転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0704話

 宇宙空間の中で、こちらへと近付いてくるVF-25Sのアーマードバルキリーが放った大量のミサイルをレーザー機銃とフレア、そしてトルネードパック最大の特徴でもある機体上部に設置されている2門のビーム砲で纏めて消滅させていく。

 微妙に狙いの甘いミサイルだけに、最終的にはこちらへと到着することなく全てが迎撃される。

 本来のオズマの力量であればまずあり得ないミス。……いやそこまで言う程じゃないか。オズマと戦っているのが、普通の力量を持つ程度のVFパイロットなら気が付かない程度に狙いが甘くなっているレベルなのだから。だが……

 

「それで俺に勝とうというのは、甘いぞ!」

 

 ミサイルの雨が消滅した中を、トルネードパックによって追加されたブースターを使って前進。オズマ機と擦れ違い様にほぼゼロ距離で翼の下に装備されている大型マイクロミサイルポッド、そして翼の先端に装備されているマイクロミサイルポッドから全てのミサイルを発射し……次の瞬間、オズマ機は爆発して画面が消え去った。

 この結果に、溜息を吐きながらシミュレーターを出る。

 同時に、俺が使っていたのとは別のシミュレーターから出て来たオズマへと向かって言葉を掛ける。

 

「これで俺の5連勝、か」

「……そうだな」

 

 溜息を吐きながら自分の負けを認めるオズマだが、これは純粋に俺のVF操縦技術がオズマより上手くなった……という訳ではない。

 勿論、ルカを含めたL.A.Iの技術者達による調整やら何やらで、反応速度の問題に関しては何とかなってきている。勿論まだまだニーズヘッグには及ばないが、それでもこうして何度も乗っていればその速度に慣れて来るというのも事実だ。

 ……それが良いか悪いかは別にして。

 機体に関しても、俺とオズマは同様のVF-25Sだ。もっとも、部隊の指揮を重視しているオズマの機体と、その分を反応速度に振り分けているという違いはあるが、それでも決定的な差ではない。

 そんな状態ではあると言っても、オズマが俺に5連敗をした訳。それは単純に今日のオズマの調子が悪かった為だ。

 先程も思ったように、普通の相手なら気が付かない程度の不調。だが、それは逆に言えば普通以上の腕の持ち主にしてみれば決定的な差という事になる。

 例えば、このS.M.Sの中でも腕利きが集まっているスカル小隊に所属するメンバーならまず間違い無く感じる程の差だ。

 

「どうしたんだ? 妙に動きが悪かったが……スランプか?」

「いや、違うよ。……ただ、ちょっとな」

 

 溜息を吐き、とにかくこれで終わりだとばかりに小さく手を振って汗を流すべくシャワールームへと向かうオズマ。

 全く、何がどうした事やら。あのオズマが見て分かる程に調子を落とすとはな。こんな時にバジュラが現れたりしたら、それこそ洒落にならないだろうに。

 

「ギリアムがいればな」

 

 小さく呟き、首を振って忘れる。確かに新統合軍時代からオズマと付き合いのあるギリアムがここにいれば、多少はオズマの気も紛れたんだろうが、既にギリアムはいない。そうである以上はそうやって過ごしていくしか無い訳で。

 

「ま、ギリアム以外にもオズマの話を聞ける奴はいるんだし、そっちに期待するか」

 

 ブリッジにいる筈の黒人アフロの姿を思い出しながら、俺もまたオズマの後を追ってシャワー室へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「……で、何で俺がここにいるんだ?」

 

 S.M.Sの食堂。シャワーで汗を流した後でボビーにオズマの事を頼んだまでは良かったんだが……何故か俺も引っ張られて一緒に食堂へと連れてこられていた。

 いや、どのみち何か軽く食おうと思っていたからいいんだが、オズマの担当は俺じゃなくてお前だろうに。

 

「あらん、同じ小隊なんだから野暮な事は言わないの」

 

 パチリ、とウィンクをしてくるボビー。

 本来であればこの手の奴とはあまり親しくなりたくはないのだが、ボビーはオズマ以外に対してその手の視線を向けていないし、オズマにしてもそれを承知した上で友人として付き合っているらしい。ニュアンスがちょっと違うかもしれないが、節度を持った付き合いをしている。それ故に、俺もまたボビーとはそれ程違和感無く付き合う事が出来ていた。

 ともあれ、そんなボビーの様子に小さく肩を竦めてからサンドイッチを口に運んでオズマへと視線を向けて話を促す。

 そんな様子に、これ以上は隠していても無駄だと理解したのだろう。オズマはコーヒーに手を伸ばしながら、小さく溜息を吐いて口を開く。

 

「ランカがな、歌手への道を歩み始めたんだ」

「あら、ランカちゃんが?」

「ランカ……ってのは、確かオズマの妹だったよな? お前が入院した時の戦いで俺やアルトと一緒に待避壕に閉じ込められた」

 

 そう言えば、シェリルがランカに注目していたな……と、アイランド8で一緒に遊んだ時の事を思い出して呟く。

 ちなみにイヤリングに関しては、既に忘れ物の部署から回収して手元に……より正確には空間倉庫の中に収納済みだ。後は、明日のさよならライブでシェリルに返すだけなんだが……妙に嫌な予感がするんだよな。念動力がどうこうではなく、俺の直感というか、長年の戦いの経験によるものだが。

 

「で、何で急に? 歌手に関しては、ミス・マクロス・フロンティアに出たのも許せなくて喧嘩したって聞いたが?」

 

 俺がシェリルとアイランド8に行ってカジノで儲けまくったあの日、俺以外のスカル小隊メンバーは色々と大変だったらしい。ランカがミス・マクロス・フロンティアに出たことにより通っていた高校を停学になり、それで言い争いになって出て行ったのをオズマが隊長命令で俺以外のスカル小隊のメンバーに探させたんだとか。で、何だかんだと色々あったが、結局はアルトがランカの背を押す形で応援する事になり、その時のやりとりでどさくさ紛れにスカウトされて、その結果オズマもそれを認めた形となった……というのが正しいらしい。

 まぁ、この辺はミハエルやルカ、アルトから聞いた話だが。

 

「……あいつにも好きな道を進ませてやりたいと思っただけだよ。あいつももうすぐ成人するんだ。それを思えば、おかしくないだろ?」

 

 飲んだコーヒーに微かに眉を顰めてそう告げるオズマ。

 

「不器用なのも程々にしないと、ランカちゃんに嫌われるわよ?」

 

 そう告げたのは、オレンジジュースに突き刺さったストローから口を離したボビーだ。

 しかもストローがハートの形になっているのはどうなんだろうな。だが……

 

「不器用?」

「そ。バジュラが攻めてきた以上、このフロンティア船団は激しい戦場になる。それならいつ何があってもいいように、悔いを残さないようにしてあげたいって思っても無理はないでしょ?」

「……ふん」

 

 ボビーの言葉は図星だったのだろう。鼻を鳴らして再びコーヒーに口を付けるオズマ。

 何だかんだ言っても、シスコンなのは変わりないんだよな。

 と言うか、そもそも隊長命令で家出したランカを探させている時点でそれは決まりなんだが。

 

「ほら、オズマはお酒でも飲まないと素直になれないんだから、バーにでも行きましょ? 特別に何かカクテルでも作ってあげるから」

「……そうだな、確かに少し飲みたい気分だ。そうするか。ああ、言っておくがアクセルはバーに立ち入り禁止だぞ。お前がアルコールを飲むと何が起こるか分かったもんじゃないからな」

「あらん、オズマったら……ランカちゃんの次にはアクセルに保護者意識を……?」

「違う! こいつはそんなんじゃねえ! アクセルに酒を飲ませたりしたら……いや、まぁ、これ以上はいいか。とにかく行くぞ。本気で酒を飲みたくなってきた」

 

 ボビーに言い返そうとするも、やがて諦めたのか小さく溜息を吐き、コーヒーを飲み干して立ち上がる。

 ……ただし、俺に向けてバーに来るなと釘を刺すのは忘れなかったが。

 俺が転移してきたのはアルコールが原因だと理解している以上、無理も無いか。俺が酔っ払って妙な事をしないようにと、ある意味では気を使ってくれているのだろうから。

 ちなみにオズマ達が行こうとしているバーというのは、S.M.Sの施設内に存在している場所だ。まぁ、PMCとしては街中で酔っ払われたりすると困るから、その懸念をなるべく消しておきたいといったところなのだろう。

 

「じゃーね、アクセル君。また後で会いましょ」

 

 手を振り、モデルが歩くような腰を振る歩き方で去って行くボビーを苦笑と共に見送り、俺もまた今日の訓練は既に終わっているのでやるべき事は無く、ふと思い立って雑誌の類でも買うかと街中へと出る事にするのだった。

 

 

 

 

 

「お、いらっしゃい。今日も食ってくかい?」

「あー、そうだな。なら今日はマンゴースペシャルで頼む」

「あいよっ!」

 

 以前シェリルと共に食べたクレープ屋で、クレープの注文をする。

 あの時に食べたクレープが美味かったという理由もあり、アイランド1の市街まで出て来た時は大抵このクレープ屋に寄っている。その為か、店主にもすっかり顔を覚えられていた。

 

「今日もあのシェリーとかいう姉ちゃんはいないのかい?」

「ああ、色々と忙しいからな。もう暫く来るのは無理だろ」

「そっか、残念だが……ほら、出来たぞ」

 

 マンゴースペシャルを受け取りながらも、シェリルがこのクレープ屋に来る事はもう2度と無いのだろうと判断する。そもそも、さよならライブをやればもうギャラクシー船団に帰るのだから無理も無いのだが。

 そんな風に考え、近くの書店にでも行って何かの雑誌でも……そう思った時だった。

 街中全体へとアラームが鳴り響く。

 

「っ!? まさか!」

 

 またバジュラが襲ってきたのか!? 急いでS.M.Sへと戻ろうとしたが、すぐに足を止める。バジュラが襲ってきたにしては様子がおかしい。街中で幾つも空中に浮かんでいる映像スクリーンに避難警報の文字は流れず、それどころか映像スクリーンには緊急放送の文字が流れている。

 

『番組の途中ですが、大統領の緊急声明を発表します』

 

 その言葉の後に映像スクリーンに映し出されたのは以前にも何度かTVで見たことのある初老の男、グラス大統領だった。

 

『フロンティアの皆さん、ハワード・グラスです。今日は、皆さんに重大なお知らせがあります』

 

 その言葉と共に再び流れる映像が変わる。次に映し出されたのは、バジュラの中でも大型で上位の個体と思われている赤いバジュラの姿だった。

 

「あ、あれは確かアイランド1を襲撃してきた……」

 

 クレープ屋の店主が驚愕の声を上げる。

 同時に、そこから大統領からバジュラについての情報が口にされる。

 生物兵器である事、バジュラと言う名称、バジュラによってギャラクシー船団が大規模な襲撃に遭った事、そしてギャラクシー船団へと援軍を送る事。

 それらの話を聞いていると、ポケットの中に入っている携帯が着信を伝えてくる。

 連絡してきたのは……つい先程別れたばかりのオズマだ。明らかに、この大統領の放送に関係したものだろう。

 

『アクセル、今どこにいる?』

「S.M.Sの外だ。ちょっと買い物にな」

『なら、放送は見ているな?』

「グラス大統領のか? ああ勿論。というか、街中のどこででも流れているぞ」

 

 クレープ屋の店主が熱心に映像スクリーンに映し出されているグラス大統領の説明を聞いているのを横目で確認し、声が聞こえないように少し離れた位置へと移動する。

 

『先程上から指示が来た。現時刻を以て、S.M.S全隊員に対して特例条項Bが発動された。速やかに隊に復帰しろ』

「特例条項B? それは確か……」

 

 S.M.Sが主契約を結んでいる政府が戦争、あるいはそれに準ずるような状態となった時、命令拒否権やその期間終了まで脱隊出来なくなるって契約だった筈だ。確か以前オズマに貰ったS.M.Sについての規則が書かれていた書類を見る限りでは。

 

「……なるほど。分かった。すぐにS.M.Sに戻る」

『ああ、そうしてくれ。既にミシェル達もこっちに来るように連絡してある。大統領が言っている、ギャラクシー船団への援軍に関しても恐らく俺達に回ってくる可能性が高い。いつでも出撃出来るように準備しておけ』

「了解」

 

 短く返し、まだ手に残っていた食いかけのクレープを口の中に放り込んでその場を後にする。

 クレープ屋の店主は、未だにグラス大統領が映し出されている映像へと意識を集中しており、俺が去るのに気が付いた様子も無い。

 ……にしても、ギャラクシー船団がバジュラに襲われた、か。偶然か? 確かに普通に考えれば偶然だろう。だが、俺の中にある念動力が何か不吉なものを感じ取っているように感じられる。それを考えれば……いや、まさかな。

 とにかく今はいつ出撃してもいいようにS.M.Sに戻るとしよう。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:425
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:734
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:594

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