IS x W Rebirth of the White Demon   作:i-pod男

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今回は何時もと比べて比較的短めです。すいません。でも次回は結構長くなります。

オリジナルドーパント登場です。でもやっぱり事件を考えついてそれを納得のいく解決まで持って行くのって大変だと今更ながら思いました。果たして上手い事かけるんでっしゃろか、自分は?今回は二話完結ですみそうです。


Pの苦しみ/面倒な相手

場所は変わり、風都では、事件の聞き込みに回っていた竜が叫び声を聞きつけた。何事かと思って声がした方まで走ると、腰が抜け、尻餅をついている女性の目の前に紫色のねじれた体を持ったドーパントが、針になった右手の指先を突き刺そうとしていた。

 

「変・・・・身!」

 

『Accel!』

 

アクセルドライバーにメモリを差し込み、スロットルを捻ると、竜は仮面ライダーアクセルに変身した。エンジンブレードにメモリを差し込み、トリガーを引いた。

 

『Jet!』

 

剣先から飛ばされた弾はドーパントに当たり、よろめく。その隙を突いて何度もエンジンブレードを叩き付けたが、刃先から気体が上がっている事に気付いた。

 

「溶けている・・・・最近の連続殺人事件の犯人はお前か?」

 

だがドーパントは何も言わずに左腕からガスを放出して姿を消した。アクセルも後を追いかけようとはしたが、吸ってしまったガスの効果なのか、くしゃみと涙が止まらずとてもではないが満足に動ける状態ではなかった。

 

「小賢しい真似を!ウェッキシッ!!」

 

『Steam!』

 

エンジンブレードから白い湯気が吹き出し、ガスを吹き飛ばした。メモリを引き抜いて変身を解除すると、尻餅をついたままの女性を助け起こした。

 

「風都署の照井だ。何があったか聞かせてもらえないか?」

 

鼻が詰まった間の抜けた声しか出ない。それに加えて呼吸も出来なくはないが以前よりは困難になっている。

 

 

 

 

港近くの倉庫で、一人の中年の男が壁を背に座り込み、荒い息をしていた。体中が気色悪い色の斑点に覆われている。突然口を抑え、血を吐き出すと、再び立ち上がって移動を初めた。

 

「奪われた・・・・・奪われた・・・・全部、全部・・・・奪ってやる。味わえ。俺と同じ苦しみを味わえ・・・・!」

 

ポケットから取り出した紫色のメモリを破れた白衣の下から覗く腕に突き刺した。

 

『Poison!』

 

 

 

 

 

 

 

「照井、何が起こったんだ?」

 

竜の目は真っ赤に腫れ上がり、鼻も詰まっている為声も変になっている。右手には喘息患者が常用する吸入器が握られていた。咳が酷くなる度にそれを使っている。

 

「一週間前からとある医療化学研究所の幹部が全員立て続けに死んでいる。場所も死に方も全てバラバラだ。どうやったかは分からない。死体の状況を見ての推測だが、犯行には何らかの薬物を使った可能性が高い。犯人と思しきドーパントに遭遇はしたが、逃げられてしまった。しかし、俺が食らった毒は被害者の物とはどれも違う。」

 

「じゃあ、他の毒も調合出来るって事かよ?やべえぞ。」

 

「更に言えば、被害者に使われた物はどれも効果は違っている上、鑑識によると成分の配合もかなり複雑らしい。検出して結果が報告されるにはまだ時間が掛かる。」

 

捜査資料と一緒に写真を幾つか取り出して見せると、翔太郎は顔を顰めた。その直後、再び竜はくしゃみと咳の発作に襲われた。

 

「その事件もかなり大々的に報道されていたね。にしても、薬物か。フィリップ、行けるか?」

 

「ああ。」

 

フィリップは頷き、両手を広げると、地球の本棚に入った。

 

「一つ目のキーワードは徳島博子。その研究所の所長で、ドーパントに襲われていた。」

 

フィリップの周りにある無数の本棚が移動を開始し、該当しない項目がどんどん消えて行った。

 

「次に、薬物。」

 

更に本棚と本は消えて行く。だがまだかなりある。

 

「あまり減らないな。」

 

「薬か・・・・待てよ?フィリップ、キーワードを追加。『毒』だ。薬は定量を飲んでこそ薬になるが、過剰摂取すりゃあ毒だ。」

 

「『毒』・・・・・・・」

 

キーワードを復唱し、該当しない項目を記載した本棚と本が全て消えた。

 

「おお、流石翔太郎。さっきよりも大分本が減ったよ。残りは本棚一つだ。」

 

フィリップは本の背表紙をなぞり、目当ての物があるか探し始めた。

 

「このご時世だから怨恨である可能性が非常に高いと俺は考えている。ISが登場してから解雇された男性職員がいたか真倉と刃野が調べているが、研究所に関係している人間は風都以外の所にもいる。虱潰しに探していては、キリが無い。」

 

ようやく発作が収まった竜が行き詰まっているフィリップに口を添えた。

 

「それだ、照井竜。最後のキーワードは免職だ。」

 

本棚から本は更に消えて行き、最後に一冊だけが残った。それを読んで行くと、どんどん表情が険しくなって行く。本を閉じると、深く息をついた。

 

「どうした、フィリップ?」

 

「犯人の特定は出来た。名は北原誠。殺害された幹部の何名かが関わっている汚職を所長が揉み消した事を知って内部告発をしようとした矢先、責任を全て押し付けられた。彼は懲戒免職となり、不当解雇を理由に訴訟を起こすもあえなく敗訴。名誉毀損の損害賠償で全てを失い、家族とも引き離されてしまった。」

 

「相手側に十分問題はある。だが動機としては充分過ぎるな。狙いは徳島博子か?」

 

竜の言葉にフィリップはもう一度検索をかけて北原誠の標的を特定した。

 

「そうだね。それに加えて本社を破壊するつもりだ。」

 

「毒って言っても、建物をどうこうするなんて事は流石に」

 

「翔太郎、毒にも種類があるんだ。例えば一番典型的な青酸カリやヒ素。特殊な物なら、アコニチンと言う物がある。トリカブトに含まれる猛毒で、効果が現れるのも早い。呼吸困難と意識障害で僅か数分で死ぬ。その他、水酸化ナトリウムは、タンパク質を激しく分解する。温度を上げて人間にかければ、骨すらも溶かせるんだ。その風呂に人間を浸ければ、跡形も無く消す事が出来るだろう。」

 

「じゃあもしドーパントが配合した物が人間に掛かったら・・・・?」

 

「怪我では済まないだろうね。ドーパントの毒は既存の物と比べれば遥かに強力だ。極微量の物でも致命的になりかねない。それに、北原誠は製薬会社に勤めていた化学薬品のエキスパートだ。普通の人間よりも遥かに強力な効果を持つ物は造作も無く作れるだろう。」

 

地球の本棚から出たフィリップは本の表紙をトントンと叩きながら唸った。

 

「面倒な相手だな。」

 

竜は腕を組んで資料のページを睨む。そしてその数秒後、くしゃみと咳の発作が再び彼を襲った。

 

「でも、僕らが止めるしか無い。さて、僕はこれから照井竜の症状を治す為に解毒剤を作れるか確かめるとしよう。翔太郎、念の為に織斑一夏にもドーパントの事を教えておいてくれたまえ。相手が毒を使うなら、常人以上の免疫力がある彼が適任かもしれない。」

 

「分かった。」

 


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