IS x W Rebirth of the White Demon   作:i-pod男

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お待たせしました。これで福音事件は終息です。


Sの片鱗/もう一人の悪魔

『Luna Maximum Drive!』

 

もう何度目か分からないルナメモリのマキシマムドライブを発動してエネルギー体となった福音の翼から放たれるエネルギーの奔流の勢いを殺し、エターナルローブで残りを防ぎながら回避した。

 

「ちっ・・・所詮はこれが限界か。エネルギーも半分を切った。いよいよマズいな。」

 

そうは言いながらも克己はにやりと不敵な笑みを崩さない。

 

「ん?」

 

ハイパーセンサーが発する上空からの攻撃をひらりと交わした。

 

「機体コード、サイレント・ゼフィルス・・・・?成程。この戦闘(パーティー)の主催者の一人があいつか。面白い。お前も遊んで欲しいのか?」

 

(大道!下、下!)

 

「全く、上も下も・・・・・面倒な奴らばかりだな。」

 

セカンドシフトした福音のエネルギーの奔流が再び零式を襲う。零落白夜・真を一瞬だけ発動してそれを打ち消した。その間にバイザーで顔の上半分を覆ったパイロットが六つのビットを切り離し、彼女自身も右手に構えている長身のライフルの照準を合わせた。

 

「撃たせるかよ。」

 

『Cyclone Maximum Drive』

 

疾風の如き素早さで急降下し、水面すれすれまで高度を下げた。そしてそのまま飛行しながら左右へと旋回して回避行動を続ける。そのスピードは福音に勝るとも劣らない程の物で、通り過ぎた風圧で海面が波で泡立った。

 

「食らえ。」

 

『Luna』

 

天幻と吹雪の二丁を構えると、頭上からビットと共に狙撃を続けるサイレント・ゼフィルスに向かって両腕を交差させて追尾弾の雨を浴びせた。が、六つのビットは機体の周りへと戻り、六角形型のエネルギーシールドを発生させてそれらを全て防ぎ切る。防ぎ切れなかった物はライフルによる精密射撃で相殺された。その中の幾つかはルナメモリの能力を使っているときと同じ様に直線の機動が湾曲する。

 

(ビームを曲げた?!あれは確か、偏向射撃・・・・マニアックな技を使う奴がいたもんだぜ。あんなんが相手じゃルナのマキシマムも意味を成さない!)

 

一夏は心の奥で臍を噛んだ。

 

「チッ・・・・能力の方は勿論だが、面倒な武装だな。だが・・・・面白い!!」

 

『Heat Maximum Drive』

 

天幻をしまい、爪幻を逆手に構えると、海面に吹雪の銃口を向けてそこら中に銃弾を散撒いた。凄まじい熱を発する銃弾は海水を蒸発させ、大量の水蒸気を空中に巻き上げた。幸い辺りはほぼ無風で霧散の心配は無い。

 

『水蒸気爆発か・・・・・面倒なのは貴様の方だ、織斑一夏。こうも手を煩わせられるとはな。』

 

プライベートチャネルから発せられる声を聞いて一夏ははっとした。

 

(この声・・・・あいつ、黒いナスカだ!織斑マドカだ!替われ、大道!奴は俺が倒す。聞きたい事があるんだ!)

 

「ふん。断る、と言いたい所だが、これだけ追い詰められればお前も殺す気でやらざるを得ないだろうかな。好きにしろ。」

 

克己はふんと鼻を鳴らし、一夏が思った以上に素直に折れて主人格が一夏へと戻った。

 

「織斑マドカ・・・・」

 

「余所見をする暇があるのか?」

 

水蒸気の中から再び大量のエネルギー弾が撒き散らされた。マドカは落ち着き払ってビットのシールド全てを前方に回して難なく攻撃を受けたが、零式には防御用の武装は無い。あるのはもう殆ど使い物にならなくなっているエターナルローブだけだ。

 

勝算(オッズ)は悪し、か。せめて引き分け(ドロー)に持ち込んでやらあ。」

 

『零落白夜・真 Maximum Drive!』

 

爪幻と雪片・無限を連結させて前方に突き出す様に構えると、それを回転させた。擬似的な楯となった剣は迫り来る弾丸の嵐を防ぎ切ったが結果として更にエネルギーを消費する事になった。それを見逃す程マドカも甘くはない。ビットで防御に徹している間も右手のライフル『スターブレイカー』の銃身はぶれる事無く同じ様に防戦一方となっている一夏をしっかりとレティクル内に捉えていた。

 

「終わりだ。」

 

トリガーを引き、実弾とエネルギー弾が

 

「私の弟に銃口を向ける愚か者は貴様かぁーーーーっ!?」

 

咄嗟の事に一瞬反応が遅れた。振り抜かれる剣戟への防御が間に合わず、二つのビットが破壊されてしまう。

 

「ははっ・・・・!」

 

一夏は戦闘中だと言うのに思わず口元を緩めた。

 

「頼もしい援軍が来た。のはありがたいんだけど・・・良いの?指揮官がここに来て。」

 

「私は現場主義なのでな。人を扱き使うしか脳の無いどこぞの日和見主義者共の言葉なんぞに一々従っているのに少しばかり辟易している。それに、社会にはこんな諺がある。部下の手柄は上司の手柄、部下の失敗は上司の責任とな。お前にこれ以上尻拭いをさせるのはまっぴらゴメンだ。私も共に戦って、手柄を立てようと思っている。」

 

一夏の目の前に現れたのは今の自分の機体の黒色と相反する威風堂々と言う言葉がよく似合う白いISだった。その搭乗者は姉である織斑千冬である。弟と同じくISは微笑を浮かべる口元以外の全身を覆うフルスキン型で、鎧武者を思わせる様なデザインの装甲が体を覆っている。だが鎧と呼ぶ程無骨な物ではなく、戦術的に無駄な部分を削ぎ落とした、言うなれば忍者に防具の一部を身につけさせた様な姿だ。

 

その右手には反りが極端に浅く、刀身の幅も一際大きい、限り無く刀に酷似した形状の刀剣が握られていた。その刀身には只一文字『桜』とだけ名が打たれている。更に両腰と背中の物も加えて合計六本同じ武器が収められていた。

 

「織斑千冬・・・・そちらから来るとは都合が良い。今すぐこの場で叩き潰してやる!!」

 

狂ったかの様な笑い声を上げながら、スターブレイカーの銃剣と千冬の剣『桜』が火花を散らした。

 

「こいつは私が引き受ける。早く福音を落としてパイロットを救出しろ。」

 

「了解。ちー姉、ありがと。やっぱ、ちー姉は最高の姉ちゃんだ。」

 

『Eternal!』

 

「帰ったらちー姉が好きな出汁巻き卵作らなきゃな。」

 

一夏は福音を引き離す為にエネルギー弾の嵐を突き抜け、両手で福音の頭をしっかりと握り込んだ。その状態でイグニッションブーストを発動し、千冬達がいる戦闘空域から離脱した。

 

「悪いがこれ以上時間はかけてられないんでな。痛いけど、我慢してくれよ。」

 

『Heat Maximum Drive!』

 

左手で福音の頭を掴んだまま右腕を大きく後ろに引いた。赤を通り越して拳となっているマニピュレーターが殆ど橙がかった白へと文字通り白熱している。

 

「ダイナマイト・ナックル。」

 

大きく息を吐き出しながら福音の腹をその拳で打ち抜いた。シールドエネルギーはみるみる減って行き、離れ小島の一つの浜辺に激突するとやがてゼロになった。

 

「あ、やべえ!」

 

大急ぎで浜に降りて操縦者の安否を確かめに行った。もっとも、先程の一撃で骨の何本かは確実に折れている可能性はあるが。

 

「Hey, wake up. Hey!」

 

ISスーツを着て横たわる腰まである金髪の女性の肩を掴んで何度か乱暴に揺すった。幸い脈はあり、呼吸も安定している。だが、意識を取り戻した瞬間、一夏の顔目掛けて拳を放った。

 

「うぉ、ちょっ!?Whoa, whoa, slow down lady. I’m not gonna hurt you」

 

だがすんでの所で一夏は腕が伸び切ってパンチが届かない距離へと下がり、両手を上げて敵意が無い事を示した。

 

「貴方、織斑一夏・・・・ここは・・・・私、どうなったの?」

 

「ここは日本の近くにある離れ小島だ。正確な場所は俺もまだ分からん。二つ目の質問に対する答えだが、暴走したシルバリオ・ゴスペルに振り回されていたんだ。今しがた撃墜と保護を完了する所だ。怪我は?」

 

「ええ、御陰様でね。殴ろうとしてごめんなさい。私はナターシャ・ファイルス。この子の・・・・シルバリオ・ゴスペルの操縦者よ。助けてくれてありがとう。」

 

握手の為に手を差し出して立ち上がろうとしたが足元が定まらず、再び砂の上に尻もchを付いた。

 

「いたた・・・」

 

「無理はしない方が良い。止めの一撃はかなり強かったし、何よりかなりの間超音速で無茶な軌道を描いて飛んでたから、美味く動けないのは当然だよ。暫く横になってた方が良い。後、お礼やお詫びには及ばない。知らない男が上から覗き込んでたら何されてるか分かったもんじゃ無いし。民間人ならいざ知らず、軍人ならそう言う反応が当然だよ。」

 

「え?何で分かるの?」

 

「左肩の刺青、アメリカ空軍のマークだし。それに、これを言っちゃ失礼かもしれないけど、汗と機械油、それと硝煙の臭いがするから。まあ、テスト稼働中だから仕方無いっちゃあ仕方無いけど。さて、お喋りはこれぐらいにして・・・CIC、織斑一夏です。」

 

『受諾しました、こちらCICの山田です。』

 

「福音の撃破に成功。パイロットのナターシャ・ファイルスを保護しました。」

 

『お疲れ様です、織斑君。サイレント・ゼフィルスは織斑先生に任せて一先ず帰投して下さい。』

 

「エネルギーがギリギリなんですけど。今で二十パーを下回ってますよ。飛べる事は飛べますけど、何時まで保つかどうか・・・・ま、了解。行けるとこまで行きますわ。」

 

通信を切ると、再び零式を展開した。

 

「さてと。休んでる所で非常に申し訳無いけど、早速移動開始しなきゃならない。乗り心地は最高とは言えないけど、今からIS学園が拠点にしている場所に治療の為に連れて帰る。あ、でも、どう運ぼう・・・・?流石にお姫様抱っこはまずいし。」

 

もしそうしているのが刀奈や簪にばれるか、見られでもしたら・・・・・

 

想像するだけでも恐ろしかった。

 

「あら、私は別に構わないわよ?お姫様抱っこ。昔から憧れだったのよね、白馬の王子様に助けてもらってそうされるの。」

 

先程まで命が危険に晒されていたと言うのにかなりマイペースなナターシャの言葉に一夏は頭を抱えた。

 

「いや、俺彼女いるんで。万が一見られたら俺ぶっ殺されますから。主に精神的に。」

 

「まだ体があちこち痛いのよ、お願い。ね?」

 

わざと痛がる素振りを見せるナターシャを見て、一夏は目頭を揉んだ。

 

「ま、女性には優しく、がモットーだしな。分かった。ほいっと。」

 

飛行を始めてからの数分間、二人の間に沈黙が訪れたが、先に口火を切ったのはナターシャだった。

 

「ねえ。」

 

「ん?」

 

「貴方、ホントに高校生?」

 

「と言うと?」

 

「そこらの大人よりもしっかりしてる感じがするから。あーあ、貴方みたいな人がもっといれば、私だって彼氏ぐらい出来るのにな。」

 

「良く言われるよ、それ。戻って直ぐに聴取が待ってると思うから今この場で聞かせてもらいたい。一体テスト中に何があったのか。」


ナターシャは暫くの間俯いて黙っていた。だが意を決したかの様に口を開いて、ゆっくりと少しずつ話し始めた。

 

「テストを始める前にシステムチェックは何度もしたわ。何度確認してもオールグリ—ンだった。飛び始めて最初は全く何の問題も無かった。無かったんだけど・・・・大体十分ぐらい経過してからかしらね。突然幾つもエラー表示が出てあの子が・・・福音がメチャクチャな軌道を描き始めたの。通信が途絶した後は操縦者である私のコマンドもシステムの干渉も受け付けないし、何度も再起動(リブート)を試みたけど、駄目だった。しまいには超音速の飛行へと入る時、Gの所為で情け無くも気絶と覚醒を何度も繰り返したままだったわ。」

 

「技術が進歩した今手口が巧妙になるのは自明の理だな。犯罪者とのイタチごっこも収拾がつかないのもその為か。しかし、軍用ISをハッキング出来る様な人物ねえ・・・・・・考えられる犯人は二人いる。そのうちの一人と俺は面識があるが、その人は現在更生中だ。従って、残る犯人である可能性が高い奴はドーパントだ。人間に出来ない事を容易くやってのけられるからな。あ、あれだ・・・・・しまった・・・・!急がないと。」

 

「どうしたの?」

 

「学園が襲われてる!ドーパントが三体も・・・・!?」

 

一夏は余りに単純過ぎる罠に引っ掛かってしまった自分の間抜けさに歯軋りした。

 

「糞・・・・無事でいてくれ、刀奈、簪、皆も・・・!!」

 

ナターシャを下ろす為に旅館の裏手の浜へと降り立ちながら辺りを見回した。正しく戦場(ウォーゾーン)の光景だった。教師部隊はほぼ壊滅状態に追い込まれ、代表候補達も満身創痍だ。ISの装甲は所々剥がれ、砕け、シールドエネルギーはほぼゼロだ。唯一まだ闘えそうな状態にあるのが楯無とラウラ、そして鈴だった。だが三人とも傷や痣だらけで満足に闘える様な状態ではない。

 

「クソッタレ共が・・・・・!!」

 

 

 

 

 

 

「やはりまだ馴れないな。」

 

千冬は右手に『桜』、左手は同型の『(びゃく)』を構えてマドカと相対していた。だが、全くと言って良い程苦戦している様子は無い。マドカの精密さと変幻自在さを織り交ぜた銃撃は悉く千冬に弾かれ、回避され、残った四つのビットの内既に三つを破壊されている。バイザーの奥で目を細めた。

 

(姉さんは・・・・やはり強いな。だが、私は負けない!!)

 

スターブレイカーの銃剣と二本の刀が再びぶつかり、火花を散らした。

 

「これで、終わらせる。」

 

『エネルギー転換率、100% 零落白夜・月相 発動』

 

「偃月。」

 

『桜』を大上段の構えに持って行き、細く息を吐き出した。そして空気を切り裂く様な気合いの入ったかけ声と共にそれを振り下ろす。刃から光の粒子が噴き出し、青白い半月を形作り、シールドを張ったビットごとサイレント・ゼフィルスを切り裂いた。

 

「往生際の悪い奴だ。」

 

「姉さん、やっぱり強い・・・・クハハハッ。」

 

『エム、撤収よ。戻りなさい。今の状態じゃまだ倒せないわ。』

 

だがマドカは動かなかった。

 

『エム、いい加減になさい。』

 

「チッ・・・・了解した。」

 

『Nazca!』

 

マドカは舌打ちをしながらISを解除し、空中でナスカ・ドーパントに変身して超高速飛行で戦闘空域を抜けた。

 

「奴が、あの時のドーパント・・・・いや、それは後か。」

 

今は学園の方に戻らなければならない。千冬は撤退するナスカに背を向けて生徒達が待機している場へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

一夏はナターシャを下ろし、ISを解除すると懐からロストドライバーとエターナルメモリを引き抜いた。

 

「何をするつもり・・・?」

 

「奴らをぶっ飛ばしに行く。ここまであからさまな喧嘩売って来たんだ、リングサイドで大人しく出来る程腐っちゃいねえんだよ、俺は。今から起こる事は他言無用で頼む。でなきゃ、もう一人の俺(・・・・・・)があんたを殺すかもしれない。」

 

『Eternal!』

 

「変身。」

 

衝撃波と共に、漆黒のエターナルローブが現れて、一夏は白い鎧と仮面に身を包んだ。

 

「Kamen Rider・・・・!」

 

「助けたついでに、アンタの手を借してくれ。」

 

ローブの中からシャッフルメモリを取り出してナターシャに放り投げた。

 

「スイッチを押すだけで良い。後は俺がやる。」

 

ナターシャは小さく頷き、若干顔をそらしながらスタートアップスイッチを押した。

 

『Shuffle!』

 

そして、

 

『Bird!』

 

深い赤色のメモリが現れ、エターナルのフレアマークがついたての中に飛んで行った。

 

「ありがとう。避難していてくれ。その体じゃ満足に闘えない。」

 

『Bird!』

 

バードメモリを差し込むと、エターナルローブはまるで翼の様に二つに分かれ、一度羽搏くと空に舞い上がった。

 

 

 

 

 

 

『ガハハハハハハハ!!!!こんなもんかよ、おい!弱ぇ、弱ぇなあ!』

 

『全くだらし無いですねえ。それでも代表候補ですか?もっとやる気出して下さい!』

 

『ごめんなさいね、本当に遊びに来ただけなのに、この二人ったら本当手がかかるから困るわ。』

 

腹を抱えて高笑いをするアラクニド・ドーパントと両手を腰に当てて怒っていると言うのを子供の様にアピールするマカイロダス・ドーパント。そしてその中心に立つ露出が多いマゼンタ色のドレスに身を包んだ金髪の女性はいやらしい笑みを浮かべてまるで手のかかる子供の代わりに謝罪をする母親の様な口振りだった。

 

「鈴、大丈夫か?」

 

「ラウラ、大丈夫に見えるならアンタのその目、飾り物よ。ドーパントに遭遇した事はあった・・・・両手さえ自由になれば・・・!!」

 

鈴の専用機『甲龍』の両手は鳥黐の様な粘着性の高い何かで全く動かない。ISのブレードで切ろうとしても逆に刃毀れさせる程の物なのだ。

 

「でも、ISの攻撃が利かないなんて・・・・・一夏君も、まだ戻ってないし。」

 

『Joker Maximum Drive!』

 

『Skull Maximum Drive!』

 

三人が立つ場所が、突如凄まじい爆発を起こした。

 

「さあ、お前の罪を、数えろ。」

 

爆心地から数メートル離れた所で着地したエターナルの底冷えする様な低いドスの入った声は一瞬にしてその場を沈黙させた。

 

『ったく、危ねえなこの野郎!』

 

だが、三人は無傷だった。爆心地は蜘蛛の巣の様なドーム状の障壁にいつの間にか覆われているのだ。

 

「ちっ。」

 

エターナルは舌打ちをするだけでメビュームマグナムに二本のメモリを差し込んだ。

 

『Luna Maximum Drive!』

 

『Trigger Maximum Drive!』

 

断続的な爆発が再び大地を揺るがし、ようやくその障壁に穴が開通した。しかし煙が完全に消える前に、アラクニド・ドーパントがその中から糸を放って来た。

 

「燃えろ。」

 

『Bullet!』

 

『Heat Maximum Drive!』

 

澱みの無い落ち着き払った動作でメモリを排出、新たに二本を装填し、シングルハンドで二本の糸を焼き切った。

 

「お前らの面の一つは拝ませてもらうぞ。」

 

『Eternal Maximum Drive!』

 

だが、やはり何も起こらない。その隙を見て、マカイロダス・ドーパントが飛びかかって来た。

 

『チャーンス!!さあさあ死ぬが良いです!』

 

マウントを取って鉈の様な野太い鉤爪でガードを続けるエターナルを攻撃し続けた。

 

『どーですかぁ!?全然反撃出来ませんよねえ!私強いし速いですもん!』

 

「俺よりは遅い。」

 

『Zone Maximum Drive!』

 

次にマカイロダス・ドーパントが繰り出した鉤爪は深々と砂の中に突き刺さった。瞬きの刹那、エターナルの姿がどこかへ消えたのだ。

 

『あれっ?あれっ?!』

 

『Metal!』

 

「死ねぇっ!!」

 

後頭部にメタルメモリの能力によって硬化し、更に改造された肉体が生み出す膂力を乗せた拳は、マカイロダス・ドーパントを地面に減り込ませた。

 

「You’re next, bitch(次はてめえだ、売女)」

 

「あら、汚いお口。Come on little boy. Let’s play(来なさい、坊や。遊びましょ)と言いたい所だけど、良いわ。相手してあげる。二人は先に帰ってて頂戴。」

 

『Seven Sins!』

 

ドライバーを装着し、プラチナメモリをその中に差し込んだ。途端に、彼女の影がグニャリと捻れ、地面から剥がれて不定形なスライムの様な物に変わる。そしてそのまま笑みを崩さないスコールを包んだ。影の中から現れたのは、一匹の『悪魔』だった。

 

腰背面には翼幅八メートルはある翼竜の翼、頭はヤギの捩じれた角を三対生やした頭蓋骨になっており、真っ赤な体には呪術的な紋様が刺青の様に幾つも施され、時折不気味に光った。下半身は女性の素足と同じだったが、唯一違うのは赤い鱗に覆われている事だけだった。

 

『どう?素敵な姿でしょ?』

 

「セブン・シンズ・・・・・七つの大罪・・・・・」

 

『傲慢、強欲、嫉妬、暴食、怠惰、憤怒、そして色欲。私はこの世界で犯されたありとあらゆる人間の悪意に満ちた行いを象徴している。今一番多いのは・・・・傲慢と強欲かしらね?じゃ、お披露目も済んだし、私も失礼するわ。じゃあね、白い悪魔さん。』

 

セブンシンズ・ドーパントは海に足を踏み入れ、あろう事か巨大なウミヘビに姿を変えて海中へと消えて行った。

 

「何なんだ、あのメモリ・・・・」

 

(お前、ビビってたろ?)

 

(大道・・・・)

 

(確かに、俺も今まで見た事が無いメモリだ。恐らくはゴールドメモリのユートピア以上の力を持っている。だが、奴はいずれ俺が倒す。全てのガイアメモリの頂点に立つ王はエターナル只一つだ。奴を叩けば、全てが終わる。ここを離れろ。)

 

『Zone Maximum Drive!』

 

ナターシャを下ろした所にテレポートして、変身を解いた。




次回は元ジーン・ドーパントのあの人を登場させようと思います。翔太郎達が以前救った未来の大監督です。

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