IS x W Rebirth of the White Demon   作:i-pod男

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期末テストが来〜る〜、きっと来る〜、きっと来る〜♪

いや、冗談抜きでもうすぐそこなんですよね。神は無情だ・・・・・なので、更新スピードが駄々下がりになります。冬休みに入ったらまた更新のペースを上げて行きますので。

では、どうぞ。


Gの乱入/クラス対抗戦

「いよいよだな〜。」

 

一夏は上の空で食事をしながら間延びした声でそう言った。

 

「ファイト、おぉ〜なのだおりむー。皆の為に〜。」

 

同じ位間延びした口調で布仏本音が別の席から一夏に応援の言葉を送った。

 

「あんたねえ、始まるまで一時間半切ってるんだからさあ、もうちょっと厳しい顔してくれない?言っとくけど、コレ公式戦なのよ?機体を作った企業の人間とか政府の役人が見に来るのよ?後、女性利権団体とか言う胸糞悪い雌犬の斥候も。」

 

鈴は呆れた表情でラーメンとチャーハンのセットに噛りつく。

 

「良いんだよ、別に。今更見せ物になりたくないっつってももう時既に遅しだ。」

 

一夏はいつも通り積み上げられた六つの盆と食器を片付けると、食後のブラックコーヒーを飲んでいた。

 

「さて、そろそろ対戦相手が誰になるかわか・・・・Oh, my。何てこった。」

 

「うわ〜・・・・一夏。何て言うか、その・・・・・ごめん。」

 

張り出された対戦表の第一回は二組代表 vs 四組代表、つまり鈴 vs 簪なのだ。幼馴染み vs 恋人と言う何とも複雑な思いが一夏の胸中で渦巻いた。

 

「鈴。絶対防御があるからって簪傷つけたら幾らお前でも許さねーぞ。」

 

「分かってるわよ、アンタが全力全開出来たら殆どの奴はザクロよ、ザクロ。頭パーンてなるもん。でも、分かってるでしょうね?只でさえ世界各国にマークされてるんだから、『アレ』使ったらアンタマジで色々とヤバくなるわよ?」

 

「ヤバくなるって何が?」

 

ちょうどやって来た所なのか、簪が丁度通りかかった。

 

「お。簪、おはよう。あー、ワンオフ・アビリティーの話だ。エネルギーすげえ食うし、使い所間違えたら色々とヤバくなるって事。簪にはまだ見せてなかったから知らないのは無理は無いな。」

 

「そうね。私は千冬さんにセシリアとの戦闘記録を見せて貰ったから分かったけど、何よ、あのワンオフは?鬼畜過ぎるでしょ?」

 

「アハハハハハ・・・・さてと、じゃ俺は一度部屋に戻って瞑想でもして来る。簪、また後でな。」

 

「うん。」

 

心の中で簪に嘘をついた事を謝る。そして別れを告げて食堂を出るまで一夏は笑顔を浮かべていたが、廊下を通るとすぐに笑顔は剥がれ落ちて表情が硬くなった。そして大股でとある部屋の前で止まる。1025号室、箒の部屋だ。あの叱責以来、箒は極端に姿を見せる事が少なくなった。どうやら引き蘢ってしまったらしい。

 

「全く。おい、箒。何時までそんな所でふさぎ込んでるつもりだ?」

 

だが返事は来ない。まるで天ノ岩戸に話しかけているかの様だが、一夏は少なくとも一日に一回は出て来る様に説き伏せようとしている。だが、全く反応が無い。

 

「こりゃ時間が掛かるな。まったく。千冬姉にでも頼んだ方が良いかな?」

 

最初は扉を蹴り破って無理にでも引き摺り出そうかと考えた事もあったが、すぐに辞めた。自分から突き放しておいてまた自分から近付いて慰めようとするのでは本末転倒だ。箒自身が自分の過ちに気付いて自分から行動を起こさなければならない。足踏みをしているだけでは進めないのだから。

 

「今は考えても仕方無いか。」

 

部屋に戻ると、背筋が張り詰めた糸の如く真っ直ぐになる様壁に背を向けて胡座をかくと、腹式呼吸を繰り返した。方法は様々だが、一夏にとってストレスを解消するのはこれが一番確実なのだ。腹筋に力を入れて息を強く大きく吐き出せば、吸引の際より多くの酸素で肺を満たす事が出来る。酸素を吸入する事によって心臓への負担が減少する。そしてしばらくすると、『忘我の境地』に至った。まるで宙に浮いているかの様な不思議な感覚に浸り、目を開けた。

 

「っしゃあ。やるぞ。」

 

一夏はピットに向かって悠々と歩いて行った。

 

「さ・て・と。ここで待機してますかねー。」

 

試合が始まるまで残り時間は十五分を切っていた。簪は念には念をと機体の最終チェックを行っている。空中に投影されたキーボードの上をまるでピアノでも弾くかの様な鮮やかさで手が動く。

 

「簪。相手はあんなメチャクチャな幼馴染みだけど頑張れ。」

 

「うん。・・・・・あ、ありがと・・・・・(昨日の今日で恥ずかしい・・・ああああ、あんな事になっちゃったし)」

 

真っ赤になった顔を隠す為に俯きながらもチラチラと上目遣いに一夏の方を見やる。

 

「まだナーバスそうだな。ほれ、落ち着くおまじない。」

 

一夏は六回だけ、優しく簪の髪の毛を梳いた。そして撫でる度に一言呟く。

 

「勇気、度胸、覚悟、希望、臆病、運。この六つのさじ加減と組み合わせが勝利の方程式を作る。簪なら、絶対大丈夫だ。ほれ。」

 

チュッ

 

「はへぅ・・・・」

 

先日額にした時と同じ位軽く頬にキスをしてやった。変な声を上げた簪に、思わず一夏は吹き出してしまった。

 

「自信がつくおまじない。」

 

「あぅ、あの、その・・・・・が、頑張るからね!?」

 

「うん。頑張れ。」

 

「かーんざしちゃーん♪」

 

スキップしながら鼻歌混じりで楯無がピットにやって来た。

 

「お姉ちゃん。」

 

「頑張れ〜、応援してるぞぉ〜。」

 

「二回戦は俺が行くからな。とりあえず、二人がどんな手札を持ってるかしっかりチェックさせてもらいます。行って来い!」

 

「うん!」

 

試合が始まるまで残り五分。簪は右中指に嵌ったクリスタルリングを見つめた。そこから光が溢れ出し、彼女の専用機が一秒と経たずに展開された。

 

「『打鉄弐式』ねえ・・・」

 

一夏は部分展開した零式のコアネットワークシステムを使って詳細を確認した。薄い水色っぽい灰色と黒のスマートな機体だ。カタパルトからアリーナに射出され、ピットに残ったのは一夏と楯無の二人だけになった。

 

「ふむふむ。訓練機を第三世代型に発展させた・・・・見た所スピードファイターだな。あーあ、でも簪と戦うなんて事になったら嫌だなあ。」

 

「ね、ねえ、一夏君。」

 

「どうしました?楯無先輩。」

 

「あ、今回はシストーカーって呼ばないのね。」

 

「いや、雰囲気からして真面目な話でしょうから。で、何か?」

 

「あの、ね・・・・・そ、その。簪ちゃんの事なんだけ、ど・・・・」

 

だが、楯無の喉で言葉がつかえた。言えない。言ってしまったら最後、また妹が自分を嫌ってしまう。もう二度と口を利いてくれる事すらなくなってしまうかもしれない。そんな恐怖に飲まれて二の句が出て来ない。

 

「簪が、どうかしました?」

 

「簪ちゃんの事・・・・よろしくね?」

 

「え?あ、はい。ちょっとびっくりしました。簪が欲しければ自分を倒して実力で奪ってみろなんて事を言いそうな人ですから、すんなり言われたら何かびっくりしちゃいました。」

 

違う。そうじゃない。自分が言いたいのはそんな事じゃない。妹との絆を再び結んでくれた、妹の笑顔がまた見える様に取り計らってくれた彼に、伝えたい。楯無は再三再四心を奮い立たせようとしたが、今の一夏はスクリーンで臨戦態勢に入る簪にずっと目を向けたままだ。

 

「おお。簪は薙刀使うのか。すげえ、鈴と互角に渡り合ってる。」

 

彼程の男なら妹を任せられる。が、彼が指摘した通り自分は彼よりも一年早く生まれただけの女の子だ。傷つきもするし、泣きもする。悔しいと思う時だってある。そして楯無は今、切なさで胸が張り裂けそうだった。

 

「あれ?何だ鈴の両肩についてるアンロック・ユニットは?」

 

鈴の両肩のパーツが開いて何かを撃ち出している様に見える。ハイパーセンサー越しにもう一度その状況を見直した。

 

「空気の砲弾か。」

 

「そ、衝撃砲って言うのよ。空間に圧力をかけて撃ち出すの。砲身も砲弾も見えないし、死角も無い。でも避ける方法は考えれば幾らでもあるわ。」

 

 

 

 

 

同時刻、風都の鳴海探偵事務所では、フィリップが竜の依頼で検索をしていた。

 

「キーワードは、中国、四神、方角、色。」

 

絞られた項目を閲覧し、頷いた。

 

「そう言う事か。結論から言おう、被害者同士に接点は全く無い。探そうとした所で時間の無駄だ。無差別殺人に見えてはいるが、これはある法則に従っている。 犯人は中国の縁起物になぞって殺人を繰り返しているんだ。」

 

「縁起物?」

「最初の被害者は、赤城次郎と言う男。赤を表す中国の四神は、朱雀。無傷だった手が南を指しているのは、朱雀が南方を守護する神獣だからだ。二人目の手は西を向いていて、白い服を着用していた。つまり、西方を守護する白虎。残るは玄武と青龍のみ。これらの犯行はメッセージさ。ある人物にしか分からない。」

 

「ロンか。」

 

「ああ。」

 

「しかし、犯人は一体・・・・?」

 

「少し待ってくれ、すぐに検索する。」

 

再び膨大な両の情報が異動し、一冊の本に絞られた。

 

「犯人は錦衣衛トップ4の一人、玄武。中国語ではショワン・ウー。彼が犯人だ。彼は裏で中国結社と繋がっていて情報を流す代わりに多額の金を受け取っていたらしい。そして追い詰める為の証拠をこっそりと揃え、幹部とロン刑事の部下二人を殺した。最後に自分の死を偽造して再び行動を起こしている。狙われる可能性がある場所は二つ。ロン刑事の妻が経営している店と、」

 

「一人娘が通っているIS学園か。ロン刑事は店の方にまだいる筈だ。」

 

「織斑一夏と翔太郎にすぐに連絡を取ろう。今から学園に関する全ての情報を掴む。」

 

フィリップはスタッグフォンを、竜はビートルフォンでそれぞれ翔太郎と一夏に電話をかけた。

 

『おお、フィリップ。どうした?』

 

「事件の犯人と次のターゲットとなる場所が二つに絞り込めた。一つはロン刑事の店、もう一つはIS学園だ。すぐに向かって行動出来る様にしてくれたまえ。」

 

『分かった。すぐに向かう。』

 

「駄目だ。出ない。何をやっているんだあいつは?」

 

「恐らく模擬戦か何かだろう。ドライバーもガジェットも恐らく手元には無い。僕達が為損じれば学園に被害が及んでガイアメモリの事が露見してしまう。それだけはなんとしてでも避けなければならない。」

 

すると、フィリップの腰にダブルドライバーが現れた。そして精神がリンクした翔太郎の声が頭に響く。

 

「早速来た。」

 

『Cyclone』

 

メモリをライトスロットに差し込み、ソファーに倒れ込んだ。

 

「俺もすぐに向かう。」

 

竜は外に飛び出してアクセルに変身すると、腰からドライバーを取り外してジャンプすると、バイクフォームに変形してエグゾーストから火を噴き出しながら疾走し始めた。

 

 

 

 

 

W CJに変身した翔太郎とフィリップは、巨大な亀の様なドーパントに苦戦していた。

 

「ってぇ〜〜。なんてかてぇ野郎だ。」

 

格闘能力とスピードが上がったパンチやキックは全く通用していない。逆にWが拳を痛めるだけになった。

 

『貴様達が何者かは知らないが、邪魔はやめて貰おう。』

 

「悪いが断るぜ。てめーみてぇな悪党の邪魔をするのが俺の仕事なんでね。」

 

『外皮の堅さはジュエルやバイオレンスの比じゃないね。それに、相手のメモリの事がまだ何も分からない。いきなりだが、エクストリームで行こう。』

 

「オーライ。」

 

『Xtreme!』

 

エクストリームメモリがWのもとに飛来し、メモリのレールを伝ってドライバーに収まった。エクスタイフーンから放たれる緑の疾風はドーパントの目を一時的に眩ました。

 

『クッ・・・・』

 

『あのドーパントの全てを閲覧した。あのドーパントはゲンブ。超重量と飛行能力を利用してあの二人を殺害した。そして甲羅はジュエルやバイオレンス・ドーパントの数百倍。僕達で倒せるかどうか・・・?』

 

「やるしかねえだろ。」

 

『「プリズムビッカー!」』

 

CJXとなったWはクリスタルサーバーから円状の楯に剣を収めたプリズムビッカーを構え、プリズムソードの柄にメモリを差し込んだ。

 

『Prism!』

 

抜刀、そして振り下ろす。だが、ゲンブ・ドーパントはやはり甲羅を使って攻撃を全て防御する。全力で振り下ろした所為で発生する振動はプリズムソードからWの手に伝わって行く。

 

「冗談きついぜ。プリズムソードでも傷一つ付かない。」

 

「ならばこれはどうだぁ!」

 

凄まじい爆音と共に、ゲンブ・ドーパントは吹き飛ばされた。見ると、バイクフォームになったアクセルが後ろに砲台のユニットを連結したアクセルガンナーが停車して砲撃を放った所だった。

 

『翔太郎、今だ!』

 

「おう!」

 

W CJX はプリズムソードをビッカーシールドに収納すると、シールドに側面に付属した四つのマキシマムスロットにサイクロン、ルナ、ヒート、そしてトリガーのメモリを差し込んだ。

 

『Cyclone Maximum Drive!』

 

『Luna Maximum Drive!』

 

『Heat Maximum Drive!』

『Trigger Maximum Drive!』

 

『「ビッカーファイナリュージョン!」』

 

ジョーカーメモリに比べて更に攻撃に特化したトリガーメモリを使ったビッカーファイナリュージョンは一点に集中した七色の破壊光線をプリズムビッカーから放ち、ゲンブ・ドーパントに向けて発射した。凄まじい爆発が起こり、煙が爆風でもうもうと舞い上がる。

 

「助かったぜ、照井。」

 

『残念だな。俺はまだ生きているぞ?』

 

「待て!」

 

『ん・・・?』

 

ゲンブ・ドーパントを呼び止めたのは、ロンだった。背中には漆塗りの美しい箱を背負っている。その中から仕掛けによって二本の剣が飛び出してロンの手に収まった。

 

『お前は・・・・お前はお前はお前は!!ようやく見つけたぞ。青龍!今度こそ貴様の首を取ってやる!』

 

「ショワンウー。覚悟しろ。」

 

いつもの朗らかな雰囲気の一切を捨てた、酷く冷たい殺意の籠った声でロンはそう呟いた。そして普段からは想像もつかない様な凄まじい形相を浮かべて剣を構えた。ゲンブ・ドーパントは口元に手を持って行き、舌の生体コネクターからメモリを引き抜くと、胸まである長髪を弁髪に編んだ三十代半ばの男が姿を見せた。

 

『俺はお前達の誰よりも強かった!欲しい物を、青龍の称号を求めて何が悪い!?お前は俺を実の弟の様に接してくれた。だが!お前は実の兄を殺しただろう!?』

 

「兄を、殺した?」

 

「何、だと・・・・・?」

 

竜と翔太郎は驚きを隠せなかった。

 

「ハハッ・・・・俺が何も知らないとでも思っているのか?俺と同じ様に結社に情報を売っていた兄をお前は自衛の為とは言え射殺した!」

 

「ああ。そうだ。だが、あれ以来私の人生は苦しみが未来永劫終わる事無き悪夢となってしまった。私は悟ったのだ。お前にこれ以上錦衣衛の道を歩んで欲しくない。ソレを捨てろ。お前を、殺させないでくれ。」

 

「甘いな。昔のお前とは大違いだ。昔は踏み込みとなれば犯罪者は容赦無く殺して来た冷血漢だった男が、とんだ甘ちゃんに成り下がった。お前は錦衣衛の面汚しだ。お前を殺して、俺が新たな青龍となる!」

 

『Genbu!』

 

「そしてその為には、まずお前の娘を血祭りに上げてやる!」

 

メモリを再び舌のコネクターに突き刺してドーパントの姿になると、空に舞い上がった。

 




アンケートの結果ですが、姉妹丼が圧勝していてびっくりしました。8-3で姉妹丼に決定です。アンケートにご協力して頂いた皆様、本当にありがとうございます。

では、また次回

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