転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0695話

「……何とか無事、か?」

 

 待避壕の中で、周囲を見ながら呟く。この場にいるのは、手を引いて待避壕の中に落ちた為に再度俺の腕の中で横抱きになって収まっているシェリルと、床に倒れ込んでいるアルト、そのアルトを押し倒すようにしているランカだった。

 

「ちょっと、アクセル。いつまでこんな恥ずかしい格好のままにさせておくつもり? 下ろしてちょうだい」

「恥ずかしいって……ライブの時とか、さっきとか、何度も俺に抱かれているじゃないか」

「シェ、シェリルさんを抱いた!?」

 

 俺の抱いたという言葉に、アルトを押し倒していたランカが勢いよく立ち上がって俺の方へと驚愕の視線を向けている。何故かアルトもまた同じような視線を向けていた。

 

「ちょっ、ちょっと! 抱いたとか変なゴシップになるような事を言わないでちょうだい! ほら、下ろして……下ろしてってば!」

「分かった、分かったからちょっと待て。ただでさえお前は俺よりもでかいんだから、そんなに暴れるな!」

「だ、だ、誰がでかいですって! それはあんたが小さいだけでしょ!」

 

 腕の中で騒いでいるシェリルを床へと下ろす。

 ちなみに、15歳バージョンの現在の俺の身長は170cmに幾らか足りない程度。シェリルより数cmだが低い状態だ。

 

「って言うか、お前等こんな状況で余裕だな。ついさっきまで上で襲われてたってのに……それに、あいつにまた助けられるなんて……」

 

 つい数秒前まで俺に向けていた呆れた視線を物憂げな視線へと変えて小さく呟くアルト。

 

「アルト君、その……さっきは助けてくれてありがとう。アルト君がいなかったら私……」

 

 そんなアルトを励まそうというのか、あるいは純粋に感謝の気持ちを抱いているのか。こうして見る限りでは両方という感じだが、アルトへと頭を下げるランカ。……気弱そうな性格だから、この状況で脅えているかと思いきや意外にタフだな。

 

「気にするなよ。大体、お前を本当の意味で助けたのは、俺じゃなくてアクセルだろ」

 

 その言葉に、俺の方を振り向いて頭を下げるランカ。

 

「その、ありがとうございます! あの時に助けてくれなかったら私……」

「気にするな、ミハエルやルカから聞いている。オズマの妹なんだろう? なら同僚の妹くらいは助けるさ」

「え? あの、貴方もS.M.Sの?」

「ああ、昨日お前とアルトが戦っていた時に駆け付けたのが俺だな」

「ええええええっ!? 私と同じくらいなのに飛行機のパイロットやってるの!?」

 

 驚愕の表情で俺へと視線を向けてくるランカだが、一応飛行機じゃなくてVFな。まぁ、その辺は軍人でもなければミリタリーマニアでもないとそれ程詳しくないのかもしれないが。

 

「おい、ランカ!」

「ランカちゃん!?」

 

 驚きの余りという訳では無いのだろうが、何故か驚愕の視線を俺へと向けたまま急に瞳に涙を溜め始めるランカ。それに気が付いたアルトが声を掛け、シェリルもまた心配そうに見つめるが、ランカ本人は何故自分が涙を流しているのか分からないらしく戸惑ったように自分の目元を拭いている。

 

「あ、あれ? ……何で急に涙なんか……」

「ほら、落ち着け。ったく、安心しろよ。お前くらいなら俺が何とか守ってやるからよ」

 

 ポンッとランカの頭に手を乗せながら告げるアルトに、シェリルが含み笑いを浮かべる。

 

「あら、貴方……えっと、確かアルトだったっけ。意外と頼りがいがあるのね。てっきり『自分にはどうしようもないから、騒ぐな』とか言いそうだと思ったんだけど」

「お前の中で、俺はどんな扱いになってるんだよ」

 

 溜息を吐きながら頭を掻きつつ文句を言うアルトだったが……

 

「アクロバット飛行で私に衝突してあわや殺人の罪に問われるところだった……とか?」

「ぐっ、あ、あれは俺が悪いんじゃなくだな」

「ふふん、でも結局あの時にアクセルが助けてくれなかったらどうなってたかしら。私を、シェリル・ノームを殺した男として歴史上に名前が残ったかもね」

「ぐぐっ!」

 

 自分が実際に危険な真似をしたというのは理解しているのだろう。シェリルの言葉に詰まるアルト。とは言っても、あの時のアルトはぶつかられた反動でああなったんだから、ある意味被害者でもあるんだが。そんな2人に向けて溜息を吐き、口を開く。

 

「取りあえず2人共落ち着け。このままここにいても表の戦闘に巻き込まれるかもしれないし、何よりシェリルが行方不明となると色々な意味で拙いからな。さっさと戻らないと……」

 

 当然、普通にアイランド1の中に戻れるとばかり思って出た言葉だったが……

 

「何を言ってるんだ、アクセル。ここは非常用の待避壕だぞ。ドーム内には通じていない」

「ちょっと……それってもしかして、私達はここに閉じ込められたって事!?」

「ええええっ!」

 

 アルトの言葉に思わず声を上げるシェリルとランカ。だが、何故かアルトは何処か呆れた様な視線を俺に向けている。

 

「アクセル、お前何でそんな基本的な事も知らないんだ?」

「いや、前にも言った通り俺がフロンティア船団に来たのはつい最近だしな」

「けど、その辺の構造なんかはどこの船団でも大して変わらないんじゃないか?」

 

 そんな風にアルトからの話を何とか誤魔化していた俺だったが、幸いな事にその追究に関してはシェリルとランカが遮ってくれる。

 

「暑いわねぇ……」

 

 そう言いつつ上着を仰いで少しでも風を服の中に入れているシェリルと、ランカもまたへばったように床に座り込んでいた。

 

「そう言えばそうだな。構造上しょうがないんだろうけど……」

 

 アルトも初めて言われて気が付いたかのように汗を拭う。

 

「……アクセル、あんた随分と涼しそうね」

 

 そんな中、汗を一切掻いていない俺へとジト目を向けるシェリル。

 

「まぁ、軍人として気温の変化には強いしな」

 

 一応そう告げるが、そもそも混沌精霊である以上、俺は暑さや寒さを無視出来る。勿論感じようと思えば普通に感じられるのだが、この状況でそんな真似をする必要は無いだろう。

 

「へぇ、軍人ってそんな真似も出来るの?」

「いやいや。人間である以上そんな真似は出来ないって」

 

 アルトがそう告げたその瞬間、待避壕全体に衝撃が走り酷く揺れ、同時に内部電源が消えて周囲が暗闇に包まれる。更には俺へと押し掛かって来た柔らかい何か。グニュリとした感触のそれが俺の顔へと押しつけられる。柔らかく、甘酸っぱいようなその匂いは……

 それが何かを理解し、待避壕の中が暗闇に包まれる寸前のシェリルの姿を思い出し……取りあえず服でも着直させようとしたその瞬間、無情にも非常電源に切り替わって中の明かりも再度点灯する。

 

「なんなのよ、もう……」

「あー、シェリル。その、だな。銀河の妖精としてその格好は駄目なんじゃ」

 

 そっと視線を逸らし、かと言って今更上着を渡す訳にもいかず。

 不幸中の幸いというべきか、シェリルの後ろにアルトの姿があるくらいか。

 だが、そんなアルトとは逆に、俺はしっかりとシェリルの豊満な胸の全てを視界に収めていた。そう、全てを。

 

「シェ、シェリルさんっ!?」

「え? ……っ!?」

 

 ランカの声で、自分がどんな格好をしているのか気が付いたのだろう。上半身を無防備にはだけた格好のまま急速に頬を赤くし、急いでその豊満な胸を隠す。同時に口元に浮かべているのは微妙にひくついている笑みだ。

 

「待て、一応誤解……いや、不可抗力だと言わせて欲しいんだが。アルトもそう思うよな? 今のやり取りで俺に非は……」

 

 そう言いアルトの方へと視線を向けるが、上半身の前側がこちらで確認出来たという事は、逆に言えば背中はアルトの方で確認出来た訳で……

 

「いや、その……俺にはちょっと難しすぎて分からないな」

 

 背中のヌード(?)というだけでもアルトには十分以上に刺激的だったらしく、頬を赤く染めながら視線を逸らす。

 

「ええいっ!」

 

 そんな言葉と共に振るわれる平手。勿論回避しようと思えば回避は可能だが、シェリルの気持ちを落ち着ける為にそれを回避する訳にもいかず……

 パァンッ!

 結果的に、待避壕の中に盛大なビンタの音が響くのだった。

 

「わ、わ、私のを生で見たのよ! そのくらい安いものでしょ!」

「あー……まぁ、そうだな。確かに今回は俺が悪かった」

 

 レモン達と付き合っていて思い知った事だが、この状態の女に何を言おうとも逆上させるだけだ。なら大人しくこっちが非を認めてやり過ごした方が得策だろう。ただし、アルト。俺の状態を見て笑っているお前も道連れだ。

 

「けどシェリル」

「何よっ! 何かまだ何か文句あるの!?」

 

 頬を赤くしながら睨みつけてくるシェリルから視線を外し、アルトの方を見る。

 

「お前の背中のヌードを見たアルトには何もないのか?」

「っ!?」

「おい、待て! 俺を道連れに……」

「……アルト君、やっぱりシェリルさんの……」

「待て待て、別に俺は!? ……そ、そうだよ。大体ステージで色々見せてるだろ!」

「それとプライベートは別なのよ! 嫌らしい目で見ないでちょうだい!」

「なっ……大体俺が見たのは背中だろ! なのに何でおればっかり責められるんだよ! アクセルはお前の胸をだな」

 

 自分だけが責められるのに我慢出来なかったのか、アルトが再びこちらを巻き込もうとしてきてそう告げ、結局その騒動が鎮まるまで数分程掛かるのだった。

 ただし、シェリルの俺を見る目が若干厳しくなったのはある意味しょうがなかったのだろう。

 

 

 

 

 

「駄目だな、完全に連絡が寸断されている」

 

 溜息と共に非常連絡用の受話器を置く。にしても、宇宙移民をするようになってもこういう時は受話器型なんだな。この辺、進歩がないのか進歩する余地がないのか。

 

「アクセル、ちょっと変わってくれ。俺も試してみる」

「ああ、構わない」

 

 フロンティア船団に着てからそれ程経っていない俺はともかく、アルトの場合はここで生まれ育っている。なら何かの裏技でも持っているんじゃないか? そんな期待と共に受話器を渡すが……

 

「駄目だ、繋がらない」

 

 裏技なんてものは存在していなかった。

 そんな俺とアルトの様子を見て、シェリルが溜息を吐く。同時にランカがポツリと呟く。

 

「S.M.Sの人達、大丈夫だといいんだけど……皆、無茶するような人達ばっかりだからちょっと心配だな」

「お前の知り合いがいるのか?」

「うん、さっきアクセル君も言ったけど、お兄ちゃんが事務で仕事してるから。その縁で差し入れとかよく持っていくんだ」

 

 自分の言葉にそう返され、何か考えるようにアルトが眉を顰める。

 

「ねぇ、ちょっと。空気が悪くない? 何かこう、息苦しいような……」

 

 そう呟いた時だった。先程の様に再び激しい振動に揺らされ、同時に明かりが消えて非常電源に切り替わる。

 バジュラの攻撃の余波か!?

 

「アルト!」

「ああ、分かってる。すぐに調べる!」

 

 俺の言葉に頷き、コンソールを調べるアルト。そして……

 

「循環系が停止している、このままじゃ後15分保たない!」

「ちょっと、何とかしなさいよ!」

「簡単に言うな! 出来るんならとっくにやってる!」

「そんな……」

「冗談じゃないわよ」

 

 ランカとシェリルが呟くが、それからとった行動は別だった。ランカは不安そうにアルトを見上げ、シェリルは入って来た入り口の方へと進んで行く。

 ……しょうがない、か。

 

「待て」

 

 俺の隣を通り過ぎようとしたシェリルの手を取る。

 

「何よ! 私は諦めない、こんな所で絶対に死にたくないの! 私は絶対に諦めない。皆は私を幸運だって言うわ。でもそれに見合う努力はしてきたつもりよ。だからあたしはシェリル・ノームでいられるの。運命ってのは、そうやって掴み取るものなのよ」

「正解だ。だから、とにかく落ち着け。俺が決してお前を殺させはしない」

「……アクセル?」

 

 俺の声に満ちている確信が余程意外だったのだろう。思わずといった様子で俺の方へと視線を向けてくるシェリルの手を掴んだまま、アルトとランカの方へと視線を向ける。

 

「お前達2人もこっちに来い。これからここを脱出する」

「けど、どうやって! 外は真空なんだぞ! ここにはアクセルが乗れるようなEX-ギアも、ましてやVF-25だって無いんだ!」

「それでもどうにかしてやるから、いいからこっちに来い」

「……分かったよ。どうせこのままだと窒息死しかないんだ。それならどんな手段を持っているのかは分からないが、お前に賭けてみるさ。ランカ」

「う、うん」

 

 ランカもアルトの言葉に従い、俺の近くに移動してくる。

 

「アクセル、どうするつもりなの?」

「何、俺にはちょっとした魔法が使えてな。それを使えばこんなのどうにでもなるのさ」

 

 敢えて軽い口調で告げられた言葉に、シェリルが首を傾げている。まぁ、この世界に生きている者には意味が分からないだろうからな。俺にしてもこんな場所で魔法を使う気は無かったが、だからといってシェリル達をこんな場所で死なせるようなつもりもない。影のゲートを使えば問題無く……

 非常電源の薄暗い中では俺以外に誰も気が付かなかっただろう。だが、確実に俺の足下には影が集まり、ゲートを開き……

 

『シェリル、大丈夫ですね?』

 

 待避壕の中に、そんな声が響くのだった。同時に入り口が開け放たれ、そこにはシェリルのお付きとしてコンサートで見た女が2人……

 

「グレイス!」

 

 シェリルの喜びの声が響き、結局俺は影のゲートを使う事無くこの窮地をどうにか脱する事が出来たのだった。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:425
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:734
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:594

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