転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0416話

 ラカンとの激戦を制したその翌日。

 前日は何だかんだ言ってもラカンとの戦いの後も調の脱走騒ぎで飛行魚に急いで戻ったり、その後は魔法球の中でゆっくりと休憩をしたりと色々と忙しかったのだが……結局特に何事も無く過ぎていき、今日になった訳だ。

 そう考えると昨日の調に関する騒動はフェイト達が直接出て来た訳では無く、調がどうにかして仮死状態から復活して脱出したのだろう。

 ……まぁ、仮死状態の調を捕らえていても情報を引き出せる訳でも無し。使えるとしたらフェイトに対する人質くらいだが、それだってあのフェイトを相手に効果があるかどうか分からないのだ。敵の戦力が増えるというのは多少嬉しくないが、いなくなったのならいなくなったでいいだろう。

 

「では、アクセル君。ナギ・スプリングフィールド杯の決勝戦、しっかりと応援させてもらいますので頑張って下さいまし」

「アクセル君、さすがにここまで来たらもう戦うななんて風には言わないけど、あまり怪我をしないでね。……ネギ先生と小太郎君の思いをきちんと受け止めて上げてね」

「キズクモの代表選手としてアクセルさんという存在を手に入れられた私は幸運だったのでしょうね。ナギ・スプリングフィールド杯の決勝戦。最後の最後でまさかグラニクスの代表と戦う事になるとは思ってもいませんでした。ここまで来た以上は特にどうこう言いませんが、勝利してくれると非常に助かります。……ご武運を」

 

 あやか、千鶴、リュボースの3人に送られて俺は闘技場へと向かう。

 ネギ達とは昨日少し話してからは特に接触していない。向こうも向こうで魔法球を使った特訓を重ねていた為にそういう時間が無かったというのもある。一応調の脱走については教えておいたが……

 

『南の門から登場するのはアクセル・アルマー選手! 昨日の準決勝戦であのジャック・ラカン選手とカゲタロウ選手の2人を倒して決勝へと進出するという大金星を上げました。ソロで決勝まで残った選手はナギ・スプリングフィールド杯が始まって以来初めてであり、大魔王の通り名に相応しい実力を持っているのは既に明らか。今日はどんな戦いを見せるのか!』

 

 実況の声を聞きながら闘技場へと進み出る。

 途端に溢れる歓声、歓声、歓声。

 わああああああああああああああああああ、というその歓声は今までになく大きな物で、耳に痛い程に響き渡った。

 その歓声に応えるべく、竜の尾を強く地面へと叩き付けるというパフォーマンスをする。

 

『そして北の門からはナギ・スプリングフィールド選手と、大神小次郎選手です。特にナギ選手は街の代表戦を決める予選の頃からアクセル選手と挑発をしあっていた為にこの2人には何らかの関係があるという説が有力であり、アクセル選手と同系統の技を使うというのがその仮説に根拠を与えています。そして小次郎選手。狼系の亜人であり、魔法は使えませんが気を使った戦闘は高い評価を得ています』

 

 ネギと小太郎もまた、実況の声を聞きながら闘技場へと進み出てくる。

 そして闘技場の中央で向かい合う俺とネギ、小太郎。

 

「……負けないよ」

 

 最初に口を開いたのは、ネギだった。小太郎もまた、ネギのその言葉に頷きながら口を開く。

 

「そやな。俺達もここまで昇ってくる為に必死に鍛えてきたんや。そうそう簡単に負けてやれる訳はないわな」

 

 ニヤリとした、自信に満ちた笑みを浮かべる小太郎。

 なるほど、気力体力実力共に十分か。

 

「そうか、なら俺も本気で掛かっていかないといけないな。それが望みだろう?」

「ああ。俺は京都の時と、麻帆良に来てからの勝負で負け越してるし」

「僕はマスターへの弟子入り試験の時の戦いと、麻帆良祭での武道会決勝戦」

 

 それは、どちらも目の前の2人が俺に実質的に負けたといえる戦い。

 いや、弟子入り試験に関してはエヴァに弟子入りを認めさせたのだから負けたとは言い切れないと思うが。

 

『今日こそは、勝つ』

 

 ネギと小太郎が同時に言い放つ。そしてその身に溢れる魔力や気。

 ぶわぁっとばかりに周辺へとその余波が広がる。

 

『おおっと、お互いが闘技場中央で睨み合う。予選から始まったとも言える因縁の対決。果たして勝つのはナギの名を継ぐ者か。それとも大魔王アクセルか! では、試合……開始っ!』

 

 開始の合図と共に、ネギが後衛へと下がり小太郎が前衛へと進み出る。

 最初から作戦は決めてあったのだろう。その行動には一瞬の迷いすら見えなかった。

 

「いくでぇっ!」

 

 その手に狗神を纏わせ、こちらの懐に飛び込んでくる小太郎。ネギは背後で闇の魔法の準備をしている。

 その様子を確認しながら、影を操り影槍を50本程放つ。

 今までの小太郎ならこれを回避するので精一杯の一撃。だが。

 

「今の俺にこんなもんが効くかぁっ!」

 

 部分獣化とでも呼ぶべきか。右手だけを獣化させて影槍の一撃を尽く弾き飛ばしてさらに俺との距離を縮めてくる。

 

「今度はこっちの番や!」

 

 その手に狗神を纏いながら、瞬動でこちらの懐へと入り込みその拳を放つ!

 パンッと、先程の影槍にしてやられたようにその拳を影を纏った右拳ではじき返してその場で素早く一回転。

 

「っ!?」

 

 小太郎が異変を感じた時には既に遅く、大きく振り回された竜の尾がその身体を闘技場の壁際まで弾き飛ばす。

 

『我と盟約を結びし者よ、契約に……』

 

 数の差を補おうと、グリフィンドラゴンを召喚しようとしたその時。いつの間にか後衛で闇の魔法を使っていたネギの姿が目の前にあり、その拳が放たれた。

 

「ぐっ!」

 

 予想外の一撃。その速度は驚嘆の一言に値するだろう。恐らく何らかの術式兵装だろうが……だが思わず苦悶の声を上げたのは俺ではなくネギだった。

 繰り出された拳は俺の展開する魔力障壁に阻まれ、俺の身に届かない。

 

「なるほど、確かに今の一撃の速度は予想外と言ってもいい。だが、幾らその身に雷を纏ったとしても、拳の威力その物が足りなかったな」

 

 現在のネギはその身に雷を纏っている。その姿は、俺の獄炎煉我の雷バージョンとでも言うべき代物だ。恐らくその効果は速度特化。確かにその速度は瞬動を使った俺よりも速いかもしれないが、それでも昨日のラカンの動きを体験した俺には対処出来ない程ではない。そして。

 

「生命ノ宴」

 

 ネギが驚異的な速度で動き回りつつも何とか俺の魔法障壁を抜こうとしているのを尻目に、右腕を小太郎の吹き飛ばされた方へと向けて炎獣を解き放つ。その数、約100。100匹近い鳥と虫の炎獣が吹き飛ばされた小太郎へと向かって群がっていく。

 

「小太郎君!」

 

 ネギの声が響き、再び一瞬にしてその姿を消す。次に現れたのは炎獣の向かう先。即ち小太郎の目の前だ。

 

「はああぁぁっ!」

 

 そしてそこから始まるのはまさに速度特化の真骨頂と言うべきか。本来なら岩すらも溶かす熱を持っている筈の炎獣を一撃で数匹、十数匹と叩き落としていく。

 放たれた100以上の炎獣をネギが全て倒すのに要した時間は約10秒。そして炎獣を倒して上がった土煙の中から真上へと飛び出し……

 

『術式解放、完全雷化……千磐破雷!』

 

 全身に雷を纏った……否、まるで俺の白炎ノ宴のように雷で構成された身体になったネギが突っ込んでくる。

 ゾクリ。

 本来であれば防げる筈の一撃を放たれた俺は背筋に冷や汗を滲ませ、同時に念動力がその攻撃の危険性を知らせてくる。

 

「ちぃっ!」

 

 右手をネギの方へと向けて、生命ノ宴を用いて大量の虫型の炎獣をまるでマシンガンのように撃ち放つ。もちろんこんなものでネギを倒せるとは思ってはいない。今のネギからはそれ程の危険度を感じるのだ。そしてそのまま……

 

「俺を忘れるなやっ!」

 

 背後からはその叫びと共に10匹近い気で形作られた犬がこちらへと突っ込んでくる。

 疾空黒狼牙か!

 虫型の炎獣を放っている右手は使えない。残っている左手を大きく振るって炎を幾重にも俺の周囲へと巻き付ける。同時に影を展開し……

 放たれた狗神は炎によって燃やし尽くされ、その炎の熱が小太郎をも僅かに焦がす。そして……

 

「はぁああぁぁぁああぁぁっ!」

 

 虫型の炎獣を全てその雷で破壊し、俺のいた場所へとネギが突っ込んで来た。

 ガガガガアアアアアアアアアアアッという破壊音が闘技場内へと響き渡る。

 

『も、もの凄い攻防。まるで本物の雷の如く縦横無尽に走り回るナギ選手と、それを正面から迎え撃つアクセル選手。そしてその不意を突く形で小次郎選手が攻撃をしましたが……ようやく土煙が晴れてきました……え?』

 

 どこか困惑したような実況の言葉が闘技場へと流れる。

 それはそうだろう。何しろ俺の姿がどこにもないのだから。

 

『これは、もしかして……先程の一撃でアクセル選手が肉片一つ残さずに消滅してしまったのかぁっ!?』

「ネギ、やったんか!?」

 

 竜の尾で吹き飛ばされた時に痛めたのだろう。脇腹を押さえながらネギへと喜びの混じった声を投げかける小太郎。だが……

 

「違うっ! 手応えが無かった! 小太郎君、注意し……」

「があああああああああああぁぁぁぁぁあああっ!?」

「小太郎君!?」

 

 ネギの言葉を最後まで言わせずに、俺は影のゲートの出口でもある小太郎の影から姿を現す。小太郎の脇腹を腕で貫通し、その後小太郎の体内で腕を白炎へと変えながら。

 

「ぐっ、ぐがぁっ、ぐふっ!」

 

 脇腹を突き破られ、同時にその内側から俺の白炎で内臓を焼かれる痛みに苦痛の悲鳴を上げる小太郎。その痛みは想像の埒外と言ってもいい程のものだろう。その声を聞きつつ、脇腹を貫通した腕を引き抜く。俺としてもここまでやるのは多少気が引けるが、狗族の血を引く小太郎は生半可なダメージではこの戦闘中に回復するのだ。今、俺が与えたこの一撃が試合中に回復しないで尚且つ回復魔法を使えば後遺症を残さずに済む範囲だろう。狗族というのはそれ程までに高い回復力を持っているのだから。

 激痛により踞って苦痛の声を上げる小太郎をそのままに、ゆらりとネギの方へと振り向く。

 

『これは……これは一体どうした事か。肉片一つ残さずに消えてしまったと思われたアクセル選手ですが、気が付けば小次郎選手の脇腹を貫いていた!』

 

 実況の声が響く中、心配そうに小太郎へと視線を向けるネギへと声を掛ける。

 

「安心しろ。俺にしても小太郎を殺すつもりはない。こいつの回復力なら試合後に回復魔法を使えばあっという間に回復するだろうよ」

「……だろうね。アクセル君がその辺の見極めを誤るとは思っていないよ。けど僕もすっかり忘れてたよ。アクセル君には影のゲートがあったんだったね」

「まぁ、本当にギリギリだったがな」

 

 本来であればネギの雷と化した特攻にも余裕を持って影のゲートを展開出来ていた筈だった。だが、そこに振るわれたのが小太郎の狗神を用いた攻撃である疾空黒狼牙だ。これに対処したおかげで、影のゲートを展開出来たのは本当にギリギリだった。

 そう、ギリギリ致命的なダメージを受けなかったのだ。こうして外見上は全く問題無いように見えてはいるが、ネギの魔力を纏った雷の一撃はそれなりに大きいダメージを俺に与えていた。何しろ、ゲートを使った転移魔法というのは一瞬で移動出来る訳ではない。いや、他の属性のゲートは分からないが、少なくても俺が使える影のゲートはその影に沈み込むのに僅かではあるが時間が必要なのだ。

 ……もっとも、こうしてネギと向かい合っている時点で体内の魔力、あるいはSPを使用してそのダメージをもどんどん回復していっているのだが。 

 

「今の、僕の切り札だったんだけど……アクセル君にはまだ及ばなかったみたいだね」

「いや、そうでもないぞ。俺の白炎ノ宴の雷バージョンっぽい感じだが……」

「キズクモの試合映像を手に入れるのはそう難しくはなかったからね。もっとも、生命ノ宴とか焔ノ宴のような特殊能力は雷を利用した瞬動、雷速瞬動しかないんだけど」

 

 なるほど、俺の白炎ノ宴を参考して作りあげた訳か。

 

「だが……俺を参考にして作りあげた技で本家本元の俺に敵うと思ってるのか?」

「どうかな。でも、参考にして作ったって事は改良されてるって意味でもあるんだよ?」

 

 闘技場の中央で向かい合う俺とネギ。

 

「……いいだろう。別に技で著作権云々なんて言わないさ。麻帆良武道会の時とは違う、俺の正真正銘の力で受けて立とう」

「アクセル君。君はいつも僕の前に立ち塞がっていた壁だった。君を乗り越えよう、追い越そうとして頑張ってきたのも事実。……その壁、今日で乗り越えてみせる!」

「俺を乗り越えられるのなら、乗り越えて見せろ!」

 

 お互いが瞬動を使い、ナギ・スプリングフィールド杯決勝戦、最後の幕が開ける。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:15
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊

撃墜数:392

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