転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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番外編027話 新事業

 ホワイトスターにあるキブツ。それは元素変換装置であり、つまりは『何か』を入れれば『ある程度好きな物』へと変換してくれるという、まさに夢のような代物だ。実際問題、独自に資源の類を殆ど持っていないシャドウミラーが何不自由なくホワイトスターで暮らせているのは、このキブツがあるからこそだった。

 次元の狭間に漂っている岩塊の類をホワイトスターから飛び立ったメギロートが回収し、それをキブツに投入する事で必要物資を確保しているのだ。

 このキブツがなければ、ホワイトスターという本拠地を得たシャドウミラーは恐らく早々に干上がっていただろう。

 もっとも、今ではSEED世界やネギま世界のような異世界と自由に行き来出来るようになった為、キブツの稼働率は以前よりも落ちている。

 また、万能の元素変換装置であると思われたキブツにしても、欠点が無い訳では無かった。特に最大の欠点として、トロニウムやサクラダイト。あるいはネギま世界でマジックアイテムや魔法発動体に使われている特殊な金属のような、その世界固有の物質を作り出す事は不可能というものがある。

 それでも、大抵の物質……いわゆるレアアースやらレアメタルの類は問題無く作り出せるので、リチウムやベリリウム等幾多ものレアメタルは既に『レア』メタルではなくなっているし、スカンジウムやイットリウムを始めとしたレアアースも同様に『レア』アースではなくなっている。

 それ程に高性能なキブツであるが、それでも何らかの物質をキブツへと放り込まなければ意味が無い。故に、ふと技術班の1人が気が付いた。

 

「あれ? キブツに放り込むのって、別に次元の狭間からメギロートが拾ってくる岩とかじゃなくてもいいんだよな?」

 

 呟いた男の隣で、量産型ゲシュペンストMk-Ⅱ改のデータを検証していた男が、モニタを眺めながら頷く。

 

「そりゃそうだが……だからってどうするよ? まさかメギロートを突っ込む訳にもいかないだろう?」

 

 もちろん、以前SEED世界で起こった戦いで破壊されたメギロートもある。それらの中でも修理不可能と判断された機体はキブツに突っ込んで文字通りに分解されているが、だからと言って普通に動くメギロートをキブツに入れる訳にもいかなかった。

 

「だから、そうじゃなくて……別に、キブツに突っ込むのはこのホワイトスターの中にある物質だけじゃなくてもいいんだろ?」

 

 その言葉に何かを感じたのだろう。モニタから目を離して、視線を男の方へと向ける。

 

「何が言いたいんだ?」

「つまりだ。俺達はキブツに入れる為の素材が欲しい。一方、SEED世界やネギま世界ではゴミの類があったりする訳だ」

「……なるほど。確かにそれは考えなかったな」

 

 呟き、男の中で素早く計算されていく。

 

「SEED世界は戦争後だから、撃破されたMSやら何やらで色々とゴミがある。ネギま世界は……麻帆良はともかく、雪広財閥と那波重工でなら間違い無くその手のゴミは出ている筈だ。……なるほど。そう考えると確かにいけるかもしれないな。定期連絡の時にレモン様に提案してみるか。それでいけそうならアクセル隊長もGOサインを出すだろ」

「……その場合、エザリアさんが色々とまた忙しい事になりそうなんだが」

「まぁ、それは確かに。最近ようやくブルーマーズ計画についての折衝も減ってきたとか言って喜んでたんだけどな。けど、実際今はSEED世界とネギま世界の一部とだけしか繋がってないからシャドウミラーとしてもそれ程経済とかは気にしなくてもいいかもしれないが、これから世界が増えていけばそうも言ってられなくなるだろう? 資金稼ぎをする機会があるのなら見逃す手は無いさ」

 

 こうして、技術班からキブツを使った廃品回収とそれで作り出された品はそれぞれの世界に売りに出される事になる。

 もちろん現地経済を混乱させない程度の量ではあるが、何しろどんなゴミでも……それこそ、放射性物質や毒の類のような代物であっても問題無く分解出来るのだ。回収品の重量辺りの料金はかなり安く抑えられている影響もあり、次々と産業廃棄物やゴミの類を引き取って貰うべくやって来る企業や組織が増え、その引き取った代物をキブツで元素変換して各世界に売りに出す資源の類へと作り替える。あるいはシャドウミラー内で使う物資として保管する。シャドウミラー側の労力としては引き取ったゴミや産業廃棄物を運ぶのもメギロートを使えば無料であり、他にはキブツを動かすだけなので、受け取った金額はほぼ全てが純利益となる事になる。そして将来的にはホワイトスターを平行世界間のハブステーションとしての使用するための利用料と共に、シャドウミラーの代表的な仕事の1つとなるのだった。

 

 

 

 

 

 余談ではあるが、このサービスを最大級に利用した雪広財閥や那波重工は某国の嫌がらせによる輸出規制を行われてもレアメタルやレアアースに困る事は殆ど無くなり、最終的には財閥や会社の規模が数倍近くまで巨大化する事になるのだった。

 同様に、オーブもまた島国であるが故に不足気味だった資源を手に入れ、SEED世界での覇権を決定づける事になる。


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