IS x W Rebirth of the White Demon   作:i-pod男

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テストなんて無くなってしまえば良いのに・・・・

UAがいつの間にか三万を突破しておりました。感謝感激です。ありがとうございます。それと、いきなりですが今日から約一週間程投稿は出来なくなります。すいません。


Gの乱入/悪魔、再臨

鈴と簪の試合は白熱していた。シールドエネルギーも拮抗したままだ。削ったと思えば削られ、削られたと思ったら削る。正にシーソーゲームになっている。

 

「初見でここまで来るなんてやるじゃないの。衝撃砲もそこまで簡単に避けられるとへこむわ。(荷電粒子砲と刃が振動する薙刀、だけじゃ無いわね絶対。必ずどこかで何かを仕掛けて来る)」

 

「鈴も、強い・・・・(奥の手、使うべきかな?)でも、負けない。」

 

「こっちの台詞よ!」

 

管制室では一夏、楯無、真耶、そして千冬の四人が二人の戦闘を見守っていた。特に一夏は腕を組んだまま片時もスクリーンから目を離さない。

 

「頑張れ〜簪ちゃん!!」

 

「ほへぇ〜、凄いですね二人共。ここまで拮抗するなんて。」

 

待ったりした様子でコーヒーを飲みながら観戦する真耶。張り詰めた管制室の空気を和ませるオアシスである。

 

「だが試合の時間制限もある。その時はシールドエネルギーの僅かな差で勝敗が決まるだろうな。残りの時間内でどれだけ効率良く削れるかだ。」

 

「同感。今の所、効率良く削れそうな手札を持ってるのは簪だと俺は思う。」

 

「ほう?何故そう思う?」

 

「打鉄の発展型だから、薙刀と荷電粒子砲だけが武装とは思えない。絶対に何かを仕込んで使うチャンスを待っている。何より、簪の表情がまだ勝機はあるって言ってるから。」

 

「そこまであいつが気になるか?」

 

「彼女ですから。」

 

「そうか・・・・・・何?」

 

千冬は頷いて再びスクリーンに目を戻して一瞬そのままスルーしそうになったが、二度見で再び弟に顔を向けた。

 

「ん?」

 

「か、彼女・・・・・と言ったか?(私の聞き違いだ。絶対そうだ)」

 

「うん、彼女。Like ではなく Love の関係。類義語は、恋人、リア充、カップル、エトセトラ。何?羨ましいの?行き遅れが悔しいの?」

 

だが、千冬は答えずにスクリーンを見つめ直す。

 

「貴様には後で追加の課題をくれてやる。どうだ嬉しいだろう?」

 

「はい、こんにゃくサラダ追加決定。」

 

「ぐっ・・・・・貴様教師を脅すのか・・・?」

 

「教師が恐喝紛いの言い回しで追加課題出す方がよっぽど酷いと思うけどな。それに、見た目は兎も角あれ健康食材だよ?」

 

言い終わった刹那、凄まじい轟音と地響き。数メートルの高さまで朦々と立ち上る土煙の所為でカメラ越しには何も見えない。

 

「アリーナのシールドバリアが破られました!」

 

「何だと!?」

 

「千冬姉、観客の避難頼むわ。」

 

「凰、更識!試合は中止だ、直ちにピットに戻れ。状況をレベルDと認定、生徒は速やかにアリーナから避難しろ!」

 

観客席をシールドバリアの他に防護シャッターが展開された。一夏は大急ぎで管制室から飛び出し、寮長室に戻った。自分の布団をどかすと、その床を開いて隠し金庫からドライバーとメモリを取り出すと、再びそれを元に戻してアリーナを目指した。

 

(クソッタレが。間に合え 間に合え 間に合え 間に合え!!!!)

 

そしてピットに辿り着いた。

「「一夏!!」」

 

「二人共無事か?」

 

「とりあえずはね。」

 

「でも、あれって・・・・何?」

 

土煙は若干晴れ初めている。それにより少しずつアリーナのシールドを突き破った者が南なのか輪郭がハッキリとし始めた。一体の巨大な亀の様な異形の怪人と、メタリックな装甲に身を包んだ二人が立っていた。

 

「やっぱりか。簪、楯無さんもその内来る筈だから絶対にピットから動くな。で、そこから三人で良く見てろ。」

 

一夏はドライバーを装着し、ガイアメモリを起動した。

 

『Eternal!』

 

「変身!」

 

『Eternal!』

 

「男にとって好きな女とは自分の命を遥かに凌駕する国宝クラスの尊さがある。それを脅かしたあのドーパントの判決は・・・・・・死だ。」

 

靡く黒いマントと、番組でよく見る仮面と装甲。

 

「一夏が、仮面・・・・ライダー・・・?」

 

「そゆ事。」

 

変身した事によってエコーがかかった声に変わっているが間違い無く一夏の声だ。エターナルは背中のマントを外すと、簪と鈴にそれを渡した。

 

「それに包まっていろ。そうすればドーパントの攻撃は完全に無力化出来る。」

 

「久々に見たわね、ソレ。ほら、とっととぶっ飛ばして来なさい。」

 

「おう。」

 

鈴の言葉に背中を押され、仮面ライダーエターナルはドーパントと二人の仮面ライダーがいるアリーナの中心地へ向かって行った。最初こそは歩いていたが、ナノマシンの稼働率を最大に上げて、小走りから全力疾走に加速した。

 

「うぉぉおおおおるぁああああああああああーーーーー!!!」

 

死者の魂を連想させるおどろおどろしい青白い炎がエターナルの両腕に施されたブルーフレアから現れ、全力の右ストレートがゲンブ・ドーパントの側頭部を捉えた。幾ら重量級にして防御重視タイプのドーパントであっても物理学には逆らえない様だ。

 

「速度、それ即ち重さ!覚えとけ!」

 

「全く、やっと来たか。」

 

黄色いアクセル、アクセルブースターがエンジンブレードを肩に担いで溜め息と愚痴を漏らした。どうやら体中の噴射口を使ってここまで飛行して来たらしい。

 

『気を付けたまえ。奴の体はガイアキャノンとビッカーファイナリュージョンを防いだ。だが僕達以上の攻撃力を持った君なら倒せるだろう。僕達は念の為に待機しておくよ。』

 

CJXはマシンハードタービュラーでやって来た様だ。フィリップの言葉にエターナルは頷く。立ち上がろうとしているゲンブ・ドーパントに近付き、メビュームマグナムを何発か撃った。だが、やはり弾かれてしまう。

 

『馬鹿め!その程度の豆鉄砲で俺は傷付けられんぞ!誰が来ても結果は同じだ!』

 

「そうか。なら、てめえにはとっておきのプレゼントをくれてやる。」

 

静かにそう言い放ち、アクセル、サイクロン、ファング、エターナル、ヒート、ジョーカー、ルナ、メタル、トリガー、そしてウェザーのメモリを体中に巻き付いたマキシマムスロットに叩き込む。

 

『Accel Maximum Drive!』

『Cyclone Maximum Drive!』

『Fang Maximum Drive!』

『Eternal Maximum Drive!』

『Heat Maximum Drive!』

『Joker Maximum Drive!』

『Luna Maximum Drive!』

『Metal Maximum Drive!』

『Trigger Maximum Drive!』

『Weather Maximum Drive!』

 

マキシマムドライブの十重奏は、正に死刑宣告。

 

「ハァァ〜〜〜〜〜・・・・・・!!!!」

 

右拳に再び現れる青白い炎と、その中心から迸る緑色の光は美しくも不気味な物だった。再び最大スピードでゲンブ・ドーパントの懐に飛び込むと、右足をアリーナが地割れを起こす程のパワーで踏みしめて八極拳の初歩的な技、崩拳を繰り出した。踏みしめた際に起こる震脚によって沸き出す力で近距離からのパンチを繰り出す技だ。

 

「セィヤッ!!」

 

幾ら堅い体を持ち、Wの最強形態であるCJXの必殺攻撃を耐え凌げるドーパントであるとは言え人間だ。急所である鳩尾を、それもナノマシンとWよりも更に倍近くのメモリを使ったマキシマムドライブによる相乗効果の前には敵わず、いとも簡単に押し負けた。

 

「さあ、地獄を楽しみな。」

 

背を向けた瞬間、凄まじい爆発音と共にメモリブレイクが完了し、ショワンウーが破壊されたメモリの残骸の隣で気絶して横たわっていた。

 

「スッキリしたか?」

 

「微妙ですね。正直あの甲羅が無ければ両腕両足の関節を撃ち抜いて、踏みつけて、切って、至近距離からヒートとトリガーのマキシマムを頭に叩k」

 

「もう良い、もう良い。聞きたくない。」

 

翔太郎の意思が両手で耳がある場所を抑えようとしたが、右手が左手を留めた。

 

『全く。ある意味初代エターナルよりも質が悪いな、君は。』

 

「同感だ。緊急事態だと言うのに電話にもでないとはな。」

 

「俺クラス対抗戦あったんスけど?ていうか見つかる前にさっさと行って下さい。バレたらヤバいですよ?」

 

『それならば心配は無い。万一僕達がドーパントを学園への侵入を許してしまったらカメラなど記録を残せる様な物にジャミングを仕掛ける様に言っておいた。』

 

相変わらず抜け目の無いフィリップである。

 

『だが、まあ、長居は無用だね。犯人の方は任せるよ。アクセル。』

 

「構わない。元よりそのつもりだ。ではな。」

 

二人の仮面ライダーはショワンウーを担いで再び開けられた穴から外に飛び出した。それを見届けると、エターナルもドライバーからメモリを引き抜いて変身を解除した。

 

「やばい、しんどっ。翔太郎さんでもツインマキシマムはヤバいっつったのに。やるんじゃなかったぜ。おぅふっ。」

 

一夏は後ろに倒れ込んで空を見上げた。憎たらしい程に澄み切った蒼い空を。

 

「「一夏!!」」

 

「一夏君!大丈夫!?」

 

「おー、鈴、簪、後たてn・・・・シストーカー先輩。」

 

「何で言い直したの!?楯無さんで良いでしょ?!」

 

「イヤー何となく。」

 

「ま、そんだけ軽口叩ける元気があるなら大丈夫ね。にしても、派手にやり過ぎ。アリーナの三割ちょっとが破壊されてるわよ?しかもあのマキシマム。十本同時ってその内地球破壊するんじゃない?」

 

「んな事しても意味ねーだろうが。鈴、先に戻っててくれるか?俺はもう少しここでゆっくりしてる。」

 

「分かった。どうせ千冬さんに呼び出し食らうだろうし。ま、無理はしないことね。相談室も明日あるし。」

 

「わーってる。」

 

鈴がピットへと姿を消し、一夏は更識姉妹の眼力で居心地が悪くなっていた。説明求ムと視線がそう語っている。起き上がって胡座をかくと、二人を見つめ返した。

 

「分かった、言うよ。そんなに見られちゃ降参するしか無い。」

 

そして一夏は語る事を決意した。全てが始まった自分のビギンズ・ナイトを。

 

 

 

 

 

 

 

報告書

 

事件は解決し、犯人も逮捕された。あの後、ロン刑事は持っていた箱と剣を全て破壊及び破棄した。錦衣衛としての仕事は終わり、もう自分を縛る物は何も無い。背負っていた重い何かから解き放たれたかの様な穏やかな表情をしていた。これで心置き無く家族との時間を楽しむ事が出来るだろう。過去のミスで幕を閉じる事が出来なかった事件の幕が下りた今、彼のけじめはつけられた。あれから辞職すると言っていたが、どうなるかはまだ分からない。願わくば、彼と彼の家族が手に入れた安寧が少しでも長く続かん事を祈っている。

 

 

「こんなもんか。」

 

翔太郎はタイプライターで書き終えたローマ字の報告書を読み返すと、満足そうに頷いてキャビネットに収納した。

 

「にしても、いよいよ僕達も動き難くなるね。恐らくだが、仮面ライダーの存在が公になる日も近いかもしれない。」

 

「そ〜なったら束さんが匿って上げようそうしよう!こー見えても拠点は星の数程あるのであります!」

 

「ああ。そうだね。有事の際は頼らせて貰うとしよう。それより、今日はお礼を言わなければね。君がジャミングに一役買ってくれなければ、僕達は女性利権団体やIS委員会に終始追い回される破目になる所だった。ありがとう、篠ノ之束。」

 

「やったぁ〜〜〜!!!フィー君に誉められたぁ〜!撫でて撫でて!」

 

特に断る理由も無いので撫でてやると、ウサ耳カチューシャが感情とリンクしているかの様にぴょこぴょこと嬉しそうに跳ねた。

 

「まるで子供だな。」

 

「良いじゃないか。その分あつk・・・・もとい手懐け易い。」

 

「言い直しても充分悪いよ、フィー君!?束さんのハッピーな気持ちを返せぇ〜〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

アリ—ナにずっといるのも何なので、三人は生徒会室に移動した。テーブルを挟んで一夏の向かいに簪と楯無が座る。

 

「まずは、そうだな。俺が簪に会う一年ばかし前、家出したんだ。最終的には世話になった人に説き伏せられて千冬姉と帰ったんだが、帰り際にドーパントに襲われた。どうにか逃げ切れそうな所で千冬姉が襲われそうになって俺は体張って庇ったんだ。俺は痛いやら熱いやらで気を失って、上半身の前半分が焼けただれちまった。」

 

簪は驚きを隠せず、口元を両手で覆った。

 

「じゃあ、どうやって・・・・?」

 

「ナノマシンだ。」

 

楯無の疑問に一夏はそう答える。

 

「暫くの間は生死の境を彷徨っていたんだが、とある天才が作った細菌サイズのロボットの助けによって、体内の細胞が活性化されて俺は蘇った。けど、細胞の活性化だけじゃなく、体のありとあらゆる組織が強化された。五感、膂力、全てが化け物クラス。本気を出せば俺はデコピン一発で人の頭を弾けたザクロに変えられる。言うなれば、俺は改造人間として生まれ変わったんだ。今でこそようやく加減が利く様になったが、昔は服は破るわ物は弾みで壊れるわで散々な目に遭ってたんだぜ?」

 

「じゃあ、あの時もずっと?」

 

「ああ、隠してた。」

 

簪の質問に一夏はただそう答えた。

 

「時が来たら俺から切り出すつもりだったんだが、まあそう言う事だ。メモリの方は俺が協力したいと願い出たらその人達が受け入れてくれて、渡してくれた大事な物だ。兎に角、今まで黙っててごめん。さてと、じゃ、楯無さん。どうぞ。」

 

一夏は胡座をかいたまま目を瞑る。

 

「え?な、何が?何がどうぞなの?」

 

「楯無さん言いましたよね。簪を裏切る様な真似をすれば容赦はしないと。俺がなんて答えたか、覚えてます?煮るなり焼くなり好きにすれば良いと。もうやっちゃってますから。あの時ああ言ったのはそう言う意味です。どうぞ。お気に召すまま。」

 

まるで斬首されるのを潔く待つ罪人の様に一夏は目を閉じたままその場を動こうとしなかった。

 


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