転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0370話

 光に溢れている転移空間。強制的な転移という行為の為か、その転移空間は操影術の転移とは随分と違う様相だった。

 そしてそんな空間の中に俺やネギ、それ等の関係者は存在していた。まるで無重力空間にいるかのように、地に足が付いていない状況。そんな中でまずやる事と言えば、まずなるべくバラバラに転移されないように一箇所に集まる事か。だが、この中で宇宙空間のような無重力空間で行動した経験のある奴なんて俺以外にはいないだろう。その為、それぞれがバラバラの方向へと散らばって……させるかっ!

 

「スライムッ!」

 

 この転移空間で上手く出せるかどうかは分からなかったが、さすが転生特典だけあり何の問題も無く空間倉庫が展開し、そこから触手が伸びてくる。

 

『念話』

 

 同時にパクティオーカードで念話の機能を使う。

 

『あやか、千鶴、円、美砂。聞こえるか?』

 

 その声に、数秒の間を置きながらそれぞれからの返事が頭の中に響く。よし、どうやらまだ全員無事らしい。

 

『このままだとそれぞれが全く別の場所に転移させられる。それを防ぐ為にも今、スライムの触手を伸ばしてるからそれを掴んで離すな』

 

 そこまで言って、ふと気が付く。何故か俺から少し離れた所に茶々丸だけが取り残されたように浮かんでいた。いや、違う。これは恐らく……

 

「茶々丸!」

「アクセルさん!」

 

 俺の声にそう返してくる茶々丸。やはり。恐らく俺を保護するつもりで無理して俺のほうへと近づいて来ていたのだろう。

 

「アクセルさん、これに掴まって下さい!」

 

 その声と共に腕が発射され、俺の着ていたローブを掴む。そして次の瞬間……

 

「転移だ!」

 

 そう叫ぶのと、転移が実行に移されたのは殆ど同時だった。

 

 

 

 

 

「アクセルさん、大丈夫ですか?」

「ん……?」

 

 誰かが俺を揺すっている。その手は強すぎず、弱すぎずといった感じで揺すっていたが、暫くするとその手が俺から離れていくのを感じ取る。

 それにどこか物足りなさを覚え……そこでふと気を失う寸前の光景が脳裏を過ぎる。

 

「っ!?」

 

 その場を跳び起き、周囲の様子を確認。すぐにでも反撃出来るように魔力を集中し……そこで初めて自分の寝ていた場所が石造りの床の上だった事に気が付く。

 

「アクセルさん、目が覚めたのですね」

 

 その声に振り向くと、そこには茶々丸の姿があった。ガイノイド故に無表情に近いのだが、それでもちょっとした仕草や放っている雰囲気や口調で俺を心配していたのが分かる。

 

「茶々丸? ここは……」

「覚えてませんか? フェイト一味の手によって強制的に転移させられたのですが……」

「っ!? そうだ! あやか達はどうした!?」

 

 周囲を慌てて見てみるが、見えるのは石造りの何も無い部屋だけだ。スライムで捕まえていた筈のあやか達の姿はどこにも無い。

 ……何故だ? 確かにあの時、俺はあやか達をスライムで捕まえていた。それは間違い無い。だが、それなのに転移場所が違うだと?

 一瞬、あの転移空間とでも呼ぶべき場所では接触していても同じ場所への転移は出来ないんじゃないのかとも思ったのだが、俺を直接掴んでいた茶々丸は一緒の場所に転移させられている。

 

「……いや、待てよ? 直接?」

 

 茶々丸は実際に俺のローブを掴んでいた。だが、あやか達は俺がスライムで確保していた。つまり、その差か? スライムによる接触は実際に接触していると見なされなかったのか?

 床に敷かれているローブを手に取り、考える。

 ちなみにローブを脱がせて俺を寝かせていたのは、茶々丸が少しでも俺の寝心地を良くしようとしてくれた為だろう。

 

「茶々丸、周囲に誰か他の人間がいるかどうか分かるか?」

 

 その俺の質問に首を振る茶々丸。

 

「いえ。ネギ先生達ならクラブの証として渡されているバッジを持っているメンバーがいれば半径1800kmの距離でもこちらで把握出来るのですが、残念ながら私はそのバッジを貰っていませんので探知出来ませんし、もしバッジがあってもネギ先生達以外のメンバーはバッジを持っていないのでこちらで把握出来ません」

 

 何かおそろいのバッジを持ってると思ったら、そんな機能が付いてたのか。

 ちなみに、当然の事ながら俺はエヴァからそういう機能を持ったバッジは貰っていない。この辺が直弟子であるネギとあくまでもアドバイスをして貰うだけの俺との待遇の差だろう。当然境遇の差に文句を言う気は無いが、それでもあやか達の行方を知る事が出来無いというのは痛いな。

 ただまぁ、あやか達を探すにしても何をするにしても……

 

「ここから出ないと駄目だろうな」

「そうですね。私には必要ありませんが、ここではアクセルさんの食料や飲料水といった問題もあります」

 

 そう言ってくる茶々丸に思わず眉を寄せる。

 

「アクセルさん?」

「いや、言った事が無かったか? 俺の空間倉庫の中には食料や飲み物が大量に入ってるんだが……ほら」

 

 そう言いつつ、脳裏に空間倉庫のリストを展開してスイカの形をしたアイスを取り出す。麻帆良のコンビニで売ってるのを見つけて大量に買い込んで空間倉庫に保存しておいた奴だ。種のチョコがいい味を出している。

 

「……」

 

 突然アイスを取り出した俺に、茶々丸にしては珍しく呆気に取られた表情を浮かべていた。

 その表情を眺めながら、気分を落ち着ける為にもアイスへと齧り付く。

 口の中に広がる冷たさと、種のチョコが懐かしい味を思い出させて焦っていた心を落ち着かせる。

 

「と言う訳で、取りあえず食料とか飲み物に関しては心配はいらない。……ただ、明石達が心配だからな。なるべく早い所ここを脱出して保護した方がいいだろう」

 

 ……あやか達も心配と言えば心配だが。

 能力だけなら十分1人で危険をどうにか出来るだろうが、それでも俺がこの世界に転移してくるまでは一般人として生きてきて、魔法の世界に足を踏み入れてからまだそれ程経っていない。それを考えると、直接的な危険以外の危険に対処出来るのかどうかは微妙な所だ。

 それでもあやか達ならある程度の戦闘能力を持ってるのだが、明石、大河内、和泉、佐々木の4人はそれすらない。エヴァから聞いた話によると、魔法世界でも辺境とかでは賞金稼ぎやら奴隷やらといったファンタジー的な職業が普通にあるらしい。騙されて奴隷に、とかになってないといいんだが。あるいはもっと直接的に山賊達に襲われているとか。特に明石と大河内はその辺の女よりも余程魅力的な体型をしているからその辺が心配だな。

 そして……

 

「魔獣か」

 

 そう。この魔法世界には普通に魔獣やらドラゴンやらといった存在がいる。凶暴な魔獣に出会ってしまったら自衛手段の無い4人はその場で人生ゲームオーバーだろう。

 

「アクセルさん、早い所ここを脱出して皆さんを探しましょう」

「……だな」

 

 最後の一口となったアイスを口に収め、ゴミをその辺に放り出す。

 空間倉庫のリストを脳裏に表示し、フェイトとの戦いでも使ったサブマシンガンを選択する。次に手榴弾を数個選択して、準備完了だ。

 

「行こうか」

「はい」

 

 俺の言葉に頷いた茶々丸と共に、俺が眠っていた石作りの部屋を出る。

 その部屋を出てまず目に入ったのは綺麗に舗装された石の通路がある。

 石造りの通路の横には等間隔にランプのような物が壁に埋め込まれており、少なくても明かりに関しての心配はいらないらしい。

 だが、ここは……

 

「遺跡か何かか?」

「分かりませんが、その可能性も高いと思います」

 

 魔法世界には遺跡や迷宮のような存在がある。それはエヴァに聞いて知っていたし、そもそも俺が今回この魔法世界へと来る決意をしたのもそれが目的だったのだ。

 

「けど、皆とはぐれて……とは思いも寄らなかったな」

「そうですね。皆さん、ご無事だといいのですが」

 

 俺の言葉にそう返す茶々丸。

 だが、次の瞬間俺と茶々丸は同じタイミングで通路を歩いていた足を止める。

 

「気が付いたか、さすが超の最高傑作だな」

「そんな、アクセルさんこそ生身だというのに良く気が付きましたね」

 

 俺は銃を構え、茶々丸もまた、両腕を銃と剣へと変形させて構える。

 

「さて、定番ならスライムとかそういうのだといいんだが……」

「マスターの読んでいる漫画ですと、ミノタウロスとかそういう線もありそうです」

 

 ……エヴァも漫画とか読むんだな。

 そんな風に考えながら感じた気配の主が姿を現すのを待っていると、通路の先からガシャ、ガシャ、という音がしてこちらへと近付いてくる。

 同時に、壁へと直接埋め込まれている明かりがその存在を照らし出す。

 それは、一言で言えば鎧だった。それも中世に騎士が使っていたような鎧。

 その鎧が3つ程ガシャガシャと足音を立てながらこちらへと近付いてくる。

 

「茶々丸、一応俺の勘だとあれは生き物じゃないと思うんだが……」

「はい。あの鎧に生体反応はありません」

 

 生体反応の無い鎧。即ち……

 

「リビングアーマーか」

 

 リビングアーマー。つまりは生きた鎧。国民的RPGに詳しい奴なら『さまよう鎧』と言えばピンとくる奴も多いだろう。

 

「けど、この手の奴は自然発生はしないんじゃなかったか?」

 

 エヴァの書斎で得た俺の知識によると、鎧を用意して何らかの儀式を施す事でリビングアーマーとして存在を確立させる筈だ。

 日本でいう付喪神の例もあるが、それにしたって3体同時発生するなんて事はないだろう。

 

「ここは魔法世界ですので、自然発生する可能性も無いとは言えません」

「さすがファンタジー」

 

 苦笑を浮かべつつも、折角用意したサブマシンガンと手榴弾を空間倉庫の中へと戻す。リビングアーマーのような無機物が相手だと効果が微妙だからな。

 

「茶々丸、ここは俺がやる。魔法世界の相手がどんなのか実際に戦ってみたい」

「その、大丈夫でしょうか? 私も援護をした方がいいのでは」

 

 前々から薄々思ってたが、茶々丸はどこか俺に過保護な所があるよな。

 まぁ、悪い気分はしないからいいんだが。

 

「危なくなったら援護してくれ」

「……気をつけて下さいね」

 

 茶々丸に頷き、魔力発動体の腕輪に意識を集中する。

 

『戦いの歌』

 

 身体強化魔法を使い、瞬動。そのまま先頭に立っているリビングアーマーの懐へと踏み込み、胴体へと思い切り一撃を叩き込む!

 ズンッ! という鈍い音を立てながら、胴体を貫通する俺の右手。同時に胴体を貫かれたリビングアーマーも致命的なダメージを受けたのか、腕、脚、頭といった部分の鎧がバラバラになり地面へと落下する。

 それに構わずに貫通した胴体から腕を抜き、後ろへと回り込もうとしている2体目のリビングアーマーの足を刈って転ばせる。その胴体へとトドメの一撃として足で思い切り踏みつぶし、最後の1体が振り下ろした剣を地面に転がっていたリビングアーマーの兜を盾代わりにして受け止め、1体目と同様に胴体を貫く。

 所要時間5秒弱。それが俺がリビングアーマー3体を倒すのに要した時間だった。

 

「脆いな」

 

 その呟きに、安堵の息を吐きながらも茶々丸が口を開く。

 

「あのフェイト一味と同様に考えては、どのようなモンスターも格下になると思いますが」

「……まぁ、そうかもな」

 

 呟き、ふと気が付いた。もしかして、こいつらを下せば召喚術の契約を結べたんじゃないか? と。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:670
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    異形化

撃墜数:383

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