転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0028話

 シャドウミラーとしての初任務が無事終了した俺達は、レイディバードでラングレー基地へと帰還していた。

 俺の乗っているレイディバードは、来た時と同じくヴィンデル、レモンの2人と一緒だ。ヴィンデルは相変わらず書類仕事をしており、レモンはPDAで何かのレポートを読んでいる。

 そんな2人を見ながら、俺は自分のステータスを確認していた。

 敵が雑魚とは言え、努力を使用しての3機撃破のおかげか、レベルが1上がっている。PPも貯めていた35P+レベル上昇分10P+敵撃破15Pで目出度く目標だった60Pになっていた。

 もちろん迷わず予定通り空の地形適応をSに変更。

 これでPPがまた0になってしまったが、当面の目標であった空と地の地形適応Sを獲得できたので不満はない。

 地形適応Sを達成出来た事で、次の目標はアタッカー、インファイト、ガンファイトだな。

 そしてレベルが上がった事により、精神コマンドも新しいのを覚える事が出来た。それは集中。ゲームでは1ターン回避・命中が30%プラスされるという効果だったが、ここでの効果はまだ不明だ。取りあえず今までの経験から行くと1ターンは1分という認識でいいと思うんだが。

 集中力を使っても消費SP16と、努力の2倍、加速に至っては4倍も消費するだけに、なるべく良い効果であって欲しい。

 もっともSPアップLV.9の効果による豊富なSPや、SP回復のスキルを考えるにそれ程気にする必要もないのだが。

 で、今回レベルが上がって起こった最大の変更。それはスキルだ。

 いや、新しいスキルを覚えたとかそういうのじゃない。単純にスキルスロットが1つ増えているのだ。

 今まではスキルスロットが10だったのが、レベルが10になったらスキルスロットの数が11に増えていた。

 嬉しいか嬉しくないかで言えば、もちろん嬉しい。大歓迎と言ってもいいだろう。だが、スキルスロットが増えた理由が不明な為、微妙に喜べないのもまた事実だったりする。レベルが10になったから増えたのか。ならレベルが20になればスキルスロット数が12になるのか。それともレベル以外の要素、たとえば撃墜数や初任務達成なんてのが原因なのか。その辺りが全く分からない。

 

「アクセル?」

 

 そんな事を考えていると、レモンから声が掛けられる。

 

「どうした?」

「いえ、何か難しい顔して考え込んでいたから、どうしたのかと思って」

「いや、別に何も考えてないさ。単純に初任務が完了したのはいいんだが、報告書を提出するのが面倒だっただけで」

 

 チラリとヴィンデルの方へと視線をやりながら会話を続ける。

 

「元々小さい頃からパイロット一筋だっただけに、どうも書類仕事とかは苦手なんだよ」

「そう? 書類も慣れればそんなに苦じゃなくなるものよ?」

「それは、レモンが科学者だからこそ言える台詞だな」

 

 レモンとそんな事を喋りつつ、レイディバードがラングレー基地へと到着するまでの時間を潰した。

 

 

 

 

 

「これが、時流エンジン」

 

 シャドウミラーとしての最初の任務が終了して数日。ようやくと言うか、とうとう時流エンジンのサンプルがラングレー基地に届いたのだ。

 そしてその時流エンジンが置かれているシャドウミラー用の格納庫で俺とレモンの2人は時流エンジンがコンテナから搬出されるのを見学していた。

 梱包を解いていく整備員達だが、ふと気が付く事があった。

 

「ちょっと大きくないか?」

 

 そう、その大きさはPTに搭載されている一般的な核融合ジェネレーターや新型のプラズマ・ジェネレーターに比べて明らかに大きいのだ。

 こうして見る限りでは、大体1.5倍くらいの大きさだと思われる。

 

「ええ、確かに。ちょっと待ってて。一緒に送られてきたレポートに何か書いてあるかも」

 

 俺と同じ事を感じたのだろう。レモンが眉を顰めて梱包を解いている整備員達へと声を掛けている。

 やがて渡されたレポートを読み始めたが、その表情は晴れない。

 最後の1ページまで読み進め、溜息をついているレモンへと声を掛ける。

 

「どうだった?」

「そうね。まずこの時流エンジンは現在研究されているものよりも前の世代のものらしいわ」

「前の世代?」

「ええ。今研究されている時流エンジンは普通の動力炉、いわゆる核融合ジェネレーターと同じ大きさらしいわ」

 

 まぁ、サンプルとして送られてきたものなんだし、確かに最新型の小型タイプである必要は無い、のか?

 

「じゃあ、これは俺の機体の強化には使えないのか?」

 

 前回の作戦時にヴィンデルが言っていた、時流エンジンを使用して俺の機体を強化するという案は無理という事になるのだろうか。

 

「いえ、それが全くそういう訳でもないのよ」

 

 だが、その懸念はレモンに否定される。

 

「いい? まず確かにこの時流エンジンは前の世代という事でサイズ的には大きいわ。でも、最新型の時流エンジンよりも勝っている所も幾つかあるの」

「勝っている所?」

「そうね。まず大型である為に、現在の小型の時流エンジンよりも生み出す事が出来るエネルギー量は多いわ。そして安定性に関してもこちらが上のようね」

「なるほど、古いものではあるけど使えない訳じゃないという事か。だが、今問題なのはその大きさだろう? この大きさじゃとてもじゃないがアシュセイヴァーで使うのは無理だぞ。それこそ特機とかなら可能かもしれないが」

 

 そう、いくら現行の時流エンジンよりも性能が良いとしても、実際に使えないのでは絵に描いた餅以外の何物でもない。

 

「そう、それが問題なのよね」

 

 レモンも苦笑を浮かべつつ頷く。

 

「ねぇ? どうせなら特機に乗り換えてみない?」

「いや、そんな余裕は無いだろう。そもそも、俺の適性的には高機動な機体がベストだ。特機なんて無理だし、何よりあまり趣味じゃない」

「趣味って貴男ねぇ」

 

 レモンとやりとりしながら、何とかこの時流エンジンを有効活用する方法は無いか考えるが、そっち方面の知識は専門のレモンとは違い、原作やらガンダムやらしか持ってないので……ガンダム?

 そのキーワードでふと思い出す。確かガンダム00のセカンドシーズンで主人公の刹那が乗っていた00ガンダムは両肩に太陽炉を装備していなかったか?

 

「なぁ、レモン。ちょっと思ったんだがアシュセイヴァーを改造して動力炉の場所を変更出来るようにすれば使えないか?」

 

 個人的には渾身のアイディアだったんだが、それはレモンに溜息を1つ吐かせるだけで終わってしまう。

 

「いい、アクセル。簡単に言うけどもしそれを実現するとなると改造どころの手間じゃ済まないわ。新型機の設計をするくらいの手間暇を掛ける事になるわよ。それなら最初から時流エンジン用の新型機を作った方がマシよ」

 

 駄目か。いいアイディアだと思ったんだが。

 

「そうなると、本当にレモンの研究用に使うしかないか?」

 

 もっとも、サンプル用として送られてきたものなんだし、それが妥当な扱いなんだろうがどうにも惜しい。

 レモンの時流エンジンに対する研究が進む事で、あちらの世界への転移する時の危険性が少しでも減るのなら御の字、か?

 

「そう、ね。私も一応考えてはみるけど、何も思いつかない場合は貴男の機体に時流エンジンを使えないという可能性も覚悟しておいて頂戴」

「ま、しょうがないか。まさか時流エンジンを外付けにする訳にもいかないし」

 

 何気なく呟いた時だった。レモンの眼が鋭く俺を見据える。

 

「ちょっと待って、アクセル。貴男、今何て言ったの?」

 

 レモンの迫力に押されつつも、口を開く。

 

「だから、外付けにする訳にもいかないだろ? 敵の攻撃が当たる可能性を考えると、そんな機体は怖くて乗れないぞ」

「違う、いえ、確かにそれもあるわね。でも装甲を? いえ、それだけでは動きが鈍くなる。なら機動力も。あら、なら武装も?」

 

 何かのスイッチが入ったのか、ブツブツと呟きながら自分の考えを纏めているレモン。

 こういう所を見ると、好奇心優先の科学者なんだと妙に納得してしまう。

 数分の間ブツブツと呟きながら考えを纏めているレモンを眺めていたが、ようやく考えが纏まったのか落ち着いてきた。

 

「考えが纏まったか?」

「ええ、これからちょっとヴィンデルの所に行って許可を貰ってくるわ。貴男は、そうね。2週間程アシュセイヴァー無しになるから、訓練をする時には何か他の機体を使って頂戴」

「2週間?」

「ええ、時間的にちょっと難しいかもしれないけど、そのくらいの時間があれば完成させてみせるわ」

「いや、そんなに急がなくてもいいから、確実に使える機体に仕上げてくれ」

 

 急いで改造したばかりに、肝心な所で故障する機体になったりしたら安心して乗る事が出来ない。

 

「そうね、分かったわ。じゃあちょっと余裕を見て1ヶ月頂戴」

「まぁ、レモンがそれでいいのなら」

 

 頷く俺を見ると、すぐに格納庫を出て行く。

 先程言っていたように、ヴィンデルの許可を貰いに行ったのだろう。

 はてさて、どんな機体になるのやら。


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