IS x W Rebirth of the White Demon   作:i-pod男

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短いですが簪ルートです。更識いもう党の皆様、どうぞ。


番外編:愛のK/一途な男

頭を垂れる一夏に向かい合って座る二人。

 

「一夏君、もう良いわ。」

 

「はい?」

 

「だーかーら、許してあげるって言ってるの。そんなとんでもない事情聞かされたら頷くしか無いじゃない。ただし、絶対に無茶はしないこと。簪ちゃん泣かせたら許さないからね?」

 

「分かりました。んじゃ、話す事は話したんで、俺はこれで」

 

「待って一夏。」

 

立ち上がった一夏を呼び止めたのは簪だった。

 

「どうした?」

 

「お姉ちゃんに聞きたい事がある。けど一夏にも関係してるから・・・聞いて欲しい。」

 

「オッケー。」

 

一夏は改めて座り直すと、ポットの紅茶をカップに注いだ。そして一口飲もうとした。

 

「お姉ちゃん。正直に答えて。お姉ちゃんも、一夏の事が好きなんでしょ?」

 

「ブフゥ〜〜〜!!ゥェエホッ!ゲホッ!!」

 

だが楯無に向けられた簪の質問に一夏は盛大にその紅茶を口から吹き出し、咽せた。激しく咳き込みながら胸を叩く。

 

「は?え、ちょま、え?」

 

「どうなの、お姉ちゃん?」

 

まるで物的証拠をこれでもかと突き付けられて追い詰められた犯人の様に楯無の表情に同様の色が在り在りと見えた。そして遂に観念したかの様に小さく頷いた。

 

「ええええええ?!いつからですか?」

 

「簪ちゃんと仲直りさせてくれたあの時から、かな?いけないのは分かってる。だって、一夏君は簪ちゃんが好きだから。でも、一夏君は私の気持ちを、背負っている物の数とその重さがどんな物か全てお見通しだった。初めて私を女としてみてくれた、から・・・・私も、甘えたいなって。」

 

「やっぱり・・・・」

 

「え?でも、てっきり楯無さんて彼氏がいたとばかり思ってたんですけど。」

 

「いたらこんな事言わないわよ!私は、一夏君の事が好きなのっ!!」

 

真っ赤になりながらもそう言い切った。

 

「ふう。言えてスッキリしたわ。もう忘れて。簪ちゃんの彼氏かっ攫うなんて事、出来ないししちゃいけない。ほら、お姉さんは仕事があるんだから帰った帰った。」

 

「お姉ちゃんと一緒なら、別に、良い・・・・・」

 

「「え?」」

 

楯無と一夏は耳を疑った。彼女は今何と言った?

 

「一夏は、お姉ちゃんと私を色んな意味で救ってくれた。もしかしたら無意識の内に一夏を好きになってた事に気付いていたと思う。お姉ちゃんの一夏を見る目が変わったから。でも、お姉ちゃんは責任と立ち場だけなら一番大変。だから、一番甘える権利があると、思う・・・・」

 

「簪ちゃん・・・・・」

 

「他の人だったら絶対嫌だけど・・・・お姉ちゃんなら、良い。」

 

「ちょいちょいちょい。本人抜きで話進めないでくれる?盛り上がってる所で水を差す様で悪いけど。」

 

紅茶に咽せていた状態から回復した一夏が口を挟んだ。

 

「二人が納得しても俺がまだ納得してないぞ。姉妹+二股とか・・・・何と言うか、色んな意味でヤバい目を見る気がする。」

 

主にこの学園の生徒、千冬、千冬、そして学園の生徒、だが主に千冬の所為で。

 

「一夏君は・・・・・私に魅力、感じない・・・・?」

 

泣くのを必死で堪えている楯無を見て、一夏は居たたまれなくなった。目も逸らしたくなった。だがそれは出来ない。そんな行為は彼女に対する侮辱でしかない。

 

「感じますよ。でも、俺は二人の人間を同時に愛せる程器用な人間じゃないんです。必ずいつかどこかで何らかの優劣をつけて二人を比べてしまう。そうなってしまえば、皆が傷つく。言い訳じみてますけど、今の俺にはそうしか言えないんです。でも、楯無さんみたいな人だったら、俺以上に良い人が絶対見つかります。学園じゃ話は別ですけど、何も俺だけが一番の良い男じゃないんですよ?」

 

「そっ・・・・か・・・・」

 

「でも、ありがとうございます。IS学園最強に惚れられるなんて・・・光栄です。それと、簪との事ありがとうございます。」

 

「簪ちゃんの、ごと・・・・よろじく、ね・・・?」

 

「はい。じゃあ、失礼します。」

 

一夏は頭を下げると、生徒会室を出た。だが、この間彼は終始歯を食い縛っていた。ドアを閉めるやいなや一気に屋上まで駆け上がり、到着と同時に思い切り拳を地面に叩き付けた。ナノマシンの機能は切ってあるのでクレーターが出来上がる事は無かったが、僅かながら罅が入った。

 

「糞っ!!!!」

 

(余計に傷つくからフッた男が中途半端な情けをかける訳には行かない。けど、こんなにフる方もフラれる側と同じ様に辛いのか。ごめんなさい、楯無さん。ほんとに、ごめんなさい。)

 

フッてしまったが、これからも彼女は自分の事を想ってくれるのだろう。彼女はどこか食えない所がある。しかしその子供っぽさが彼女の純粋さを露わにしている。そう考えると、攻撃を受けた訳でも無いのに胸が抉られる様に痛い。胸を幾ら摩っても消えない。頭もグチャグチャに掻き乱されてしまう。

 

二人は、泣いた。今まで泣きそうになった事は何度もあったが、何時も我慢して先へ進もうとしたが、今回ばかりはそうは行かない。

 

「これからどうやって接すりゃあ良いんだよ、俺は・・・・・?」

 

一夏は乱暴に涙を拭いながらそう零した。だがその質問に答える者は誰も折らず、そよ風が彼の言葉を空しくも攫って行き、海の彼方へと消えて行った。

 

「一夏。」

 

簪の声に、一夏は涙の後を拭い去って振り向いた。

 

「おお。どうした?」

 

「泣いてたの?」

 

「ちげーよ。」

 

そっぽを向いて一夏は海の方に目を向けた。

 

「あんな事行った後であの場に留まれる訳無いだろ?留まれる奴は余程神経が図太い奴か、只のKYのどっちかだ。俺はどっちでもないからここにいる、ただそれだけの事だ。」

 

「嘘。」

 

簪は一夏の握り締めた手を両手で包んだ。

 

「一夏は優しいから、いつもそうする。自分が傷ついても他の人が傷つかない為に何時も頑張るから。一夏が仮面ライダーだって事も、ナノマシンの事も、全部心配かけない為に隠してた。恥ずかしい事じゃないから、良いんだよ?泣いても。」

 

「男が人前で泣くなんてありえないから。泣いたら・・・・・色々お終いなんだよ!!」

 

「良いから。泣いて?誰にも言わないし、見ないから。」

 

後ろから抱きしめられて一夏の涙腺が再び緩み、ポタポタと涙が滴り落ちたが、すぐにそれを乱暴に拭う。食いしばった歯の奥から小さく嗚咽が漏れ始めたが、すぐにそれも押し止めた。簪の手を振り払うと、彼女の方を向いて抱きしめた。

 

「彼女の前位では、意地張らせてくれよ。」

 

「痩せ我慢、良くない。」

 

「そうだな。けど、男ってのは変な所で頑固なのさ。ここだけの話だけど簪が天次郎さんに連れて行かれた後に俺結構泣いたんだぞ?」

 

「あははは。」

 

容易に想像出来るのか、簪は少し笑ってしまった。簪から離れると、欄干に凭れ掛かって海を遠い目で眺め始める。

 

「簪、ごめんな。お前の姉ちゃん泣かせちまって。てか良いのか?振った最低ヤローじゃなくて楯無さん慰めなくても。」

 

「お姉ちゃんに一人にしてって言われたから。追い出されちゃった。お姉ちゃんも一夏と同じで意地っ張りなんだ。」

 

「そうだろうな。」

 

「一夏。」

 

二人の間に沈黙が訪れたが、最初に破ったのは簪だった。

 

「ん?」

 

「キス・・・・して、くれる・・・?」

 

「良いよ。」

 

きつく目を瞑る簪の唇に自分のを軽く押し当てた。ピクンと彼女の体が跳ねたのを感じて、一夏は優しく彼女の腰回りに腕を回して抱き寄せると、簪も一夏の首回りに腕を回した。一旦唇を離すと、簪の頬は真っ赤になっており、肩を上下させて荒い息をしていた。

 

「簪・・・・大丈夫か?」

 

「らい、ひょうぶ・・・・」

 

やはり内向的だが感性豊かな彼女には刺激が強過ぎたのだろうか、酔っぱらったみたいに呂律が回らない。だが、一夏の首に回した腕はそのままに背伸びをして自分から一夏にキスを強請った。

「ん〜〜♡」

 

(い、意外と積極的だな。一回目で何かのスイッチ入ったのか?)

 

一夏もそれに答えないわけにはいかず、キスの最中腰回りの腕の力を強めて更に体を密着させた。それから十五分程キスをし続けた結果、千冬に見つかって小言を食らったのは別の話である。

 




最近四千突破出来ない・・・・時差ボケなんて大嫌いだ、ちくせう・・・・・

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