IS x W Rebirth of the White Demon   作:i-pod男

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ちょくちょくこう言う番外編を(ネタが切れた時の時間稼ぎとして)入れて行きます。


番外編:新たなU/新生NEVER

とある建物の一角で、停車したバイクに凭れ掛かり、髪に青いメッシュを入れた青年がジョーカーの穂先をジッポライターの火で炙っていた。火先が吸い込むと同時に明るくなり、顔がぼんやりと照らされた。顔立ちは幼く、とてもではないが煙草を吸える合法的な年齢には達していない。彼の両腰に装着されたホルスターにはそれぞれ抜かれるのを今か今かと息を殺して眠る二つの鉄の塊、FNP45とスミス&ウェッソン M-19が収められていた。太腿には大振りのシースに収まったアーミーナイフがマジックテープで固定されている。

 

『サマーズ、軍に繋がってるあのエリアの警報システム、カットした。』

 

少し控えめで小さい声が聞こえた。あまり大きい声で喋られるのも迷惑だが、こちらは声が上手く聞こえない所為で大変だ。

 

「おお、流石スティール2だ。報告をどうも。いつもありがと。ソード、スイープは?」

 

『いつでも行けるわよぉ。』

 

スティール2とは対照的に得意そうなソードと呼ばれた女性の声がイヤホンから耳に運ばれた。

 

「オッケー。六回爆発が聞こえたら直ぐに彼女をエリア内部に落とせ。おっと、言ってる間に来た。」

 

微かなエンジン音とライトが見え始め、青年は荷台に積まれたバッグから双眼鏡を取り出して覗くと、大型のジープ六つがその中心にいる一台を中心に円陣を組んでいた。その中心にあるジープに乗っていた男は現代の城とも呼べる程の巨大な豪邸の前で降りて正門から入って行った。

 

「こちらサマーズだ。目標(バーディー)が籠に戻ったのを確認。ブルー、ガスト、現在地の報告を。」

 

コンボイから目を離さずにスロートマイクのスイッチを押して、別行動をしている仲間に連絡を入れた。

 

『こちらブルーです。第一ポジションに着きましたわ。』

 

トーンが高めの上品な女性の声と共に何やら金属がぶつかり合う様な音がイヤホンに入って来た。

 

『同じくガスト、現在侵入経路にいるブルーと合流しようとしてるとこ。』

 

そのほぼ直後にもう少し落ち着いた女性の声が飛び込んで来た。どこかあどけなさが抜けない物だった。

 

「よし。ベル、レイン、聞いての通りもうすぐ花火の時間だ。合図したら奴らの頭の上にたっぷりとぶちまけてやれ。車は六つ、銘々RPGは三本ずつ。外すなよ?」

 

『言われなくても分かってるわよ、それ位。それよりアンタは何やってんのよ?!』

 

「タバコを一服。」

 

『ハァ?!あんた人が忙しく準備してるのに何暢気な事言ってんの?!ていうかスノウにバレたら殺される位じゃ済まないわよ!?』

 

サマーズはキーキーと喚くベルの声が耳に響く為に思わずイヤホンを外して顔を顰めた。

 

「良いんだよ別に。俺達、死んでるから。今更、癌なんて怖くない。」

 

『ベル、静かにしろ。お前ががなり立てると耳が痛くなる。』

 

レインと呼ばれた低めの女性の声がベルを窘めた。まるで大人気無い妹を窘める姉の様だ。

 

「喧嘩してないでさっさと撃て。ほら三、二、一、Go。」

 

炭酸飲料が入ったボトルを何度も振った後で蓋を開けた時に出るガスの音を拡大した物が発せられ、煙の尾を引きながらRPGの弾頭がジープの運転席に向かって行き、爆発。更に続けて二発。再び爆発、そして怒号と悲鳴。

 

「行くぞ。ガスト、内部に侵入してスノウとスイープと合流、内側から防御を蹴散らせ。 ブルーとレインは互いの視覚をカバーしつつ討ち漏らした奴、隠れてる奴を掃討。ベル、前進しつつ俺の背後(シックス)をカバーしろ。」

 

『『『『了解!』』』』

 

サマーズはバイクに打ち跨がり、アクセルを思い切り捻ってエンジンを吹かした。改造されたV8のエンジンは力強い唸り声を上げ、エギゾーストから青白い炎を噴き出した。タイヤは燃えるゴムの悪臭を残しながら正門を目指して疾走した。

 

「おらおらおら、死にたい奴から前に出て来い!」

 

走行中だと言うのに器用に拾い上げたAK-47 アサルトライフルを片手で左右から迫って来る兵隊に向けて発砲した。ケブラー繊維の防弾服を着ているとは言え、マガジンに装填されているフルメタルジャケットタイプの銃弾はそれを貫通する威力を持っている。加えて、出鱈目に撃っている様に見えてサマーズは片手でしっかりと撃発の反動を押さえ込んでおり、明後日の方向に飛ぶ弾は殆ど無い。

 

「さ〜て、パーティーはこれからだ!」

 

空になったAKを投げ捨てるとアクセルを捻って加速し、横転した車体に乗り上げて門を飛び越えた。着地した時運悪くバイクの下敷きになった兵士は上半身の骨がバイクの重さに砕け、内臓が破裂して絶命した。バイクで邸内を走り回って群がる雑兵を撃ちまくりながら煙草を吸う。

 

「こっちはクリアよ。ガストも急ぎなさい。」

 

最後の一人の首を上段の回し蹴りでへし折ったベルはSIG552のマガジンを確認しながら渡り廊下の中心にいるショートの金髪の女性、ガストを急かした。彼女の手にはそれぞれ百連発のドラムマガジンを装填出来る様に改造したH&K MP7が握られており、両側から迫って来る護衛達をフルーオート射撃で引き裂いていた。時折銃弾が彼女の体を貫いたが痛がる素振りも倒れる様子も無い。

 

『やってるよ!向こうが一々隠れるから、当たらないんだって!あーもう!こんな事ならグレネードランチャーかAA-12持って来るんだった・・・』

 

『ベル、サマーズ、上だ!避けろ!』

 

レインの警告に弾かれた様に後ろに飛び退いた。二人が立っていた場所には、体中から炎を立ち上らせている白服の男と、瓦礫が幾つか周りを漂っている同じく白服の女だった。二人を狙い撃とうとした対物ライフルの銃弾は弾かれ、明後日の方向に向かって行く。

 

「クォークスか。」

 

『サマーズ!スイープだ、こちらにも白服がいる。』

 

『僕も!』

 

『まさか私が背後を取られてしまうとはな。』

 

『狙撃手として屈辱の極みですわね・・・』

 

サマーズの耳に飛び込んで来る部隊の声に焦りは無い。こめかみを揉み、煙草を投げ捨てると、スロートマイクに指を当てた。

 

『作戦エリア内にいるNEVERに告ぐ。ガイアメモリの使用を許可する。繰り返す、ガイアメモリの使用を許可する!作戦所要時間も残り少ないから四の五の言っていられない。敵と認識したならば確実に叩き潰せ。死体も残すな。』

 

全員の肯定の意を示す返事を無線越しに聞くと、 サマーズはにんまりと笑った。

 

「さてと、確か目当ての物は地下にあったんだったっけ。ベル。」

 

「はいはい。」

 

懐からフレアマークのデザインがついた赤いHが描かれたガイアメモリを取り出し、左鎖骨に突き刺した。

 

『Heat!』

 

渡り廊下にいるガスト、そして狙撃に徹しているブルーとレインもそれぞれメモリを起動し、右胸、左の掌、右脇腹にそれを差し込んだ。

 

『Cyclone!』

 

『Trigger』

 

『Joker!』

 

中庭で二本の刀を持っていたスイープも短パンから覗く太腿にメモリを押し付けた。

 

『Metal!』

 

「Ok, my beautiful ladies. Show me what you got!俺は、本命さんを追うから。」

 

ベルが変身したヒート・ドーパントは、凄まじい熱量でコンクリ—トを溶かして穴を開通させてサマーズはその中に飛び込んだ。底が見えない程の深さだったが、やがて地面が見えて来た。普通の人間なら両足を骨折してしまう高さだったが、サマーズは難なく着地した。そして耳を澄ますと、荒い息遣いと躓きながらも近付く乱れた複数の足音が聞こえた。

 

「そっちか。」

 

サマーズは太腿のナイフを引き抜いた。ベートーベンの『運命』を口笛で吹きながら。右へ左へと曲がりくねる道は迷路の様な地下墓地だった。ナイフを指先で弄びながら適当な所で曲がっては前進を繰り返した。そうしている間に銃を持ったチンピラ達が暗がりから飛び出して奇襲をかけようとしたが、サマーズの正確無比な銃撃とナイフ捌きであっと言う間に死体に早変わりした。またしばらく迷路の様な回廊をウロウロしていると、夏服を着たラテン系の男がマシンピストルのMac-11を構えて飛び出して来た。恐怖と怒りで叫びながら侵入者に向けて銃弾を散撒く。やがて弾倉の中身が尽きて、どさりと倒れた。

 

「様ぁ見ろ、化け物め!この俺に楯突いた報いだ!!」

 

浅く息をしながら嬉しそうに笑う男の目は濁っており、口角には泡が見える。明らかに正気を失っていた。

 

「化け物、ねえ。今の俺からすりゃあ、お前の顔の方ががよっぽど化け物だ。それにお前が雇った超能力兵士は揃いも揃って馬鹿ばっかりだ。何故か分かるか?良い様に使われてる事に気付いていないからだ。只の道具としてしか扱われてない事に。」

 

だが、その笑い声も先程射殺した筈の男の口から漏れた言葉で掻き消えた。体中に鉛弾を受けて、普通ならば間違い無く死んでいる筈の男が喋り、ナイフを拾って起き上がったのだ。

 

「俺は違う。死人だ。だが、自由だ。この世界からも、死そのものからも解き放たれた存在だ。」

 

「お前は・・・・お前は一体何なんだ!?」

 

男は泣きそうになりながらも切れ切れにそう叫んだ。空になった銃の引き金を何度も絞るが、起こるのは撃発音ではなく空しい作動音だけだ。

 

「俺の名はサマーズ。本名は織斑一夏。またの名を、エターナル。さて、お前の様な底辺のゴミ屑に相応しい死を与えてやろう。お前の好きな色はなんだ?」

 

「あ、赤・・・・赤だ。」

 

「なら良い。お前の要望に応えて、真っ赤な新しいネクタイを仕立ててやる。」

 

織斑一夏と名乗ったサマーズは男の腹を踏みつけ、頭を仰け反らせた。男は何度もやめてくれと悲鳴を上げて暴れたが、頭を一度コンクリートの地面に叩き付け大人しくさせた。ナイフの刃を顎の下に宛てがい、思い切り引いた。脈を切断してしまった所為か、噴水の様に鮮血が噴射され、壁と床、そして一夏の体と顔を汚した。だが全く意に介さず、指先をその傷口の中に突っ込んで男の舌をその中から引き抜いた。

 

「最後に葬式の正装(・・)が出来て良かったな。ここにある小麦粉(・・・)の山と一緒に落ちて地獄で待ってろ。また向こうで殺してやるから。」

 

背負っていたバッグをそこに置くと、再び『運命』の口笛を吹きながらその場を去った。数秒後にそのバッグが大爆発を引き起こし、地下に眠る大量の麻薬とその売買によって得た莫大な資金を燃えカスに変えた。

 

「全員に通達。目標撃破及び、荷物の破壊に成功。全員五分後に合流地点(ランデブーポイント)に迎え。ソードとスチール2が待ってる。家に帰るぞ。」

 

『サマーズ、ウィンターだ。こちらはクォークスを全て処理した。あの馬鹿共、戦車を持っていたぞ。まあ、軽く捻ったがな。』

 

『スチール2、ソードォ〜?どう言う事だ?ウィンターがバックアップとして待機してたなんて聞いてないぞ?ていうかそもそも作戦を伝えた覚えないんだがな?お前何した?あ?吐け。』

 

本来聞く筈が無かった声がインカムに入って来てCIC(戦闘情報通信)を担当するソードとスチール2に若干棘のある声で訪ねた。

 

『ア、アハハハ、ごめんね?』

 

『ごめん・・・・なさい・・・・』

 

「帰ったらお前ら二人お仕置き決定。帰りの間オートパイロットに設定しろ。」

 

『ふぅ〜、疲れた。皆お疲れ。やっぱ仕事の後はコレよね。』

 

無線越しにゴキゴキとベルが肩をならすのが聞こえた。

 

『あぁ〜〜ん、来ましたわぁ・・・非常に体にしみますぅ。狙撃の姿勢を保てない訳ではないのですが、長時間同じ姿勢でいると腰が痛くなってしまうのが嫌ですわね。』

 

『直ぐに治る物だ。文句を言う程の事ではあるまい?それに酵素を打つ時に一々その反応をやめろ。気持ち悪い。』

 

まるで絶頂に登り詰めたかの様な嬌声を上げたブルーをスイープが窘めた。

 

『サマーズ、今夜のローテーションの相手は僕だからね?忘れないでよ?』

 

「分かってるよ、ガスト。ほら、早く行け。俺も後から追い付くからさ。」

 

イヤホンを耳から引き抜き、ベルが開通した穴から飛び出した。死して尚、人間の肌が持つ『温もり』を求めるなんて、徹し切れていないな、と思いながら。

 

A(アルファ)M(マイク)F (フォックストロット)Adios, Mother Fucker(あばよ、クソッタレ)。」

 

加えていた物を穴の中に吐き捨てると、新たに煙草を一本口に銜えて煙を吐き出してそう呟いた。

 

「神と悪魔が闘っている。そしてその戦場こそが、人間の心。By ドストエフスキー。」




コードネーム、皆さんははどれが誰だか分かりますでしょうか?

ちなみに最後のAMFですが、米軍で使われるアルファベットです。

次回は本編に戻ります。

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