IS x W Rebirth of the White Demon   作:i-pod男

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お待たせしました。
今回は様々な作戦が動きだします。そして久々にWの主役達が登場します。一部がチョイ役ですが・・・・そして以前ミーナが出るのかと言う質問が感想欄でありましたが、今回は・・・・・

ムフフフフ。

ではどうぞ!


Tな臨海学校/準備と作戦開始

生徒達がたむろしている浜辺から離れた人気の無い所にポツンと刺さっているビーチパラソルの前に短パンとフード付きの薄いパーカーを羽織った千冬が立っていた。向かい合って立っているのは現在目薬を手放せていない左翔太郎、園崎来人ことフィリップ、そして千冬の幼馴染みの束だった。

 

「やっほ〜ぃ、ちーちゃーん!!」

 

「全く、相変わらず騒がしい奴だな。」

 

「二人の事は閲覧したが、十代の頃はそれなりに騒がしく青春を謳歌していたと思うんだがね。」

 

「糞・・・・俺の目が・・・・まだ完全に見えねえ・・・・何故だフィリップ!!」

 

「自業自得だ、左。俺の様に身を固めればその様な哀れな姿を晒さずとも済むだろうに。」

 

真っ赤な膝丈の水着とハイビスカスを描いたハワイアンシャツ、更にはアビエタータイプのサングラスをつけた竜がかき氷を片手に翔太郎の質問に答えた。

 

「え〜、翔太郎君みたいなハーフボイルドなんかが結婚は疎か彼女すら出来た事無いんじゃない?」

 

「亜樹子ぉおおお・・・・・照井とゴールインしたからって調子乗るんじゃねえぞ。俺だってなあ、彼女の一人や二人ぐらいはいたんだよ。それはそれは可憐な一輪の花の様な・・・・」

 

シェイクスピアの様な芝居がかった動きを始めた翔太郎だが、動きがあまりにもわざとらし過ぎる所為でどちらかと言えば三文芝居の大根役者を見ているかの様だった。見かねた亜樹子は『ウソつけ!!』と書かれたスリッパで翔太郎の頭を引っ叩いた。

 

「アタッ!?」

 

「じゃあ名前教えなさいよ!何時どこであったの?どこまで行った?」

 

「あー、えっとだな・・・・・昔の事だからあんまし良く覚えてねえわ。」

 

まごつきそうになったので適当に誤摩化そうとしたが、目が泳いでいるのを見たキャリア刑事の照井は過去に彼女がいたと言う翔太郎の言葉が真っ赤な嘘である事を瞬時に見抜き、鼻で笑った。

 

「所長、食べさせてやる。」

 

「え、ホントに?!やったぁ〜〜〜!!あーん。ん〜美味しいぃ〜〜〜!!」

 

ビキニ姿の亜樹子は久々の休暇でご満悦である。

 

「さて、話が大幅に脱線してしまったね。篠ノ之箒と篠ノ之束の仲直りだが、原因が原因だし長年放って置いた所為で溝もかなり深い。生半可な方法での解決は検索の結果、ゼロに近かった。最早確率は自然数を遥かに下回る小数だ。と言う事で、以前稲本弾吾と星野千鶴の一件で成功した方法のプラスαバージョンを使おうと思う。翔太郎。」

 

「お、おう・・・しみるぜ、この目薬・・・」

 

目が見えずともブラインドタッチの手慣れた様子でスタッグフォンを操作し、リボルギャリーが現れた。

 

「お〜〜、何時見てもこのマシンのバディ〜は惚れ惚れしますなあ〜〜〜!」

 

「これは、何だ・・・?」

 

「僕達仮面ライダーに無くてはならない物さ。姉妹、喧嘩、仲直りと言う三つのキーワードで検索した結果ヒットしたこの作戦に必要だと判断した。故に、待機させておく。織斑千冬にはいざどちらかが逃げようとした時に取り押さえてもらいたい。」

 

「ふむ・・・・良いだろう。今から連れて来る。真耶を監視の為に付けておいた。束、逃げるんじゃ無いぞ?」

 

「ラジャラジャー!」

 

「それを着ておけ、お前の正体がバレたらそれこそ収拾がつかなくなる。」

 

パーカーを脱いで束にかぶせた。その下には眩い肢体が隠されており、まるで覆い被せた布を取り払ったかの様に煌めいていた。正に女性が羨むモデルをも超越するボディーラインである。

 

「わーお、ちーちゃんセクスィ〜〜ですなあ♪ゲヘヘのヘ。」

 

「黙っていろ、この馬鹿兎。」

 

ガシリとフードを被った束の顔面をアイアンクローでしっかりと掴んで頭から砂の中に押し込むと、そのまま旅館の方に戻って行った。

 

「ブォハッ・・・・死ぬかと思ったぁ〜〜〜〜、流石の束さんも窒息死だけは勘弁だよ。脳細胞が死滅するまで十数秒は掛かるからねえ。」

 

「・・・・なあ、フィリップ。朧げにしか見えなかったが、千冬の奴片手だけで束を持ち上げてたよな?で、顔面掴んで一撃で束を埋めたよな。あれどうなってんだ?てかあれ、痛くないのか?」

 

「そうだねえ。見た目とは裏腹に以外と筋肉質なのかもしれないよ?あの二人は細胞レベルでオーバースペックなのさ。」

 

「頭脳はフィリップの方が遥かに上だがな。」

 

「お世辞はやめたまえ。さてと、念には念をと言う事で。」

 

フィリップはパソコンを引っ張り出し、片手で手早くキーを押した。すると、暗い部屋の隅で踞ったままその場から動こうとしない箒の映像がスクリーンに現れた。

 

「織斑一夏も篠ノ之箒をほったらかしたミスを挽回しようとしている様だね。すでにキャプチャーフライが彼女を監視している。」

 

「じゃあ、これはあのガジェットから中継されてるライブ映像って事か?」

 

「ああ。準備は全て整った。僕達はここで待つのみさ。」

 

「けど、一夏君どうしてるかな?久し振りに会いたいな。」

 

「所長、会える時には会える。焦る必要は無いだろう。フィリップ、俺は少し海に入る。その間彼女に危害を及ぼそうとする奴がいたら骨の二、三本を折っておいてくれ。」

 

「・・・・全く、照井竜は君の事となると本当に見境が無くなるね。」

 

 

 

 

「う〜〜〜〜、疲れたよぉ・・・・動きたくないぃ〜〜。」

 

「簪、お前代表候補生だろ?体力無さ過ぎ。」

 

ビーチタオルの上でぐったりと寝そべった簪をやれやれと見ながら一夏は頭を振った。

 

「運んでくれてありがと・・・」

 

「彼氏ですから。」

 

一夏も彼女の隣に広げたタオルの上に寝そべって手を握り、パラソルから覗く日差しを見上げた。海の青とはまた違う雲一つ無い吸い込まれる様な神秘的な蒼天を見上げていると、瞑想をしているかの様に体が宙に浮いているかの様な不思議な感覚に見舞われる。そして徐に一夏は口笛を吹き始めた。

 

「一夏。その曲、何?」

 

「あれ?何だろ。俺も良く分からない。何て言うか、自然と・・・・頭の中に流れ込んで来た。でも、好きだぞ?この音色は。」

 

『俺もそのメロディーは朧げだがどこかで聞いた事がある。体も無くなった今、俺は過去の事は全くと言って良い程覚えていない。だが、そのメロディーだけは分かる。何なのかは分からないが、俺は間違い無くそれを知っている。』

 

(大道の記憶の欠片・・・?じゃあ、翔太郎さん達に聞いてみるしか無いな)

 

「一夏、また大道克己?」

 

「ん?何で?」

 

ポーカーフェイスはお手の物である一夏の考えをあっさりと見抜いた簪に、少しびっくりした。表情に出していた訳でも無いのにもかかわらずだ。

 

「大道克己と対話してる時、いつもこめかみに指を当ててる。だから、分かる。」

 

一夏の今の格好を真似してみせた。

 

「そこまで分かるのか・・・・」

 

「か、彼女、だから・・・・・」

 

簪は起き上がって一夏の肩に軽く頭を乗せた。ビキニの様に体の殆どを曝け出す様な事はしていないワンピースタイプとは言え水着は水着、簪からすれば裸の一歩手前なのだ。加えて一夏の体は長年のトレーニングの賜物で平均以下の体脂肪率を誇る為引き締まっており、若干だが腹筋も浮き出ている。

 

「そこまで気にかけて貰えるなんて、俺、幸せ者だな。うりうり、可愛い奴め。」

 

簪の頭を優しく撫でてやった。彼女は意外とその感触をお気に召したのか、まるで懐いた愛玩犬の様にもっとやれとばかりにグイグイと頭を手に押し付けて来る。だがしばらくしてからワイバーフォンが着信音を高らかに鳴らした。空いた手でそれを掴んで開き、受信したメールを確認した。

 

「ちー姉から・・・?いよいよファイナルステージか。簪、悪い。ちと用事が出来た。」

 

「え〜?」

 

「出来るだけ直ぐに戻るから、ちょい待っててくれ。な?」

 

「ぅ〜〜。」

 

「ほれ。」

 

誰にも見られていないのを確認すると素早く簪の唇を奪ってその場を後にした。

 

(大道。お前の記憶の事だが、俺はそれを無意識の内に一部だけだが何度か覗いた事があるって言ったよな?今から言う言葉で、思い当たる節があるなら言ってくれ。ビレッジ、アイズ・ドーパント、ドクター・プロスペクト)

 

以前見た夢の中に現れたキーワードを幾つか列挙した。

 

『ドクター・・・・プロスペ、クト・・・・アイズ・・・・・ビレッジ・・・・天の裁きヘブンズ・フォール・・・・・クォーク、ス・・・・・・?』

 

大道が記憶を無理矢理に呼び起こそうとしているからか、その反動で一夏は視界がグニャリと歪んだ。更に二日酔いの後に発症する様な激しい頭痛と吐き気に襲われて、その悪心(おしん)に耐え切れずにがっくりと膝を折った。口の中に胃液の酸っぱい味が広がり始める。

 

『まだだな。やはり塵程度の記憶の欠片しか呼び起こせない。加えて俺は体が無いし、お前の(なか)でしか存在出来ない。だからかもなあ。』

 

(絶対に呼び起こすさ。俺の中にいる以上、お前がどんな奴だったか知っておきたい)

 

『俺がどんな奴だったか、だと?ハッ・・・・・覚えてないし、さして興味も無いな。NEVER()の過去は消えて無くなった。消えて行く物がどうなるか俺は知らないし、興味も無い。大事なのはこんなザマだが俺はまだ生きているって事だ。』

 

精神世界の中で、大道はフッと笑った。

 

「なるほど。生きているから、どんな形であろうとせめて明日が欲しい。そんな所か。じゃ、俺は今から誰かさんの『明日』を救いに行くとしますか。」

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、浜から数キロある離れ小島ではオータム、スコール、そして一人の男が精密機器と向き合って作業をしていた。

 

「オータム、準備はどう?」

 

「最後の仕上げに入った。プロフェッサー。」

 

「OK。」

 

オータムが顎をしゃくって合図を送ったのは草臥れたスーツを身に着け、パソコンを持っている中年の男だった。ポケットからガイアメモリを取り出してスタートアップスイッチを押した。

 

『Cyber!』

 

左耳のコネクタに接続した瞬間、男は緑色に輝くの0と1の羅列に包まれた。だが、姿形は殆ど変わっていない。唯一変わっているのは手に持ったパソコンが左腕と一体化している事と右目がランプの様に赤く明滅している事ぐらいだ。

 

「パブロ・ピカソは言った。全ての創造の前に、まず破壊があると。」

 

「エム、アイ、準備は良いかしら?」

 

「無論だ。ISの整備も済ませてある。今度こそ奴を落として見せる。」

 

「こっちも万事OKですよ!」

エムの隣に立った背格好が同じぐらいの茶髪のショートヘアを生やした碧眼の体育会系のテンションを持った少女もプロフェッサーと同じ様にメモリを取り出してウィスパーを鳴らした。

 

『Machairodus!』

 

「スコール、オータム、ウィルスのダウンロードが完了した。目標は、銀の福音。テスト機動の開始から十分後に感染する。」

 

「相変わらず言い仕事するわね、プロフェッサー。」

 

「なに、シベリアのグラークから出してくれた細やかな礼儀と言う奴だ。それに住み難いこの世界の改築(リフォーム)を手がけられると来た。やらない訳にはいかんだろう。」

 

メモリを左耳から抜き取って人間の姿に戻ると、停泊している船の中に戻った。

 

「さて・・・・・貴方はどう出るのかしら?仮面ライダーエターナル。織斑一夏。」

 

「スコール、あたしらも出るのか?」

 

「そうねえ、砂浜で遊んであげるぐらいなら良いんじゃないかしら?でも、あんまり深追いはしない事。今回は只のご挨拶よ。」

 

 

 

 

 

 

「私を、どこに連れて行くと言うのですか・・・・?」

 

「黙って来い。直ぐに分かるさ。」

 

千冬は箒を連れてフィリップに指定された場所に箒を誘導した。

 

「ここで一体何を・・・・?」

 

「お前に会いたいと言う奴がいる。そこに連れて行くだけだ。」

 

「やあ。」

 

ボディーを展開したリボルギャリ—の上で本を読んでいたフィリップは立ち上がって小さく会釈をした。

 

「初めましてだね、篠ノ之箒。僕はフィリップだ。君が知っているとある人物の協力者で連絡係でもある。早速だがこれに乗って貰いたい。目的地で待っている。」

 

「・・・・・誰が・・・・?」

 

「君の姉、篠ノ之束さ。」

 

「嫌だ!!」

 

低くて抑揚の無い声が一気に空気を切り裂く怒声に変わった。

 

「誰が会いに行く物か!!家族とも一夏とも引き離される原因を作った女なんかに会いに行けだと!?ふざけるな!」

 

「箒ちゃん、私はここにいるよ。もう家族から、箒ちゃんからは、逃げも隠れもしない。私は、今こうしてここにいる。」

 

フィリップの後ろにいつの間に現れたのか、そこに束が立っていた。もう逃げ出したいと言う気持ちで一杯だが、ここで逃げてしまえば妹の心は間違い無く壊れてしまう。そうなればもう手の施しようが無い。

 

「織斑千冬、今だ。」

 

フィリップはリボルギャリーから飛び降りると同時に千冬に合図を送った。

 

「うむ。」

 

千冬は箒の襟首を掴むと、リボルギャリー —————正確にはリボルギャリーに乗っている束—————目掛けて彼女を投げ込んだ。そして二人が同じ場所で固まったのを確認すると、フィリップはスタッグフォンを操作してハッチを閉じた。

 

「織斑千冬、協力を感謝する。」

 

「本当にこれで上手く行くのか?」

 

「この方法を試した時に最初は逆効果なのかと思っていたが、解決した。だが、その結果に至るまで時間が掛かった。今回も同じ様に暫く様子を見るしか無い。あの中には飲み食いする物も幾つか置いてあるから、飢え死にはあり得ないさ。それに、今あの二人を自分自身とお互いに向き合わせないと何も変わらない。これは内なる恐怖、内なる悪魔に打ち勝つ為の戦いだ。」

 

「黙って見守れ、と言う事か。」

 

「理解が早くて助かるよ。お、来たね。君の弟が。」

 

一夏が大急ぎで千冬達のもとへ駆けつけた。

 

「遅いぞ一夏。もう始まっている。」

 

「ごめんごめん。中の様子は?」

 

「分からない。というより、僕達が関与すべきではない。確かにここまでの手間がかかったのは君が篠ノ之箒を放置したと言う失態が理由だが、あの二人の会話は僕達が聞いて良い物ではない。これは姉妹同士の問題だ。僕達は、ただその結果を見守らなければならない。相乗りするか別れるか。どの道を掴み取るかは、二人に掛かっている。あの二人は君と織斑千冬は昔から付き合いがあるのだろう?君が信じなくて誰が信じるんだい?」

 

一夏は黙って頷き、腕を組んで座り込もうとした。だが、一瞬体が硬直して強引に大道克己が強制的に入れ替わった。

 

「一夏!?」

 

「フフフフフフ・・・・違うな。俺の名は、大道克己。この世界に己の存在を永遠に刻み付ける男だ。」

 

 

一夏の顔は悪魔の様な冷笑を浮かべて歪んでいた。フィリップはその表情に見覚えがあった。何せ一度は破れ、再戦に臨み、激闘の末に討ち果たした男が浮かべた顔だったのだから。

 

「大道克己の人格が、織斑一夏に?!」

 

「久し振りだな、兄弟。お前らの手に掛かって以来か。俺を殺したつもりだろうが、生憎しぶとく生き残ってるぜ。しかもコイツが俺のメモリを持ってると来たもんだ。運命も中々に面白い事をしてくれる。もっとも、コイツの精神世界の中と言う都合の悪い生き残り方だがなあ。」

 

「やはりメモリの中に心の欠片が・・・・・今君と戦っている暇は無い。それよりも、君に見せなければならない物がある。」

 

「何だ?」

 

「君の・・・・大道克己がNEVERになる前と後の記憶の全て。君は知るべきだ。いや、知らなければならない。唯一君を信じて、英雄と讃えたミーナの為にも。」




いや〜、早いとこ克己とミーナの顔合わせやりたいですね。

ちなみにMachairodus(マカイロドゥス)はユーラシア起源のサーベルタイガーの一種で、様々な種類がある中でも最大級(平均的に2.5メートルの体長)です。言うなればミックのスミロドンの先祖、つまり上位タイプとお考え下さい。実際の見た目はこんな感じらしいです。

http://fc01.deviantart.net/fs70/f/2012/250/2/5/machairodus_giganteus_by_romanyevseyev-d5dwy6f.jpg


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