転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0604話

 思わぬ再会だったのだろう。笑顔でコーネリアを見ていたオデュッセウスだったが、やがてその口を開く。

 

「それでコーネリア。君は今まで一体どこにいたんだい? 私だけじゃなくてシュナイゼルやギネヴィア達も心配していたんだよ?」

「私は……現在、とある組織に身を寄せています」

「とある組織? そんな言い方をするって事は、ブリタニア軍じゃないんだね?」

「ええ。今はともかく、将来的には敵対する可能性も高くなるでしょう」

「……それは……何故このブリタニアの皇女である君が、そんな組織に?」

 

 オデュッセウスとしては、コーネリアと敵対するというのは信じたくないのだろう。もっとも、それがコーネリアの軍事的才能を脅威に感じての事ではなく、家族同士が敵対するのを避ける為っぽいのがオデュッセウスらしいが。

 

「申し訳ありません。こればかりは、いくらオデュッセウス兄上の仰る事でも聞けません。私には……どうしてもやらなければいけない事がありますから」

 

 オデュッセウスの言葉に申し訳なさそうな顔をしながら、それでもきっぱりと断るコーネリア。

 

「それは……何か、と聞いてもいいかな?」

「……ユフィの事です」

「……なるほど、ユーフェミアの件か」

 

 それだけで何かを察したかのように頷く。姉妹仲が良かったのを知っている為だろう。

 

「はい、兄上。……率直にお聞きしますが、兄上の知っているユフィが日本人を皆殺しにしろなどと命令するとお思いですか?」

 

 その問いに、苦しそうな表情を作りながらもオデュッセウスは首を左右に振る。

 

「確かに私も、あの優しいユーフェミアがそんな命令を出すとは思っていない。思ってはいないのだが……実際に、その命令は出されたんだよ。それも、全世界に映像を配信している中で。そうなればもう、どうしようもない」

「……例えそれが、ユフィの意志ではなくてもですか?」

 

 淡々と語るコーネリアだが、その目には狂おしい程の激情をもたらす炎が浮かんでいた。あれから随分と時間が経ったが、それでもまだその心の中ではギアスに対する怒りの炎が燃えさかっているらしい。

 

「姫様……」

 

 ギルフォードもまた、そんなコーネリアの様子を見て取ったのだろう。影の中で思わず呟く。

 

「ユーフェミアの意志ではない? いや、けどあの映像では人に強制されているようには見えなかったよ」

「ええ、そうでしょうね。ですがそれを可能にする力があるのです。相手に対して自分の命令を絶対服従させる力。人の意志を捻子曲げる力。どのような理不尽な事でも行わせるその力こそが……」

「ギアス」

 

 その決定的な言葉が放たれたのは、コーネリアの口からでは無かった。ましてやオデュッセウスでも無く、影からその身を現しつつあった俺の口からだ。

 

「…………」

 

 影から姿を現す俺。そしてその背後にいるギルフォードにただ驚愕の表情を浮かべて黙り込むオデュッセウス。そしてそのまま1分程の沈黙の後に、ようやく再起動を果たす。

 

「君は、一体……」

「コーネリアが言っていただろう? とある組織に身を寄せていると。俺の名前はアクセル・アルマー。その組織を率いている者だ」

「……だが、今のは? もしかして私は夢でも見ているのかな?」

「違います、兄上。アクセルが使ったのは確かに魔法。この世界には存在しない技術です」

「魔法? この世界には存在しない? ……コーネリア、君は一体……?」

 

 混乱してきたのか、オデュッセウスが俺とコーネリア、そしてギルフォードへと視線を移していく。ルルーシュやシュナイゼルなら瞬時に状況を理解して対応策を練るだろう。この辺がやはり凡庸と言われているオデュッセウスならではか。

 まぁ、この世界の常識で考えれば無理も無い。いや、ギアスとか不老不死とかがある以上は完全に否定は出来ないが、そっちは魔法以上に隠蔽されているし使い手も非常に限られているからな。

 

「さて、まずは混乱させないようにこれだけは言っておくか。俺達シャドウミラーは複数の世界を股に掛けて存在している組織だ。つまり、平行世界って奴だな」

「……」

「そして、その平行世界の1つでもあるこの世界に来た訳だ。……まぁ、今すぐ無理に理解しろとは言わないが、取りあえず巨大な組織だとだけ覚えておいてくれ。で、話を戻すが……構わないか?」

「え? あ、ああ、うん。構わないよ。それで何だったか……」

「ギアス、だ」

「そうそう、ギアスだったね。ギアス、ギアス。……で、そのギアスとかいうのがユーフェミアをああいう風に変えたと?」

 

 オデュッセウスの言葉に頷く俺とコーネリア。ギルフォードは黙ってコーネリアの後ろに控えており、誰かが部屋に近付いてこないかどうかを警戒している。

 

「そうです。そしてそのギアスをゼロが使ったからこそ、ユフィはあのような行動に出たのです」

 

 ゼロ=ルルーシュというのは言わずにそう告げるコーネリア。この辺に関しては、兄の心労をこれ以上増やさない為なのだろう。

 そんなコーネリアの言葉に続くように俺も口を開く。

 

「そして、そのギアスを研究している者の名は……シャルル・ジ・ブリタニア」

「……馬鹿な!?」

 

 さすがにその名前は予想外だったのだろう。これまでの穏やかさをかなぐり捨てたかのように叫ぶオデュッセウス。

 

「残念だが事実だ。お前達の父親はギアス響団という組織を作りあげ、そこでギアスの研究をしている」

「だが、私はそんな話を聞いた事はないよ」

 

 力無く首を振るオデュッセウスだが、それも当然だろう。何しろ……

 

「ギアス響団の本拠地はブリタニアではなく、中華連邦にあるんだからな」

「……それなら、そのギアス響団という組織を作ったのは父上ではなく中華連邦なんじゃないのかい?」

「違うな。何しろ、現在のギアス響団のトップはシャルル・ジ・ブリタニアの兄だからな。それも小さい頃にギアスの力で不老不死になった」

「……そんな話、信じられない……」

 

 さすがに許容量を超えたのか、それだけを呟くのがやっとらしい。

 

「ですから兄上。真実を暴く為に私達に協力して貰いたいのです」

「協力? 私が?」

「ええ。兄上にしか出来ない事です。もし協力して貰えれば父上の悪名は残るでしょうが、それでもユフィの汚名は晴らせます」

「けど、それだと結果的に一緒だと思うんだが」

「いえ。真実罪のある者がそれを白日の下に晒され、汚名を被せられた者がその潔白を証明するのです」

 

 この辺、実は微妙に嘘も混じっている。何しろユーフェミアにギアスを掛けたのはギアス響団の手の者だったりV.V.ではなく、ルルーシュなのだから。

 だが、死んだはずの異母兄弟がゼロとして活動していたというのは、今のオデュッセウスにとっては受け止めきれない真実だろう。

 

「……それで、僕にして欲しい事というのはなんだい?」

「ギアスを研究する組織。その組織の名前はギアス響団というのですが、その組織があるのが中華連邦の中というだけしか分かっていないのです。いえ、正確に言えば中華連邦の中の、某所にある広大な砂漠のどこかとしか。そして、その組織の居場所を調べる為に私達は……シャドウミラーはとある計画を立てました。その疑わしい場所を切り取って新国家を作りあげる、という」

「……え?」

 

 さすがにこれは予想外だったのだろう。オデュッセウスが間の抜けた声で思わず尋ね返す。

 そんなオデュッセウスに対して、コーネリアの後を続けるように俺が口を開く。

 

「もちろん建国するのはそれだけの理由じゃない。色々とメリット、デメリットを考えての事だ。例えばサクラダイト。この世界で生まれた者には理解出来ないかもしれないが、このサクラダイトという物質はこの世界特有の物質だ。少なくてもシャドウミラーが現在繋がっているこの世界以外の3つの平行世界では存在しない、な」

「つまり君達は……」

「ああ。サクラダイトを定期的に一定量確保する為という理由もある。他に先程も言ったがギアス響団をそのままにしておけないとか、この世界で俺達シャドウミラーの出張所的な場所が欲しいとか、シャドウミラーの本拠地を通して行われている異世界間貿易にこの世界を組み込みたいとか、KMFというこの世界特有の機体を調べたいとか、色々と理由はある。それらを総合的に考えた結果、シャドウミラーの同盟国となる国家を新たに作りあげるのが一番手っ取り早いと判断した訳だ」

 

 俺の言葉を聞き、額に冷や汗と思しき汗を浮かび上がらせるオデュッセウス。

 

「……君達の目的は分かった。それで、私にそれを話してどうしろと? 協力しろと言われても、私は自分自身が凡庸な男であるのを知っている」

「凡庸か。だがブリタニア皇族の中でお前にだけ存在するものもある」

「……それは何かな?」

「カリスマ……というのとはちょっと違うな。人当たりの良さや人望といったものだ」

「人望?」

「ああ。コーネリアも含めて、基本的にブリタニア皇族というのは我の強い者が多い。……まぁ、弱肉強食を国是としている以上はしょうがないのかもしれないがな」

 

 ブリタニア皇族の中で、人望という意味で目立っていたのは俺の前で寝間着の代わりにナイトガウンを着ているオデュッセウス、ブラックリベリオンで死んだユーフェミア。そして、今もこの皇宮のどこかにいる筈のナナリーといったところか。

 

「ふむ。続けて欲しい」

「厳しい事を言うようだが、確かにお前は能力的に見るべきところがない。だが、その人望がある。そしてその人望を持っているお前をこそ、俺達は必要としている。……俺達が作りあげる新国家。その代表としてな。あぁ、もちろん俺が求めているのがその人望である以上は、実質的に国を動かして貰おうとかは考えていない。言葉は悪いが、名目上の代表といってもいいだろう。だが、名目上の代表だからこそ政治や軍事の能力は必要無く、ただ人望があればいい。国民に愛され、他の国の者達に親しみを覚えられるような人望が……な」

「ちょっと待ってくれ。それはつまり、君達が作りあげるという新国家の……しかも名目上とは言っても代表になれと言っているのかい? この私に」

 

 信じられない。そんな目で俺を見てくるオデュッセウスに、小さく頷く。

 

「ああ。まさしくその通りだ」

「……正気かい? こう見えても、私はブリタニアの第1皇位継承者だよ? それを裏切れと?」

「ですが兄上。今のブリタニアは……父上、いえシャルル・ジ・ブリタニアが行おうとしている事は絶対に許されるべき事ではありません。ギアスのような存在に耽溺して時がこのまま流れれば、ブリタニアという国は取り返しのつかない何かを起こしてしまうでしょう。……いえ、既に今の時点でその何かは起こっている可能性が高いのです。ならば、家族である兄上がそれを止めないでどうしますか。私やアクセルは、それを手伝いたいと言っているのです」

 

 整然と言葉を紡ぐコーネリアに、オデュッセウスも言葉を詰まらせる。

 実際、コーネリアの言っている事は大袈裟ではあるが間違ってはいない。何しろギアス響団の目的は神を殺す事だ。普通に考えれば、それを認めるような者は殆どいないだろう。そして、それをブリタニアという国が行っていると知られれば……どうなるかは自明の理だ。

 

「それは……確かにそうだが……」

「兄上。どうか私やシャドウミラーに力を貸して下さい」

 

 ぐいっとばかりにオデュッセウスへと向かって1歩を踏み出すコーネリア。

 その迫力に押されたかのようにオデュッセウスはベッドの上で後退するのだが、それを追うかのようにコーネリアもまた進み出る。

 

「その、いくら何でもそんな重要な事を即断は出来ないよ。まずは皆に相談して……」

「それを許すとお思いですか? いや、むしろブリタニアに不利益をもたらす可能性が高いのに他の者達が賛成すると?」

「だが……それが、最終的にブリタニアの為になると思えば……」

「兄上は甘い。他の者達がそこまで考えるとは思えません」

「けど、シュナイゼルなら……」

 

 そう呟いたオデュッセウスの言葉に、俺は黙って首を振る。

 

「シュナイゼルは関わらせたくはない。奴の本性は虚無だ。理由さえあればどんな事でもするだろう」

 

 例えば原作でスザクに皇帝暗殺を命じたように。あるいはフレイヤを積み込んだダモクレスを使い、世界を恐怖で支配して結果的に平和をもたらそうとしたかのように。

 

「だが……」

「すいません、兄上。……この場で決めて下さい。私達と共に来るか否か」

「……」

 

 コーネリアのその問いに、無言で何かを考えるオデュッセウス。

 正直に言えば、ここで来ないと言っても俺は強引にでも連れていくつもりだ。それをしないのは、自分で決断したというのがオデュッセウスにとってのブリタニアに対する未練を断ち切ると思っているからだ。

 そして……そんな俺の思いを知らぬままに数分後、オデュッセウスはコーネリアの言葉に黙って頷くのだった。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:0
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:734
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???

撃墜数:509

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