IS x W Rebirth of the White Demon   作:i-pod男

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やっとファントムタスクをちょっぴりだけど出せた・・・・

近々残りの代表候補二人も出します。

今回はお悩み相談室の風景を書いてみました。ではどうぞ


Pの気配/増える悩み

更識姉妹の二人と結ばれた一夏は、現在お悩み相談所でぐったりしていた。千冬と相部屋である為に就寝までの間小言を拝聴する破目になり、碌に眠れなかったのである。

 

「あ”〜〜〜・・・・・死ぬ。やばい。」

 

「アンタみたいなタフな男が早々簡単に死ぬ筈無いでしょ?ほら、これ飲みなさい。」

 

鈴は微糖の缶コーヒーと粉薬が入った袋をテーブルに置いた。

 

「コーヒーは分かるが、これは何だ?」

 

「滋養強壮剤。頭もスッキリするから。コーヒーと飲んだら効果は倍増よ。」

 

「おお、わりいな。」

 

袋の一つを空けてコーヒーと一緒に飲み込むと、口内にあまりの苦さに激痛が走った。が、我慢しながらも嚥下して何度か深呼吸を繰り返すとようやく腹に収まった。

 

「うぉぉう・・・・・強烈ぅ。けどお陰でエネルギー充填出来たぜ。ありがと。」

 

「じゃ、次の人が来るまでマッサージお願い。やっぱあたし寝相悪いから凝るのよね。多分お父さん譲りだわ。」

 

パイプ椅子に座った鈴の両肩に手をかけて肩甲骨辺りなどの凝っている部分をぐりぐりと刺激する。

 

「ゔ〜〜ぁ〜〜、気持ち良い〜〜〜・・・・・千冬さんが病み付きになる理由分かるわぁ〜。あたしコレ無かったから多分将来は腰痛持ちになっちゃうわね。」

 

「何を大袈裟な。んなババ臭い台詞ばっか言ってると老けるぞ?」

 

五分程してから相談事を持った生徒が現れた。

 

「お、来た。え〜っと・・・・一組の相川さんね。」

 

「じゃ、俺の出番だな。」

 

「こ、こんにちわ・・・・」

 

「おーす、キヨちゃん。まあ、座って。」

 

紅茶を振る舞って落ち着かせると、相談を始めた。

 

「あの、ね・・・・実は・・・・・」

 

だが話そうとする所で清香は口を噤んで俯き、指先をちょんちょんと突き合わせる。それを見て一夏と鈴は顔を見合わせ、ニヤッと笑った。大方察しは付くだろう。彼女に春が来たのである。

 

「あー、皆まで言うな。あんたのその反応だけで分かっちゃったから。当然こう言う事をしている以上私達には守秘義務が存在するから、プライベートは絶対遵守する。心配しないで。」

 

「うん・・・・」

 

「で、どう言うアレ?」

 

「私の彼氏の様子が何か変なの。連絡も以前に比べて俄然減ったし、会ったら会ったで空元気っぽいし、暗いし、相談して欲しいって持ちかけてもはぐらかされて・・・・でも、ちょっと気が弱いからあんまり強引に聞くのもどうかと思って。」

 

「つまり、彼が何らかのピンチに陥っているかもしれないと言う可能性が高く、気が気では無いと。」

 

「うん・・・・」

 

「じゃあ、今から幾つか質問するけど、可能な限り答えてくれるかしら?」

 

鈴はメモパッドを取り出して素早くペンを走らせた。

 

「分かった。」

 

「ではまず。貴方は彼氏の事は大好き?」

 

「はい。」

 

「一緒にいて、楽しい・幸せだ、と想う?」

 

「はい。」

 

「告白したのはどっちから?」

 

「彼から。」

 

「彼氏は草食系か、肉食系か?」

 

「草食指数が高い。」

 

「自分は攻め、受け、どっち?」

 

「どちらかと言えば、攻め、かなぁ・・・?」

 

「貴方は悩みや愚痴を聞く方、聞かせる方?」

 

「聞く方。」

 

等々、色々と質問をしてふむふむと言いながら答えを書き留めて行く鈴。メモの内容を何度か読み直すと、それを一夏に渡した。それを暫く反芻して紅茶を一口飲むと、パチンと指を鳴らして一夏は口を開いた。

 

「結論:多少強引でも相談させるべし。ただし、直接顔を合わせて話す事。」

 

「え?でも・・・・」

 

「クラスメイトとして言わせて貰います。キヨちゃんは根が人恋しいから人との交流では積極的だけど、その持ち味である積極性で彼氏が引いたり押しに負けてネガティブな反応を示すのではないかと言う事に少なからず恐怖を感じている。違ったら訂正して。」

 

清香は黙ったまま紅茶を啜って続ける様に促した。

 

「勿論押しと引きのメリハリは大事だけど、ここぞと言う所ではどこか本能的にちょーっぴりブレーキをかけて引いてるんじゃない?このご時世だから男が女怖がったりするのは当たり前。草食系なら尚更。私は貴方が大好きです、そして傷つける意思はありません。そう言うアピールをしつつ普段の攻めではなく受けに転じて甘えてみましょう。抱きついたりキスを強請るなりは本人任せだけど。男と言う者は新しい一面や、普段は見えない女性の一面を見て、そのギャップで陥落する事は珍しくないから。名付けて、ギャップ萌えタクティクス。ダメモトで試してみ?」

 

「 ギャップ萌えタクティクス ・・・良いかも。うん!!ありがとう織斑君、凰さん!」

 

沈んでいた表情が再び明るくなり、清香は笑顔でお礼を言いながら部屋を後にした。

 

「また良い仕事したわね。」

 

「それに、たまぁに土産で良いモンが手に入るから辞められねえんだよな。」

 

上質の辛子明太子やバームクーヘン、ジゴバのチョコレートなど、稀にそう言った手土産を持って来るクライアントがいる為、一夏としては出費が少なくなるので助かっている。

 

「にしてもさ、お前も『リーディング』が大分上手くなったな。」

 

「誉めてくれるのはありがたいけど、一夏に言われても皮肉としか取れないわね。アンタなんか一を観察して十を知る位だもん。コールドリーディングもホットリーディングもあったもんじゃないわ。」

 

冷えたウーロン茶を喉を鳴らして飲み干すと、メモパッドの走り書きされたページを破り取って『個人情報秘匿遵守』の張り紙が付いたシュレッダーにかけた。

 

「そりゃすまんな。でも、約一名悩みを抱えたまま打ち明けようとしない奴が一人いるんだよなあ。どうにかしたいんだが、正直判断に困ってる。一応授業とかには出るんだが、それ以外はまるっきり姿を見せない。抜け殻だけが生活してるみたいなもんだ。」

 

残りの紅茶を飲み干すと、カップを流し台に持って行って食器を洗い始めた。

 

「確かに、無理矢理引っ張りだしてどうにかなるって訳でも無いけど、かと言って諭そうとしてもねえ・・・・特にアンタの場合姉妹に二股かけてるからショックが更に酷くなるんじゃない?」

 

「それを言うなよ。だから対処に困ってんだろーが。お前が説得しようとしても意味無いし。今はとりあえず箒と束さんをどうにか円満にし直す事が急務だ。それに仕方無いだろ、好きになっちまったモンはさ。後、楯無さんが言うには学園はある意味独立した一つの国として扱われるらしいから他の国の法律には左右されないらしい。問題無いって。」

 

「ふ〜ん。あたしも男作ろうかな・・・・」

 

「やめとけやめとけ。お前のお眼鏡にかなう相手がいても、ロンさんが比喩表現とかじゃなく、ソイツを料理しようとするぞ。」

 

ガハハハと笑いながら一夏は無理無理と言いながらパタパタ手を振る。

 

「大丈夫よ。ああ見えてあたしには甘いから。今でもお母さんと新婚夫婦オーラ丸出しで年甲斐も無くデートにでも行ってるんじゃない?」

 

「・・・・お前が言うと現実味があるから笑えねえな。」

 

「入るぞ。」

 

「お、千冬姉。いらっしゃい。」

 

「凰もいるのか、まあ良い。お前もそれなりには気心が知れた仲だ。お前がいるなら一夏一人よりもある程度安心出来る。」

 

「何かあったんですか?」

 

千冬がパイプ椅子に座り込み、一夏と鈴も彼女の手に握られている書類に目を向けた。

 

「ヨーロッパ圏から一組に専用機持ちの代表候補が二人やって来る。コレを見ろ。」

 

書類をテーブルにぶちまけ、二人の人間の写真が現れた。

 

「一人は見覚えがあるな。確か・・・・千冬姉が仕込んだ人だよね?」

 

「ああ、モンド」

 

「鈴。」

 

「おっとと・・・・すいません。でも、つまりはそう言う事ですよね。転校生の一人は、ドイツ軍の現役軍人。それも千冬さんに仕込まれた。」

 

「で、もう一人は・・・・・Oh, mon dieu. これはまた。荒れるぞ、色々と。」

 

「シャルル・デュノア。フランスの代表候補生か。って、男?!・・・・な訳ないか。」

 

「専用機持ちレベルの操縦者が一つのクラスに集中するってだけでも十分に異例だってのに、男性操縦者がもう一人いたなんて事を完全に隠し切れる筈が無い。必ず情報は多かれ少なかれどこからか漏洩する。恐らくは俺を狙ってるんだろうな。あーあ、山田先生のストレスが・・・・」

 

「今度ケーキとコーヒーゼリー持って行きましょ。なんか色々と申し訳無さで一杯になって来たわ・・・・」

 

「対策は練っといた方が良いな。翔太郎さんや束さんに電話しとこ。」

 

 

 

 

 

 

とある高級ホテルのスイートルームでは、二人の女性が何らかの作業を行っていた。

 

『エム、オータム、私達もそろそろ本格的に動き始めた方が良いみたいよ。資金もそれなりに集まったしね。』

 

「あいつ失敗しちまいやがったからなあ。今後どうすんだ?」

 

女にしては粗野な口調で喋る橙色の長い髪を持つ女が立体スクリーンに表示される豊満な肉体を持つ金髪の女性にそう問うた。別のスクリーンには、ガイアメモリのイニシャルが幾つも記載されたリストがある。毛先を指に巻き付けては放し、巻き付けては放しを繰り返している。

 

『メモリの売買は資金繰りの為にも必要だから続けるわ。数時間でそこ引き払って合流しましょう。オータム、そしたら、また、ね・・・?』

 

オータムと呼ばれた粗野な女性は恍惚としてその言葉を聞き、何度も頷くと通信を切った。テーブルに無造作に置かれた軍用拳銃M9A1のブラスチェックを行って弾が薬室に入っているのを確認すると改めてそれを左肩に吊ったホルスターにしまい込む。ハーフセレーションがついたコンバットナイフも右腿のシースに押し込んでズボンの裾でナイフの柄を隠した。

 

「・・・・オータム、貴様がどう思おうが、どうなろうが関係無い。私は、織斑千冬を、消す。邪魔する奴は容赦しない。それだけだ。」

 

オータムと呼んだ女性の隣にいる女、エムは彼女より頭二つ程背丈が低い。全身を黒い衣服で包んでおり、よく見ると表情、髪型、鼻梁などが千冬と瓜二つだった。そして彼女の手には銀色に輝く楕円形の何かと、一本のメモリが握られている。

 

「そして、織斑一夏・・・・・もう一人の私。お前も・・・・殺す。」

 

その手に握られたゴールドメモリのイニシャルを見つめ、ウィスパーを鳴らした。

 

『Nazca!』

 




久々にギリギリ四千字突破出来たぜ・・・・・

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