IS x W Rebirth of the White Demon   作:i-pod男

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いちゃいちゃがチョイあります。そして鈴の親父さんの過去が明らかになります。


Gの恨み/乱入する奴は・・・

「やはりキーワードが少な過ぎる。照井竜、他に何か手掛かりは無いのかい?」

 

地球の本棚で圧殺事件の事を検索するフィリップ。だがやはり犠牲者は一人だけで使えるキーワードが極端に少ない所為で必要な情報が全く手に入らない。

 

「無い。今日中に被害者の身元は判明するが、それまで手掛かりはこれだけだ。」

 

「ガイアメモリやドーパントが関わっていると言う部分では同じだが、こう言う事件に限って前例が無いって言うのが厄介な所だよな。」

 

翔太郎はそう返した。椅子に深く腰掛けてコーヒーを啜っている。だが、自分が淹れた所為と言う事もありやはり不味いのか、口をつけるその都度顔を顰めた。

 

「まあ良い。もう一つ調べて欲しい事がある。凰劉龍と言う男についてだ。」

 

「名前からして中国人だね。実に興味深い。彼がどうかしたのかい?」

 

「二重国籍で日本に、この風都に住んでいる。元は中国の警察官で、それなりの役職を持っていたらしい。腕前はトップクラスだ。何らかの事情で仕事を辞め、日本に移住して来た。」

 

「成る程。何らかの関連性はあると見て間違い無いね。新しい検索を始めよう。キーワードは中国、警察、凰劉龍。」

 

膨大な量の本棚の形をした知識が高速で移動し、キーワードに該当しない項目が一冊の本を除いて全て消えた。

 

「絞れた。履歴書に書かれている事は全て事実だ。所帯持ちで、妻は料理屋を切り盛り、一人娘は中国の代表候補生で織斑一夏とも親しい。おや?この項目は・・・?」

 

フィリップの指先がページの上を走る。

 

「どうした?」

 

「面白い事が分かった。彼は、中国の秘密警察の末裔だ。」

 

「秘密警察・・・・?ナチスのゲシュタポみたいな物か?」

 

「いや、下手をすればそれより更に酷い。」

 

翔太郎の言葉に、フィリップは首を振った。

 

「組織の名は、錦衣衛(きんいえい)。作られたのは明朝、1382年。中国の皇帝は自分の地位、安全、そして血筋を玉座に据え続けられる様にする為に組織された物だ。孤児を捕まえ、鍛え、国家統制主義に寄る教育を受けさせられた。軍事、政治にも密接な関係を持っていたらしく、兵刑両権による恐怖政治で人々から恐れられたそうだ。」

 

フィリップは本のページを捲って更に続けた。

 

「彼らは超法規的な警察組織。錦衣衛を縛るのは、彼らにのみ適用される掟で破る事即ち死あるのみ。」

 

「何だ、その無茶苦茶な組織は?!」

 

「左、俺はもっとメチャクチャな奴を知っているぞ?ローマで自分の馬を元老院の執政官に任命した皇帝だ。」

 

「もー良い!聞きたくない!やめろ!」

 

「翔太郎、話の腰を折らないでくれたまえ。その中で彼らの指揮官にして最強の戦士と謳われた人物が、この名を与えられる。『青龍』と。中国語ではチンロン、と読むらしいがね。トップ4の実力の序列は青龍、白虎、朱雀、玄武。中国の四神になぞられて名付けられている。」

 

「ではあのロンと言う男は、その青龍の末裔と言う事か。あれだけの腕前があるならばそれも分かる。」

 

「錦衣衛の末裔である事は間違い無いが、チンロンの末裔と考えるのは早計だ。確証が何も無い。決め手となる物は二つ。刺青と、箱だ。」

 

「刺青は分かるが、箱だと?」

 

竜は顔を顰めておうむ返しにそう言った。

 

「ああ。青龍はその実力の高さ故に、十四本の剣を収納した縦長の箱を持たされた。八本は尋問用でそれぞれ天、地、級、法、智、信、仁、そして勇と名を持つ。」

 

「では、残りの六本は、組織の姿勢からして処刑用と言った所か?」

 

「流石照井竜。その通りだよ。一本目は皇帝と皇室に逆らう者を、二本目は皇帝の統治を邪魔する者を、三本目は法律自体を捩じ曲げようとする者、四本目は反逆者を、五本目は錦衣衛の兄弟達を裏切る者を処刑する為。最後の六本目は任務に失敗した者、即ち自分自身を処刑する為の剣だ。」

 

「おっかねぇ〜〜〜〜。聞けば聞く程メチャクチャな時代だな、おい。」

 

「戦国時代でも同じ様な事はあっただろう?侍は腹を切ればその罪を許されたと言うじゃないか。兎も角、もし彼がその箱を持っていたら間違い無く彼は青龍の子孫だ。」

 

「よし分かった。今から直接聞きに行」

 

だが竜の言葉と動きを止めたのは、一本の電話だ。

 

「照井だ。」

 

『竜く〜〜〜〜ん!!!』

 

「所長。どうした?」

 

『どうしたじゃないよ、お弁当忘れてるよ?愛情たっぷりの愛妻弁当!!仕事熱心なのは良いけど、ちゃ〜んと栄養付けなきゃ体壊すよ?壊したら泣いちゃうんだからね。』

 

竜はそれを聞いて目を見開いた。心の中でプライオリティーが一瞬にして書き換えられてしまう。

 

「すぐに取りに行く。五分待っていてくれ。交通ルールを無視してでも俺は行くぞ。」

 

『よろしい!でも安全運転で帰って来てね〜。』

 

ビートルフォンをしまうやいなや、嵐の如き凄まじい勢いで事務所を飛び出して行く。

 

「さて、僕はもう一度篠ノ之束を懲らしめに行く。翔太郎も協力してくれたまえ。」

 

「今度は何をやらかしやがったんだ、あの馬鹿兎は?」

 

「頃合いを見て渡すつもりだった複製したメモリとシャッフルメモリ数本を彼女が作ったメモリガジェットでIS学園に解き放ってしまったらしい。まあ、織斑一夏の事だから絶対に入手は出来たと思うが、もし万が一あれが女性利権団体やIS委員会の手に渡ってしまったらどうなるか・・・・・考えたくもない。」

 

「よ〜し、お仕置きだ。」

 

『Spider』

 

『『Stag』』

 

『Bat』

 

『Frog』

 

『Denden』

 

手持ちのメモリがジェットを総動員させて、リボルギャリ—の格納庫に解き放つと、扉を閉めた。数分程してから束の悲鳴と謝罪が聞こえたが、協議の結果十分程放置する事に決めた。

 

「織斑一夏にもこの事を伝えた方が良い。」

 

「いや、待て。毎回あいつの手を借りる訳にはいかない。今の一夏の状況を考えると尚更だ。それにもし友達の父親が何かの事件に関わっていると言う事を知れば一も二も無く飛び付いて来るだろう。内々に早期解決に持って行く方がベストだ。俺達と照井だけで幕を下ろす。」

 

「言うだろうと思ったよ。ま、それが君らしいんだけどね。」

 

フィリップはやっぱりな、と言う顔で翔太郎の言葉に溜め息をついた。

 

「それより、いい加減インターネットでも料理本でも良いからそれなりに美味しいコーヒーを淹れてくれないか?以前も照井竜が言っていたが、君が作る物は不味過ぎる。豆が可哀想だ。」

 

 

 

 

 

 

 

「あ”〜、気持ちよかった・・・・ふ〜。」

 

五十代のオヤジの様にそう漏らした一夏は、部屋でシャワーを浴びた所だった。そんな時に、ノックがした。今の自分はまだトランクス一丁のままで、流石にそれで応対するのはまずい。黒いジーンズと白いワイシャツを羽織ると、碌に乾いていない髪をそのままにノブに手をかけた。

 

「は〜い。」

 

「い、いち・・・・・え・・・・?」

 

「おお、簪か。良くここだって分かったな。」

 

元々内向的な簪がまともに話せる様な男は片手で数えられる位の人数だ。男への免疫が極端に低い簪を出迎えたのは、ワイシャツのボタンを二、三個だけ留めた想い人だ。厚い胸板と割れた腹筋がちらりとシャツの隙間から見え隠れする。そんな格好で彼女の前に現れればどうなるかは容易に想像出来るだろう。

 

「い、一夏・・・・ふ、服・・・・・」

 

「ん?ああごめんごめん。シャワー浴び終わって着替える所でノックが来たからさ。あるモン引っ掛けて出て来たんだ。ごめんちゃい。まあ、入って。」

 

「お、お邪魔します・・・・」

 

簪は手に紙袋を持っていた。寮長室でもあり一夏の自室でもある、ある意味前人未到の領域に入る為、多少の恐怖はあるのだろうが、手を引かれて中に足を踏み入れた。

 

「何か飲む?風呂上がりにミルクティーを一杯って以外と美味いらしい。」

 

「うん、じゃあ・・・・・お願い・・・・(ああ〜〜・・・・・どうしよう。い、勢いで来ちゃったけどどうしよう。か、会話が成立しないよぅ〜)」

 

内心泣きそうな程にナーバスになっている簪はソファーの端に腰掛けたまま姿勢をピンと伸ばしていた。まるでこれから初めて就職面接を受ける小心者の様だ。

 

「はい、お待たせ。」

 

コトリ、と静かにマグをコーヒーテーブルの上に置いた。

 

「後、そんなに堅くしなくていいんだよ?寮長室だけど俺の部屋でもあるから。ね?」

 

一夏は何時もの様に簪の頭に手を置いてゆっくりと撫でてやる。

 

「ところで、その袋は?」

 

「あ、あの、カップケーキ・・・・」

 

「と言う事は手作りか。道理で抹茶の芳醇な香りがしたと思ったら。」

 

「・・・・・分かるの?」

 

意外な正解に簪は眼鏡の奥で目を丸くした。

 

「俺の嗅覚は、犬以上です。ワン!」

 

不気味な程に似ている犬の鳴き真似をしてみせた。簪はゆっくりと抹茶のカップケーキを取り出してテーブルに置いた。」

 

「ど、どうぞ・・・・」

 

「じゃあ、頂きます。」

 

包み紙を剥がし、一口食べた。簪に取っては正しく緊張の一瞬である。

 

「なんと。美味い。お茶菓子に丁度良い甘苦さだ。

 

「あ〜、でも部屋にいる人が変わると空気も変わるな。千冬姉がいると何か無駄に緊張してさあ、変に体が休まった感じがしないんだ。まあ、あんな抜き身の刀みたいな性格だけど、あれでも可愛い所あるんだよね。」

 

「え?」

 

「あ、でもこれ内緒な。言った事バレたら比喩表現で無く俺は一年の間に一日三百六十五回殺されてしまう。」

 

一夏はワイバーフォンに収められた画像を見せた。途端に簪は思わず吹き出してしまう。

 

「プフッ、嘘・・・・織斑先生が・・・・あは、あはははははは!!!」

 

「な?意外だろ?モフモフした物が好きだって言うの。山田先生ならまだ分かる。あの人は何と言うか、小動物オーラがある。言うなれば・・・・何だろ、う・・・・な?」

 

簪の方に顔を向けると、画像を見る為にすり寄った彼女の顔が意外に近い所にあるのに気付いた。間近で見ると、催眠にでも掛かったかの様に自然と吸い寄せられて行く。簪も顔を真っ赤にしたまま目をぎゅっと強く瞑った。今の一夏には彼女の心臓の鼓動が聞こえていた。凄まじい心拍数を叩き出している。それに、少しだが震えている様にも見えた。

 

(どうするべきなんだ・・・・?ここは押し(レイズ)引く(フォールド)か。)

 

それを見て一夏は迷った。押しは改めて好きだと言う感情が深まるが、逆にやり過ぎると『重い』と言う印象を持たれる。引きは相手の事を尊重していて節度を守りたいと言う清らかさを前面に押し出すが、場合によってはチキン呼ばわりされるか、相手からやはり自分はそれ程魅力が無いのでは、と懐疑的に思われてしまう。特に簪の場合はこの可能性が非常に高い。

 

(確率は50-50。一に勇気、二に度胸、三に覚悟と。覚悟を決めて、レイズ決定。)

 

簪の頬に手を添えると、指三本はそのままにして残り二本を顎の下に持って行って優しく上を向かせた。

 

「怖がらないで。俺は、簪の味方だから。」

 

二人の距離がセンチからミリ、ミリからナノ、ナノからゼロに近付こうとした瞬間、再び扉が開いて千冬が書類が入ったファイルを数枚とPDAを持って入って来た。だが幸い一夏が扉の開く音を聞いてすぐに今まで楽しく話していた、と言う様な状況を装った。

 

「おお、お帰り千冬姉。(おいいいいいいいい!!!何してんだよぉ〜〜〜〜!!今スゲーーーーーーーーー今の今まで全てが上手く運んでたのに、ここでひっくり返されるとかマジあり得ないんスけど!!)」

 

「お、織斑、先生・・・・・お、おおおお邪魔してます・・・・」

 

あわや不純異性交遊を一番目撃されてはならない人に目撃されそうになって、簪は羞恥で体温が上がるやら怖さで顔から血の気が引くやらで顔の色が物凄い事になっている一夏はと言うと、甘ったるいピンクの空間に闖入して来た姉に対して言い知れぬ程のイライラと若干の殺意が湧いて、口から毒が立て続けに吐き出された。

 

「お疲れさま。千冬姉、仕事も良いけど、いい加減彼氏見つけてくれよ。元世界最強とは言え女なんだから。下の兄弟が先に嫁いだなんて事になったら恥ずかしいぞ?行き遅れってからかわれるぞ?主に俺に。それとも、まさかレz」

 

「言わせないぞ?そんな訳があるか。」

 

帰宅早々に毒を吐かれた千冬は面食らって一夏の言葉を遮った。そして一夏の言葉でピシリと青筋がこめかみに走った。

 

「お前こそ男の癖にその異常な程に水準が高い女子力は何とかならんのか?世の女が食らう精神的なダメージを考えろ。『女として終わった』、『女として負けてはいけない所で完全に敗北した』と言う類いのコメントが流れて来るのが容易に想像出来るぞ。お前の家事スキルは選手権でどれだけ良妻賢母、才色兼備でもプライドをずたずたにする程の物だと言う事を自覚しろ。(精神的な)女殺しのリーサルウェポンめが。」

 

「人を兵器呼ばわりするな、そっちこそ歩く人間兵器だろ、サイボーグ以上に頑強な体と戦闘能力持ちやがってこのサディスト大魔王。素手でボウリングの玉を空き缶みたいに潰せる人間は俺の目の前にいる人物唯一人だよ。後、男に相手にされないイライラを学校で発散すんな、SMクラブじゃないんだぞ学び舎は。女帝気取りで図星を突かれた時の照れ隠しに生徒や山田先生を虐めるのはさぞ気持ち良いだろうな、まあ殆どの生徒は虐められて喜ぶ奴が多いけど。それ見て喜んでんだろ、変態SM教師。」

 

かなりのハイスピードで捲し立てた為に二人は激しく息をしていた。

 

「何があったかは知らんが、スッキリしたか?」

 

「うん。千冬姉は?」

 

「久々にスッキリした。残りの三割は山田君をいj」

 

「言わせねえよ?一組の良心でありマイナスイオン製造機の一人でもあるお方をスクラップにすんな。後、晩飯はしっっっっっっかり自分で作る様に。たまには自分でチャレンジしてみんさい。」

 

「くっ・・・・・おのれ・・・・・(胃袋を昔から掴まれている所為で反論出来ん)」

 

「それと、料理は芸術、芸術は爆発って言う方程式は一度で良いから食べられなくはない料理を作った時にのみ成立する物だから。(炭と有毒物質が7:3の比率で出来るってどんだけさ?しかも何で米を洗剤で洗おうとするのかな?)それじゃ、俺はちょっと出かけます。」

 

一夏は部屋を出て、簪も別れの挨拶を済ませると慌ただしく彼の後を追った。

 

「うぅ〜・・・・一夏に嫌われてしまったら今度こそあの料理が二度と食べられなくなってしまう。仕方無い。作るか。」

 

 

 

 

 

中断されてしまった。もう少しだったのに。そんな遣る瀬無さと羞恥心と戦いながらも、一夏は簪を部屋まで送った。

 

「あ〜もう・・・・(何であんな所で入るんだよ、ウチの姉貴は。これは俺の作戦ミスだな。俺の馬鹿野郎!いや、待て。わざわざ部屋まで来たのに中に通さなかったらそれはそれでアウトだ。恨むぞ、千冬姉。)ごめんな、簪。その、色々と。」

 

「ううん。良いよ。同じ部屋だから、その・・・・仕方無いし。(後三分ううん、五分間だけ。あのまま、邪魔されなかったら・・・・ど、どうなってたんだろ?)」

 

「ごめん。この埋め合わせはその内するから。だから、まずは前払い。」

 

チュッ

 

「へ?!」

 

一夏は簪の額に小さくキスをしてやり、悪戯が成功した子供の様に笑った。

 

「本番は、そのうちな。それじゃ次に会うのはリーグ戦だ。どんな戦い方をするのか楽しみだよ。じゃあね。」

 

だが、簪は聞いていなかったし聞こえなかった。そんな余裕は全く無い。

 

(お、おでこだけど・・・・・い、いいいいい、一夏に、キス、されちゃった・・・!)

 

だが、この時二人は知らなかった。影からそれを見ていた誰かが胸を押さえ、涙を堪え、壁を背にして泣き崩れそうになっている人物が一人いる事を。

 

(やっぱりそうなんだ。でもやっぱ駄目だ・・・・・言えないよ・・・・・・一夏君が、好きだなんて・・・)

 

 

 

 

同時刻、竜は刃野と真倉がお茶を飲みに行った『竜花亭』と言う店に急行した。厨房では薄い茶髪を短く切ったショートカットの三十代前半の女性がロンと並んでエプロンをつけ、食器を洗っていた。

 

「いらっしゃいま、ああ。照井課長。」

 

「貴方。彼が、上司?」

 

「ああ。紹介します。私の妻、凰月草(ファン・ユエツァォ)です。」

 

「主人がお世話になります。ユエと呼んで下さい。」

 

深々とお辞儀をして自己紹介をすると、すぐにまた作業に戻った。

 

「早速ですが、ご主人をお借りします。お前達も来い。鑑定の結果が出た。」

 

「本当っすか?」

 

「ああ。被害者の名は赤城次郎。鳶職の人間で、飲酒運転を一度しただけだ。前科と呼べる程の物々しい経歴の持ち主ではない。交友関係もこれと言って怪しくないらしい。」

 

「じゃあ、無差別殺人ですか?」

 

真倉の言葉に竜は首を振った。

 

「それは早計が過ぎる。犠牲者が一人しか出ていない以上、今は何とも言えないな。そうであるにせよ無いにせよ、今の俺達には情報が圧倒的に足りない。もう一度現場周辺で聞き込み、及び調査をする。行くぞ。」

 

だが、突如地響きがして、ぐらりと全員の足元が強く揺れたが、五秒で収まった。

 

「じ、地震だ〜〜〜!!!」

 

真倉はパニックを起こして逃げようとしたが、ロンがスーツの襟を掴んで引き戻した。

 

「落ち着いて下さい、真倉刑事。地震ならばもっと揺れる時間は長引きます。」

 

そして叫び声が聞こえた。

 

「行きましょう。」

 

現場に急行した時には時既に遅く、第二の被害者が最初の反抗と同じく擂り潰された人肉のパテになってしまっていた。そして右手だけが無傷のままだ。

 

「連続殺人で決まりですね。同じ手口、同じ痕跡。刃野刑事、鑑識課の方々に大至急ここに来る様に言って下さい。」

 

「お、おう!」

 

「真倉刑事はこの現場一帯を封鎖して聞き込みに行って下さい。犯行からまだ時間は経っていない、誰かが何かを必ずどこかで見た筈です。徹底的に洗って下さい!」

 

「はぃ!!!」

 

二人は走り去った。

 

「ロン刑事。貴方はやはり何かを知っているな?犯人の事も、知ってるんじゃないか?錦衣衛の末裔である、貴方なら。」

 

「・・・・・お気づきでしたか。よく調べられましたね。中国でも公になっている様な情報ではないのですが。」

 

「質問に答えろ。ロン。」

 

「良いでしょう。お話しします、その内貴方に明かすつもりでいましたから。何年か前の話です。私と部下三人は日本に逃亡した結社の幹部達を捜し出して逮捕する駐在任務を与えられました。そして幹部達を遂に追い詰めた。ですが、人間では到底あり得ない方法で私の部下二人を含めた全員が殺された。今我々が追っている事件と全く同じ手口で。もう一人の部下は行方不明扱いですが、恐らくとうの昔に結社に掴まって殺されている。あの犯人は私の部下を殺した敵です。私の手で捕まえます。」

 

「凄まじい執念だな。」

 

「錦衣衛の人生に終わりは無い。先も短い。ですが、錦衣衛にとって、任務の完遂こそが唯一の誉れです。志半ばで散った部下の無念も晴れる。犯人を逮捕する事こそが供養となる。」

 


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