転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0406話

『さぁ、いよいよオスティア祭の目玉であるナギ・スプリングフィールド杯が始まりましたが……いやぁ、今年は例年になく盛り上がっています。予選Aブロックのこれまでの2試合はどちらも甲乙付けがたい名勝負でした。では、第3試合に入ります。東の門から入場するのは、拳闘技が盛んな事でも有名な、通称武闘都市ファーン代表のストラグル拳闘士団所属、獅子の獣人である獅子王スカーラ選手とその速度に定評のある無言の仕事人キーネーシス選手。対する西の門からは、拳闘士団に所属していない個人出場、さらにはタッグ戦であるこの大会に個人出場とまさに異例ずくめ。あの自称ナギ選手のライバルとしても名前が広まっている、通称キズクモの大魔王、アクセル選手です』

 

 観客の歓声が響き渡る中、俺は西の門から闘技場の中央へと進んで行く。当然今の俺の姿は、異形化の状態を混沌精霊の能力で再現したものだ。

 オスティア祭、1日目。いよいよ始まったナギ・スプリングフィールド杯なんだが……まさかここにまで大魔王呼ばわりが届いているとはな。

 

「お前さんの噂は俺達の都市にまで届いてたぜ。戦えるのを楽しみにしてたんだよ」

 

 スカーラとかいう獅子の獣人が獰猛な笑みを浮かべて俺を見る。その表情は、まるでご馳走を目の前にして待ちきれない子供のようなものに見えた。

 

「……」

 

 相方のキーネーシスとかいう方の男は、ただ黙って俺とスカーラのやり取りを見守っている。

 

「折角このオスティアまで来て貰って悪いんだが、お前達のナギ・スプリングフィールド杯はこの1回戦で終了だ」

「はっはっは。そうそう。そうこうなくっちゃな」

 

 挑発気味に放たれた俺の言葉だが、スカーラは豪快に笑って返してくる。

 なるほど、一都市の代表に選ばれるだけはあるか。

 

『では、第3試合……始めっ!』

 

 試合開始の合図と同時に、キーネーシスが瞬動を使って急速にこちらとの距離を縮めてくる。本来であればまさに目にも止まらぬ速度なのだろうが、生物として純粋に人間よりも格上の混沌精霊へと生まれ変わった今の俺に取っては、瞬動だろうと通常のダッシュだろうと見極めるのはそう難しくはない。

 特に気合いの声もなく、無言で俺の鳩尾を狙って繰り出された拳を掌で受け止める。

 

「っ!?」

 

 恐らく自慢の一撃だったのだろう。それを受け止められて驚愕の表情をしているキーネーシスだが、その隙を突くかのようにスカーラが俺の横へと瞬動で回り込む。だが……

 

「がっ……なにぃ!?」

 

 突き出された拳を回避し、その勢いを利用して腰から生えている竜に似ている尾を振り回す。

 

『おおっとぉ、何とアクセル選手尻尾でスカーラ選手を……え? 尻尾? あれ? な、なんと。アクセル選手、いつの間にか尻尾が生えているぞ!? キズクモでの戦闘の映像を見た限りでは尻尾は確認できなかったのですが……と言うか、なんで最初に闘技場に入った時に気が付かなかったのでしょう。……まぁ、とにかくアクセル選手強烈な尻尾の一撃でスカーラ選手を弾き飛ばした!』

 

 尾による一撃でピンボールのように吹き飛んでいったスカーラを見送り、手で掴んでいるキーネーシスをそのまま腕力で強引に一本背負いして地面へと叩き付ける。

 

「がっ!?」

 

 無口なキーネーシスの口から出た初めての言葉は苦悶の声、か。

 そんな風に思いつつも、その首裏へと一撃を入れ意識を奪う。

 そしてスカーラが吹き飛ばされた方へと視線を向けて歩き出す。

 

「がはっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……まいったな。これでも武闘都市の予選を勝ち抜いて来たんだがな。……ここまで差があると、返って清々しいくらいだ。まぁ、いい。確かに俺はお前には勝てないだろうが……せめて一矢は報いてみせる!」

 

 歩いて距離を縮める俺へと態勢を立て直しながらそう告げ、両手を地面に付けて四つん這いになる。

 その様は、獅子の獣人というよりは獅子そのものと言ってもいいだろう。そして急激にスカーラの口へと集まっていく魔力。

 なるほど、シルの技と似たようなものか。

 

「があああぁぁぁぁぁぁっっっっっ!」

 

 俺がそう判断するのと、スカーラの口から咆吼が放たれるのは殆ど同時だった。咆吼に魔力を乗せて放つ音による広範囲攻撃。ただ、シルのそれと違うのは咆吼に付加されているのがただの魔力だけではなく、炎の魔力も付加されているという事だ。超音波とファイアブレスによる2重攻撃。これがスカーラの奥の手か。

 だが……

 

「俺に炎の攻撃をするというのは無謀だったな」

 

 人間だった頃の俺が、最も得意とする魔法が炎の魔法だった。それは混沌精霊へと転生する際にも当然影響されている。今の俺の炎に対する適性や耐性といったものは人だった時を上回るのだ。故に。

 

「な、何!?」

 

 異形化状態の俺の額から伸びている深紅の角。炎を操るその角の効果を発揮したように見せかけてスカーラから放たれた炎に干渉して俺の支配下へと収め、その炎へと俺の魔力を注入して白炎へと変えて衝撃波そのものを燃やし尽くす。

 

『これは……一体、何が起こったんでしょう? スカーラ選手の必殺技とも言える獣王の雄叫びが放たれたのですが、雄叫びに含まれる炎が色を変えたと思った次の瞬間には獣王の雄叫びそのものが燃やし尽くされていたような……』

 

 意外に試合の成り行きをきちんと理解している解説に多少驚きの念を抱きつつも、獣王の雄叫びとやらを燃やし尽くした白炎を手元へと戻す。

 

「どうする? 続けるか?」

「……当然だ。俺はこれでもファーンを代表してナギ・スプリングフィールド杯に参加しているんだ。相手に勝てないからと言って尻尾を巻いて逃げるような真似が出来る筈もないだろう。……行くぞっ! こうなったら意地でも一矢を報いてみせる」

 

 瞬動を使い、こちらへと向かって獅子の獣人族特有のしなやかな筋力を使った一撃を放ってくるスカーラ。その一撃を回避し、いなし、防ぎ。そしてその隙を突くかのようにして放った俺の拳がスカーラの肋を砕き、防御しようとした腕の骨を砕き、ローキックをまともに受けた太股の骨が砕ける。

 

「ぐ……さすがだ……」

 

 さすがに太股の骨を砕かれては立っている事も出来ずに地面へと倒れこみながらも満足気にそれだけ呟き、スカーラは気を失う。 武闘都市を代表してきただけの事はあるな。強さはともかく、その誇りはそれに相応しいものだった。

 

『気絶、キーネーシス選手、スカーラ選手の両選手気絶です! ナギ・スプリングフィールド杯予選Aブロック第3試合の勝者はアクセル選手です!』

 

 司会の宣言と共に、観客席からこれまでにない歓声が聞こえてくる。

 

『1人で出場するという、前代未聞の行動をしながら本戦まで勝ち上がってきたアクセル選手。その実力は伊達やハッタリでない事を我々の前で見事に証明してくれました』

 

 そんな言葉を聞きながら、観客達へと手を振って選手用の出入り口である西の門から選手控え室へと続く廊下へと出る。

 

「お疲れ様でした」

 

 そしてそんな俺を待ち受けていたのはマネージャーでもあるリュボースだ。

 その顔には珍しく満足そうな笑顔が浮かんでいる。

 キズクモ代表の拳闘士である俺が圧倒的な強さで勝ちを収めた事が余程嬉しいのだろう。尚ここで勘違いしてはいけないのは、リュボースにとって重要なのはキズクモであるという事だ。ようは俺じゃなくてキズクモの方にアクセントが置かれていると言えばいいんだろうが。……いや、ニュアンス的にちょっとおかしいか?

 

「と言うか、街の代表を決める予選をクリアして本戦出場かと思えば、まさかここでもまた予選を行うとは思わなかったな」

「しょうがありません。何しろ魔法世界中が注目している大会ですから。……そう言えば知り合いからちょっと噂を聞いたんですが、アクセルさんの他にも1人でこの大会に出場している選手がいるそうですよ?」

「へぇ? 俺の他にもそんな物好きがねぇ……ちなみに、どんな奴だ?」

「確か名前は……カゲタロウとか言っていたと思います。予選Dブロックに参加予定ですので、気になるのなら見に行ってみては?」

「ああ、機会があったらそうさせてもらうよ」

 

 ……本当に、タッグ戦前提のこの大会に俺以外でもソロで出るような物好きがいるとはな。どうせならそのまま予選を勝ち抜いて本戦で戦ってみたいものだが……

 にしても、カゲタロウとか。これで操影術の使い手だったりしたら名前そのままだな。

 

「では私はこの辺で失礼しますね。まだ挨拶回りをしないといけないので。アクセルさんのこれからの予定は?」

「あー、そうだな。取りあえずネギ達に合流してからだな。とにかく早い所100万ドラクマ稼がないといけないしな」

「あぁ、ご友人の……質の悪い詐欺に引っ掛かったのは残念でしたが、この魔法世界は弱肉強食の世界です。今回は奴隷から解放される目処もあるようなのが不幸中の幸いでしたね」

 

 ペコリ、と頭を下げて去っていくリュボースを見送り、俺もまた待ち合わせの場所へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「アクセル! 良く勝ってくれたわね!」

 

 待ち合わせ場所へと着いた途端、神楽坂がこれでもかという満面の笑顔で俺を出迎える。どうやら予定通りに俺に金を賭けていたらしい。

 神楽坂の側には、俺とネギの関係者15人が勢揃いしていた。当然賭けの実行を引き受けたトレジャーハンター4人組もだ。

 で、関係者15人は全員もれなく年齢詐称薬を飲んでいるのでまさに幼女15人を引き連れた大人4人組となっている。この魔法世界にあるのかどうかは分からないが、どこの幼稚園か保育所かって感じだな。

 尚、俺の姿はキズクモの時のようにローブを被って姿を隠している。

 所詮俺が有名なのはキズクモと、後はあってもネギがいたグラニクス程度かと思っていたんだが……いや、正直ナギ人気を舐めてた。昨日街中を歩いていたらいきなり正体がバレたんだよな。なので結局はキズクモ時代と同じ格好になった訳だ。

 ちなみに、それでも神楽坂が俺を発見出来たのはこの姿を見慣れている5人のおかげだろう。

 

「で、幾らになった?」

「50万ドラクマ弱って所かな。アクセルの名前が思ったよりも広まってたみたいで予想していたよりオッズは高くならなかったのよ」

「まぁまぁ。それでも1回の戦いで倍近くまで増えたんだからそう気を落とすなよ」

 

 トレジャーハンターのリーダー格であるクレイグが、神楽坂を励ますように言う。

 それを聞いた神楽坂も小さく頷いてすぐに元気を取り戻す。

 バカレンジャーなだけにポジティブなのは救いだよな。

 その様子に苦笑しながらも俺もまた口を開く。

 

「それに、今日はまだネギの試合もあるんだろう? そっちにも全額賭ければもしかしたら今日で100万ドラクマ達成するかもな」

「うーん、それはあるかも」

 

 何かの雑誌を見ながら朝倉が呟く。

 

「朝倉さん? その雑誌は?」

「ん? あぁ、これ? ナギ・スプリングフィールド杯に参加する選手の紹介とかが載ってる雑誌」

 

 あやかの質問に、持っていた雑誌を軽く振って見せる。

 

「これによると、ネギ君達の相手は優勝候補の一角らしいのよ。つまり、当然オッズ的にネギ君達がかなり高くなると予想されるわ」

「へー。ね、ね。ネギ君は何て紹介されているの?」

 

 早乙女の言葉に、朝倉は苦笑しながら雑誌を手渡す。

 

「えーっと、何々? あの伝説の英雄ナギ・スプリングフィールドの名を名乗る拳闘士。話題優先の選手故に、その実力は未だ未知数。コンビを組んでいる大神選手共々注目の選手ではあるが本戦に出場するのはまだ実力が足りないと思われる。……だって」

「むぅ。ネギ坊主の実力を見抜けないとはこの文章を書いた人は見る目が無いアルな」

 

 自分の弟子が評価されていないのを聞いた古菲が不満そうに呟く。

 

「じゃあ、アクセル君は?」

 

 美砂の言葉に、ページを捲る早乙女。

 

「コンビを組んで出場するのが原則の大会だというのに、個人出場をしているという時点で本気で勝つ気があるのかどうか疑わしい。少し前のページで紹介したナギ選手とのライバルという話もあるので、こちらも話題先行の選手と見ていいだろう。……だって」

「……早乙女さん。その雑誌はどこが発刊してるのでしょうか?」

「え? それは……って、ちょっ! いいんちょ。いつの間にアーティファクトを出してるのよ! 何をする気!」

「決まってるではないですか。事実無根の名誉毀損という罪がどれだけ重罪なのかをその身体に直接教え込んであげますわ」

「うわーーーっ、いいんちょ本気だ!? 皆、止めて、止めてーーーーっ!」

 

 結局なんとかあやかの怒りを静める事に成功し、その後はネギの試合へと全額賭けて資金を92万ドラクマまで増やしたのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:15
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊

撃墜数:392

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