転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0610話

 視線の先には1台の車が走っている。そして、車を護衛するようにガン・ルゥが10機。

 同時に、その車やガン・ルゥの通っている道路の脇には無数の市民達が並んでいた。もちろん自分から進んでではない。権力者からの指示によって強制的に道の脇に並べさせられているのだ。その車に乗っている人物の権力欲を満たす為だけに。

 

「アクセル、洪古から連絡だ。向こうの準備は整ったと」

 

 スレイの言葉に頷き、ビルの上から下を通り過ぎようとしている者達へと視線を向ける。

 洪古からの連絡が正しいのなら、今頃はこの街から最も近い位置にある基地の周辺に隠れ潜んで全ての準備が終わっているだろう。

 今回の洪古達の作戦は一石二鳥とも言えるものだ。まず、この街の権力者で大宦官の派閥にいる人物がパレード中に襲われる。それも、ここ最近中華連邦の首都である洛陽の近くにある基地を襲ったり、あるいはフランスの海岸で行われていたEUとブリタニアの戦いに乱入して暴れまくったりと、色々な意味でその存在を注目されているメギロートにだ。

 ……あ、ちなみにフランスに関しては原作通りにスザクがランスロットで攻め込んで、ブリタニアの手に落ちたらしい。

 そしてメギロートに大宦官と縁のある人物が襲撃されているとなれば、まず間違い無く近くの基地から援軍が出される。そうなれば当然基地の戦力が少なくなる訳で……その隙を付いて洪古率いる部隊が基地を襲撃。ガン・ルゥやロンダン、あるいはヘリといった機体の数々や物資を奪取するという作戦だ。

 正直な話、俺の空間倉庫にある大量のメギロートやスレイの乗っているシャドウ、そして何よりもニーズヘッグがあればこの程度の作戦は楽勝なんだが……洪古にしても、もう少しで建国の時を迎える訳で、その新国家の実働部隊を率いる幹部になるという自覚はあるのだろう。そして、自分達の練度を上げる為の戦いを必要としている。

 俺にしても、自分達の新国家を作るというのに全てを任せきりにするような奴とは組みたくはないしな。そういう意味では、今回の洪古から提案された作戦に関してはむしろ歓迎していると言ってもよかった。一応最低限念の為に洪古達に見つからないように、不測の事態に備えてメギロート数機を待機させているし。

 

「アクセル? そろそろ行動を起こした方がいいんじゃないか?」

「ん? ああ。そうだな」

 

 スレイの言葉に再び道路の方へと視線を向けると、確かに目標の人物が乗っている車とガン・ルゥ10機が俺達の足下を通り過ぎようとしているところだった。

 

「なら、始めるか。洪古の方にこれから仕掛けると伝えてくれ」

「分かった。……気を付けろよ」

「ああ、任せろ。これが終わったら一緒に焼きたてのピザでも食うか?」

「……今からEUに行くというのか?」

「いや、焼きたてのを買って空間倉庫に入れてあるからな」

 

 それにギアスといえばピザだろうと、俺にしか分からない事を思わず呟く。

 

「まあいい、分かった。一緒にピザを食べてやるからさっさと始めろ」

 

 スレイの言葉に頷き、空間倉庫からメギロートを1機取り出す。そして次の瞬間には空中を浮かび上がって足下を通り過ぎようとしていた目標へと向かってサークル・レーザーを放ちながら降下して行く。

 

「て、敵襲。敵襲だぁっ! 全機迎撃せよ! 車を守れ!」

 

 余程慌てていたのだろう。KMF同士の通信ではなく先頭のガン・ルゥの外部スピーカーからそんな声が聞こえて来る。

 

「……練度が低いな」

 

 ガン・ルゥのうちの1機がメギロートの角によってコックピットを貫かれているのを見ながらスレイが呟く。

 

「それも無理は無い。地方だから一応対人戦闘の経験はそれなりにあるだろうが、それはあくまでも対人、よくて対KMFだ。メギロートみたいな虫型の機械を相手にした経験は殆ど無いだろうよ」

 

 中華連邦の地方では時折反乱や暴動が起きる。その理由は様々で、独立を求めての事だったり、あるいは食糧不足だったり、横暴な政府に対するものだったり。それらを鎮圧する為に軍が駆り出されるので対人の経験は豊富だし、反乱や暴動では元軍人が参加している事も多いのでKMFが使われる時もある。

 だが、さすがにメギロートのような機体に対する戦闘経験が無いのは当然だろう。いや、この世界でメギロートとの戦闘経験があるとすれば、フランスの戦闘へ乱入した時に生き残ったEUやブリタニアの軍人か、あるいは洛陽の近くにある軍事基地でKMFのパイロットをやっている奴等くらいか。

 

「ん? サークル・レーザーを使わないのは何でだ?」

 

 眼下で行われている戦闘を見ていたスレイがふと呟く。

 攻撃範囲の広いサークル・レーザーを使わずに近接戦闘だけでガン・ルゥを仕留めているのに違和感があったのだろう。

 

「周囲を一般民衆が囲んでいる状態でサークル・レーザーを使えば、間違い無くいらない被害が出るからな。あるいは攻撃の余波で建物を破壊するか。星刻が行動を起こす時には一般民衆からの後押しが必要だから、ここでメギロートに悪評を被せる訳にはいかないんだよ」

 

 視線の先で、戦闘に巻き込まれるのはごめんだとばかりに方々に散っている一般民衆の姿を見ながらスレイへと説明する。

 

「なるほど。まあ、確かに民衆の支持というのは大事か。特にこの国の場合は上層部の多くが腐っているからな」

 

 ギアス世界に来て、中華連邦の国内を色々と見て回っただけに実際にその目で腐敗振りを確認してきたのだろう。どこか吐き捨てるようにそう告げるスレイ。

 そんな視線の先では、周囲に民衆がいなくなったのを境にしてメギロートの蹂躙が始まっていた。

 そもそも、ガン・ルゥよりも性能の高いサザーランドやグロースター、あるいはEUのパンツァー・フンメル相手でも1機で圧倒したメギロートだ。ガン・ルゥ10機程度を相手にして手こずる理由が無い。

 ……もっとも、あの時の戦いはメギロートからの一方的な奇襲だったからこそというのもあるのだろうが。

 

「メギロートの性能が上がっているというのは事実のようだな。正直、OGs世界出身の私としては、微妙な気分だが」

 

 体当たりでガン・ルゥをはね飛ばし、撃たれた銃弾はその頑丈な装甲で弾く。

 頭部の角でガン・ルゥの胴体を突き刺し、同時に別のガン・ルゥの手足を頑丈な口で噛み千切る。

 勝ち目が無いと判断して逃げだそうと背を向けたガン・ルゥに関しては、一般民衆がいなくなったので使用が可能になったサークル・レーザーを放って撃破する。

 そんな護衛達の様子に、既に勝ち目無しと判断したのだろう。護衛対象である車が急にバックして戦場から離れようとする。

 

「……悪手だな」

「ああ。逃げるのなら車から降りて逃げれば、まだ目立たなかったものを。そうすればまだ逃げ切れる可能性はあったんだが」

 

 スレイの言葉に頷き、そう呟く。

 権力欲が高くても実際に能力が無く、パニクったんだろう。そして運転手にこの場を離れるように命令したといったところか。しかし……車のような大きな物が動けば、当然メギロートの注意を引く。

 そして実際に動き出した車に注意を引かれたメギロートは、跳躍して空を飛び……そのまま車のボンネットの上へと着地する。

 

「ひっ、ひいいぃぃっ! お前等、守れ! 儂を守れぇっ!」

 

 動けなくなった車から四つん這いになって脱出した醜く肥え太った男が、喚きながらメギロートから距離を取ろうとする。

 だが、既に護衛のガン・ルゥは全機が撃破されており、まともに動ける機体は1機も存在していなかった。

 

「ひぃ……ひいぃぃっ! ま、待て! 儂を殺せばお前の家族や友人知人までもが酷い目に遭うぞ! それが嫌なら儂を殺すなぁっ!」

 

 メギロートに向かって色々と泣き喚いている男だが……あぁ、そうか。そう言えばメギロートが無人機であるというのを知っているのは、シャドウミラー関係者や星刻達の中でも中心人物だけなのか。この世界のKMFが基本的には有人機である以上は、メギロートにも誰かが乗っていると考えるのは当然と言えば当然か。

 だが、戦闘用AIによってコントロールされているメギロートが目標の命乞いを聞く筈も無く……

 

「うっ、うわああぁぁぁあぁあぁぁぁっっ!」

 

 至近距離でサークル・レーザーをくらい、その醜く肥え太った身体は焼け焦げた炭へと変えられるのだった。

 

「……虎の威を借る狐か。無様な」

「大宦官を虎扱いするのはどうかと思うが。……向こうの方はどうなっている?」

「ん? ああ、ちょっと待て。……ああ、私だ。そちらの様子は? そうか。被害は? うむ、なるほど。分かった。すぐにこちらも撤退する。そちらも気を付けてな。合流場所は覚えているな? ああ、そうだ。……ふっ、アクセルがご馳走してくれるらしいから、楽しみにしていろ」

 

 洪古と通信で会話をしていたスレイが、こちらへと視線を向けてくる。その表情に特に落胆した様子が無いのを見る限りでは、向こうも成功したのだろう。

 

「向こうの方も成功だそうだ。多少の被害は出たようだが、小さな基地だった為に戦力が殆ど残っていないのも影響して、基地の警備兵と銃撃戦を行って負傷者数名。死亡者は0だそうだ」

「そうか、それは何より。……にしても、俺のご馳走? もしかしてピザの件か?」

「ああ。折角の美味いピザだ。大勢で食べた方がいいだろう? ……それに、お前と2人きりではどんな会話をしたらいいのか分からないしな」

 

 やはりご馳走というのは俺のピザらしい。

 最後の方で何かを呟いていたようだが、残念ながら小声過ぎて俺には聞こえなかった。

 そんな風に会話をしていると、既に周辺に誰もいなくなったのを確認したメギロートが俺の近くへと降り立つ。その足に触れて空間倉庫に収納し、スレイと共に影のゲートを使って移動するのだった。

 

 

 

 

 

 合流予定地点にある星刻の一派が使っている隠れ家。それは山の中で木々に隠れるようにして立てられていたログハウスのような小屋だった。

 さすがにいきなり中に姿を現すと俺達の事を知らない奴に攻撃されそうなので、近くの木の影から姿を現し、その小屋へと近付いていく。

 

「っ!? ……ああ、あんた達だったか。驚かせないでくれ」

 

 俺とスレイの姿を見た瞬間、咄嗟に持っていた銃へと手を伸ばし掛けた見張りの男だったが、すぐに安堵の表情を浮かべる。

 

「悪いな。洪古は戻っているのか?」

「ああ。香凛さんも顔を出している」

「……香凛? 周香凛か?」

 

 その名前に、思わず男に尋ね返す。

 周香凛。星刻の副官とも言える存在で、極めて有能な女だ。幸か不幸か、星刻と洪古とは何度も顔を合わせてはいたが、周香凛と顔を合わせた事はまだ無かった。

 

「ああ。ちょっと待ってくれ」

 

 俺にそう断り、小屋の扉をリズムを変えて何度かノックをする。恐らく今のリズムが暗号のようなものになっているのだろう。やがて扉の鍵が開く音が聞こえ、微かに開かれる。

 そこから顔を出したのは、茶色の髪を頭の各所で纏めている怜悧そうな顔をした女。間違い無く周香凛だった。

 

「アクセル・アルマー?」

「ああ。周香凛だな。星刻から話は聞いている」

「……入ってちょうだい」

 

 扉が開かれ、俺とスレイが入るとすぐさま締められ、鍵が掛けられる。

 

「そこまで警戒しなくてもいいだろうに」

「残念だけど、私達の勢力は小さいの。警戒してしすぎる事はないのよ」

 

 小屋の中を案内するように進みながら香凛は冷静にそう告げてくる。

 自分達の勢力がどの程度のものなのかをきちんと理解しているのは、さすがに星刻の副官的立場といったところか。

 

「アクセル、そっちも成功だったらしいな」

 

 通路の先、この小屋の居間とでも表現出来る場所へと到着すると、そこで待っていたのはビールを飲んでいる洪古の姿だった。

 既に酔っ払っているのか、その口調は以前のように丁寧な口調ではなく友人に対するようなものになっている。

 ……いや、死者0で作戦が成功したんだし、飲むなとは言わないが。中華連邦でビールってのはどうなんだよ。普通は老酒とかそんなんじゃないのか? そう思うのは、俺の知識が偏っている為だろうか。

 まぁ、どのみち俺はアルコールを飲むのはレモン達に厳禁とさせられているんだが。

 

「まあな。目標はきちんと処分した。……にしても、アルコールを飲んでいるような暇はあるのか?」

「そう言うな。これも今回の襲撃で手に入れた物資だからな。あの基地指令め、極上物の嗜好品をこれでもかと溜め込んでやがった。……それよりも、ご馳走はどうしたご馳走は」

 

 洪古に急かされるようにして、溜息と共に空間倉庫の中からピザを取り出すのだった。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:0
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:734
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???

撃墜数:509

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