IS x W Rebirth of the White Demon   作:i-pod男

55 / 76
やっぱり相手はISやガイアメモリを使えるテロリストと言う事もあるので、これぐらいの事は普通にするんじゃないかなと思って書きました。酷さはドラマ Bloody Mondayを意識しています。


K、危うし!/完全ロックアウト

課外授業と称した特訓を続けて一週間が経過し、皆はめきめきと腕を上げて行った。一日おきに竜とロンが鍛えるグループを変えて訓練を繰り返して行った。週末は休息の為、自由行動が許される。だがこの日簪は自分のISを制作した倉持技研に稼働データの譲渡と定期的に行われる機体点検の為に呼び出されており学園にはいない。

 

「ねえ、一夏君。」

 

「何?」

 

「そろそろ皆に教えた方が良いんじゃない?あの事。」

 

「そのつもりだよ。皆修行に専念してたから邪魔したくなくて。けど、ここで見せるわけにはいかないからさ。刀奈と義父さん、そしてちー姉と束さんのお陰で簡単に手出しは出来ないけど、もしバレたら只じゃ済まなくなる。絶対に庇い切れない。」

 

「あら、ここでも大丈夫な所知ってるわよ?私でも特別に許可が無いと入れない場所とかあるし。先生でも学園長の許可が下りなきゃ入れない所、一杯あるんだから。何なら私が都合してあげるわよ?早く皆に話さないと。隠しててもしょうがないし。」

 

「じゃあ、お願いします。」

 

楯無は胸を張って扇子に描かれた委細承知の四文字を見せると、不敵に笑った。

 

「五分だけ待っててね。」

 

そしてきっかり五分後、千冬を含めた皆が生徒会室に集められた。

 

「今度は何をされるんだ・・・・?」

 

「また何かのトレーニングなのでしょうか・・・?自白剤への免疫力を高めたりとか。」

 

「はいは〜い、皆集まってくれてありがと。じゃあ、一夏君どうぞ〜。」

 

皆がソファーに座り、お茶を進められた所で一夏は手にエターナルメモリとロストドライバーを持って皆の前に現れた。他の誰もが口を開く前に、ドライバーを腰に当ててメモリを差し込み、変身した。

 

『Eternal!』

 

変身によって生じた衝撃波がマントをたなびかせ、一夏が立っていた所には仮面ライダーエターナルがいた。だが、展開したスロットを閉じてメモリを抜くと、直ぐに変身が解除されて仮面が剥がれ落ちる。

 

「い、今のは・・・?」

 

「風都で噂になっている仮面ライダーって知ってるか?」

 

「それなら聞いた事あるよ。どこからとも無く現れて、何だっけ?怪物?を倒してまたどこかに行っちゃうって。でも、あれ?僕が知ってるのは左右二色の奴なんだけどな・・・・」

 

「私が知っているのは、剣を持った赤一色の奴だぞ?」

 

食い違うシャルロットとラウラの証言に皆が首を傾げ始めた。

 

「どっちもいる。で、俺が三人目。その二人の素性は訳あって明かす事が出来ない。それと話すのが遅くなって悪かった。ちー姉と鈴はもう知ってるがな。」

 

「ごめんね。けど、一夏の事がバレたら色々と都合が悪くなるのよ。」

 

「女性利権団体もまだ迂闊に手を出す事は出来ないが、こちらがボロを出せば間違い無く食いついて来る様なネタだ。IS委員会も一夏を捉えようとするだろうからな。」

 

「まあ、後々驚かれて説明するのも面倒になるから敢えて今ここで話す事にしたんだ。他に俺の事について何か聞きたい事は?」

 

ラウラが真っ先にすっと手を挙げた。

 

「うむ。特訓の時、組手の最中でお前は人が替わったかの様なサディスティックな闘い方をする。喋り方も端々が替わっていた。まるで二重人格者の様に。一夏はその・・・・『二人居る』のか?」

 

真っ先にそれを聞かれるとは思わなかった一夏は開いた口が塞がらなかった。直隠しにして来た事なのに早急にそれを察知されて問い質されるとは、流石は現役軍人だと内心感心していた。やはり人並み以上に武芸の訓練を積んだだけの人間とは違う。

 

「ん〜〜・・・・・まあな。現れた経緯はちょっと話が飛躍し過ぎると言う、か信じ難いと言うか・・・・兎に角、上手い説明は出来ないが。イエスかノーで答えるならイエス。その通りだ。俺はもう一人の大道克己と言う人格を持っている。たまぁに前面に出て来るんだよ。特に戦闘の時とか、本人の気が赴く時とかにね。」

 

克己は無理矢理一夏の意識に現れて割り込んで来た。

 

「その通り。俺の名は大道克己。元死人、元傭兵、元テロリスト、そして元人間だ。お前達の訓練は中々面白かったぞ。全員が俺に掛かって来る時なんか最高だった。」

 

腹を抱えて豪快に笑う克己を見て、セシリアは目を白黒させていた。多重人格者がこんな身近な所に居るとは俄には信じられないのだ。

 

「ほ、本当に変わってますわ・・・・・」

 

一夏は克己を無理矢理引っ込めると話を続けた。

 

「まあ、とりあえずそう言う事。」

 

 

 

 

 

「うんうん、良いデータが取れてる。更識さん、頑張ってるわね。しばらく会わない内に何かあった?もしかして彼氏とか出来たの?」

 

打鉄弐式の待機状態であるクリスタルが嵌った指輪に繋がれたコードからデータを読み取る女性の名は、篝火ヒカルノ。解析されるデータを映し出す立体スクリーンに目を向けている彼女は、科学者と呼ぶには程遠い風体をしていた。ISスーツの上に白衣を羽織り、額にはダイビングで使うシュノーケルが押し上げられて、足にはビーチサンダルと言う奇天烈ファッションなのだから無理も無いだろう。唯一彼女が科学者であり、倉持技研第二研究所の最高責任者である事を識別可能とさせているのは白衣に着いている写真付きのIDカードだ。

 

「そうです。」

 

「やぁだ、うっそぉ!誰?誰?教えて、教えなさい!そしてモテる秘訣も喋りなさい!」

 

詰め寄ったその直後、けたたましいアラームが研究所内の全棟に響いた。何事かと篝火は

 

「ちょ、ええっ!?何よこれ!?システムが勝手に緊急ロックダウン発動しちゃってるじゃない!誰よ、こんな事したのは!」

 

メインフレームのキーボードを引っ切り無しに叩き続けた。他の研究員も協力してロックダウンの発動を阻止しようとしたが、止まらない。

 

『さて、これでもう出られないな。ついでに通信端末と点検中のISの方も起動出来ない様にロックしておくとしよう。』

 

サイバー・ドーパントは腕のキーボードを叩き続けて Lock Down Completeの文字を見ると、左腕に挿入されているKのイニシャルが印刷されたガイアメモリを引き抜いた。

 

『マドカ、君の今回の任務は陽動だ。好きに暴れるが良い。私がここの情報全てを脳内(データベース)に書き込むまでの時間を稼いでもらいたい。直接的な戦闘には不向きなのでこれで失礼するよ。』

 

「寧ろ邪魔になる。巻き添えを食らう前に下がる事だ。」

 

『Nazca!』

 

マドカはMナスカ・ドーパントに変身したが、サイバー・ドーパントの手に握られているマッチ箱程度のサイズしか無いアンテナが伸びたスイッチを見せた。

 

『おや?そんな口を利いて良いのかな?念の為に、君の体内にある監視用のナノマシンのキルスイッチをスコールから預かっているんだ。文字通り君の命は私の掌の中にある。気分一つで君を死体に変えられる事を忘れないでもらいたい。まあ、当分使うつもりは無いがね。では、成功を祈っているよ。』

 

『フン・・・・』

 

『ああ、そうそう。織斑一夏を呼び寄せるならば、水色の髪の毛の少女を探して痛めつける事だ。直ぐに飛んで来るよ。』

 

サイバー・ドーパントは再び電脳世界にダイブして姿を消した。Mナスカは右手に剣を持ち、左手から放つ破壊光弾で研究所の破壊を始める。屋根の一部が崩れ始め、研究員や整備工、更には代表候補生が落ちて来る瓦礫に埋もれて死亡したり身動きを取れなくなって行く。

 

『ゴミが。』

 

逃げ惑う人々の何人かの腹を貫き、喉笛を抉り、その熱い返り血を体に浴びるMナスカは只静かに闊歩した。

 

「止まって!」

 

「これ以上好き勝手にはさせない!」

 

既に点検を終えた機体を装着した代表候補生達は必死に応戦したが、いずれも赤子の手を捻るかの様に呆気無く一蹴された。そして倒れた彼女達の中からプロフェッサーに言われた通り水色の髪の毛を持った代表候補生を探し当てると平手で殴り付けて起こす。

 

「いち、か・・・・・来、ちゃ・・・・だ・・・・ぇ」

 

『お前に恨みは無いが、()をおびき寄せて殺す為の餌になってもらう。』

 

 

 

 

 

 

 

「簪ちゃん、遅いわね。」

 

「まあ、少し遅れるからってそこまで目くじら立てる事は無いと思うぞ?」

 

一夏のベッドの上でゴロゴロしている楯無は三度、置き時計に目をやって訝った。

 

「だって簪ちゃん、真面目だもん。遅れるなら遅れるって電話かメールぐらいはくれる筈だし、私が電話して出なくても比較的直ぐにかけ直してくれるし。」

 

実の姉がそう言うのならやはり何かがあったのだろうか。そう思い、一夏は簪に電話をかけた。だが程無くしてから電波が届かない場所にいるか電源が入っていない為掛からないと言う例の録音メッセージが流れるだけだった。二、三度電話をかけてもやはりそれは変わらない。

 

「圏外だ。刀奈、機体点検とデータ譲渡の時は倉持技研が正門まで迎えに来て、帰りも車で送ってくれるって簪言ってたよな?」

 

「うん。」

 

「なのになぁ〜んで圏外になる?寄り道でもしてるのかな?」

 

「何かあったのかしら・・・・・?」

 

「どうする?」

 

だがその矢先、ワイバーフォンが鳴った。画面には非通知とある。不審に思いながらも通話ボタンを押して携帯を耳に当てた。

 

『こんにちわ、織斑一夏君。元気かな?』

 

落ち着き払った聞き慣れない男の声を聞いて一夏の警戒心は更に高まった。キャプチャーフライを使って会話を録音し始める。

 

「・・・・何モンだ?どこでこの番号を知った?」

 

『私は、そうだね。プロフェッサーと呼んでくれ。それと君の番号は教えてもらったのさ、君の知り合いに。さて、突然だがここで問題。何故、君の恋人との連絡が途絶しているのでしょう?』

ワイバーフォンを握る一夏の手に更に力が籠った。本体がミシミシと嫌な音を立てて軋み始める。

 

「てめえ、もし簪に何かしやがったらぶっ殺すぞ。」

 

『ほう、彼女の名は簪と言うのか。変わった名前だが覚え易い。断っておくが、私は彼女に何もしていないよ。これからどうなるかは、君次第だがね。ちなみに、私がやったのはあらゆる通信手段の封殺、ISの起動ロック、そして倉持技術第二研究所の完全封鎖だけだ。』

 

「ドーパントの能力か。だったら俺の専売特許だな。」

 

『そうだったね。君も仮面ライダーの一人だ。』

 

「で?要求は何だ?俺の首か?」

 

『察しが良くて助かるよ。その通り。君一人の命と引き換えに研究所に閉じ込められている代表候補生及び研究所の従業員の生き残りを引き渡す。当然君のISも持って来てもらいたい。篠ノ之束謹製となれば、どんなデータがあるか実に興味があるのでね。制限時間は一時間しかないから、急いでくれよ?マドカは気が長い方ではない。一分遅れるごとに、君の恋人につく傷の数と深みがどんどん増して行く。末路は失血死か、それとも痛みと失血によるショック死か。いずれにせよ、綺麗な死に方は出来ないよ。それと最後にもう一つ。この事が発覚するのは最早時間の問題だからあまり意味は無いかもしれないが、こちらに出向く時は誰にも気取られない様にしてくれ。もし誰かがついて来ていたら、君の恋人だけじゃなく閉じ込められている人質全員の命が危うくなる。』

 

「腐り切ってやがる・・・・!」

 

『勝てば良かろう、なのだよ。一時間だ。ではスタート。』

 

有無を言わせないプロフェッサーは制限時間だけを告げると通話が切った。ツーツーとスピーカーから音が鳴る。

 

「一夏君・・・・・簪ちゃんは・・・?」

 

「倉持技研で他の研究員や代表候補の皆と一緒に人質になってる。内部からの通信も外部からの干渉も出来ない。完全封鎖された。狙いはやっぱり俺と俺のISだったよ。一人で行かなきゃ、皆殺しにされる。」

 

楯無はあまりのショックに口を覆った。目は恐怖に見開かれ、呼吸も浅くなり始める。

 

「大丈夫だ。絶対に無事に連れ戻すから。ちー姉から貰ったメモリもまた増えたから、そう簡単には負けない。だからそんな顔しないでくれ。」

 

一夏はロストドライバーを腰に当てて部屋の窓を開けた。

 

『Dragonfly』

 

キャプチャーフライにギジメモリを挿入してガジェットモードに変形させた。

 

「翔太郎さん達にこの会話を聞かせてくれ。」

 

キャプチャーフライが飛び立つと、一夏も窓の縁に足をかけた。

 

「待って。」

 

楯無はスカートのポケットから水色のメモリを取り出した。二つの波が繋がって円を描き、丁度英文字のOに見える。

 

「オーシャンメモリ・・・・・どこからそんなもん・・・・あ、ちー姉にシャッフルメモリ貰ったな?」

 

「ガイアメモリやドーパントの専門的な事は殆ど知らないけど、兎に角持ってたら何かの役に立つんじゃないかと思って。貰ってくれる?」

 

一夏は頷いて差し出されたメモリを手に取った。メモリに残った彼女の手の温もりを感じて、腹の底から更に力が湧き出るのを感じる。

 

「じゃあ、行って来る。」

 

「いってらっしゃい。」

 

今度こそ縁から飛び降りた一夏はエターナルに変身し、バードメモリの能力でエターナルローブを翼に変形させ、アクセルメモリの加速能力で地平線の彼方へと姿を消した。

 

(おい、織斑。今回は俺にやらさせてもらうぞ。いい加減暴れないと俺の腕が鈍っちまう)

 

『ああ。頼む。あいつら・・・・百回殺してもまだ足りない。あの電話の男も、・・・・殺す。』

だが飛んでいる間、一夏は自分の両腕の蒼いフレアマークが端々から僅かにだが黒く染まっている事にまだ気付いていなかった。




ここから段々とファントムタスクとの本格的な戦闘が始まるので、結構IS学園組が追い詰められると思います。それでは皆さん、また次話でお会いしましょう。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。