転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0828話

 映像が映し出された瞬間、背後にいた政治家や軍人達からざわめきが聞こえてくる。

 その理由は映像モニタに映し出されたのがレモンを始めとした美人達ばかりだったからなのか、はたまた映像モニタがいわゆる空間スクリーンだったからなのか。

 そんな風に考えつつ、レモンに向かって小さく肩を竦めてから口を開く。

 

「こっちでは1日といったところだが、そっちではどのくらい経った?」

『1分ちょっとといったところね』

「それは、また……」

 

 マクロス世界の時とは違って、随分と差があるな。

 この辺は世界によって様々であるのを考えると、俺の方ではどうしようも無いんだろうが。

 

『こうして映像を見る限りだと地球か……あるいはどこかの惑星ってところかしら?』

 

 俺の背後に映っている政治家や軍人、あるいは戦術機の類に関しては触れずに告げてくるレモンに頷く。

 

「ああ、地球だ。オーストラリアに転移した。ただ、色々と問題のある世界でな。それこそ、俺達が協力するかどうかといった意味での問題や、この世界自体の問題といった風にな」

『アクセルが転移した世界に何かしら問題があるというのはいつもの事だけど、協力するかどうかの問題?』

「簡単に言えば、この世界はBETAと呼ばれている宇宙生物に襲われている。個々の能力的には俺達にしてみればそうでもないんだが、数だけは多い敵だな。それがこの世界の問題。で、この世界の年代が1997年という時代なだけに、シャドウミラーの目的の1つでもある未知の技術の習得というのはかなり難しい。……例外として、そのBETAから未知の元素を用いたG元素ってのを入手出来るかもしれないといったところか」

 

 そう告げると、レモンが悩むように数秒程眉を顰める。

 それは他の者達も同様なのだろう。マリューやコーネリアもまた難しい表情を浮かべていた。

 尚、俺と一緒にここへ来た政治家や軍人達は、当然G元素については知っているのだろう。俺の言葉に、何をするでもなく話の成り行きを見守っている。

 

『でも、アクセルの後ろに映っているのは人型機動兵器よね? 1997年という時代にそれだけの兵器を作り出せるとは思えないんだけど?』

「BETAという絶対的な敵の存在があってこそだろうな。それに戦術機は……」

 

 チラリと背後へと視線を向け、F-18を一瞥してから言葉を区切る。

 ここで戦術機が使い物にならないと口にしても無駄に軋轢を生むだけ、か。

 

「いや、この件に関しては一旦そっちに戻ってから話す。それよりも、一応この辺一帯はシャドウミラーの土地として借りられる事になったから、ゲートの守備要員として量産型Wとメギロート、イルメヤを送ってくれ」

 

 その言葉に、背後にいる軍人や政治家から息を呑む声が聞こえてくる。

 まぁ、この土地をシャドウミラーに提供したにしても、全く未知の戦力を呼び込もうというのだから無理もない。

 だが、この世界の住人は追い詰められているが故に何をしでかすか分からないという点もある。それを考えれば、俺がいない間にゲートを奪取なり占領なり、あるいは破壊なりをされる可能性が皆無とは言えないんだよな。

 特にどことは言わないが、BETAとの戦いが終わった後を見据えている国にしてみれば世界の力関係を一変させる俺達という存在は味方に出来れば頼もしいが、敵に回せば危険でしかない。

 あるいはオーストラリアに国家機能を移した国にしても、シャドウミラーの技術や戦力を得ればBETAに占領された自らの国を奪い返す事が可能だと判断するかもしれない。

 

『ふーん。……分かったわ。すぐにそっちに送るから少し待って。それでアクセルはどうするの? しばらくそっちにいる?』

 

 レモンの言葉を聞き、コーネリアが早速とばかりに周囲に指示している声を聞きながら首を横に振る。

 

「いや、一旦そっちに戻る。こっちの世界……」

 

 呟き、何故か思い浮かんだその言葉を口にする。

 

「そうだな、マブラヴ世界とでも名付けるか。ともあれ、マブラヴ世界の情報やその他諸々を相談する必要があるしな」

『マブラヴ世界? また、妙な名前ね。BETA世界でもいいと思うんだけど……』

 

 そんなレモンの言葉に、背後で政治家や軍人達が思い切り首を横に振るう。

 まぁ、BETA世界だとBETAが主役の世界といったイメージが強いからな。それならまだ俺が口にした意味不明な世界の名前の方がまだいいのだろう。

 背後からは『地球で良くないか?』『いや、向こうからの情報だと他の世界にも地球があるらしい』『でもマブラヴってのはどういう意味なんだ?』『さあ? でもBETA世界よりはマシだろ?』『確かに』といった声が聞こえてきた。

 

『アクセル、準備が整った。取りあえず量産型Wが30人、メギロート10機、イルメヤ10機、シャドウ5機といったところだが、それで構わぬか?』

 

 背後からの声を聞いていると、映像モニタに映し出されたコーネリアがそう告げてくる。

 この世界の戦術機を考えればかなりの過剰戦力に近い気もするが、いざという時に手が足りなくなったりしたら目も当てられないしな。

 

「待って欲しい。その、出来ればこのゲートという装置の防衛に関しては我々に任せて貰いたい」

 

 突然背後から聞こえてきたそんな声。

 訝しげにそちらへと視線を向けると、そこでは軍人の1人がこちらへと小狡そうな視線を向けている。

 

「それに、大体異世界からの存在と交渉をするというのに、我が国だけで行うのはどうかと思うのだが。この件に関しては、1国だけではなく国連を通して……」

「黙れ!」

 

 得意げに自らの持論を口にするその軍人に対して、リトラスの怒声が言葉を遮った。

 周囲の他の軍人達も、口を開いた軍人へと苦々しい視線を向けている。

 階級を見る限り中佐でしかないんだが、よくこの状況で口を挟めるな。

 そうも思ったが、何故か周囲ではリトラス以外に口を開く様子は無い。相変わらず苦々しげな表情を浮かべてはいるのだが。

 そして、大将という地位にあるリトラスに怒鳴られたにも関わらず、先程口を開いた中佐は特に堪えた様子も無く……いや、笑みすら浮かべたまま、どこか小馬鹿にするような視線を向けてから頭を下げる。

 ……なるほど。

 一瞬混乱したが、すぐに納得する。恐らくあの中佐はアメリカの手の者なんだろう。

 オーストラリアの軍隊に何故あからさまなまでにアメリカの手先が入り込んでいるのかは分からないが。

 アメリカの手先だと分かりきっているのに、それを排除できない。これはアメリカがこの世界で突出しすぎている証拠だろう。

 だが、そうだな。一応その辺は話しておいた方がいいか?

 いや、ここでそれを口にすればアメリカを余計に刺激するだけだな。俺としてはこの世界のアメリカが戦術機を持ってきたとしても敵ではないが、土地を借りているオーストラリア政府に迷惑を掛ける訳にもいかないし。

 ただまぁ、今ので俺だけではなく通信でやり取りを聞いていたシャドウミラー幹部のアメリカに対する好感度が下がったのは事実だろう。

 

『アクセル、準備が整った。そちらに転移させるが、構わないか?』

 

 そんな風に考えていると、映像モニタに映し出されたコーネリアがそう声を掛けてくる。

 その言葉に頷き、先程の中佐の発言で微妙な雰囲気になっている周囲へと向かって口を開く。

 

「悪いが、ちょっと周囲から距離を取ってくれ。今からこのゲートの護衛としてシャドウミラーの戦力が転移してくる。……一応言っておくが、シャドウミラーの兵器は人型の機体もあれば、虫型の機体もある。くれぐれも早まって攻撃をしたりしないようにしてくれ。もしそうした場合は、こちらも相応の対処を取らざるを得なくなるからな」

 

 そう告げると、周囲の軍人や政治家達が一斉に距離を取る。

 何人かの軍人が部下に命令して少し離れた場所にある指揮車へと向かっているのは、恐らく戦術機に乗っているパイロット全員に対して絶対に攻撃しないように改めて命令する為だろう。

 そして、リュケイオスの周辺に光の繭が形成され……次の瞬間には、ゲートの近くには武装した量産型W30人に、メギロート、イルメヤが10機ずつ、シャドウ5機が姿を現していた。

 

『おおおおおおおおお』

 

 後ろから聞こえてくる複数のざわめき。

 まぁ、昨日ジョンが行っていたF-18Eの性能試験に参加していた者以外では、初めて転移という手段を見たのだから無理も無い。

 ああ、でも性能試験をやってたくらいだから、その際の映像が残っていたりはするのかもしれないな。

 

「よし、じゃあお前達はゲートの護衛に付け。現在この周辺はシャドウミラーの土地となっている。もし武装して攻め込んでくる相手がいたら、各自対処しろ」

「了解しました」

 

 意図的に周囲へと聞こえるように命令すると、何人かの軍人や政治家が微かに眉を顰める。

 その中に先程の中佐が入っていたのを考えると、恐らくあいつらがアメリカの息が掛かっている奴等……いや、違う。単純に異世界人である俺達に頼るのを良しとしない強硬派の線もあるか。

 何しろ、宇宙から攻めてきたBETAに地球を荒らされている以上、似たような存在ともいえるシャドウミラーに対して強硬、あるいは恐慌的な態度に出る奴がいてもおかしくはない。

 異世界と宇宙では全く話が違うんだが。

 

「アクセル代表、では私達が君達に連絡を取りたいと思った時はどうすればいいのかね? 迂闊に近づいて彼等に攻撃されるのは避けたいのだが」

「普通に武器を持たずに近づいてくればいいさ。そして、量産型Wに俺と連絡を取りたいと言えば通信を繋げてくれる。とは言え、有象無象が大量に来られるのも困るから、クリメナとリトラスの2人が来た時だけ連絡を取れるようにしておく」

 

 その言葉に、周囲で再び不愉快そうに眉を顰める者が数人。

 こっちは恐らくクリメナ辺りを出し抜こうと考えていた者達か。

 当然と言えば当然だが、この世界でも国が1枚岩になるというのは、BETAという脅威があっても相当に難しいらしい。

 まぁ、3人集まれば派閥が出来ると言われているし、それを思えばシャドウミラーのように1つの国の中で派閥が出来ないというのは、寧ろ珍しい事なんだろう。

 

「他に何かあるか?」

「……私達の世界との交流に関しては、具体的にいつ判断を下して貰えるのかを聞かせて欲しい」

「そうだな、最終的な決定に関しては数日程度は貰うことになる。だが、この世界の事を色々と知る必要もある為、明日にでもそちらの代表と会談を開きたいと思ってるんだが、どうだ?」

 

 暗に外務省ではなく首相を出せと告げるが、それに戻ってきたのはクリメナの困り顔だった。

 確かに首相と会わせろ、はいそうですかという風にはいかないか。

 だが、それはあくまでも通常の話だ。現在のこのマブラヴ世界は、正真正銘人類は滅亡の瀬戸際にある。それを打破する可能性があるのだから、その程度の柔軟さくらいは見せて欲しいところだ。

 向こうにしても、それは理解出来たのだろう。数秒程の沈黙の後、やがて頷く。

 

「分かった。明日……とは約束できないが、出来るだけ早いうちに会談の席を用意する。それで構わないか?」

「ああ、それでいい」

「バソールト副長官!」

 

 その瞬間、政治家の中の1人が怒声を上げる。

 

「幾ら何でも、バソールト副長官の独断専行が過ぎます!」

「私は首相からこの件に関する全権を預かっている。その範囲内だ」

「だが、それでも! 我が国の首相を、このような怪しげな相手との……」

 

 ほう、この期に及んでもまだ事態を理解していない奴がいるとはな。

 現状ではほぼ詰んでいるこの世界、俺達が見捨てたとしても人類滅亡……となるかどうかは分からないが、それでも現状ではその可能性の方が非常に高い。

 

「黙らんか!」

 

 叫び声と同時に、振るわれる拳。

 政治家がやるべき事じゃないと思うが、現状を理解しているからこその言動なのだろう。

 そのまま政治家を殴り飛ばした後で、クリメナが頭を下げてくる。

 年齢の割に元気なのはマブラヴ世界だからなのか、あるいは本人の資質故なのか。

 ともあれ、クリメナは頭を下げたまま口を開く。

 

「うちの国の政治家が失礼な事を言った。許して欲しい」

「……一応聞くが、オーストラリアとしては俺達と国交を結びたい。そういう認識でいいんだな? 別にこっちとしてはこの世界に対して必ずしも交流を望んでいないし、どうしても交流するにしても、アメリカや日本、イギリスに手を伸ばすという選択肢もある。俺達がオーストラリアを最初の交渉国として選んだのは、単純に転移した先がオーストラリアだったからという理由以外にはないんだが」

 

 現状、この世界ではアメリカがトップを独走しており、その随分後ろをオーストラリアが。その次を日本とイギリス。その後ろがロシアといった具合になっている。

 どうしてもこの世界と交渉をするというのなら、別にオーストラリアである必要は無いのだ。

 

「……勿論だ。2度とこんな事は無いように注意するので、今回は穏便に収めて欲しい」

 

 頭を下げる相手に小さく溜息を吐き、口を開く。

 

「俺達の協力が欲しいのなら、せめて意見の統一だけはしておいてくれ。首相との会談の日程が決まったら、連絡を頼む」

 

 それだけ告げ、量産型Wに指示して俺の姿はホワイトスターへと転移するのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:25
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1114

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