転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0618話

「アクセル!」

 

 中華連邦のとある海岸付近。俺達はそこで洪古と合流する事に成功した。

 

「洪古、約束通り戻って来たぞ」

「空中浮遊する戦艦だと聞いていたが……どこにあるんだ?」

「ミラージュコロイドというステルスシステムを使って、少し離れた場所に待機している。何しろ大きさが大きさだ。迂闊に姿を見せれば中華連邦のレーダーに察知されるだろうからな」

 

 俺の言葉に洪古が頷き、小さく頭を下げてくる。

 

「すまんな、出来ればロンダンを隠してある場所にお前達の艦も隠せれば良かったんだが……」

「無理を言うな。俺が洛陽から盗んできた機体だけでも隠すのに精一杯なんだろう? あるいは、ロンダンやターロンダンなら中華連邦で採用している艦だから見つかっても一応の誤魔化しは利くが、全く未知の艦であるシロガネだと一発でアウトだしな」

「……そうだな」

 

 溜息と共にそう吐き出す洪古。

 そもそも星刻の組織は人材の質は一定以上の者が多いが、量の面で言えばまだまだ小さい。つまり、それだけ影響力が小さい訳だ。俺達シャドウミラーがいるからこそ建国という手段を選択したが、そうでなければ原作にあったように洛陽やその周辺を押さえる程度の戦力しかないのだ。

 

「それよりも、例の映像は持ってきてくれたか?」

「ん? ああ、これだ」

 

 俺の言いたい事が分かったのだろう。持っていたバッグからPDAを1つ渡してくる。

 

「この中に映像データが?」

「ああ。そこのスイッチを押せば再生されるようになっている」

 

 洪古に指示されたスイッチを押してPDAを起動すると、星刻の姿が画面に現れる。そして、天子を助け出す為にこの映像データを持っている男に協力して貰っている事、この男は一応信用出来るので安心してもいい事といった風に、星刻が映像の中で話している。

 ……一応信用出来るってどうなんだろうな。

 そして5分程の映像が終了すると、自動的にPDAの電源も切れる。

 

「どうやら問題無いらしいな。……さて、じゃあこれからどうするかだが。星刻はエリア11に、香凛はそれを迎えに行っているんだよな?」

「ああ。予定では戻って来るのは例の海氷船の件もあるし、特区日本の式典後になる筈だったが……少し早めに戻って来る予定になっている」

「だろうな。そして俺達が動くべき時もその時だ。……となると、天子の救出は今夜だな」

「天子様の救出……頼んだぞ。星刻だけではない。我々全ての民があのお方の存在を心の拠り所にしているのだから」

「問題無い。この世界で俺をどうこうできるような奴はいないし、何よりも転移魔法を妨害する手段なんてないしな。それよりもKMFを運ぶ為の人員は連れてきたか?」

「勿論だ。KMFはあればあっただけ戦力になるからな」

 

 その後、洪古と打ち合わせをし、ホワイトスターで作ったヴィンセント・ウォード、ガレスをそれぞれ引き渡し、同時にミサイルランチャーを装備して遠距離戦に特化させたガン・ルゥと、その設計図も同様に引き渡してその場で別れる。その日の夜中に再び合流する事を約束して。

 

 

 

 

 

「……妙に兵士が多いな」

 

 視線の先には洛陽の街中。だが、以前来た時とは違って兵士の数がかなり多くなっており、銃を片手に警備をしている。

 そんな兵士達を数秒程眺めた後、近くにある屋台へと向かう。

 

「肉まんを1つくれ」

「あいよ」

 

 金を払い、肉まんを受け取り1口、2口。……以前同様にいまいちの味だ。

 そんな感想を顔に出さずに、屋台の店主へと声を掛ける。

 

「久しぶりに洛陽に来たんだが……妙に兵士の数が多いな。以前はこんなんじゃなかっただろう?」

「ああ、少し前にこの洛陽の近くにある軍事基地が襲撃されてな。その影響を受けて警備が厳しくなっているんだ。お前さんもその外見からいってEUかブリタニアの人だろう? 今は外国人が迂闊な行動をするとあっという間に捕まってしまうから、気を付けた方がいい。……個人的には、早く洛陽を出る事をお勧めするよ」

「……なるほど」

 

 まさか俺達の行動が原因だったとは。いやまぁ、実際首都のすぐ近くにある基地が襲撃を受けたりすれば警戒も厳重になるか。むしろ自分の身が可愛い大宦官であればこそ、より警戒を強くするんだろう。

 

「そうだな。用事が済んだらなるべく早くこの国を出るとするよ」

 

 店主にそう声を掛け、そのまま屋台を後にする。

 確かに軍事基地が襲撃されれば警戒も厳しくなるだろう。だが……甘い。いや、無知だと言うべきか。魔法をこの世界で探知するのはまず無理だろう。

 もっとも魔法の存在を感知したりしたら、それこそ驚くだろうが。まぁ、シュナイゼルやルルーシュ辺りなら辿り着く可能性が無いでもないか? だが、この中華連邦で唯一そこへと辿り着けそうな能力を持っている星刻は既にこちらに取り込み済みだ。ブリタニアや黒の騎士団が気が付いても支障は……いや、あったな。もし気が付いていたとすればフレイヤの奪取に関しては多少慎重にならざるを得ないか? もっともこの世界の兵器では、例えそのフレイヤを使ったとしても物理現象である以上は俺に毛程の傷を付ける事も出来無いんだが。

 そんな風に考えながら街の中を進み、やがて見覚えのある中華料理店へと辿り着く。そう、洛陽が厳重に警備される原因になった基地襲撃の時にサポートして貰った場所だ。

 

「いらっしゃ……」

 

 笑顔を浮かべつつも客を出迎えようとした店主だったが、入って来たのが俺だと気が付き微かに表情を引き締める。

 

「腹に溜まりそうなのを適当に見繕ってくれ」

「あいよ」

 

 俺の言葉に小さく頷き、店内を見回して客の視線が集まっていないのを確認してから小声で話し掛けてくる。

 

「何でここにいるんだ? もしかしてまた基地を襲撃するつもりか?」

「微妙に外れだな。今回の目標は……」

 

 そこまで言い、視線を店内のある方向へと向ける。

 

「……?」

 

 俺の言葉の意味が一瞬理解出来なかったのだろう。不思議そうな顔をしつつも、次の瞬間には頬を引き攣らせる。俺の向いている方向に何があるか分かったのだ。店の壁の視線の先、そこにあるのはこの国の象徴とも言える朱禁城であるという事に。

 

「おいっ、本気か!?」

「少し声が大きいぞ。……本気だ。とは言っても、別に襲撃を掛ける訳じゃない。とある人物と接触するだけだ」

 

 さすがに天子を誘拐するとは言えずに、そう誤魔化す。

 

「……にしても、改めて聞くが本気か? 朱禁城だぞ? 当然警備も……」

「問題無い。それに今回は別にお前に手伝って貰おうとは思っていないさ。ここに来たのは、闇に紛れる為に夜までの時間を潰そうと思ってだしな」

「そうか。上から指示が出てないからおかしいとは思ったが……それなら問題無い。だが、この店に立ち寄ってから捕まったりしたら色々と大変な事になるのは確実だからな」

「その辺は問題無い。俺が捕らえられるなんて事はまず無いだろうよ」

 

 そんな俺の言葉が、自信過剰にでも聞こえたのだろう。店主は微かに眉を顰めて口を開く。

 

「何事にも絶対は無い。いくらあんたが凄腕でも、素手でKMFには勝てないだろう」

「……そうだな」

 

 取りあえず今の俺ならKMF相手でも……それがガン・ルゥ程度なら全く問題無く対処出来るんだが、それでもまさかただの現地協力員であるこの男に説明する訳にもいかないしな。

 店主としても俺が素直に話を聞いた事で満足したのだろう。そのまま厨房へと引っ込み、料理を作り始める。

 ちなみに朱禁城に潜入するというのを知った為か、予想以上の料理が出される事になるのだが……まぁ、味はともかく量は満足出来るものだった。

 その後は店主も迂闊に俺と接触して他の客達の注意を引くような事も無く、ゆっくりと時間が過ぎるのを待ち、夕食を食べに来る客が多くなってきた頃に店を出る事にする。

 店の外へと出れば、既に太陽は沈み掛けており薄暗くなり始めていた。後はいつ朱禁城に潜入するかだが……

 

「まぁ、もう少し待った方がいいよな」

 

 何しろ、お飾りとはいっても天子という役職上夕食を誰かと共にする程度の事はあるのだろうから。黒の騎士団が既に決起している以上は天子のお友達でもある皇神楽耶の姿が既に無いのは運がいいと言えるんだろうが。

 

「そう言えば、その関係もあったな」

 

 溜息と共にそう呟く。

 天子と皇神楽耶が友人である以上――それも天子の初めての、だ――は俺達の国と黒の騎士団が戦うのは好まないだろう。この辺、新国家と日本の関係にどう影響してくるか。まぁ、その辺はこの国を実質的に治めるだろう星刻に期待ってところか。

 そんな風に考えながら時間を潰す。何しろ夜の盛り場を彷徨くにしても、兵士達が大量にいる見張りに駆り出されている為に怪しまれる可能性が高いのだ。その為、ボーッとしながら誰にも見えないような場所に潜んで時間を潰し……

 

「よし、そろそろいいだろう」

 

 日付を変えた頃、ようやく行動に移す決断をする。

 まずはいつも通りに影のゲートを展開し、朱禁城の中へと。もちろん影の中からスライムを出して周囲の警戒や監視カメラの類が無いかを調査してからだ。そのまま星刻から聞いていた、殆どの者が立ち入り禁止になっている天子の生活空間へとこちらもまた影を使って移動し……

 

「ここだな」

 

 天子と思しき人物が寝ている部屋を特定する。もちろんスライムでの探索なので直接姿を確認出来た訳じゃないが、温度を探知する能力を使う。小柄な少女がでかいベッドに眠っている部屋なんてのは1つしかないから、特定するのは容易だった。

 

「そして……ああ、やっぱりな」

 

 大宦官にしてみれば、お飾りとは言っても天子は天子。天子の眠っている部屋の隣に数人の侍女や護衛と思しき存在を感知する。まずはこっちから片付けるべくスライムを操作し……ん? ちょっと待った。ここだけじゃない? 天子の眠っている部屋の周辺をくまなく調査すると、なんと天井裏に1人護衛か監視かは知らないが潜んでいるのを発見。隣の部屋にいる者達同様一気に首へとスライムを伸ばし、頸動脈を締め上げて気絶させる。締める時に下手をすれば文字通りの意味で斬首になるので力加減が難しい。

 ……正直、天子の護衛やら世話役をやってる奴がまんまと天子を誘拐されるんだ。色々とこの後は酷い事になるだろうが……まぁ、天子の側付きともなるとほぼ間違い無く大宦官の手の者だろうしな。己の力不足だったと諦めてもらおう。

 そう判断して周囲にいる者達を全て気絶させ、天子の部屋に監視カメラや盗聴器が仕込まれていないのをスライムで確認する。

 さすがに物的証拠があれば大宦官といえども言い逃れが出来ないと判断したのだろう。

 その後、影のゲートを使ってようやく天子の寝室へと姿を現す。

 

「すぅ、すぅ……星刻……」

 

 寝言でも星刻の名を呼ぶか。会えるまではもう少し待って貰うとして……

 

「起きろ」

 

 天子の身体を揺らすが、幸せそうに寝息を立てているだけで起きる様子がない。

 かと言って、強引な真似が出来る筈も無いしな。

 そのまま天子の身体を揺すり続けて数分程して、ようやく眠りの縁から意識が戻ってきたのか手で目を擦りつつも周囲を見回し始める。

 

「んん……何……?」

「起きたか」

「……うん? うん。……うん」

 

 ……どうやらまだ寝ぼけているらしい。

 

「ほら、とにかく起きてくれ」

 

 溜息を吐きながら、空間倉庫から冷えている水のペットボトルを取り出して天子の顔に当ててやる。

 

「ひゃぁっ! ……え? 誰? 貴方は誰ですか? 何で私の寝室に……」

 

 ようやく頭がはっきりしてきたのだろう。そして気が付けば見知らぬ男が自分の寝室にいたんだから、驚くのも無理は無い。

 だが、だからといってこのまま叫び声を上げられる訳にもいかない訳で。一応護衛は気絶させたが、天子の叫び声を聞けばさすがに人がやってくるだろう。

 なので、魔法の言葉を口にする。

 

「星刻からの使いだ」

「……星刻?」

 

 さすがに魔法の言葉と言うべきだろう。今にも泣き叫ぶ寸前だった天子の表情が瞬間的に笑顔へと変わる。

 

「星刻はどこにいるの? エリア11に行ってると聞いてたけど」

「これを見てくれ。星刻からだ」

「え? 貴方今、どこからそれを取り出したの?」

 

 空間倉庫から取り出したPDAを見て驚愕の表情を浮かべていた天子だったが、PDAのモニタに星刻の姿が映るとたちまちそちらへと集中する。

 さすがに恋する乙女と言うべきか。

 そんな天子の邪魔をしないように天子から少し離れ、大人しく映像データが終了するのを待つ。

 そして数分後……

 

「……貴方が私を星刻の所に連れていってくれるの?」

 

 おずおずとだが、そう尋ねてくる天子に頷く。

 

「ああ。星刻は今、お前に自由を与える為に色々と頑張っている。その為の一環だな。実際にここから連れだしても、星刻と会うのは数日先になるだろうが、少なくても話だけは自由に……まぁ、星刻の迷惑にならない程度にする事が出来る」

「……うん、信じる。星刻が貴方を信じるって言ってたもの」

「そうか。なら取りあえずここから出るか。俺の側に来て、しっかり目を閉じてろ」

 

 その言葉に従い、とてとてと俺の側まで移動してきて服をしっかりと掴んで目を瞑る天子。だが、影のゲートを展開しようと思った次の瞬間、再び天子が目を開いて俺へと視線を向けてくる。

 

「ねえ、私は貴方の事を何て呼べばいいの?」

「……アクセルだ。正式な名前はアクセル・アルマー。アクセルで構わない」

「うん、よろしくねアクセル。私は蒋麗華。麗華って呼んでね」

「ああ。まずは目を瞑れ。この朱禁城から脱出するぞ」

 

 その言葉に目を瞑った天子……否、麗華を連れて俺は影のゲートを展開するのだった。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:0
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:734
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???

撃墜数:509

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