転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0702話

「うわっ、凄い凄い凄い! 本当に一面が砂漠なのね」

 

 文字通り、視界全てに広がる一面の砂漠にシェリルが歓声を上げる。

 俺とシェリルがやって来たのはフロンティア船団の環境艦の1つでもあるアイランド8。砂漠とカジノの艦だ。

 

「にしても、何だってここを選んだんだ? 一応銀河の妖精なんだから不用意に日焼けとかするのは不味いんじゃないのか?」

 

 もしシェリルのライブで変な風に日焼けをしていたりしたら、ファン達も冷めるんじゃないかと思ったが……いや、でも映像技術のレベルを考えれば、その辺はどうとでもなるのか?

 そんな風に思っていたのだが、シェリルの返事は単純だった。

 

「大丈夫よ、日焼け止めをきちんと持ってきてるから。もちろん長時間光に当たれば不味いんでしょうけど、数時間程度なら大丈夫。だから、ほら! 行くわよ!」

 

 砂漠を移動する為の専用の機械、ホバー移動が出来るスケボーのような物――正式名称は知らないので取りあえずスケボーモドキと呼ぶ――に乗り、板から伸びているコントロール用のスティックを握りながら声を掛けてくる。

 にしても、最初はもっと安全な場所……それこそ農業艦でもあるアイランド3に行こうと思ってたのに、何だってアイランド8に来る事になったのやら。

 まぁ、理由は簡単だ。俺達が行き先を相談している時、喫茶店のマスターがよろしければ……とか言いながらアイランド8にあるカジノで使えるコインの引換券を渡した為だ。それを見たシェリルがカジノに行ってみたいと言い、結局はこのアイランド8に来る事になったのだった。

 まぁ、その割にはカジノに向かわないで砂丘を使ったスポーツを楽しんでいるが。

 

「待てって! 1人で行ったりすると危ないぞ!」

 

 俺もまたシェリルの後を追うようにしてスケボーモドキへと乗り込み、コントロールスティックを前へと倒してホバーで移動していく。

 

「あはははは。まさか砂漠でこんな面白いのが出来るとは思わなかったわ! ほら、こっちよこっち。捕まえてみなさい!」

「ったく、このお転婆が。どこが銀河の妖精だよ。銀河の小悪魔じゃないか!」

「まあ、それも間違いじゃないわね。歌の演出で悪魔風の衣装になる事もあるし」

 

 そんな風に時速20km程度で疾走しながらも、お互いに会話を交わしていく。

 周囲には何も無い、一面の砂丘だから速度を感じにくいが……20kmだと意外に速度が出てるから多少は気を付けておいた方がいいだろう。

 

「それにしても、バンキッシュ・レースを見れなかったのはちょっと残念だったわ。もう少し早く来れば良かった。……アクセルがあの喫茶店で食べ過ぎたからよ!」

「そんな事を言ってもな。バンキッシュ・レースとか俺はシェリルに聞くまで知らなかったんだし」

 

 アイランド8に来る途中でシェリルから聞いた、バンキッシュ・レース。簡単に言えばVFを使ったF1レースみたいな物らしい。もっとも、『世界で1番過激なレース』と言われているように、ファイター状態でのレースは普通にF1レースを思い出させるようなレースだが、中には模擬弾を使った戦闘が可能なレースもあり、何と言うか説明を聞いた限りでは戦闘とレースを一緒くたにしたような感じの競技だ。

 それだけに人気があるのか、フロンティア船団やギャラクシー船団のように各船団での大会の上位入賞者は全船団の中でキング・オブ・バンキッシュを決める頂上決戦の星天カップに参加出来るらしい。

 

「バンキッシュ・レースねぇ……」

「何よ、アクセルは興味無いの?」

 

 砂丘をスケボーモドキで走り抜けながら、シェリーが大声でそう叫んで来る。

 砂漠とは言っても、所々に砂丘があるおかげでまるでスキーのモーグルのような感じになっている。だが、当然素人がそんなコースを走るのは危険な訳であり……

 

「きゃあああっ!」

 

 大きめの砂丘に挑んだのはいいものの、スケボーモドキの速度が出すぎていた為か5m近くもジャンプしてしまったシェリルが空中でバランスを崩して悲鳴を上げる。

 地上が砂漠の砂である以上落ちても怪我はしないだろうが……スケボーモドキの方にぶつかって怪我をする可能性もあるか。

 俺が乗っているスケボーモドキの後部を蹴りつけ、シェリルが飛んだ砂丘へと挑戦してエンジンを最大にする。その結果、シェリルが飛んだ……否、跳んだ時よりもより高く跳躍に成功し、そのまま落ちてくるシェリルの横を通り抜け様に腰を右手で捕まえて抱え上げ、そのまま抱きしめながら高く、高く空へと舞い上がる。

 

「……ちょっ、アクセル!? どこ触ってるのよ! このエロガキ!」

 

 自分の腰を思い切り抱かれ、強く抱き寄せられているのに気が付いたのだろう。慌てたように俺の胸を叩いてくるが……

 

「落ち着け。このままだと落ちるぞ」

「……え? うわぁ……これは、凄いわね」

 

 先程跳んだ場所から上空20m程の場所でスケボーモドキを全開で噴射させながら周囲の景色を見る。砂漠であるが故にどこまでも、どこまでも見えるその光景に息を呑むシェリル。既に俺に抱きしめられている事はどうでも良くなったらしい。

 

「ねえ、アクセル。このままもっと飛んで頂戴」

「そうは言ってもな」

 

 シェリルの言葉にそう返しつつも、好奇心で輝いている瞳を向けられては断る事も出来ずに小さく溜息を吐く。

 まぁ、しょうがないか。幸い今はスケボーモドキに乗ってるしな。

 俺に体重を預けているシェリルをこれまでよりも力を込めて抱き寄せ、より密着度を上げる。服越しにシェリルの柔らかな肉体の感触と、香水や汗が混じった甘酸っぱい匂いが漂ってくる。

 

「ちょっ、こら! アクセル! あんたいきなり何を!? ……きゃっ!」

 

 俺の行動に目を見開いて怒鳴りつけようとしたシェリルだったが、不意に襲ってきた浮遊感に思わず目を見開く。

 スケボーモドキが出来るのはあくまでも跳躍だが、俺の混沌精霊としての力を使えば飛ぶというのはそう難しくは無い。当然、何も無い状況でそんな真似をすれば俺の力が知られてしまうかもしれないが、今の俺とシェリルはスケボーモドキに乗っている。それを考えれば、怪しまれる事は無いだろう。

 

「うわ、うわ、うわ。凄いわねこれ。……あ」

 

 目を輝かせて視界一面に広がる広大な砂漠の様子を見ていたシェリルが、不意に何かを感じたかの如く動きを止める。そして……

 

「アクセル! 何か書く物とメモ用紙があったら頂戴!」

「お、おう」

 

 いきなりの剣幕に驚きつつも、数秒だけコントロールスティックから手を離してポケットからペンとメモ用紙を出す。……まぁ、実際にはそう見えるようにして空間倉庫から出したのだから。

 

「ほら」

「ありがと。いい? あたしを捕まえたままにして絶対に離さないでね」

 

 それだけを言うと完全に体重を俺へと預け、手に持っていたメモへと何かを必死に書き留めていく。

 

「シェリル?」

「ちょっと黙ってて! 今いいフレーズが頭の中に降ってきたのよ!」

 

 俺に腰を抱かれている事は全く気にした様子も無く……いや、寧ろもっとしっかり抱いて動かないように固定しろとばかりに身体を押しつけてくるシェリル。

 その様子に小さく溜息を吐き、シェリルの身体が空中で揺れないようにしっかりと腰を抱きしめるのだった。

 そしてシェリルがメモ帳にひたすら文字やら音楽の記号やらを書き続けて20分程。一応環境艦だとは言っても、このまま日の光に当たり続けるのは不味いんじゃないか……そう思って来た頃になり、ようやくシェリルが顔を上げた。

 

「出来たわ! ……って、あ、あら? ちょっ、アクセル!? あんた何してるのよ!」

「何って言ってもな。シェリルが離すなって言ってたんだろうが。その結果がこの体勢な訳だが……」

 

 幾ら俺を男として意識していなかったとしても、さすがにここまで接触していれば照れが出て来るのだろう。急速に頬を赤くしながら口を開く。

 

「もっ、もういいから下ろして頂戴! あーもう、何だってこんな辱めを受けなきゃ行けないのかしら。いい、アクセル。こんなサービス……サービス……サービス何かじゃないんですからね!」

 

 照れで頬を赤く染めたままそう告げてくるシェリルに、思わず笑みを浮かべつつスケボーモドキを砂漠へと下ろす。

 その時になってようやくおかしい事に気が付いたのか、砂丘に突き刺さっている自分のスケボーモドキへと視線を向けていた。

 

「ねぇ、アクセル。あたしを抱えながらずっと上にいたのよね?」

「ああ、そうだな」

「……何でそんなに長時間浮いていられたの? 確かあれって空を飛ぶような性能は殆ど無かったと思うけど。ジャンプしてもゆっくりと降りてくるみたいな感じで」

 

 やっぱりそこを突いてきたか。けど、シェリルが自分の世界に熱中している間に俺が何もしていなかった訳では無い。その辺をどう誤魔化すのかは一応考えていたのだ。

 

「俺のは元々性能が高い奴を借りたからな。その辺の違いだろう」

「……そう? まぁ、アクセルがそう言うんならそうなんでしょうけど」

 

 まぁ、こんな誤魔化し方ではあるが。

 

「それよりも、このまま砂漠にいるのは色々と不味いだろ。もう1つの名物であるカジノにでも行ってみないか?」

「カジノ、ねぇ。……そうね、確かにちょっと興味あるわ」

 

 数秒程考え込んだ様子ではあったが、笑みを浮かべたシェリルはそのまま砂丘に突き刺さっている自分のスケボーモドキへと手を伸ばしながら頷く。

 

「言っておくけど、正体がバレないように気を付けろよ。そんなんでも有名人なんだろ?」

「ちょっと、そんなんでもって何よ。大体アクセルは現状にもっと感謝すべきだと思うわ」

「感謝?」

「そう。だって、銀河の妖精をこうやって独り占め出来ているのよ? あたしのファンがそれを知ったら嫉妬の炎で焼身自殺ものよ」

「まぁ、確かに」

 

 俺自身はそんなつもりはないが、実際にシェリルというのはこれまでに何度も感じたように銀河規模での有名人なのだ。シェリルと2人きりだという今の状況を変わって欲しいと願うファンは、それこそ星の数程もいるだろう。特に先程までの、半ば……いや、完全にその柔らかな肢体を抱きしめていた状態だったと知られれば、ファンに追いかけ回されるのは間違い無い。

 

「……ま、アクセルがあたしを銀河の妖精シェリル・ノームじゃなくて、シェリル・ノーム個人として見てくれるから、こうやって一緒にいて楽なんだけどね」

「シェリル・ノームでいるのは負担か?」

 

 シェリルの言葉に、思わずそう尋ねるが……一瞬の躊躇いも無く首を横に振る。

 

「まさか。あたしはシェリル。シェリル・ノームなのよ。それを負担に思った事なんか無いわ。けど、それでもたまにはゆっくりしたいと思うのも事実なの。そういう意味ではアクセルと一緒にいる時は気が休まるわね。……ほら、行くわよ。カジノで思う存分勝ってやるんだから!」

 

 スケボーモドキに乗り込み、先へと進んで行くシェリルの後を追う。

 

「おい、待て。カジノがある場所は分かるのか!?」

「このコンピュータに地図が入力されてるわよ! それに自動で向かうシステムも付いてるし」

 

 そう告げるシェリルの後を追って、カジノへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「うわぁ……随分と煌びやかと言うか、寧ろ派手?」

 

 つい先程までいた砂漠から1時間程。正確に言えば、スケボーモドキを借りた場所まで30分、そこから専用の車両に乗って移動して30分といったところか。1時間前までは砂漠のど真ん中にいたというのに、今は周囲に幾つものカジノが建っている街の中でも中央付近にある一際巨大なカジノの前にいた。

 そして、目の前にあるカジノを見てシェリルが呟いた一言がそれだった。

 いやまぁ、実際にこうして見ると派手であるのは事実だから言いたい気持ちも分かるんだけどな。

 

「さ、行きましょう」

「……カジノって、普通それなりの格好をする必要があるんじゃないか?」

 

 別に俺とシェリルの格好がみすぼらしいとかそういう訳では無い。俺はS.M.Sの制服を着ているからマッチしているとは言えないものの、それでも周囲から浮いている程でもない。シェリルに至っては、元々持っている輝きが違うと表現すればいいのか、普通の私服だというのに自分の中から出ている存在感で周囲に文句を言わせてはいない。

 まぁ、自分の正体を隠す為かサングラスをしているというのは結構いるし、それ程おかしくはないんだろうが。

 

「さ、アクセル。行きましょ。折角だから思う存分遊ぶわよ!」

「金は……いや、言うまでも無いか」

「当然でしょ」

 

 強気な笑みを浮かべ、早速現金をコインへと替えるべくカウンターへと向かって行くのだった。

 まぁ、俺も殆ど街中に出ないからS.M.Sでの給料はそれなりに溜まっているし、バジュラとの戦いで得た危険手当とか報酬とかもあるし、文句は無いんだけど。それに喫茶店のマスターから貰った引換券もあるし。

 さて、1つ俺も運試しと行きますか。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:425
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:734
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:594

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