転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0924話

 正直、今俺が見ている光景があまり理解出来なかった。

 あれだけ鱗が硬いとか何とかロゥリィに言われたというのに、まさかビームバルカンで尾が砕けるとは。

 確かに通常のビームバルカンではなく砲門は4つになっているし、S.M.Sで俺が乗っていた時に比べると時流エンジンになり、同時にビームの種類もシャドウミラーのものとなって威力が上がっているのは分かる。だが……それでもここまで脆いとは思わなかった。

 

「ギャァアアアァァアアア!」

 

 炎龍の悲鳴のような声が聞こえてくる。いや、悲鳴のようなではなく、純粋に悲鳴なのだろう。

 ともあれ、あれだけの巨体でもやはり尾が砕かれるというのは炎龍にとって余程に痛い出来事だったらしく、悲鳴を上げながらサラマンダーの方を怒りに満ちた視線で睨み付けてくる。

 なるほど。まぁ、色々と思うところはあれども、俺に対して注意を向けさせることには成功したらしいな。

 なら折角だし場所を移させて貰うか。

 そう判断すると、エアカーに搭載されている通信機へと通信を入れる。

 

「スレイ、聞こえているな」

『あ、ああ。まさかあのドラゴンがあんなにあっさりとやられるとは思ってもいなかった。いや、この場合はサラマンダーの強さを称賛すべきか?』

『嘘ぉ……あの炎龍が一撃でぇ……?』

 

 通信機から聞こえてくるのは、唖然としたスレイの声とロゥリィの信じられないといった呟き。

 まぁ、亜神だとしても攻撃手段がハルバートしかないんじゃ、どうしても炎龍には勝てないだろうしな。そもそも空を飛んでいる以上、ロゥリィに出来る事と言えば、精々が何かを投げつけるくらいだ。

 

「取り合えず、あの炎龍とやらはこっちで引きつける。そっちはエルフの集落に行って救助に取り掛かってくれ」

 

 正直な話、炎龍がここまで脆い存在だと知っていれば最初からエルフの集落に救助へと向かわせていたんだがな。

 まぁ、今更言ってもしょうがない。

 

『分かった。救助の方は任せてくれ』

「頼んだ」

 

 短くそれだけを言って、通信を切る。

 ムラタは気を使っての戦闘のみで、ロゥリィは同じく近接戦闘特化。だが、スレイの場合は魔法をかなり使いこなせる。

 そう、例えば氷や水の魔法もだ。

 炎龍によって燃やされた集落を消化するのに、これ以上適当な人材はいない。

 ムラタやロゥリィにしたって、燃え広がりそうな場所を先に壊してしまえばそれ以上の延焼は食い止められるだろう。

 そんな風に考えつつ、大人しくサラマンダーの後を追ってきている炎龍を確認しつつ、向こうがこっちを追うのを諦めないように、時々ビームバルカンで炎龍の顔のすぐ側辺りを撃ってやる。

 

「ギャアアアアアアア!」

 

 その行為が、余計に怒りを買っているのだろう。苛立たしげな叫び声を上げつつ、サラマンダーの後ろを追ってくる。

 それなりの速度は出るみたいだが、それでもやはりVF-29ベースのサラマンダーに比べると、その速度は圧倒的に遅い。それ故に、かなり速度を落としてはいるんだが……それでも向こうにすればかなりの速度という感じらしいな。

 ともあれ、エルフの集落から引き離す事には成功した。後は仕留めるだけだ。

 ファイターのまま飛んでいたサラマンダーは、瞬時にバトロイドへと姿を変える。

 ファイター……飛行機の状態からいきなり人型になったのは炎龍にしても予想外だったのだろう。一瞬何が起きたのか分からないかのように呆気にとられて動きを止め……

 

「くたばれ」

 

 その言葉と共に、ガンポッドのトリガーを引く。

 通常のVFであれば弾丸が連続して放たれるところなのだが、生憎とこのサラマンダーはシャドウミラーの技術班によってかなり手を入れられている。当然ガンポッドにしても通常のガンポッドではなく、ヒュッケバインMk-Ⅲの持っているグラビトンライフルを参考にして開発されたグラビトンガンポッドと呼ばれる代物だ。

 その名前の通り、今ではシャドウミラーのお家芸でもある重力波砲をガトリングのようにして撃つグラビトンガトリング砲となっている。

 ビームライフルに対するビームマシンガンの重力波砲バージョンと言えば分かりやすいだろうか。

 バーストモード時にはグラビトン砲としても使用出来るが、ビームバルカンで致命的なダメージを受ける炎龍なのだから、ここで必要なのは一撃の威力よりも手数だ。

 黒く小さい重力波砲が無数に放たれ、その牙を突き立てんと炎龍へと向かって殺到する。

 こちらがグラビトンガンポッドの銃口を向けた時点で炎龍も自らの危機を察知したのか、地上へと降下してこちらの攻撃を回避しようとしたが……その行動は遅きに失していた。

 数十、数百と放たれたグラビトンガトリング砲の速度は炎龍でも回避出来る筈もなく、その殆どが胴体へと命中。そのまま破砕する。

 周辺に血と肉と骨と鱗をぶちまけながら胴体の2割程を無くしてしまった炎龍は、一瞬にして命の灯火が消え失せて地上へと落下していく。

 俺はサラマンダーの中にいたので問題は無かったが、恐らく近くにいた者達……特にエルフの集落の生き残りであれば、その墜落の音と衝撃が伝わっただろう。

 

「ふぅ。……ドラゴンというのは捨てがたかったが、人の味を覚えたような奴だとな」

 

 呟き、地上へと降下して改めて炎龍の死体を見聞する。

 サラマンダーよりもかなり大きかった炎龍だが、胴体の2割程をグラビトンガトリング砲によって破壊されている影響か、随分と小さく見える。

 問題はこの炎龍の死体をどうするかだよな。

 勿論持って帰ればレモン率いる技術班はそれなりに喜ぶだろうが……

 そうだな、このままにしておけば恐らく他のモンスターや動物に食われたりするだろうし、あるいはよくゲームなんかにあるように素材として貴重だという可能性もある。

 それを考えれば、こっちで確保しておいた方が後で後悔しないだろう。

 それにどうしても使えないとなれば、最悪キブツの原料にすればいいんだし。

 そう判断し、サラマンダーを地上へと降ろしてコックピットから出ると、地上には炎龍の血の臭いが強く漂っていた。

 本来であれば、まさに見上げる程の大きさを持つ筈の炎龍。

 だが、胴体の一部が砕け散っている為に、その質量は通常よりも大分小さくなっているように見える。

 そんな血の臭いのする炎龍の死体へと触れると……次の瞬間には空間倉庫への収納が終わり、綺麗さっぱりと消え去っていた。

 

「さて、とにかくこっちは片付いた。後はエルフの集落か」

 

 スレイ達を向かわせたんだから、悪いようにはなってないと思うが……さて、どうだろうな。

 影のゲートを使おうかとも考えたが、それだと向こうに怪しまれる可能性がある。何しろ、この世界の魔法と俺が使う魔法は大きく違うのだから。

 それを思えば、炎龍を倒したサラマンダーに乗って集落へと向かう方がいいだろう。

 そう判断し、サラマンダーのコックピットへと戻るのだった。

 

 

 

 

 

「……まぁ、そうだよな」

 

 視線の先……より正確にはサラマンダーの映像モニタに映し出されている光景を見て、思わず呟く。

 やはり森の中にあったのはエルフの集落で間違いなかったのだろう。

 家の類の多くが燃やし尽くされており、耳の長い人物達が大勢集まって右往左往としている。

 ……家の何軒かが凍らされているのは、恐らくスレイが魔法で消火した為だろう。

 いや、もうちょっと他にやりようがあるだろうとは思うんだが、その辺はある意味しょうがないか。

 基本的にエヴァに習っているのは、戦闘に使える攻撃魔法がメインなのだから。

 

「それでも生き残りがそれなりにいるのは、良かったと言うべきだな」

 

 確かに俺達にしてみれば、炎龍はどうとでもなる相手だった。だが、それはあくまでもシャドウミラーの機体に乗ってるからであって、この世界のエルフが生身で炎龍と戦えばどうなるのか。それが今俺の眼下に広がっている光景だった。

 お、回復魔法でも使っているらしいスレイを発見。まぁ、側にいるエルフの親子は、突然上空に現れたこっちを呆然と見ているが。

 そんなエルフの親子に何かを告げているのは……俺が味方だと教えているのか。

 ムラタとロゥリィは……ああ、破壊された家屋の撤去でもしてるのか。

 ロゥリィは降下しているサラマンダーの姿を見て、ファイターからバトロイドになっているのに驚いている様子だが、ムラタは全く意に介さず崩れている家を破壊し続けている。

 そうして、村の残骸に近い場所にいるエルフ達が地上へと降りていくサラマンダーにじっと視線を向けている中、とうとう地上へと着地する。

 スレイやムラタ、あるいはロゥリィに言われても、やはり警戒はしているのだろう。エルフの何人かは構えはしていないものの、手に弓を持っている者も多い。

 ……ま、ただの矢なら俺には殆ど無意味なんだけどな。

 それでも矢を放たれるというのは気持ちのいいものでもないので、一応念の為とばかりに外部スピーカーのスイッチを入れる。

 

「こちらシャドウミラーのアクセル・アルマーだ」

 

 そこまで呟き、それを名乗ってもここでは意味がないことに気が付く。

 そもそもエルフともなれば、恐らくは帝国の支配下ではない可能性もあるんだし。

 

「ちょっと分かりにくかったか。今お前達の村にいるスレイ、ムラタ、ロゥリィの3人の仲間だ。これから姿を現すが、迂闊な行動をしないでくれると助かる。……ああ、炎龍に関しては心配いらない」

 

 その言葉にエルフ達がざわめく。

 いきなり姿を消した炎龍の事はやはり気になっていたのだろう。

 もっとも、気になっていたからといってもどうしようもないというのが実情だっただろうが。

 

「炎龍を倒した俺に攻撃を仕掛ければどうなるのか。それを理解した上で賢明な行動を期待する」

 

 そこまで告げると通信を切り、コックピットを開き姿を現す。

 そして俺が姿を現すと……

 

「……は?」

 

 思わず目の前に広がった光景に、惚けたような声が出る。

 いや、ああまで言った以上は敵対されることはないと思っていた。だが、何故か今俺の目の前に広がっているのは、エルフ達が片膝を地面へとつけながら頭を垂れている光景。

 それは、まさしく王に仕える臣下とも、あるいは神に仕える神官とも思えるような光景だ。

 ……何でだ?

 しかも俺の見間違いでなければ、俯いている者達の顔からは涙が溢れて地面にポタポタと落ちている。

 まさか、これが実は涎でしたとかだったりはしないだろう。

 ……いや、本当になんでだ?

 

「アクセル。何かしたのか?」

 

 自分の側にいたエルフの親子達も揃って跪いているのを見たスレイが、こちらへと近づきながら尋ねてくる。

 だが当然俺が何かをした覚えがある筈もないので、首を横に振るしか出来ない。

 

「多分、アクセルの性質のせいだと思うわよぉ」

 

 ハルバートを手に、近づいてきたロゥリィの一言。

 その言葉に思わず首を傾げて、どういう意味かを尋ねる。

 

「俺の性質?」

「そうよぉ。アクセルが知ってるかどうかは分からないけど、エルフって精霊魔法を使うのよねぇ。それで、アクセルは一体なんだっけぇ?」

「混沌精霊……なるほど」

 

 自らの種族を口にして、ロゥリィの言いたい事を理解する。

 捕虜から聞いた情報によると、エルフの使う精霊魔法というのは精霊から力を借りる事で発動しているらしい。

 その辺はネギま世界の……そして俺達が使ってる魔法と同じようだが、精霊に対する思いが違う。

 つまり、エルフにとって精霊というのは自らに力を貸してくれる存在。誤解を承知の上で言わせて貰えば、神に近い存在なのだ。

 そして、この門世界にはロゥリィを始めとした亜神や、その亜神からもう1段階上へと昇った神もいる。

 だとすれば、エルフにとって精霊である俺という存在は半ば神に近いものなのだろう。

 ……マジか……

 

「その……アクセル様と仰いましたか」

 

 俺の近くにいた男のエルフが傅いたままそう声を掛けてくる。

 俺からは頭部しか見えないが、声の感じからすると年齢は今の俺とそう大差ないだろう。

 勿論エルフである以上、それはあくまでも外見年齢に過ぎないのだろうが。

 まぁ、このまま黙っているのもなんなので口を開く。

 こいつらにしてみれば、俺は神のような存在であるにも関わらず声を掛けてきたのだ。当然、何か特殊な事情があるのは間違いないだろう。

 

「ああ。アクセル・アルマーだ」

「先程、炎龍を倒したと仰いましたが……それは、その奇妙な乗り物を使ってでしょうか?」

「そうだ。エルフのお前達が聞いた事があるかどうかは分からないが、俺達シャドウミラーは現在帝国と戦争中だ。その際に使っているのがこの兵器だ」

 

 正確にはVFやらPTやらAMやらMSやらKMFやら色々あるんだが、今はそれを口にする必要もない。

 そんな俺の話を聞いたエルフは、恐る恐ると顔を上げて言葉を紡ぐ。

 

「貴方様は、私共にとって神にも等しいお方。それだけの精霊の加護を得ている方は、エルフとして長年生きてきましたが、初めて見ました。……炎龍にこの集落を襲撃されたのも、あるいは何らかの運命だったのかもしれません。……アクセル様、もしよろしければ、私達を貴方の庇護下に入れて貰えないでしょうか?」

 

 混じりっけなしの、純粋な瞳で俺を見ながらそう告げてくる男。

 俺を中心に頭を垂れている他のエルフ達も、男の言葉に何の異論もないのか沈黙を保って俺の返事を待つ。

 ……どうしてこうなった?




アクセル・アルマー
LV:42
PP:175
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1144

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