転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0791話

 フロンティア船団との最初の交渉が終わったその日の夜、俺の姿はホワイトスターにある家の中にあった。

 ただし、いつものようにリラックスをしているとか、あるいは食事をしているとかそういう訳では無い。その証拠に、俺の前には映像モニタが3つ存在しているのだから。

 

『なるほど、君がいなかった間の件に関しては了解した』

『フォフォフォ。それにしても、君も何かある度にトラブルに巻き込まれておるのう』

『麗華様も心配なさっておいでだったのだぞ。全く、つくづく人騒がせな奴だ』

 

 ウズミ、近右衛門、星刻。現在俺達シャドウミラーが国交を持っている国の代表達だ。……まぁ、近右衛門の場合は国ではなく麻帆良の代表という形だが。

 ともあれ、行方不明になっていた俺が帰還したという報告自体は既に送ってあったものの、それでもきちんと事情説明をする必要があるという事でこうしてそれぞれに通信で連絡を取った訳だ。

 出来れば直接会って説明したかったのだが、1人1人に対してそれぞれ説明すると色々と時間が掛かるし、こちらとしてもそれ程纏まった時間が取れないという理由で、こうして1度で済ませる事になった。

 

『ふーむ、それにしてもアクセル君が無事で何よりじゃったわい。儂等の世界としては、火星のテラフォーミングをやっておる分、シャドウミラー……というか、アクセル君の存在は重要なものなのでな』

『何をおっしゃいますか、近右衛門殿。それを言うならば私達の世界とても同じですぞ。幸いこの1年半の間にロゴスが動き出すような事はありませんでしたが、それでも色々と企もうとしては監視として派遣されている量産型Wに発見されてはMSとメギロートが戦うような事態になってましてな。やはり奴等を抑える為にはシャドウミラーという存在が……それも、アクセル・アルマーという存在が率いるシャドウミラーという存在が必要なようでして』

『ふむ、お二人の世界に比べれば私達ギアス世界はまだ随分とマシですね。何しろ、アクセルが消える直前に丁度世界を治めた形になったので、何か起こそうにも結局1年半程度ではどうしようもないというのが正直なところです』

 

 それぞれが自分達の世界の懸念を口にするが、一番危険度が高いのはSEED世界だな。ロゴス辺りが妙な動きをする前に、もう1度しっかりと引き締めておいた方がいいか。

 ネギま世界、ギアス世界に関しては特に問題無しと。

 ギアス世界は星刻が言ってたように、俺がマクロス世界に行く直前に戦いを収めたというのが影響しているのだろう。そしてネギま世界に関して言えば恐らくはフェイトの存在が大きい。

 

『さて、それでマクロス世界とか言ったかのう。そちらの技術についてじゃが……』

『うむ、そうですな。色々と興味深いのは事実ですが、欠点も多い。いや、向こうの世界のように銀河規模で移動しているのなら欠点にはならないのかもしれないが、地球圏で活動しているオーブにとっては……』

『こちらとしては宇宙開発の技術には興味ありますが、何しろ現状では地球上だけで手一杯なのでそれ程興味を引く技術はないですね。VFとやらに関する技術は興味深いものがありますが、ギアス世界の技術とは全く違う技術なので、色々と技術的な問題や基礎研究の不足もありますし。それに……例の件もありますしね」

 

 例の件。俺が行方不明になっていた1年半の間にギアス世界、SEED世界、ネギま世界、そしてシャドウミラーとの間で話し合われた件だ。

 異世界の軍事技術を入手すれば、当然その世界の兵器は発達する。だが、そうすると当然自分達の国以外でもその技術を使用する事になる。その結果、際限なき軍拡競争になる可能性が高い。

 それ故、兵器という面に関してはなるべく他世界の技術を使わないようにしようと話し合って決められたらしい。まぁ、シャドウミラーは色々な意味でこの同盟関係の核でもあるので例外だが。

 確かにそれは分からないでも無い。ギアス世界の陽光、SEED世界のオーブ。どちらにしても純粋な国力で考えればそれぞれの世界の支配権を握っているとは思えない程の小ささ――陽光に関しては国土だけは広いが――だ。それでも現在のような状況になっているのは、あくまでも俺達シャドウミラーという存在がいたからこそ。

 故に、他世界の技術を融合するというシャドウミラーと同じような真似をそれぞれの他の国にやらせると、非常に不味い事態になる。

 それ故の決定だった。

 尚、条約の類ではなく、あくまでもそのようにしようという、緩い枠組みの決定であり、更にそんな状況であるが故に機動兵器そのものではなくても、その技術は輸入可能になっている。

 まぁ、技術なんてのは何でも使い方次第だしな。平和的な目的で開発された技術が兵器に応用されるのなんて珍しくもなんともない。だからこそギチギチに条約で固めるのでは無く、あくまでもそれぞれが自分の判断で入手する技術を選ぶ事が重要になり、それが恣意的に過ぎれば他の世界から軽蔑の目で見られ、距離を置かれるだろう。

 ある種の相互監視ではあるが、それぞれが独裁者的な資質がないからこそ上手くいっている。

 正直、この件をレモンやマリューに寝物語で聞かされた時には驚いたが、確かにマクロス世界のような技術的に発展している世界と交流を持つと考えれば、必要な事態ではある。際限なき軍拡競争とかになったりすれば、俺達シャドウミラーの優位性も崩れかねないしな。

 

『ただ、儂としては火星の関係上テラフォーミング技術は是非とも欲しいところじゃ』

 

 近右衛門がそう告げてくるが……マクロス世界のテラフォーミングで最も有名な地球を瞬く間に復活させた方法というのは、実はゼントラーディのマイクローン装置を使って植物やら何やらのクローンを製造するという方法だったらしい。そして当然ながら遺伝子的な劣化が起きて、現在ではマクロス世界でも禁止事項にされてるとか。

 まぁ、その辺の技術はレモンの量産型Wの技術で何とかなりそうな気もするが、もしそれを実現すると色々と問題も起こりそうなんだよな。

 ああ、マクロス世界と言えば……

 

「マクロス世界の歴史に一番近い歴史を持つのはネギま世界だ。そちらから文化の輸出は可能かもしれないな。特に歌舞伎を始めとした伝統芸能はかなり衰退している」

『ほう、それはなかなか気になるところじゃな。マクロス世界の住人をこちらの世界に招いて失われた文化の継承という面も考えられるか』

 

 麻帆良の利益になる事が間違いないと知り、笑みを浮かべる。

 それを見たウズミや星刻もまたそれぞれに自分の思うところを述べ……そのまま1時間程である意味首脳会談とでもいうべき話し合いは終了する。

 

「お疲れ様」

 

 そう言ってカップに入った紅茶を差し出してきたのはマリュー。

 

「悪いな。……ところで、他の面子は? レモンはまぁ、魔法球の中だろうが」

「ええ、YF-29とかいったかしら。あの機体をなるべく早く解析するって技術班総出で頑張ってるわ。それとシェリルも魔法球を体験するって言って」

「……マリューはいいのか?」

 

 こう見えて、レモンに次ぐ技術班での実力者だ。いや、ある意味では技術班共々暴走する時もあるレモンを考えると、技術班の良心と言ってもいいだろう。

 

「ええ。私の担当分は大体終わったから」

「コーネリアとスレイは?」

「ニヴルヘイムの方よ。近いうちに魔法球での作業になるから、資材や何やらを纏めているわ」

 

 となると、今日は屋敷にマリューと2人きりか。珍しいと言えば珍しい。

 そんな風に思った時だった。玄関に設置されてあるチャイムが鳴ったのは。

 ……誰だ? もう午後10時過ぎだって言うのに。

 

『その、アクセルさんはいらっしゃいますか?』

 

 予想外の事に、尋ねてきたのはオウカだった。

 何だ、こんな時間に来るとなると何かあったのか? マクロス世界に関して?

 

「アクセル、出てきたら? 私は仕事があるから付き合えないけど、こんな時間に尋ねてくるなんて多分余程の事よ?」

「いや、仕事が終わったからこっちに戻ってきたんじゃなかったのか?」

「急に思い出したのよ。それよりも、ほら。さっさと行ってきなさい」

 

 何故か急に仕事を思い出したと称するマリューに送り出され、玄関ホールへと向かう。

 そこには当然と言うべきか、やはりと言うべきか、オウカの姿があった。

 普段軍服を着ているオウカとしては珍しい事に、薄い青色のワンピースを身につけている。この辺はやはり年頃なんだろう。

 

「すいません、アクセルさん。こんな夜にお邪魔してしまって」

「いや、特に何か急ぎの用事があった訳でもないしな。それで? 何の用事だ?」

「……以前アクセルさんに言った、後で時間があったら話したい事があるって話を覚えていますか?」

 

 そう言えば、確かマクロス世界とかの話をした時にその辺の話を聞いたな。まだ数日だが、随分前にも感じられる。

 ただまぁ、オウカがやってきた理由も分かった。

 

「どうする? 家の中で話すか? それとも……」

「その、外でお願いします。確かここには庭がありましたよね?」

「あるにはあるが……まぁ、オウカがそれを希望するならそれでもいいか」

 

 この居住地の中で最も大きい屋敷である俺が住んでいる家には、当然庭の類もある。ただしガーデニングが趣味というものがいないので、何か特別な庭という訳でもない。敢えて言うなら、量産型Wによって雑草の類が綺麗に刈られているといったところか。

 そんな庭なだけに、一応明かりの類はあるが夜に見るとどこか物寂しい感じがする。

 

「……ふふっ、どうせなら何か植えればいいんじゃないですか?」

 

 オウカもまた、そんな風に思ったのだろう。小さく笑みを浮かべてそう言ってくる。

 黒い長髪が風に靡く姿を見ると、その名の通りにオウカ、桜花。どこか桜の花の印象を受けるな。もっとも、どちらかと言えば原作知識を持っているが故に本来のオウカの散り際の儚さを知り、余計にそう感じるのかも知れないが。

 そんな風に思っていると、俺よりも数歩前に進んでいたオウカが振り向き、こちらを見上げてくる。

 どこか思い詰めたような、そんな表情。

 目を潤ませたオウカが、1歩俺の方へと踏み出す。

 

「今回アクセルさんがいなくなって、私は凄く心配しました。最初は数日で戻ってくると思い、それが数週間、数ヶ月……そして1年を過ぎても戻ってこなかった……」

 

 喋っているうちに感情が高ぶってきたのか、その瞳から1粒の涙が零れ落ちる。

 

「けど、戻ってきた……今回の件で、本当にアクセルさんがいなくなるかもしれないと思い知りました。ですから……だからこそ、私は私の気持ちをここで口にします」

「……気持ち?」

「はい。……アクセルさん、アースクレイドルで貴方が私の洗脳を解除してくれた時から、私は貴方だけを見てきました」

 

 待て、その言葉だと……つまり、そう言う事なのか?

 そこまで口にすると、再びオウカは1歩を踏み出す。俺のすぐ目の前で、潤ませた瞳と頬を薄らと赤くしながら言葉を続ける。

 俺にとっては予想外、だがオウカにとっては心が込められた一言を。

 

「アクセルさん。……いえ、アクセル・アルマーさん。私は貴方の事が好きです。……愛しています」

「……」

 

 その言葉に、無言を返す。

 いや、オウカが俺に対して好意を抱いているのは知っていた。だが、それはあくまでも自分を助けてくれた相手、つまりは兄に対するような好意だとばかり思っていたのだ。だが、それがまさか男に、異性に対する好意だったとは……

 

「アクセルさんがレモンさんを始めとして多くの恋人を持っていることは十分承知しています。また、ネギま世界にいる4人のように、いずれ恋人として迎え入れたいと思っている相手がいる事も。その、全てを承知の上でお願いします。……私も、その中の1人に入れて貰えませんか?」

 

 頬を真っ赤に染めながらこちらを見上げてくるオウカ。

 俺としてもオウカに対して好意は抱いている。それは間違いない。だが、それはオウカが俺に向けて抱いている好意とは別物なのだ。

 そう。俺が勘違いしていたような、兄が妹に向けるような好意。

 それ故に、俺の口から出る言葉は決まっていた。

 

「悪いな、俺にとってお前は妹のような存在なんだ。女としてお前を見る事は出来ない」

 

 オウカよりも年下でもある、あやか達4人に対してはきちんと女として意識しているのに、それよりも年上のオウカは妹としてしか認識していない。

 この差は、恐らく出会いにあるのだろう。出会った時から庇護対象だったオウカと、その真実はともかく、俺を庇護しようとしたあやか達。それが俺の相手に対する認識の違いとなり、そのまま時を重ねて確固たるものとなっていった。

 

「……やっぱり、ですか」

「オウカ?」

 

 だが、俺の言葉にオウカは泣くでもなく、あるいは怒るでもなく。ただ寂しげな微笑を口元に浮かべて呟く。

 その瞳の端から一筋の涙を零しながら。

 

「分かってはいたんです。アクセルさんが私へ向ける視線は女に対するものではなく、妹に対するものだったって事は。けど……それでも、私はアクセルさんを諦める事が出来なかった。今の私があるのはアクセルさんのおかげですし、そんな自由をくれたアクセルさんに……私は恋してしまったんだもの」

「……」

 

 そっと目端から零れ落ちる涙を拭い、再びこちらへと視線を向けたオウカは口を開く。

 

「その、私がアクセルさんの恋人になれないとしても……それでも、せめて……アクセルさんの事を想わせて下さい。それくらいは……許してくれませんか?」

「俺は……お前の望むものを与えてやれないぞ」

「それでも。アクセルさんは私にとってあの子達と同じくらいに大事な人ですから」

 

 あの子達。アラド、ゼオラ、ラトゥーニの事か。

 

「……お前がそれで後悔しないのなら、好きにしろ」

「ふふっ、はい。分かりました。絶対に忘れてなんかあげませんから」

 

 涙を浮かべつつ、それでも小さく笑みを浮かべ……そのままオウカは俺の前から駆け去って行く。

 その後ろ姿を見ながら溜息を1つ。

 まさかオウカが俺を……な。予想外と言えば予想外だった。

 けど、なるほど。

 

「だからこそ今日はレモン達がいなかったのか」

 

 そうこちらへと近づいてくる気配へと声を掛ける。

 

「ええ。彼女に頼まれていたのよ。だから……ね」

 

 悲しげな色を浮かべた瞳をこちらへと向けてくるマリュー。

 となると、オウカの気持ちは知っていたんだろうな。いや、ここで追求すべき事じゃ無いか。

 

「さ、紅茶を淹れてあげるから、家に戻りましょ」

「……そうだな」

 

 その言葉に頷き、俺とマリューは2人並んで家へと戻るのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:1405
格闘:278
射撃:298
技量:288
防御:288
回避:318
命中:338
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1114

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