IS x W Rebirth of the White Demon 作:i-pod男
そして遂に遂に、UAが十万を突破しました!!!(ドンドンパフーパフー)そして五十話突破!読者の皆様には感謝の二文字しかありません。誠にありがとうございます。
緊張の一瞬だった。法廷の被告側の席では、ビシッとしたピンストライプのスーツに身を包んだ壮年の男がオールバックに髪を撫で付けて勝ち誇った薄ら笑いを浮かべていた。
「三門先生、どうですか?」
「決まっているだろう?私はあの天次郎の顧問だよ?どれだけの企業や団体を潰して来たと思っているんだね?」
うっすらと生えた顎髭を撫でながら三門は裁判官の方を見た。高台の席で、黒い法服を着た女性の裁判官が主文を記した書類を取り出し、悔しそうに読み上げている。
「判決:被告人は無罪。原告の請求を棄却する。」
傍聴席に座っていた僅かばかりの男性達は大声を張り上げて飛び上がり、歓声を上げた。女尊男卑の風潮にようやく一矢報いる事が出来た、世の男達に取っては大きな一歩だ。正しく歴史的な瞬間である。
「勝っ、た・・・・?」
閉廷され、報道陣の傍聴人達は我先にと出入り口を目指した。
「いやいや、年甲斐も無くつい熱が入った論争に発展してしまったがやはり弁護士と言うのは楽しいな。こんな老いぼれでもまだ
「ありがとうございます。三門先生。」
裁判所から出た直後、翔太郎は拳を頭上に突き上げて歓声を上げた。
「っしゃああああーーーー!!!おい透、やったぜ。」
翔太郎は興奮のあまり透の肩を掴んで思い切り揺さぶっていた。
「うん、これで映画作りに心置き無く専念出来る。しかし、法廷と言うのはお世辞にも居心地が良いと呼べる様な所ではないね。殆どが女性でごった返していたから傍聴券が手に入ったのは幸いだったよ。」
「ありがとうございます!一夏君も、なんてお礼を言えば良いか・・・・」
透は目に歓喜の涙を浮かべながら何度も何度も感謝の言葉を口にした。
「残りのシーンを撮影し終わったら、監督が作った中でも史上最高の映画になる様に頑張って下さい!翔太郎さん、フィリップさん、協力ありがとうございます。」
「良いって事よ。」
「弟子に手を貸す事に何ら不自然な事は無い。いつでも僕達を頼りたまえ。」
笑いながら二人は謙遜した。
「監督、お礼なら三門先生に言って下さい。自分達は証人台に立って喋っただけです。監督の映画作りに対する姿勢と情熱が物を一端ですよ。証言の台本や証拠、その他の書類も全部彼がお膳立てしたんですよ。」
透は何度も頭を下げながら残りのシーンの撮影の日取りは後日追って知らせると言い残して裁判所を去った。
「勝訴したのは良いが、一夏、あんな腕のいい弁護士の費用と報酬、一体どうするんだ?悪いが事務所にはそんな余裕無いぞ?」
「あ、問題無いです。三門先生は
「どうやって?」
「監督に暴力を振るってたあの四人、あれのリ—ダーの親が女性利権団体に所属しているらしいんです。傍聴席にいたんで一応見張ってましたけど。」
「それなら心配無用だ。彼女達は人前で彼をどうこう出来る様な度胸は無い。だが、懸念は尤もだ。お礼参りをされたら本末転倒だし、念の為に監視の目は光らせてある。ここでは何だし歩きながら話そう。」
裁判所から足早に去りながらフィリップは口早に喋り始めた。
「彼が行く前に、袖の内側にこれを仕込んでおいた。」
取り出したのは、ボタンの様に丸く小さな物だった。中心の赤いランプが点滅している。これは腕時計型のメモリガジェット、スパイダーショックで追跡可能な発信器なのである。
「スパイダーショックの発信器?」
「それだけじゃない。篠ノ之束のお陰でこれは盗聴器にもなる。キャプチャーフライや、バットショットよりも小さいからバレる確率はこれにより大幅に下がる。彼にも防犯ブザーを持ち歩く様に言っておいた。何も無いよりはマシだろう。」
彼らに任せれば大丈夫だ。自分よりも経験を積んでいるし遥かに場数を踏んでいる。一夏はそう思って頷き、学園に足を向けた。授業が始まる前の早朝で一審、二審と続いて行ったので、急いで戻らなければ担任である姉の鉄拳制裁が飛んで来るのだ。勿体無いが、仕方なしにタクシーを使ってIS学園のモノレール駅へと急いだ。
『織斑。おい織斑!』
暫く聞かなかった克己の声が一夏の頭の中に響いた。
(大道・・・?)
『いい加減お前の頭の中に閉じ篭っているのに飽きて来てな。兎に角、俺達の列から数えて二つ目の、左後ろにある車だ。サイドミラーから見えるだろう?』
一夏はさりげなく車のサイドミラーを見た。発車してから暫く経つが、確かに今の所あの車だけがしっかりとタクシーの後を着いて来ている。
(ああ。見えるけど、それがどうかしたのか?)
『さっきからずっと俺達の後を尾行して来ている。これでもうかれこれ十分以上だ。白昼堂々何かを仕掛けて来るとは、余程あの判決が堪えたらしい。遅かれ早かれボロが出るのは分かっていたが、ここまで早いとはお見それした。』
(焦燥が視野を狭めた訳か。けど何をするよ?親の権力笠に着て粋がってるだけだろ?別にISの適性があるわけじゃないし)
『甘いな。お前は人間が考え無しにどれだけ深く泥沼に足を踏み入れるか、どれだけ零落れる事が出来るかも、全く分かっちゃいない。人は皆、悪魔なのさ。一人で生まれて生きて、最後は一人で死ぬ。案外ガイアメモリを持っていたりするかもしれないぞ?』
(んな馬鹿な・・・・)
だが突如小さな爆発が起こってタイヤがパンクした。タクシーはタイヤのスクリ—チ音と共に急停止したが間に合わず、車体はガードレールは凄まじい勢いで軋った。電柱に激突した事でようやく止まり、一夏は乱暴に前方に放り出されて前方の席と後部座席を隔てる防犯ガラスに額を強かに打ち付けた。ガラスには罅が入り、破片が額に突き刺さってしまう。目鼻の筋を通って血が滴り落ちて行く。
『あのクソアマ共が。ぶっ殺す。』
(いつつつ・・・ちょ、おい待て!やめろ!)
だが克己は一夏が動けなくなり、視界もまだハッキリしていない隙を突いて強引に主人格として入れ替わった。額に突き刺さったガラスの破片を引き抜き、タクシーから降りて目にしたのは。三体のドーパントだった。
『いい加減にして欲しいわ、何時も何時も何時も何時も邪魔ばっかりして!あんたみたいな火種がいるから男がつけあがるのよ!』
胸のベルトに手榴弾などの爆発物を下げたボム・ドーパントが先程の爆発を起こした張本人らしい。
『ISに乗れるからって調子乗らないでくれるかしら?』
『ほんっと、迷惑千万。男死すべし!』
『ボム、バタフライに、ビーか。どれも問題無く倒した事があるドーパントばかりだ。それはそうと織斑、俺の言った通りだったろ?コイツらは悪魔だ。事故に見せかけて俺達を消そうとしたらしい。まあ失敗に終わったが、ドーパントなら幾らでも偽装は可能だろう。その気になれば引き千切って下水に投げ捨てれば済む。』
(大道、この場は逃げた方が良い)
『何だと?もう少しマシな冗談を言え。』
(冗談じゃない。女性利権団体に通じる奴らに俺達が仮面ライダーだと言う事がバレたら指名手配されるぞ?)
『安心しろ、ウェザーの落雷攻撃を頭に叩き込めばその程度はどうにかなるだろう。それに、たとえそれが失敗したとしても俺は傭兵で元テロリストだ。姿を消すぐらい造作も無い。』
克己は屈託の無い笑みを浮かべながら再び起こった足元爆発をピボットで避けてロストドライバーを構える。
「死神のパーティータイムの始まりだ。」
『Luna Trigger!』
くねくねと湾曲する軌跡を描く黄金の銃弾がバタフライ・ドーパントとビー・ドーパントを撃ち落とした。マシン・ハードボイルダーに打ち跨った仮面ライダーW LTが現れる。
「おい!大丈夫か!?」
「お前達か。何故ここが分かった?」
『ここを出る前に、大道克己、君のポケットの中に発信器を仕込んでおいたのさ。これは君の居場所を探知すると童子に脈拍や血圧などのバイタルを計測出来る。それで駆けつけたと言う訳さ。』
「チッ・・・・古典的な手に引っ掛かるとはな。」
克己はポケットから発信器を掘り出してWに投げ渡した。
「兎も角、お前はさっさとこの場から離れろ。変身されちゃ面倒だ。」
『こいつらぁ・・・・!』
ボム・ドーパントが彼女達を他所に会話を続けるライダー達に業を煮やし、再び爆弾を振り被って投げようとした。
『Jet!』
だが、手から爆弾が離れた僅か数秒後に赤い銃弾が放物線を描くそれに直撃した。
「大丈夫か?」
「アクセル・・・・・!」
「左、そこにいるドーパントを頼む。空中にいる奴らは俺に任せろ。あの程度は直ぐに、」
『Accel Upgrade! Booster!』
「片付ける。」
アクセルメモリの先端に銀色の機械を装着して再びアクセルドライバーに差し込み、右のスロットルを捻った。すると、赤かったアクセルのボディーが黄色になり、体中が
「ああ言われて引き下がる様な俺じゃない。」
『大道、もし君の宿主である織斑一夏がガイアメモリを所持している事が世間にバレたら君が閉じ込められているその肉体は監獄に入れられる。女性が優遇される施行を差し引いても終身刑は確実だ。それでも良いのかい?』
盛大な舌打ちと共に眉根を寄せた克己は、この上無く不愉快そうな顔をWに向けた。
「・・・・・分かった。だが、条件が一つある。」
「お前なあ、そんな事を言える立場じゃ」
『翔太郎、聞くだけ聞こう。何だい?」
「あいつに・・・・・ミーナに会わせろ。死んでいるなら墓標でも構わん。」
交換条件を言い残して克己は全速力でモノレールの駅へと急いだ。
『あ、待て!』
『Steam!』
ビー・ドーパントは逃走する克己を追おうとしたが、アクセルブースターがエンジンブレードが切っ先から放った高熱の蒸気に行く手と視界を阻まれてしまう。
『こんのぉ!』
バタフライ・ドーパントはその巨大な羽で蒸気を吹き飛ばした。だが辺りを見回してもアクセルブースターの姿は見えない。
「ガイアメモリはお前達の様な子供が持つ様な物じゃない。変身を解除すればよし、でなければ、痛い目に遭うぞ。」
バタフライ・ドーパントはアクセルブースターの言葉を鼻で一蹴し、再び羽を羽搏かせた。すると、日差しを受けて煌めく鱗粉が羽から噴き出してアクセルブースターに触れると小さな爆発を幾つも起こす。体勢を崩した所でビー・ドーパントが怯んだ隙に手に持った槍で彼を突き刺そうとしたが、エンジンブレードの腹で切っ先が受け止められてしまう。
『Electric!』
エンジンブレードの凄まじい電流は槍を伝ってビー・ドーパントの動きを著しく鈍らせ、地上に落ちて行く。
「絶望がお前の、ゴールだ。」
エンジンブレードのグリップについたトリガーを引いた。
『Engine Maximum Drive!』
高速で擦れ違い様にビー・ドーパントを切り裂き、着地と同時に背後で爆発が起こった。
「まず一人。」
一方Wはトリガーメモリが齎す無類の銃撃能力を駆使し、飛んで来る爆弾をまるでクレー射撃の的の様に撃ち落としていた。
「はぁ〜・・・・芸が無い攻撃だな全く。これならまだジーンの方が歯応えがあったぜ?
『不謹慎だよ?翔太郎、ボム・ドーパントの能力は爆発物の精製だ。あれはレベルがまだ低級だが数でそれを補ってる。長引くと厄介だ、時間をかけずに一気に行こう。』
「良いぜ。」
ドライバーのレフトスロットに差してあるメモリを引き抜いてトリガーマグナムに差し込み、バレルユニットを操作した。
『Trigger Maximum Drive!』
「『トリガー・フルバースト!!』」
四方八方に曲がりくねる黄金と青野銃弾は破れかぶれに投げられるボム・ドーパントの爆弾を破壊し尽くしても止まらず、遂に仕留めた。当たらなかった物はフィリップが軌道を修正し、バタフライ・ドーパントも巻き添えを食らって撃墜した。
「仕上げだ。」
『Trial!』
アクセルメモリをトライアルメモリと入れ替え、黄色のボディーがスリムな青と銀色に変色した。メモリをストップウォッチの形に戻し、スタートボタンを押して空に投げ上げた。右手に持ったエンジンブレードが何度も何度も振り下ろされ、青いT字型の軌跡を残して行く。落下するトライアルメモリを掴み、秒読みを止める。
『Trial Maximum Drive!』
「9.2秒、それがお前の絶望までのタイムだ。」
本日三つ目の爆発で、ようやく事態は収束した。
「何とかなったな。しかし、まさか白昼堂々一夏を狙うとは驚きだぜ。」
「少し考えれば分かる事だ。無罪放免となった被告を裁判の直後に同行しようとすれば、真っ先に女性利権団体が疑われる。更に血縁者が団体に属しているとなれば、知らぬ存ぜぬの常套句は使えないからな。だがまあ、織斑を狙うとは随分と血迷った真似をしてくれた。頭に血が上った所為でまともな判断が出来なかったのだろう。もうすぐ警察がここに来る、お前達は早く行け。逮捕は俺の仕事だ。」
『何時もすまないね、照井竜。』
Wは変身を解除した竜にお礼を述べるとハードボイルダーに飛び乗って現場から去った。
「さてと。大学生であるお前らを少年法はもう守ってはくれない。ガイアメモリ取締法違反の現行犯で逮捕する。」
竜は手錠の輪を指に引っ掛けて回しながら手帳を取り出してそう呟いた。