IS x W Rebirth of the White Demon   作:i-pod男

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更新が遅くなりましてすいません。そしてまたしても五千文字に届きませんでした。

今回は映画を文章で表すと言う事になりますので、台本形式で書きました。読み難いと思うかもしれませんが、そこら辺は長い目で見て頂きたいです。


番外編:真っ赤なR/試作版の試写会

Rose for Righteousness キャスト

 

織斑一夏: 赤園涼(あかぞのりょう)/DR

照井亜樹子:赤園結子

照井竜:赤園竜次

更識簪:柏木セラ

五反田弾:相沢大地

五反田蘭:相沢由美

園崎来人 (フィリップ):樹 誠

左翔太郎:渡井

サンタちゃん:マフィアのボス

 

夜の闇の中、ガラの悪そうな男女の一団が波止場にあるコンテナの一つから幾つものダンボール箱を取り出し、中身を確認してはトラックの中へと押し込んで行く。作業を行う男達に混じり、自動小銃などの火器を携えて周りを警戒している者達もいる。

 

だが、特に警備が厳重になっていたのは一台の銀色のレクサスだった。後部座席には真っ赤なスーツに身を包んだスキンヘッドの男が一人で酒盛りをしていた。

 

サンタちゃん:いや〜。大漁、大漁、今日もまた儲かったな。

 

だが次の瞬間、多数の怒号と悲鳴、そして矢継ぎ早に続く銃声で、一気に酔いが吹き飛んだ。手に持っていたスコッチのグラスも中身が零れ、スラックスと革靴に染みを作った。恐る恐る車窓を覗くと、電柱の灯りに照らされて何者かが運搬を行っていた男達を叩きのめしている光景が目に入った。伸縮式の警棒で向かって来る彼らを殴り、凶器を手にしようとしたり使おうとする所を手首への一撃や投げナイフで妨害して行く。

 

サンタちゃん:おいおいおい、何なんだあいつは!?こ、殺せ、殺せ!!

 

スキンヘッドの男は戦慄した。どこから現れたか逆光の所為で見えなかったが、男は運転席に座っている護衛にエンジンを点火する様にせがんだ。止まったエンジンが息を吹き返し、灯りが取っ組み合う男達の姿を照らす。

 

DR:Nevermore。お前達の不条理は、ここで終わらせる。

 

ヘッドライトの光が捉えたのはペイントが禿げかかった赤と黒のマスクを被った人物だ。右腰のサイレンサー付きの拳銃を引き抜き、シングルハンドで向かって来る残りのゴロツキ達を弾が尽きるまで引き金を引き続けた。弾き出された薬莢が小気味の良い金属音を立てながら冷たい地面で跳ねた。

 

サンタちゃん:こ、ここここの野郎!ひ、ひ人のビジネスの邪魔ぁしやがって!どこの組のモンだ?!

 

男は懐から銃を引き抜いて構えた。だが両手で保持しても尚震えが続く。

 

DR:俺はダーク・ローズ、通称DR。『不条理』を嫌う男だ。

 

ダークローズと名乗った男の声は機械で加工されたかの様に不自然なエコーが掛かった。

 

サンタちゃん:て、てめえっ!!

 

男はダーク・ローズに向かって発砲したが恐怖で震える手はたった数メートルの距離でもまともに狙いを定める事もままならなかった。左肩と右胸の二発以外は見当違いの方向へ飛んで行った。撃たれても全く歩みを止めないダーク・ローズに向かって空しくも弾切れになった銃の引き金を引き続ける。

 

DR:Nevermore。お前の生み出す『不条理』もこれで終わりだ。

 

一瞬で男の手から銃を奪い取り、銃床で後頭部を殴り付けて気絶させた。車窓にスプレー缶のペイントでDRの二文字を描き、最後にヨーク・アンド・ランカスターの薔薇の花束を気絶した男の胸の上に置いた。

 

(カット)

 

アジトらしき薄暗い倉庫の様な建物の中で、DRは仮面を外した。まず口元から下顎全体を覆う部分、次に頭部全体を覆うメット部分から頭を引き抜く。蒸れた頭を外気に晒すと、洗面所の蛇口の下に頭を突っ込んだ。更にライダージャケットと銃弾が埋まったボディーアーマーを痛みに呻きながら引っ剝がした。肩と脇には青黒い痣がくっきりと残っている。あばらと肩甲骨に少なくとも罅は入っているだろう。

 

棚の中から数種類の錠剤やカプセルを取り出すと、水と一緒に嚥下せずにボリボリとラムネでも食するかの様に噛み砕いて飲み込んだ。そして剥き出しのマットレスに身を投げ、冷却パッドを被弾した所に押し付け、鈍痛を感じながら微睡んだ。

 

DR(モノローグ):(ふじょうり)は降水や降雪と同じだ。富める者、貧しい者、老若男女問わず誰にでも降って来る。求めればどうにか出来る様な物じゃない。唯一違うのは、雨や雪はいずれは止まると言う事だ。それに反して、悪は永久に在り続ける。

 

(暗転後、藍越学園の教室内、休み時間)

 

弾:涼。おい涼!涼ってば!おいってば!

 

涼:ん?あ、ああごめん。何の話だっけ?

 

上の空だった涼の顔の前で友人の大地が再三再四手を振った。

 

大地:だーかーらー、次の文化祭が始まるまでもう一週間弱しか無いんだよ。誰と回りたいかって話だ。宛はあるのか?何なら俺が紹介してやっても良いぜ?

 

涼:冗談言うな。こじれた時、十中八九は不満の矛先が斡旋した奴に向けられるんだ。由美にこれ以上心配かけるな。あの時みたいに馬鹿な真似やってみろ、以前言ってたあのおっかない仮面を付けた野郎がお前をぶっ飛ばしに来るぞ。

 

弾:ああ。DR、だっけ?この所良く出るよなあ、本当に。でもこれ何の頭文字なんだ?ドクターのDR?

 

そう言いながら、鞄の中からスクラップブックを取り出して今日の朝刊の切り抜きを貼り付けたページを開いた。そこは、港で明らかに真っ当な職業についているとは思えない風体の男達が雁字搦めにされており、レクサスの車窓にアルファベットのDとRが描かれていた。涼はそれを見て一瞬だけ小さな笑みを浮かべる。

 

涼(モノローグ):事件当夜、俺は彼らの密輸作業の情報を仲間のお陰で得る事が出来た。どれだけ優れていても、たった一人で世界を変える事など出来はしない。

 

由美:Rは英語でRoseのRだと思うな。Dは・・・・何だろ?テレビとかじゃ法の番人気取りの目立ちたがり打の自己満足の塊だの言われてるけど、やっぱり良い人じゃん。馬鹿やってるお兄の事も助けてくれたしね。

 

大地の後ろで切り抜きの見出しを読みながら彼の肩を叩いたのは妹の由美だった。

 

涼:お、由美。

 

由美:赤園先輩、こんちわ。遊びに来ちゃいました。

 

てへっと言いつつ舌をぺろりと出しておどける由美を見て、涼もはにかんだ。

 

由美:で、先輩は誰と回るんですか?文化祭。

 

流石は兄妹と言うべきか、やはり同じ質問を聞かれた。やれやれと涼は頭に手をやる。誰と回るか。一人で回るのも別に悪くはないが、エスコートする相手がいた方が楽しい事は間違い無い。だが、担任からの告知があるまで涼の眼中には学園祭の事などまるで無かった。それ故、当然ながら回ろうと思っている人物もいない。

 

涼:由美(ブルータス)、お前もか。正直言うと、行こうかどうか迷ってる。前回と同様、行かない可能性が高い。

 

頬杖をつきながら窓の外を眺め、購買で買った物にぱくついた。その涼の言葉に、大地と由美は絶句した。文化祭は大地と涼に取っては卒業式を除いて今年では最後の大きな行事なのだ。

 

大地:おま、嘘だろお前!?今まで殆どの学校の行事フケやがって。今回は高校最後のイベントだぜ?本気で行かない気かよ!

 

涼:また夜のシフトでピンチヒッター頼まれるかもしれないから。今月ちょい厳しいんだよ。

 

二番煎じの逃げ口上だが、嘘は言っていない。

 

大地:そんなに金稼ぐのが大事かよ?

 

大地の言葉に由美は彼の頭をスクラップブックで叩いた。

 

大地:いって!?何すんだ由美!

 

由美:それはこっちの台詞でしょ?お兄こそ、 言葉に気を付けてよ。何様のつもり?先輩は諸々の事情でアパートで一人暮らしだって事は知ってるでしょ?先生もバイト、特別に許可してるんだからお兄はとやかく口出す権利は無いの。先輩、馬鹿な兄ですいません。

 

由美は大地の失言を謝罪したが、涼は笑って手を振り、片付けた。

 

涼:良いよ。大地も間違っちゃいない。学校全体でやる行事だってのに、俺一人が何もしないなんてフェアじゃないしな。俺みたいな変人も気にかけてくれるし。

 

由美:気にしないで下さいよ、それぐらい。友達なんですから、ね?

 

大地:そうだぜ?よし、まずは文化祭の相手探しだな。

 

由美:私、何人か知ってますよ?お話だけでも行きませんか?

 

涼:合コンか?!気遣いは嬉しいが、自分で探すよ。俺みたいな変わり者ぐらい一人はいるだろうし。

 

涼は礼を言いつつ立ち上がり、屋上に向かった。いつもの場所に枕が隠されており、休み時間の間は誰にも邪魔されずにゆっくりと空を眺めるのが涼の習慣だ。だが、既に先客がいた。それも、そう簡単に分かる所に隠していなかった筈の涼の枕を使って寝息を立てている先客だ。

 

セラ:くふぅ〜〜・・・・たい焼きぃ・・・

 

涼:何の夢を見てんだコイツは?しかも人の枕使いやがって。柏木。おい、柏木!っつ・・・!

 

涼の枕を使って眠りこけている女生徒、柏木セラの肩を掴んで何度か揺すったが、その時に肩に痛みが走り、思わずそこを抑えた。当然ながら痣と骨の罅はまだ回復していない為、動く度に鈍痛を感じるのだ。

 

セラ:はふぅ・・・ん・・・・?

 

涼:おい、寝るのは構わないが俺の枕を使うな。持参しろ、持参。ったく・・・

 

涼はセラが起き上がった所で枕を奪取した。彼女が付けている香水の残り香だろうか、ラベンダーの様な良い香りがする。邪念を振り払い、枕を元の隠し場所に置いた。

 

セラ:ん・・・おはよ・・・

 

涼:いやもう昼だよ。何時からここにいた?

 

セラ:昼休み始まってすぐだけど?

 

欠伸混じりに答えるセラは顔に掛かった髪の毛を振り払い、ズレた眼鏡を直して立ち上がった。それっきり会話が途絶えてしまい、二人の間に気まずい沈黙が訪れる。

 

セラ:学園祭、もうすぐだね。

 

涼:らしいな。

 

セラ:らしいなって、行かないの?

 

涼:ダチが誰か一緒に回る奴を誘うべきだって言ってんだがな。別に誰にも誘われてないし、俺自身、あんまり乗り気じゃない。第一、他にやる事がある。

 

セラ:忙しいんだね。

 

ああ、あるさ。俺の親を自殺に追い込んだクソッタレを探す事だよ。そう言いたかった。だがこの秘密は誰にも知られては行けない。誰にも。

 

思い出すだけでも気が狂いそうだった。無愛想だが、厳しさの中でも優しさを垣間見せた父親。何時も明るく、滅多に笑わない父を笑顔にするコミカルだが芯の通った母親。二人三脚で生きて来た二人は涼を授かり、順風満帆な人生になる筈だった。だがその歯車はどこかで狂ってしまった。二人はもうこの世にはいない。

 

(照井夫妻がフラッシュバックシーンで出演)

 

死者は戻らないのだ。 もう二度と(Nevermore)

 

涼:ああ、バイトやら食材の買い出し、料理、掃除、そして筋トレ。列挙して行けばキリが無い。そう言う柏木は行くのか?どうせ誘いの一つや二つぐらいは来てんだろ?

 

セラ:行かない。

 

涼:は?何で?

 

セラ:・・・・

 

セラは顔を背けた。

 

涼:悪い。言いたくないなら別に言わなくて良い。誰だって秘密の一つや二つはあるからな。変な事を聞いてしまったんなら謝る。ごめん。

 

小さく謝ると足早に屋上から去った。そんな時、ポケットの携帯が小刻みに震える。電話をかけて来たのは公衆電話だった。涼の目付きが変わり、誰もいないのを確認してから出た。

 

涼:樹さん?

 

誠:涼、昨日はお手柄だったね。大丈夫かい?

 

涼:はい。何かあったんすか?

 

誠:新しい兵器が出回ろうとしている。僕も聞くのは初めてだから、眉唾物だけど。名前は『ドミナンス』。英語で、

 

涼:支配力。まさか、催眠術とか暗示をかける様な物じゃないですよね?

 

誠:幸いそれは違う。強化外筋骨格システム、言うなればパワードスーツだ。ライフル程度じゃ傷一つ付かないし、空も飛べるらしい。

 

涼:そんな物一体どうやって作ったんすか?空を飛ばれたら、俺も対処のしようがないです。

 

誠:さあね。そこまでの事は僕にも分からない。だが、対処出来ない訳じゃない。所詮は人が作った兵器だし、弱点ぐらい探せば見つかる。それにあんな危なっかしい物が誰にでも扱える程汎用性が高いとも思えないしね。そうそう、君の家に渡井からの届け物があるよ。その内きっと役に立つ筈だ。

 

涼:ありがとうございます。じゃ、俺はこれで。

 

休み時間終了のベルと共に、電話が切れた。

 

涼:ドミナンス・・・・・『不条理』だ。




DRのマスクは下にある画像のマスクを下顎を覆う部分とヘルメット部分に二分割出来る様に改造した物です。

http://www.airsoftpaintballmask.com/wp-content/uploads/2012/06/Army-of-Two-Airsoft-Paintball-BB-Gun-Salem-Helmet-Goggle-Mask-Soft-Air-Maske-Maskque-red-cross-MA98-we.jpg

次回からまた本編に突入します。そろそろ映画の件を終息させねば・・・・

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