IS x W Rebirth of the White Demon 作:i-pod男
そして、今の所登場しなかった原作キャラを出します。
「やっぱり勝ったのは簪か・・・・」
「えへへ〜〜〜。」
「簪、演劇とかやった事あるのか?何かイマイチ想像出来ないんだが。」
「それぐらいあるよ。・・・・中学の時に二回だけ・・・脇役だけど・・・・」
敢えてそこら辺は言及するべきではないと判断した一夏は黙って頷いた。
「あ、来た来た。お〜い!」
一夏が呼び出されたのは、とある大学のキャンパスだった。
「ども、亜樹子さん。あ、隣にいるのが更識簪さん。俺の彼女。ヒロイン役を志願しました。もう一人やりたい人いたんですけど、ちょいと都合が。」
「へ〜〜、可愛いぃ〜〜〜〜!!!」
そこには亜樹子だけでなく、鳴海探偵事務所のメンバー、竜に真倉、更には風都イレギュラーズのサンタ、ウォッチャマン、そしてクイーンとエリザベスが集合していた。
「あ〜〜!一夏君だぁ〜〜〜!!」
「久し振り〜!」
「クイーンさん、エリザベスさん、お久し振りっす。ウォッチャマンさんとサンタちゃんも。」
「ま〜、今回は報酬が報酬だから、ボキも手伝う気になったんだけどねぇ〜〜。」
「メリィ〜〜クリスマァ〜〜ス!俺もだよん!」
「え?報酬?何の事?」
亜樹子が目を丸くした。
「実は、集まってもらった皆さんは、俺が買収したんですよ。」
「えぇえええええええええ〜〜〜〜!!!ど、どうやって?!て言うか私の呼び掛けに応じたんじゃなかったの!?」
「亜樹子さん、竜さんは兎も角、情報屋が見返り無しに何かをしてくれる事は早々ありませんよ?えー、翔太郎さんには『劇場版:風の左平次〜凶状持ちの涙〜』初回限定版のDVD、竜さんには着ぐるみパジャマ姿の亜樹子さんが寝ている時の写真、クイーンさんとエリザベスさんにはフーティックアイドルで歌った曲を焼いたCD、ウォッチャマンさんにはブログのハッキングやクラックを防ぐ為のワクチンプログラムと新しいBMX、サンタさんには新しい客引きの仕事の仲介などなど。当然全部前払いです。結構手間も値段も高く付いた出費なんで依頼料は勿論、出演料は出世払いでしっかり頂きます。」
一夏の抜け目の無さと指先を擦り合わせながら見せるしたり顔を見せられ、亜樹子は開いた口が塞がらなかった。
「お、恐るべし
「いやぁ〜〜、あのDVDを見せられたら嫌とは言えねえからなぁ〜〜。」
「ボキもね、あのバイスィクゥは実に魅力的だったんだな〜。」
「一夏君の歌声、最高!」
「最高!」
「・・・・・誘惑に負けてしまった自分が許せん・・・・!!だが所長のあの姿は・・・・寝顔はぁ・・・・!!」
「あれ?じゃあマッキーには?」
「くぉらぁ!真倉刑事と呼べぇ〜〜。」
不名誉なゆるキャラっぽい渾名をつけられた真倉は亜樹子に詰め寄って訂正を要求した。
「真倉刑事には何を上げれば良いか分からないんで何も上げませんでした。竜さんに業務命令だって言わせれば付いてきますし。」
「やっとマッキーて呼ばない人がいたーーー!ってひでえ!?」
持ち上げて落とされた真倉は踞って拗ねてしまう。
「さてと、亜樹子プロデューサー。えーっと、監督は彼、で良いんですよね?」
「うんうん、分かっている様でよろしい。彼が監督の川相透君。大学で映画の勉強してるの。」
「こ、こんにちわ。よろしくお願いします!」
挨拶をしたのは格子柄のシャツとカーキ、そしてベレー帽を被って、抑揚の無いハイテンションな早口で挨拶をする透の声は聞き取り難かったが、聴力が強化された一夏に取って何ら支障は無い。
「こちらこそ、監督。」
一夏は彼の手をしっかり握った。
「昔は人見知りが激しくて、ちっさい文字の筆談でしかコミュニケーション出来なかったのに。かなり進歩したのよ。」
亜樹子は豪快に笑いながらバシバシと透の背中を叩いた。
「痛いですプロデューサー。」
「俺は大丈夫だったんですけど、学園の友達は色々立て込んでるんで来れませんでした。あ、でも、もうそろそろ来るかな・・・・」
「お〜い、一夏!」
「一夏さ〜ん!!」
スケートボードとスクーターに乗って赤毛の兄妹がやって来た。
「よし、来たな、弾、蘭。ありがと。この二人は学園には所属してないんで協力してもらえます。
「簡単に言うとアメコミ風のアクション映画で自殺した両親の敵を捜す為にクライム・ファイターとなった青年が真犯人を突き止めようとしながらも悪と闘うヒーローになる、と言う物です!」
この調子でずっと喋って喉が渇いた透は魔法瓶のアイスコーヒーをぐいっと呷った。
「ほお〜、アメコミアクションか。あ、ちなみに自分のベスト4はバットマン、アイアンマン、パニッシャー、デアデビルとかの普通の人間タイプのヒーローです。」
「本当に!?実は僕もそうなんだ!今回は徹底的に
「どこまで進んでるか分からなかったんで、俺も俺で衣装やら小道具一揃え持ってきました。本格的は大歓迎です。」
ダッフルバッグを開き、中から衣服や靴、スタント用のゴム製の小道具は勿論、刃引きされた真剣や限り無く実銃に酷似したガス式のモデルガンも取り出した。
「ありがとう最高の映画が作れるよ!」
「あー、じゃあその主人公が身につけるコスチューム、俺が考案して良いスか?」
「勿論お願いするよ、僕はそう言うセンスは微妙だし!」
「はいはーい、じゃあ配役を今から決めるから、オーディションスタート!!」
配役は皆の性格とかなり合致したのと透が今まで経験した失敗から学んで磨きがかかったお陰で短時間で決まった。必要となる細々とした物も一夏が小道具の大半を持って来たお陰で費用も最小限に抑える事が出来た上、衣装合わせも滞り無く終わる。
「出来ました。名付けて、ダークローズ。通称DR。」
下はダークブルーの色褪せたジーンズ、上はミリタリーショップで購入したボディーアーマーと薔薇のドリームキャッチャーの刺繍が入ったライダージャケット、薄手の手袋、そして赤いペイントを一部だけ剥がしたマスクと鼻と口元を覆う脱着が可能なクラッシャーを被って、一夏は仁王立ちで現れた。
「「「「「おお〜〜〜〜!!」」」」
右腰、右腿のホルスターにはそれぞれ M1911A1、そして357マグナム コルト・パイソン、左腿には六本の投げナイフ、左腰には防犯グッズの伸縮式警棒を二本、そして背中は刀が収められていた。
「私聞いてない!!!何これ怖いけどカッコよすぎるんですけどぉ〜〜〜!?」
「燃えて来たはいアクショォーーーーン!!」
協力している皆もかなり乗り気で楽しみ始め、一日がかりで撮影を続けた事が功を奏してかなりのシーンを終わらせる事が出来た。加えて全員が全員はまり役だったので、シーンはどれも3テイク以内でカットのコールが入る。
「さてと、残るは夜間のシーン、ヒロイン役に正体をバラすシーンと、ちょっとしたラブシーンだね。」
「はい皆さんお疲れ様!!オールアップの皆には
皆もそれぞれの予定があるので、撤収した。
「ちょっと疲れた・・・・」
簪はベンチでぐったりしている。予想以上にハードだったのが答えたのだろう。
「一日目にしてはかなり出来たな。けど・・・・」
一夏は撮影中もずっと監督の川相透が気になっていた。亜樹子の話では、昔はかなり人見知りで筆談でしかコミュニケーションが成立しなかったと言っていた。だが、今は気持ち悪いぐらいに性格が逆だった。何かがきっかけで百八十度性格が変わると言う事はあるが、そのきっかけがそれこそトラウマを植え付けられるぐらいの凄まじいインパクトが無ければあり得ない。
「けど、何?」
「いや杞憂だと良いんだが・・・・念の為に調べてもらうか。」
「既に検索済みだよ。」
「うわっ!?」
一夏が凭れ掛かっていた自動販売機の後ろからフィリップがひょいと頭を出して来た。手にはカルピスのボトルがある。
「ぅおぉおおうぅ?!っは〜、びっくりした。脅かさないで下さいよフィリップさん。」
「普段は気配に敏感な君が驚く?あり得ないね。それは兎も角、実は浜から戻った二日後に虹村あいが事務所に駆け込んで来た。川相透は映画を作る意気込みは確かにある。が、かなり根深い対人恐怖症の持ち主だ。あそこまで興奮状態にあるのはどこかおかしいと思ってね。監督には確かに向いているが、役者としては三流も良い所だ。間違い無く彼は何かを隠している。バットショットに追跡させているから、直ぐに分かるさ。」
スタッグフォンの画面で中継されているライブ映像には、四人の女子大生から暴力を受けている様子が映っていた。相手も考え無しにそこかしこを殴る蹴るしている訳ではなく、着衣によって簡単に隠れる様な部位を的確に狙っている。
「Son of a bitch・・・・・」
一夏は小さくそう悪態をついた。
「酷い・・・・」
「心配無用だ、現場は押さえた。」
「これからどうするんですか?」
「この世界を変える第一歩の準備をする。織斑一夏、駄目元で聞くが、君は優秀な弁護士を知っているかい?」
「あ〜〜・・・・俺は知りませんけど。簪のお父さん、人材豊富なんで彼ならほぼ間違い無く知ってます。なあ?」
「ん、大丈夫。」
「では、更識簪、出来るだけ直ぐにその人物に連絡して腕利きの弁護士を用意する様に言いたまえ。僕も照井竜に懇意にしている弁護士を募る様に言っておく。そして、この三人の身元を調べてからもう一度川相透に接触する。」
フィリップの意図が読めないのか、一夏は首を傾げた。
「あ、あの、フィリップさん何をするつもりなんですか?」
おずおずと訪ねる簪にフィリップは口元をまるで何かを企む悪ガキの様に緩めた。
「女性利権団体への宣戦布告の第一歩だよ。篠ノ之束なら十秒と立たずに壊滅出来るかもしれないが、この世界を変える事を依頼されたのは君だ。」
「大言壮語しちゃいましたけど、絶対やりますよ。」
「意気込み十分で何よりだ。自主制作映画とは言え、かなりのバッシングが来るのは目に見えている。何せ主役は男、監督も男、そして悪役は女。女尊男卑と言う風潮を絵に描いた様に真っ向から否定しているから食いつかない筈が無い。名誉毀損やら女性に対する精神的苦痛辺りの下らない理屈を並べて訴訟を起こして来る。それに学生の身分で白昼堂々ここまであからさまな事が出来るとは、余程の命知らずか、バックをしっかりと固めてあるかのどちらかだ。」
「なるほど。恐らく後者ですね。じゃ、監督にも訴訟を起こさせるんですか?」
「ああ。こればかりは本人の意志がなければそれまでだ。説き伏せるのも裁判の決着がつくのも時間は掛かると思うが・・・・」
「やりましょう。絶対に、倒します。この休みの間でカタ、つけましょう。」
「ああ。さてと、僕は司法試験のアポがあるから、これで失礼するよ。そのうち事務所に所属する顧問弁護士が必要になると思うからね。勿論、君からは一銭も取らないよ。」
「分かりました。でも、フィリップさんが弁護士になったら誰も勝てないんじゃ?」
「そのつもりだよ。僕はこれでも負けず嫌いなんでね。」
フィリップは立ち去り、一夏は缶コーヒーを傾けた。
「簪、悪いな。また何か巻き込んじゃって。」
「気にしない・・・・彼女だから。」
簪ははにかんで早速天次郎に電話をかけた。
『もしもし?』
「あ、お父さん?」
『簪か。この時間に電話が来るなんて珍しいな。どうかしたのか?』
「お父さんの知り合いに弁護士っていない?」
『いるにはいるが、何故?』
「実はちょいと助けたい人がいるんで恐らく法廷で争う事になると思うんです。それで力を貸して頂けないかと。」
『何だ、そんな事か。良いよ、腕利きを用意しておく。』
「ありがとうございます。」
『気にする事は無い。最早君は家族だ。私の事も父さんと呼んでくれて構わない。』
この事件は後もう二話ぐらい続くと思います。