転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0698話

 トルネードパックを含めた機体のオーバーホールが完了したとルカから聞き、昼食を食べ終わってから早速格納庫に向かったのだが……そこで見たのは、EX-ギアを身につけたまま格納庫の中をヨロヨロと歩いているアルトの姿だった。

 あの様子では恐らく動力が入っていないのだろう。つまり、50kgを越える重量を感じつつ走っている事になる。

 

「何をやってるんだ?」

 

 そんなアルトを笑いながら見ているミハエルとルカへと声を掛けると、含み笑いが帰ってくる。

 

「軍人になるには、1度その精神性とかを叩き壊さないといけないからな。その為の第1歩だよ」

「……なるほど」

 

 ようは軍に入隊した時に鬼軍曹とかに散々にしごかれるという奴だろう。それで軍というのは世間一般とは違うと認識して、軍人としての教育を受け入れやすくするとか何とか。……俺の場合はそういうのを丸っきり受けた記憶が無いんだけどな。元々の世界の士官学校で行った授業で、自然とその辺は出来ていたのだろう。

 

「ぜぇ、ぜぇ……おい、ちょっと待て! お前等の話じゃ、アクセルもS.M.Sに入ったのは、俺とそう変わらないんじゃ、無かったのか!? なのに、何でアクセルはそっち側、なんだよ!」

 

 1歩1歩歩きつつ、それでも俺に向かって文句を言ってくるのはある意味凄いな。負けん気の強さは1級品か。

 

「そう大差無いと言っても、俺がS.M.Sに入社してから1月は経ってるんだけどな」

「それに、アクセルは元々の身体能力が高いし、色々な意味で規格外だからな。幾ら何でもアルトと一緒には出来ないんだよ」

「そうですよねぇ……初めてEX-ギアを着た時なんか数分程度で手足のように扱えるようになってましたし、格闘や射撃の腕も超1流。更にVFの操縦に関しても、今ではオズマ隊長と同レベルなのに日々操縦技術は上がっていってるのを考えると……さすがにちょっと同じ人間だとは思えませんよね」

「アクセル、実はお前本当にギャラクシー船団の出身でインプラント手術とか受けてたりしないか?」

 

 ニヤリとした笑みを浮かべて尋ねてくるミハエルに、小さく肩を竦める。

 

「その件に関しては既に身体検査で確認済みだよ。至って普通の生身の人間だ」

 

 混沌精霊としては、だがな。

 

「じゃあ、アクセルはミハエルやルカよりも後に入ったってのにその2人よりも強いのか?」

 

 そんなアルトの言葉に、今度は俺が笑みを浮かべつつミハエルへと視線を向ける。

 

「そうだな。俺とミハエルが生身で模擬戦をやったら5mくらい吹っ飛ぶ程度には強いと言ってもいいかもな」

「おいっ、それは格闘訓練だからだろ!? 射撃なら……」

「試してみるか?」

「ぐっ……覚えてろよ。いつか必ずリベンジしてやるからな」

 

 苦々しげに呟くミハエルをそのままに、ルカの方へと視線を向ける。

 

「それで、俺の機体のオーバーホールが終わったって話だが?」

「あ、はい。ほら、あそこにありますよ」

 

 ルカの示した先には、機体上部に特徴的な2門のビーム砲が装備されているVF-25Sの姿が存在していた。傍から見ると新品同然にしか見えないのは、オーバーホール時に外見に関しても綺麗にしてくれたのだろう。

 

「それと、アクセル君の機体には簡易的なものですがASRSを搭載させて貰いました。これまでの機体よりもステルス性に関しては能力が上がっていますよ」

「もうASRSを作る事が出来たのか? 全く未知のシステムだったって聞いたけど」

「そうですね。ただし、今も言ったようにあくまでも簡易的なものです。本物のASRSは肉眼で見ても姿を消したままに出来るし、ほぼ全てのレーダーを無効化出来る程の能力を備えていますが、L.A.Iでコピーしたのにはそこまでの性能はありません。精々これまでのステルス性能をより上げられたといったところですね。当社比にして1.3倍程度といったところでしょうか。残念ながら本物には到底及びません……全く、あんな機体はどこから見つけてきたんでしょうね」

 

 溜息と共に吐かれる愚痴に、ミハエルが小さく肩を竦めて冗談っぽく口を開く。

 

「もしかしてプロトカルチャーの遺産だったりしてな」

「それは無いと思いますよ。人間が使っている文字で製造番号とかがきちんと彫られていたり、レーダーとかに表示されているのも人間が使う文字ですし」

「分かってる。言ってみただけだよ」

「ぜぇ、ぜぇ……何の話を、してるんだ?」

 

 EX-ギアを重そうに引きずりながら尋ねてくるアルトに向かい、何でも無いと首を振る。

 そう言えば、アルトの機体に関してはオズマの一存でギリアムの機体をそのまま流用する事になったらしい。バジュラとの戦いで色々と損傷も多かったのだが、その辺は既にL.A.Iへと修理に出しているとか。……ソルプレッサの解析に、俺の機体のオーバーホールと劣化型ASRSの搭載と、L.A.Iの技術者は色々な意味で忙しそうだよな。

 いっそ、魔法球でもあれば大分違うんだろうが。

 

「ほら、シミュレーターで撃墜された罰ゲームが終わったら、次はカナリア中尉との格闘訓練の時間だ」

「も、もう少し休ませろよ」

 

 無情にも次の訓練場所へと連れて行こうとするミハエルに対し、抗議の声を上げるアルト。だが、まず一旦精神をへし折るのを目標としている訓練だけに、ミハエルがその抗議を聞く筈も無く……

 

「とっとと従え、お前はまだ候補生でしかないんだからな。少尉の俺に逆らうなんて10年早い!」

「うわぁ、ミシェル先輩面白そう」

 

 ルカがどこか呆れたように呟き、心底楽しそうに笑みを浮かべながらアルトを引っ張って行くミハエルを見送るのだった。

 

「ほら、相手がアクセルじゃなくてカナリア中尉なだけマシなんだから、さっさと行くぞ!」

「待て! せめてEX-ギアを脱がせろよ!」

「ご愁傷様って事だな」

「……アクセル君もアルト先輩を見捨てるんですね……」

 

 溜息を吐きながらも2人の後を追っていくルカの背を見送り、俺は早速自分の機体の調整をするべくVF-25Sへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「最終試験?」

 

 アルトがS.M.Sに入ってから暫くが経ち、大分訓練にも慣れてきた頃にオズマに呼び出された俺が言われたのがその言葉だった。

 

「ああ。アルトも俺達の訓練に付いてこれるようになったし、元々ミシェルと張り合える程の腕の持ち主だったからな。そろそろだろう」

「……で、何で俺がそれに付き合う必要があるんだ? 一応同じスカル小隊なんだが」

 

 ちなみにギリアムが死んだ事により、ミハエルがスカル2、ルカがスカル3、俺がスカル4、アルトがスカル5というコールサインになっている。恐らく本来の歴史ならアルトがスカル4だったんだろうが。

 

「本来ならピクシー小隊に任せようと思ってたんだが、政府の方から依頼が入ってな。フロンティア船団の進路の先行偵察だ」

「……普通、そういうのは新統合軍がやるべき仕事じゃないか?」

「ただでさえ腕も士気も低い連中が集まっているのに、バジュラの襲撃で更に手に負えない状態になっているからな。その辺を考えれば、俺達に出番が回ってくるのもしょうがない」

「そんなもんか? まぁ、そっちがそれでいいなら構わないけど。ルールに関しては? 新統合軍のアクエリアス小隊と模擬戦をした時と同じでいいのか?」

「いや、あの時は模擬戦って事もあって修理費とかを新統合軍が持ってくれたからな。今回はS.M.Sだけの模擬戦だけあって、弾丸は全てペイント弾だ」

「……ガンポッドの弾丸はともかく、ミサイルもか?」

「ああ」

「ビーム砲とアサルトナイフは?」

「ビーム砲は威力を最小限に。アサルトナイフもゴム製の物にして、刃が命中したら失格とする」

「なるほど。まぁ、俺は問題無い。アルトの腕も直接戦って確認してみたいしな。で、いつやる?」

「日曜だ」

 

 日曜と言えば……確かミス・マクロスが開かれる日だったか。俺自身はあまり興味が無いけど、最近のCMではよく見かける。何でもシェリルが審査員として参加するとか何とかで、いつも以上に注目度が強いらしい。ああ、それと驚いたのが歴代の優勝者、準優勝者の紹介でキャサリン・グラスがいたという事だな。どうやらオズマの元彼女は意外に目立ちたがりらしい。

 

「ん? どうした、日曜に何か用事でもあるのか? もし用事があったとしても、悪いが仕事を優先して貰うぞ」

「ああ、分かってるよ。ただ、ちょっとミス・マクロスコンテストを見てみたいと思っただけだ」

「……なんだ、お前もああいうのに興味があるのか? いやまぁ、お前くらいの年齢なら無理も無いのかもしれんが、俺としてはあまり感心しないな」

「お前の元恋人が準ミス・マクロスだってのに?」

「……ふんっ」

 

 図星を突かれたのか、そっぽを向くオズマ。

 そんな様子に苦笑しつつも、取りあえずは問題無いと模擬戦の話を了解する。まぁ、ミス・マクロスコンテストについてはTVでも放映されるから、全部見れないって訳でもないしな。

 その後はアルトに関して日曜に非常呼集するという事が決められ、模擬戦についての詳細を詰めていく。

 

「進路上にゼントラーディの古戦場のアステロイドベルトがある。模擬戦を行うのはそこでだな」

「俺とアルトだけか?」

 

 アルトの試験である以上それが当然だろうと思ってそう尋ねたのだが、何故かオズマから返ってきたのは鼻で笑うという行為だった。

 

「お前とアルトがタイマンを張ればお前が勝つのは分かりきってるだろ。それだと見ている方も面白くも何とも無い。……オッズの問題もあるしな」

「おい、賭けてるのかよ」

「当然だ。ある意味でこれはS.M.Sの恒例行事だと言ってもいい。それで賭けに公平を期す為、お前の相手はミシェル、ルカ、アルトの3人だ」

 

 自慢そうな笑みを浮かべているオズマに、思わずジト目を向けてしまった俺は悪くないだろう。幾ら何でも相手が3人……いや、ルカの機体はゴーストを従えているのを考えれば6機だぞ?

 だが、そんな俺の不満を感じ取ったのかオズマは小さく肩を竦めて言葉を続ける。

 

「安心しろ。ルカの奴にゴーストは使わせないようにするからな」

 

 これ以上は何を言っても無駄だな。完全に面白がって悪のりしてやがる。となると……

 

「なら、俺の分も賭けて貰おうか。当然オズマは俺に賭けるんだろう?」

「……そりゃまあな。例えあの3人が相手でも、トルネードパックを使ったお前に勝てるとはとても思えん。それなら確実に勝てる方に賭けるさ。ま、もっともS.M.Sの中ではオッズ的に3:7で向こうが有利になってるけどな」

「へぇ、俺としては嬉しい限りだな。取りあえず今月の給料を全額俺に賭けておくか。頼むぞ」

 

 金に困ってる訳じゃないが、俺よりもアルト達3人の方が有利だと思っている奴には多少のお仕置きも必要だろう。

 

「……いやまぁ、確かにミシェル達に賭けるんじゃなくて自分自身に賭けるんなら八百長も考えられないし構わないが……」

「じゃ、頼んだ」

 

 オズマへとそう告げ、俺は部屋を出て行くのだった。

 

 

 

 

 

「ミス・マクロス・フロンティア、か」

 

 ルカにちょっと無理を言ってVF-25SのモニタにTVを映るようにして貰った俺は、アステロイドベルトの中でアルト達がやって来るのを待ちながらその放送を眺めていた。どうやら前もって流れていた情報通りにシェリルも審査員にいるらしい。他にもキャサリン・グラスや、キノコを含めて見覚えのない奴が何人か。

 ……何故か厳めしい顔付きの初老の男の姿もあった。

 とてもミスコンの審査員を受けるようには見えない人物だが……それだけ権威のあるコンテストなんだろう。

 そして始まるコンテスト。それぞれが自分の美を誇るかのようなその様子に、思わず感心の声を出す。美人コンクールのようなものを直接見るのは初めてだが、随分とショーアップされているな。この辺、さすがアイドルが世界を救ったマクロス世界と言うべきか。

 けど……

 

「もう少し時間に余裕を持たせてくれても良かったと思うんだけどな」

『はぁ、何でお前はそうやって下らない番組を……まぁ、いい。アルト達は出撃したからそろそろ準備をしておけよ』

「了解」

 

 オズマからの通信にそう答え、フロンティア船団からこちらへと近付いてくる3機の機影をレーダーで確認し、アステロイドベルトの中から3機の前へと立ち塞がり、アルト達へと通信を送る。

 

「よく来たな。俺が模擬戦の相手だ。手加減はいらない。3機纏めて掛かって来い!」

 

 オープンチャンネルでそう告げ、S.M.Sの中では今頃賭けで盛り上がってるんだろうなぁ、と思うのだった。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:425
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:734
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:594

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