転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0938話

「これは……これが、ホワイトスター……シャドウミラーの本拠地……」

 

 門を出たすぐ後で呟く声が聞こえてきた。

 その声の持ち主は当然の如くピニャであり、そのお付きのボーゼスもまた呆然と目の前の光景に視線を奪われている。

 いや、そこまで驚くような光景じゃないと思うんだけどな。

 旧交流区画は、俺にとっては普通の街並みでしかない。あくまでも他世界の住人と交流する事を重視する為にここを交流区画として設定した以上、50階建てのように極端に高いビルがある訳でもない。精々5階建てくらいといったところだ。

 ……まぁ、それでも帝国しか知らない2人には驚愕なんだろう。

 

「アクセル、そっちの2人の対応をよろしくな。俺はエアカーを持ってくるから」

 

 そう告げ、さっさとエアカーを取りに行くムウ。

 門という特異な存在がある以上、すぐ近くにエアカーは用意してあるんだけどな。

 まぁ、自分が戻ってくるまでに2人を正気に戻しておけってことなんだろう。

 

「そんなに驚くな。別にこの程度は俺達にしてみればどうという事もない景色でしかないんだから。それより、お前達はこれからの事を考えておいた方がいい」

「……これからの?」

「そうだ。別に本気で俺に対して攻撃してきた件の弁明だけをしに来た訳じゃないんだろ?」

 

 その言葉に一瞬動きが固まるピニャ。

 やっぱりな。何かしらの交渉を持ちかけようと……それが出来なくても、シャドウミラーというのがどんな存在なのかを少しでも知りたいと思っていたのだろう。

 まぁ、交渉に関しては正直見込みはない。こちらの態度としては、帝都で告げたように帝国相手には無条件降伏以外の選択肢はないのだから。

 これが元従属国が帝国から独立して帝国の代わりに交渉に出てくるのであれば、多少話は違ってくるのだろうが。

 

「お前が何を考えていようと構わないが、とにかく何らかの目的を持ってホワイトスターにやって来たんなら、この光景に呆気にとられて……」

 

 そこまで告げた、その時。まるで図ったかのように20機程のメギロートが空中を飛びながらこちらへとやって来て着地し、俺達の見ている前で門の中へと入っていく。

 1機で炎龍数匹を相手に出来ると俺に言われたことを思い出したのだろう。先程の俺の言葉とは違った意味で動きを止めた2人に、思わず溜息を吐く。

 タイミングが悪いというか何というか……まさかエザリアの仕業じゃないだろうな。

 

「ボーゼス……帝国は、どうなってしまうのだろうな」

「ピニャ様、今は少しでもこの状況をどうにかしなければ。帝国をこのままシャドウミラーと正面から敵対させるような真似だけは何としても避けなければ!」

「だが……どうやってだ? 帝国とシャドウミラーの国としての差は、見るまでもなく明らかだ。それを……」

「ピニャ様……」

 

 何だか演劇でも見ているような気分になってきたな。

 いや、2人が本気で言っているのは分かるんだが。

 そんな風に考えていると、こちらもちょうどタイミング良くエアカーを運転したムウが登場する。

 

「さ、行こうか。まずは少し落ち着く必要もあるし、食事だな」

 

 食事? また悠長な……ふとそう思いかけたが、そんな俺の方を見てムウがニヤリとした笑みを浮かべる。

 さっき言っていた歓迎の宴の事を言ってるんだろう。そう判断して、未だに呆然としているピニャとボーゼスを半ば強引にエアカーに乗せ、ムウの運転に任せる。

 そのままエアカーで暫く移動すると、やがて到着したのは門が現れた為に新しく交流区画とされた場所だった。

 ただし、店ではなく多目的ホールというか、会議室のような場所。

 本来であれば、交流区画で世界間同士の取引をする時の商談とかに使われている場所だ。

 だが、今は多目的ホールの周辺に数名の量産型Wが待機しているのが見える。

 なるほど。確かに帝国から使者が……それも皇女が来るとなれば、門出現の時のゴタゴタで知り合いを亡くしてしまった者が何らかの行動に出る可能性は少なくない、か。

 その辺の情報が漏れているのかどうかは分からないが、念の為の警備なのだろう。

 

「ほい、ついたぜ。さ、中に入ってくれ。俺も腹が減ってきた」

「って、お前も食うのかよ」

 

 てっきり案内のみかと思ったら、ムウもまた食事を一緒にするらしいと聞き、思わず突っ込む。

 だが、ムウ本人は何か問題があるのか? とばかりにこっちに視線を向けてくる。

 いやまぁ、公式な会談じゃないし、ムウにしても歴としたシャドウミラーの幹部であり、実働班の中では上位に入る腕の持ち主だ。それを思えば護衛的な感じで一緒に行動するのもそれ程不思議じゃない、か。

 俺に護衛は必要ないだろうが、ピニャやボーゼスには話が別だろうし。

 

「ま、いいか。ほら行くぞ」

「う、うむ」

「え、あ、はい」

 

 エアカーでホワイトスター内を移動している間も、ただひたすらに周囲の光景に衝撃を受けていた2人を促し、建物の中へと入っていく。

 すると、中に入った途端漂ってくるいい匂い。

 確かにいい匂いだが……何か覚えがあるような?

 何となくそんな風に思いつつ、ムウが案内したのは10畳程度の広さの、それ程広くはない部屋。

 そして部屋の中に入った瞬間、俺は嗅ぎ覚えのある匂いが何だったのかを理解する。

 テーブルの上に広がっているのは、肉まんを始めとした各種中華まん。小篭包、餃子、焼売といった点心を中心とした中華料理の数々。

 そして、シェフである四葉の姿。

 俺を見て、無言でペコリと頭を下げると部屋を出て行く。

 料理を並べる為に来ていたのだろう。

 ……そういえば、四葉も実は高校を卒業後に交流区画に出店を希望しているらしい。

 てっきり、ネギま世界で料理修業や出店をするものだとばかり思っていたのだが、ホワイトスターの交流区画に出店すれば他の世界の料理に関しても勉強が出来るからとかなんとか。

 あやかを通して要望がされていた。

 まぁ、シャドウミラーに入隊するか、あるいは麻帆良に所属したまま交流区画に店を出すかで迷っているらしいが。

 前者だと他の世界の料理を食べたり、調べたり、習ったり……更に食材の類もかなり素早く手に入れる事が出来る。だが麻帆良所属のままであれば、それが出来ない。ただ、四葉はあくまでも一般人であり、両親とかも普通にネギま世界で暮らしている。

 その辺がシャドウミラーに所属するかどうかを迷っているところなんだろうな。

 まぁ、それはともかく。

 

「こ、これは……何と……」

「城でもこれ程の料理は滅多に見る事が出来ませんよ」

 

 ピニャとボーゼスが無数の料理が並べられている光景に唖然とする。

 アルヌスの丘の基地に到着してから、驚くのは何度目だろうな。

 そんな事を考えつつ、部屋の中にいたエザリアとレオンに視線を向ける。

 当然交渉である以上、ここにいてもおかしくないんだが……レオンもいたのはちょっと予想外だった。

 いや、そうでもないか? 目下の所、門世界との関係は色々な意味で注目を浴びている。それを思えば、政治担当の2人が揃っているのは当然か。

 

「ようこそ、ピニャ殿下、ボーゼス殿。通信ではお話しましたが、こうして直接会うのは初めてですね。シャドウミラーの政治を担当している……そうですね、帝国で言えば宰相のような地位にあると言えば分かりやすいでしょうか。エザリア・ジュールといいます」

「レオン・三島です。同様に政治を担当しています」

「帝国第3皇女、ピニャ・コ・ラーダだ」

「ボーゼス・コ・パレスティーと申します」

 

 お互いにそれぞれが挨拶をし、まず最初に口を開いたのはエザリア。

 

「さて、ピニャ殿下。色々と話す事も多いでしょうが、今はまず食事にしましょう。折角四葉さんが用意してくれた料理です。冷めてしまっては勿体ないですからね」

「う、うむ。では……」

 

 呟き、椅子に座るピニャとボーゼス。

 それを見ながら俺も近くに座り、早速とばかりに近くの蒸籠に置かれていた肉まんへと手を伸ばす。

 噛みつくと、生地のふんわりとした食感に肉のジューシーな噛み応え。細かく刻まれたタケノコの歯ごたえがいいアクセントになっている。

 

「美味い」

 

 思わず呟く。

 超包子の肉まんは久しぶりに食べたが、随分と腕を上げているな。

 既に学生のレベルじゃない。

 そんな肉まんを味わって食べていると、ピニャ達にしてもこれだけの料理は珍しいのだろう。真剣な顔をして並べられた中華料理を食べている。

 そして、してやったりといった表情で笑みを浮かべているエザリアとレオン。

 なるほど、この料理にしても外交攻勢の一種な訳か。

 

「へぇ、美味いな。いや、役得役得」

 

 何故か俺の隣ではムウもまた美味そうに料理を食っていたが。

 いや、ここまで一緒にやってきたんだから別に文句はないんだけど。

 

「どうでしょう? ピニャ殿下のお口にあいましたか?」

「うむ。これ程の料理は、城でも滅多に食べられないぞ」

「そうですか。喜んで貰えて何よりです。この料理を作った者も、その言葉を聞けば喜ぶでしょう。……帝国の皇女殿下からの言葉だとしても」

 

 レオンの口から、チクリとした棘が吐き出される。

 それに気が付いたのだろう。ピニャも酢豚を食べていたレンゲの動きを止め、改めてレオンへと視線を向けた。

 ちなみに酢豚は豚肉と黒酢だけで作られたシンプルな料理で、それだけに調理した人物の腕が表れる。

 個人的にはタケノコとかが入っている普通の酢豚も好きなんだけどな。特にパイナップルは否定的な人もいるが、俺としては嫌いじゃない。

 

「それは、どういう意図を含んだ言葉かな?」

「いえ、それ程難しい事ではありません。帝国が侵略行為のような真似をして私達と敵対するような真似をしなければ、そちらでも十分にこのような料理を味わう事が出来たでしょうに……一時の欲に目が眩んだ結果、大切な者……あるいは大切な物を失ってしまうのは哀れだと思いましてね」

「……確かにお互いの出会い方は不運であった。だが、出会いが不運であったとしても、ずっと同じ立場でなければならないということもないと思うが?」

 

 その言葉に、レオンの口元にニヤリとした笑みが浮かぶ。

 まるで、罠に掛かった相手を見るような……そんな視線。

 

「確かにそうですね。ですが、お互いの国の力が大きく開いている現状……それも国力が下の者が上の者に向けて行った侵略行為です。相応の謝罪が必要でしょう? それこそ、アクセル代表が帝都で宣戦布告の時に行ったような、徹底的な謝罪が」

「それは……出来かねる」

 

 苦虫を噛み潰したような、ピニャの顔。

 実際、俺が提示した条件を帝国がそのまま受け入れたりしたら、間違いなく皇帝の威信は地に落ちる……どころか、地面に沈み込んでもう2度と浮き上がってはこれそうにない。

 

「では、どうするおつもりで? 既にピニャ殿下はシャドウミラーの実力を知っていると思います。アクセル代表を見れば分かると思いますが、生身でも非常識極まりない戦闘力を発揮し、アルヌスの丘に来る時にピニャ殿下達も乗った機体を使えば、この世界では天災と呼ばれている炎龍ですら楽に打ち倒す。それだけの実力を持った相手に対して、帝国がどうにか出来るとでも? もっとも、どうにか出来るのであればこの地に侵攻してきた時や、アルヌスの丘を巡る戦いであそこまで一方的に……ああ、そうそう。これをどうぞ」

 

 ん? 肉まんだけかと思いきや、魚介系の饅頭もあるな。マグロを煮込んだ奴が入っている。

 ちょっと予想外の味に目を白黒させながら交渉の成り行きを見守っていると、レオンは近くのバッグから取り出した書類の束をピニャに差し出す。

 エザリアは特に口出ししないでレオンに任せているところを見ると、今回の交渉はレオンが中心になって行われているらしい。

 まぁ、レオンはどちらかといえば攻めの交渉が得意なタイプだ。それを思えば、人選はそれ程間違っていないか。

 マグロ饅を食い終え、次にエビチリを口へと運んでプリプリとしたエビの食感を楽しみつつ、そう考える。

 余談だが、個人的にはエビの最も美味い食べ方はエビフライだと思っている。特に大きめのエビだと尚良し。逆に、麻帆良のスーパーで売っているような、甘エビを衣で誤魔化したようなエビフライは最悪としか言いようがない。

 

「これは……っ!?」

「私達の世界の文字ではなく、そちらの世界で使われている文字で書かれているので、読めないという事はないでしょう?」

 

 レオンに渡された書類に目を通したピニャは、最初何が書かれているのか分からなかったようだが、すぐに理解して息を呑む。

 ……何の書類だ?

 そんな俺の疑問は、次の瞬間にピニャから手渡された書類に目を通したボーゼスの言葉で判明する。

 

「捕虜の……名簿」




アクセル・アルマー
LV:42
PP:290
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1167

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