転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0040話

「は? 海賊退治?」

 

 ギリアムがあちらの世界に転移して5ヶ月。いつもの如く新しい任務があるという事でヴィンデルの部屋に呼ばれた俺は、困惑の声を出していた。

 

「と言うか、この時代にまだ海賊なんているのか?」

「ああ。それもシーリオンを使って船を襲うような連中だ」

 

 シーリオン? リオンの水中対応型だったか。

 リオン系を使っているという事は。

 

「DC残党か?」

「可能性は否定出来ない。その疑いもあったから私達に出動要請が来た訳だ。作戦としては単純で、アクセルがグロウセイヴァーでタンカーに隠れて襲われるのを待ち、襲撃者達を撃退、あるいは捕獲する。背後関係を調べるのが簡単になるから出来れば捕獲してくれ」

 

 海賊に襲われるのなら海路じゃなくて空路にすればいいじゃないか、という意見が無い訳でも無いのだが、空路と海路だとあいにく掛かるコストや運べる荷物量に雲泥の差がある。よって一番普及している輸送方法は海路となる訳だ。

 

「背後関係?」

「ああ、どうやら例によって腐った政治家共が後ろ盾になってる可能性があるようでな」

 

 最近のヴィンデルは腐敗した政治家達の事を口にする事が多くなった。これまでの任務で、政治家達の汚れ具合にほとほと呆れているのだろう。

 

「尚、今回の囮作戦で出撃するのはアクセルのグロウセイヴァーのみとなる」

「は? マルティンとかは?」

「残念だが、他にも必要な任務が多々あるのでそちらに回ってもらう」

「バリソン達の小隊は?」

 

 去年シャドウミラーに引き抜かれたバリソンも、現在では特殊処理班第2班として活躍している。

 

「そちらも忙しくて手が回せん」

「……なんか急に忙しくなってないか?」

「分かるだろう? 尻ぬぐいだ」

 

 他の面子の出撃も腐敗した奴等の尻ぬぐい、か。

 

「ただ、さすがに1機では不安もあるんでな。一応、応援が来るよう手配はした」

「応援?」

「ああ、ATXチームという部隊から何機か応援に回してくれるそうだ」

「っ!?」

「どうした?」

「いや、なんでもない。それで?」

 

 正直、ATXチームという名前を聞いて吹き出さなかった自分を褒めてやりたい。

 シャトルの墜落事故があった以上、キョウスケは既にアインストに感染している。

 てっきり再会するのはシャドウミラーの反乱が始まってからだとばかり思っていたのだが、まさかここでとは。

 ……いや。応援はATXチームから数機、だ。キョウスケが来ると決まった訳ではない。

 

「ただ、あちらも忙しいらしくてな。アクセルが海賊と戦闘に突入したと確認したら応援を出すそうだ」

「ちなみに、誰が来るかとかは?」

「いや、聞いてないな」

 

 やっぱりキョウスケか? ATXチームという事なら、せめてブリットであってくれればいいんだが。

 いや、と言うかレモンが存在している以上エクセレンは存在していない。ATXチームはキョウスケとブリット以外に誰がいるんだ? ゼンガーはDC戦争でATXチームを抜けている筈だし。

 にしても。

 

「海賊相手にグロウセイヴァーはちょっときついんじゃないか? 海で通用する武装はファイア・ダガーとソードブレイカーしかないぞ?」

「あぁ、その件での連絡を忘れていたな。そろそろの筈だが」

 

 ヴィンデルのその台詞を聞いていたかのようにノックの音がする。

 このノックのリズムはレモンか。

 

「ヴィンデル、いいかしら?」

「ああ。丁度説明をしようと思っていた所だ」

 

 予想通りレモンが入ってきて、手に持っていた資料を俺に渡す。

 

「以前言ってたT-LINK対応型ソードブレイカーが完成したからグロウセイヴァーに取り付けておいたわ。概要に関してはその資料に書いてあるから、大まかな所だけ説明するわね」

「ああ、頼む」

 

 資料を受け取り、レモンの言葉の先を促す。

 

「まず、T-LINK対応型ソードブレイカーというのも長いので、これからは開発名称のファントムと呼ぶ事にするわね。ファントムだけど、T-LINK対応型にしたおかげで大きさとしては今までのソードブレイカーの半分以下になってるわ。よってグロウセイヴァーに搭載するのも本体6機、クロノス8機だったのが本体12機、クロノス16機になったわ」

 

 レモンのその言葉に思わず待ったを掛ける。

 

「いや、ちょっと待ってくれ。14機のソードブレイカーでさえグロウセイヴァーにT-LINKシステムを搭載してなんとか全機使いこなしていたんだぞ? それを28機も装備されても宝の持ち腐れになる」

 

 だが俺のそんな疑問に対する答えを、レモンは口元に微笑を浮かべてあっさりと口にする。

 

「大丈夫。T-LINK対応型というのは伊達じゃないわ。前にも言ったと思うけど、T-LINKシステムはアシュセイヴァーの脳波関係のシステムの上位互換のようなものよ。そのおかげでファントム使用の時の負担は今までの半分以下になっているわ。少なくてもアクセルの念動力なら28機全てのファントムを自由に扱える筈よ」

 

 28機のファンネル……もとい、ファントムを自由自在に扱える、か。正直どこのニュータイプLV.9だって感じだな。

 

「で、そのファントムだけど小型化した為にソードブレイカーのような打撃武器としては使えなくなったわ。射出型レーザーによるオールレンジ攻撃と、レーザーの刃による切断・貫通攻撃がメインになってるわ。今回の作戦だと海中での戦闘になるだろうから、敵にファントムが接近した瞬間、あるいは至近距離で使えば大丈夫な筈」

 

 打撃武器として使えなくなったのは痛いが、大きさが半分になったという事は打撃武器として使用する為の質量も半分になったという事だ。しょうがないだろう。

 にしても、ソードブレイカーの形まで変わったんじゃアシュセイヴァーの名残がどんどんと少なくなってきてるな。

 どちらかと言えば、完全にシャドウミラーのオリジナルADじゃないか?

 

「それと、ファントムのレーザー出力に関してもT-LINKシステムが対応した関係上、念動力の強さ次第では威力も変動するから注意してね」

「それは、念動力が弱いとファントムの威力も低くなるのか?」

「いえ。基準となる攻撃力に念動力の強さで+αになるのよ」

 

 つまり、R-1のT-LINKナックルみたいな念動フィールドを武器にする技術とレーザーを何らかの方法で融合させた、という事か?

 いや、技術的な事を言われても理解出来ないからレモンの言ってる通り念動力のおかげで威力が増すとだけ覚えておいた方がいいだろう。

 

「まぁ、詳しい話が知りたかったらそのレポートに書いてあるから作戦前の暇つぶしにでも読んでみて」

 

 先程手渡してきたレポートへと視線を向け、レモンが告げる。

 確かに海賊が出てくるまでタンカーに隠れていなければいけない以上、時間を潰すのに苦労はする事になりそうだしありがたいかもしれない。

 

「私からは以上よ」

「ご苦労。アクセル、何か聞いておきたい事はあるか?」

「そう、だな。今回の任務にも影響しているが、手が足りないんじゃないか?」

 

 手が足りない状態がこれ以上続けば、そのうち破綻する事になる。

 その前に何とかして特殊処理班の増員を増やしてもらいたい所なのだが。

 

「一応、対策は練っている。レモン」

「何?」

「以前言ってた量産型Wはどうだ?」

 

 ……なるほど、ここで量産型Wが出てくるのか。

 

「一応、疑似経験の記憶定着も終わってるし使えるわ。ただ、調整がまだ十分じゃないから臨機応変な対応は出来ないわよ?」

「指揮官の命令には従うのだな?」

「ええ、それは大丈夫」

「そうか。アクセル、今回の海賊退治が終わったらテストケースとしてお前と量産型Wの小隊を試してみるとする」

「それは俺が1人にWシリーズが数人という事か?」

「そうなるな。その結果が問題無いようなら、将来的には特殊処理班10人全員が隊長として量産型Wを率いる事も視野に入れる」

「確かに人手が足りない状態はそれで解消するかもしれないが、臨機応変な対応が取れないんだろ?」

「その辺は、それこそ実際に使ってみなければ分からないからな。テスト次第といった所だ」

 

 まぁ、実際に人手が足りない状態が続いているんだし、量産型Wを使う事になるのもしょうがないと言えばしょうがない、のか?

 ただ、個人的には応用が利かない量産型じゃなくてWナンバーズの方を優先して欲しいのだが。

 

「取りあえずは了解した。人手が足りないんだ。この際使えるものはなんだって使わせてもらう」

 

 ヴィンデルが俺の言葉に満足したように頷き、レモンの方を見る。

 

「レモンもWシリーズの改良に力を入れてくれ」

「任せておいて。今は色々と手を出しているけど、私が1番最初に研究を始めたのはWシリーズなのよ。手を抜くなんて事はあり得ないわ」

 

 ふとレモンの研究という言葉で思い出した。

 

「レモン、母艦と高性能ECMの開発はどうなっている?」

「母艦はアクセルの希望に沿ったものが既に開発中よ。もっとも、規模が規模だから完成までまだ掛かりそうだけど。高性能ECMに関しては開発が難航しているわね。テスラ研の技術も応用してはいるのだけど」

 

 若干悔しそうなレモンを見つつ、内心で溜息を吐く。今回の海賊退治のような作戦でASRSがあれば便利だったんだが。

 

「さて、それぞれ報告はいいな? ならそろそろ行動に移そう。アクセル、海賊の件は頼んだぞ」

「了解。レモンも研究の方を頑張ってくれよ」

 

「ええ、アクセルも怪我をしないようにね」

 

 2人に声をかけ、ヴィンデルの執務室を出て行く。

 にしても、ATXチームとの共同作戦なんてどうなる事やら。

 念動力が教えてくれるのか、微妙に嫌な予感を感じつつも格納庫へ向かった。




名前:アクセル・アルマー
LV:16
PP:150
格闘:170
射撃:188
技量:180
防御:177
回避:205
命中:227
SP:270
エースボーナス:不明
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:B
宇:A
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP20
   ???
   ???

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.7
    ???
    ???
    ???
    ???
    ???
    ???
    ???
    ???

撃墜数:28

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