのを二人はハッキリと覚えている。この二人ならもしかしたらもしかするかもしれない。

 

「虚さん。このリストにある項目全てに該当する人、心当たりあるんですよ。しかも、彼のストライクゾーンに必要な三つの項目、清楚さ、年上、そして眼鏡。虚さんはこれを全て難なくクリアしています。」

 

「え?」

 

よもや主である楯無にすら内密にして真剣に相談に来た事がここまであっさり片付くとは露程も思わなかったのだろう。何時もの落ち着きはどこへやら、ぽかんと口を開いている。

 

「・・・・本当ですか?」

 

「はい。学園祭も近いですし、その時に連れて来ますよ。」

 

「あ、参考までにどうぞ。彼のプロフィールです。」

 

虚は鈴に差し出された茶封筒を受け取った。

 

「分かりました。ワザワザありがとうございます。」

 

無表情を装って礼を言い、退室する虚だった。だが、歓喜に打ち震えてドアの外で小さくガッツポーズを取る所はやはり彼女も密かに出会いを求めていた事がありありと伺えた。

 

「上手く行くかしらね?」

 

「上手く行く様に工作するのが腕の見せ所って奴だ。後、ダチとしての俺らの義務だろうが。さてと、俺は射撃訓練に行って来る。店仕舞いと弾への連絡を頼むな。」

 

「はいはい、行ってらっしゃい。私とラウラも最近ようやく竜さんの動き見切って反撃も出来る様になったからもう少し寛いでるわ。」

 

「そうか。そりゃ良かった。俺がお前に負ける日も近いかもな。」

 

「アンタに勝てる様な人なんて千冬さんしかいないでしょうが。

 

そんな冗談を交わしながら一夏は何時もの用に射撃場に向かった。既に先客が二人いて、地面にはかなりの薬莢が散らばっている。

 

「おいお前ら、弾の在庫を使い切らないでくれ。俺もやるんだからさ。」

 

「一夏さん。お久し振りですわね。国際空港での表彰以来でしょうか?」

 

「あ、一夏。ラウラの写真ありがとね。元気出た。」

 

射撃場ではL96A1狙撃ライフルをバイポッドで安定させてクレーや時間差で現れる人型の的を的確に撃ち抜くセシリアとAR-15アサルトライフルの狙いを一点に定め、フルオート射撃中でも出来る限り照準を安定させながら的を一つずつ蜂の巣にしていた。

 

「一夏もやる?」

 

「もちろん。」

 

ラックからスタイヤーTMPとウェブリーマークVIを二丁取り出し、的が自分に飛んで来る様に設定した。約四十個のクレーが一夏に向かって飛んで来たが密集している物はスタイヤーで撃墜、その中で撃ち漏らした物は弾切れになったスタイヤーを捨て、ウェブリーの2丁拳銃による精密射撃、そして最後の一つは飛び回し蹴りで粉々に砕いた。

 

「俺の銃撃は、革命(レボリューション)だ。」

 

トリガーガードに指先を引っかけて銃を高速回転させ、硝煙を飛ばした。

 

「一夏って相変わらず凄いね。強いだけじゃなくて戦う時のパフォーマンスも。」

 

「そうですわね。」

 

「俺はそうせざるを得ない状況にあったからさ。でも、皆も努力一筋で短い間に大きく成長した。友達として誇りに思うよ。」

 

「私達のその成長も、全て一夏さんの計らいがあってこそ可能となった事ですわ。特に箒さんは一皮どころか二皮も三皮も剥けています。あんまり謙遜し過ぎると嫌味に聞こえますわよ?」

 

「そうそう、褒め言葉を素直に受け取る事も大事だから。」

 

「肝に銘じておくよ。」

 

薬莢の掃除をしながら一夏はそう言って笑いかけたが、心中はどんよりと下空の様に曇っていた。

(マドカ・・・・お前は今どこで何をしている?)

 

 

 

 

 

 

 

 

LEDのランタンが今は使われていない電車のトンネルの暗闇を照らしていた。その灯りの中、毛布に包まって体を温めるマドカがいた。

 

エターナルとの戦闘で受けたダメージが残っている所為で体が重い。加えて長時間雨に晒されていた所為で体力の消耗も激しい。追っ手の手が回っていないアジトから必要な物は出来る限り持ち出した。手持ちの装備はナイフ二本、手榴弾各種、そしてシグP226と予備のマガジン三本と、相手を考えると明らかに物足りない。ISは自分の意志で置いて行ったから良いとしても、ドライバーとメモリを砕かれたのはかなり痛い。特にガイアメモリを使う相手なら尚更だ。だがそんな劣勢に立たされていても、マドカの口元の笑みは崩れない。克己の言葉が今でも耳に残っているからだ。

 

生きているならその可能性に賭けろ。

 

(私も・・・・賭けられるのか?戦って生き残ると言う可能性に?)

 

「こんにちわ、エム。」

 

聞こえたのは、アイの声だった。マドカはすぐさま毛布を引き剥がしてナイフを引き抜き、フラッシュグレネードを声がした方に向かって放り投げ、すぐさま走り出した。凄まじい光は目を潰し、炸裂音はトンネルにいる事によって音が反響する事で効果は高まる。暫く逃走を続けたが、トンネルを抜けた所で四人の少女に行く手を阻まれた。全員同じ服装をしており、左肩のアルファベットのタトゥーが見える。

 

「貴様ら・・・・プロフェッサーの差し金か。」

 

矢継ぎ早に発砲したが、その銃弾はマドカがいたトンネルから飛び出して来たマカイロドゥス・ドーパントに防がれてしまう。

 

『エム、諦めて投降して下さい。』

 

「断る!今の私は、自由だ。身も心も軽くなった気がする。本当の意味で、生きている!それを奪おうと言うのなら、たとえ刺し違えてでも私は自由を手に入れる!」

 

マカイロドゥス・ドーパントの言葉を振り払い、グレネード二つのピンを引き抜いて投げつけたが、それは即座に真っ二つにされた。黄金の菱形に覆われた怪人『フラッシュ・ドーパント』に手刀で叩き切られたのだ。

 

『エフ・・・・』

 

『アイ、裏切り者に説得など無意味だ。たとえ姉妹であろうと、裏切り者は殺す。』

 

『Shoulder Fang!』

 

その直後、白いブーメランが空を切り裂き、フラッシュ・ドーパントとマカイロドゥス・ドーパントを後退させた。

 

「穏やかじゃないね、女性一人によってたかって。」

 

戻って来るブーメランを掴んだのは右半身が白、左半身が黒紫のW、FJだった。

 

『貴様は・・・・プロフェッサーの資料にあった・・・・W。邪魔をするな。我々はそこにいるソイツが目的だ。用が済めば直ぐに立ち去る。』

 

だがフラッシュ・ドーパントの言葉には耳を傾けず、Wは再びショルダーファングを投げつけた。まるで生きているかの如く何度もフラッシュ・ドーパントとマカイロドゥス・ドーパントに襲いかかる。

 

『愚かな。』

 

その隙にWはマドカを脇に抱え、マシンハードタービュラーに飛び乗り全速力でその場から逃走を図ったが、突如進行方向に現れたフラッシュ・ドーパントの手から伸びるレーザーの直撃を受けた。幸い撃墜はされなかったが、マドカが振り落とされそうになった。

 

『何なんだありゃあ?!瞬間移動か!?』

 

「あのドーパントの能力は、恐らく『光』が関係している。だとするなら・・・・たとえエクストリ—ムやトライアルでも戦うのは難しい。光の速度は真空では秒速約三十万キロ、つまり地球を一秒で七回半回れるだけの速さを持っている。大気があるから速度は下がっているだろうが、微々たる物だ。逃げ切れない事に変わりは無い。」

 

『さんじゅ、何だと!?』

 

「この状況で空中から逃げ切るのは、ほぼ、と言うか実質不可能だ。」

 

『察しが速くて何よりだ。では、彼女をこちらに。』

 

だが、Wはハードタービュラーのユニットをパージし、機首を下に向けて水の中に急降下した。

 

『おい、フィリップ!?』

 

「これは恐らく一世一代の大博打だ。君、一分位は息、止められるよね?」

 

そしてそのまま水の中へと飛び込み、黄色い水上の高速航行用ユニットと連結し、ハードスプラッシャーとなった。アクセルを思い切り捻り、ようやく逃げ切る事に成功した。

 

『しっかしフィリップ、何で水中で逃げるんだ?』

 

「光は水中で屈折する。その為速度もおよそ秒速22.5kmまで下がる。あのドーパントと戦うのに最も適した環境は絶対零度に近い場所だ。技術自体は1998年7月にマサチューセッツのケンブリッジで確立されている。そこならば光は減速し、最終的には完全に停止させる事が出来る。それは兎も角、まずは彼女の保護だ。」

 

フィリップはダブルドライバーのスロットを起こしてメモリを引き抜くと変身を解除し、水を飲み込んで激しく咳き込むマドカの背中を摩った。

 

「大体の事情は飲み込めた。一先ず一緒に来たまえ。話はそれからだ。そのままでは凍えてしまうよ?」

 

「お前・・・・・・何者だ?」

 

「僕はフィリップと呼ばれている。君は、確か黒いナスカの変身者だったね、自称織斑マドカ。逃げていると言う事は、失敗したか裏切ったかの二つに絞られるが、恐らく後者だろう?しかも、メモリとドライバーを織斑一夏に砕かれた後と来た。」

 

まるで一部始終を見て来たかの様なフィリップの口振りに、マドカは驚いた。

 

「調べる方法なんて幾らでもあるんだよ。僕に隠し事は出来ない。」

 

「・・・・私をどうするつもりだ?」

 

「保護するだけさ。流石に君をここに放って置いてまた奴らが戻って来たら、何をされるか分かった物じゃない。さあ、乗りたまえ。」

 

マドカは渋々と言った様子でハードスプラッシャーに同乗した。やがて自動操縦で迎えに来たリボルギャリ—に車体が収納され、探偵事務所に向かって走り出す。その中でフィリップは翔太郎に電話をかけた。

 

「やあ、翔太郎。毛布とシャワーを用意してくれ。後、何か適当に暖かい食べ物を。理由は到着すれば分かる。ああ、頼むよ相棒。」

 

「これからどこに行くのだ・・・・?」

 

「僕の家、僕の家族がいる所だよ。」




なんかマドカが事務所の従業員になってしまう様なビジョンが・・・・・

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