転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0331話

 直前までこちらに気が付かせずに行われた奇襲、周囲は湖、石の槍。それだけで誰の仕業かは明らかだ。だが、リョウメンスクナノカミを吸収して体調が最悪の今の俺に対抗は……いや、一瞬でも隙を作ればエヴァがなんとかしてくれる筈。ならば。

 

『火よ灯れ!』

 

 槍の飛んできた方へと向かい、初心者用の魔法である『火よ灯れ』を詠唱する。ただし、現状のSP殆どを込めてだ。

 轟っ!

 その炎、小さな太陽とでも表現出来そうな炎の塊により、周囲は一瞬昼間に戻ったかのような明かりに照らされる。

 だが……手応えがない!?

 

「気をつけろ、フェイトがまだどこかに潜んでいるぞ!」

 

 既に碌に身体を動かすことも出来ない俺に出来るのは、周囲へとそう叫んで注意を促す事だけだった。

 神楽坂は俺の言葉に咄嗟にこちらと距離を取り、床へと倒れている俺を庇うかのようにあやかが覆い被さっている。他の皆は周囲を警戒しているが……

 

「ネギッ!」

 

 それに一番最初に気が付いたのは、意外な事に神楽坂だった。長瀬の側で周囲を警戒しているネギの近くの水面からフェイトの上半身が現れ、同時に煙のような物が周囲を覆ったのだ。あの不自然な様子からして、恐らく何らかの魔法なのだろう。すぐ目の前に現れたそれを咄嗟にどうにか出来る筈も無く……

 

「……へぇ、お姫様をさらった時にも感じたけど、やっぱり魔法無効化能力か」

 

 なんと、神楽坂がネギを庇うようにして抱きしめ、その煙に自らの身を晒したのだ。だが、その特殊スキルである魔法無効化能力により石化されたのは服だけで、身体に関しては特に被害は無いようだった。

 いつもの鉄面皮を消し去り、驚いたような表情を作るフェイト。しかしそれは奴にしては珍しい程のミスだった。何せここには600年を生きる真祖の吸血鬼であるエヴァがいるのだ。そんな隙を見逃す筈もない。

 瞬動でその背後に移動すると、フェイトの腹へと魔力の籠もった爪を突き立てる。

 

「ごっ! ……なるほど、相手が君ではしょうがない。今日の所は退かせて貰おうかな」

 

 そう言って、再び水と化して消えさるフェイト。その様子を見ながら、俺は最悪の体調の状態に加え、SPを大量に消費して『火よ灯れ』を使った為にそのまま意識が闇に沈む……前に、何とか石化した朝倉達を空間倉庫から出してから今度こそ本当に意識を失ったのだった。

 

 

 

 

「……ん?」

 

 ふと、目が覚める。半ば寝ぼけたまま上半身を起こし……そしてここが自分の部屋でないと理解する。

 視界に入ってきたのは畳、襖、そして俺が寝ている布団と和風の部屋だ。俺の部屋はベッドだった……って、違う!?

 ようやく頭がはっきりとしてきて、周囲を見回すが誰もいない。どうやらこの部屋には俺1人で眠らされていたらしい。

 

「関西呪術協会の本山、か?」

 

 そう、確かあの時俺はリョウメンスクナノカミを吸収して、いつものように……いや、それ以上の体調不良に襲われた。そしてフェイトが……

 

「アクセル君、起きてる?」

 

 そんな風に思いだしていると、突然声を掛けられる。一瞬警戒しようとしたが、すぐにその声が誰のものだったかを思い出して口を開く。

 

「ああ。入っていいぞ」

「お邪魔しまーす」

「あ、起きてる起きてる」

 

 そこにいたのは、円と美砂。俺が仮契約を結んだ相手だった。

 

「無事だったか?」

 

 俺のその言葉に円が、がーっとばかりにこちらへと迫ってくる。

 

「それはこっちの台詞だよ。全く、鬼や月詠とかいうのを追っ払って皆でアクセル君達の所に行ってみたら、アクセル君は気を失ってるしネギ君は身体が石化してるし……全く、どうなる……か…と」

 

 俺と話しているうちに、その時の様子を思い出したのか円の瞳からポロリと涙がこぼれ落ちる。

 

「本当に、折角自分の気持ちが分かったのに……アクセル君が死ぬかと本気で思ったんだからぁっ!」

 

 円が俺に抱きつきながらしゃくりをあげている。

 

「悪かったな、ほら、俺は大丈夫だから」

 

 5分程その背を優しく撫でていると、ようやく落ち着いたのか照れ笑いを浮かべながら俺から離れる円。

 

「あのねぇ。2人だけでいい雰囲気の所を悪いんだけど、私を忘れないで欲しいなーって。私だってアクセル君を心配してたんだけどなぁ」

 

 美砂が拗ねたように呟いたので、思わず苦笑してその肩を軽く叩いてやる。

 

「美砂も、悪かったな。俺はもう平気だ」

 

 自分でも不思議なくらい身体の調子は絶好調なのだ。

 

「それで、ネギが石化?」

「え? あ、うん。何かアスナが敵の攻撃から身を挺して守ったらしいんだけど、それでも完全じゃなかったらしくて……」

 

 その言葉に思い出す。確かに俺の魔法で消滅したと思ったら、次にはネギの近くに出現して何かの魔法を使っていた。恐らくあの時だろう。

 

「……で、ネギは?」

「その、このかが仮契約をして何とかなったみたいだよ」

 

 仮契約、か。まぁ、この場合はしょうがないだろう。あの場にいた中で石化を解除できるような魔法使いはいなかったのだから。魔法使いとして桁外れの実力を持っているエヴァにしても吸血鬼という種族特性上回復魔法は苦手らしいし。……いや、待て。

 

「別にその場で仮契約をしなくても、ここの術者が戻ってきてから石化を解除すれば良かったんじゃないのか?」

 

 俺の言葉に2人共が首を振る。

 

「ネギ君は魔法耐性? とかいうのが無闇に高いらしくて石化する速度が遅かったんだって。それで首が石化したら呼吸が出来なくなって死ぬって事だったらしくて」

「なるほど。ネギの才能が仇になった感じか」

「で、仮契約のおかげでネギ君の石化は解除されて私達に被害は無かったけど……」

「けど?」

 

 聞き返すと口籠もる円。変わって美砂が口を開く。

 

「その、刹那さんの翼があったでしょ? 何か烏族とかいう種族とのハーフらしいんだけど……その翼を見せるのは一族の掟に反するとかで私達の前から姿を消そうとしてたのよ。まぁ、ネギ君とこのかが説得して事なきを得たけどね」

「それなら一件落着……なのか?」

「まぁ、そんな感じ。石になってた人達もここの人が戻ってきて朝倉達も含めて元に戻してくれたし。それと今回の首謀者の天ヶ崎って人と、ついでにアクセル君やネギ君と同い年くらいの子供は捕まえたらしいよ。それ以外は逃がしたようだけど」

 

 取りあえずはなんとか無事収まった、か。……そうなると残るのはこの2人の処遇か。

 円と美砂の2人から少し離れ、改めて2人へと視線を向けて口を開く。

 

「円、美砂。お前達2人は魔法という裏の世界の事を知ってしまった。俺が提示出来る選択肢は2つだ。1つ、魔法に関しての記憶を消されて元の生活に戻る。2つ、自らの意志で魔法へと踏み込む。……ただし、今回お前達も経験したように魔法に関して踏み込むとなると少なからず裏の世界と関わらないといけないだろう。好むと好まざると、な。特に俺は麻帆良ではイレギュラーな存在だし、魔法関係者の間でナマハゲ的な扱いのエヴァとの交流もある。それにネギもネギで問題を抱えている」

 

 俺の説明を聞いていた2人だったが、顔を合わせてお互いの意志を確認すると小さく頷き、こちらへと顔を向ける。

 

「そんなの決まってるじゃない。魔法に踏み込む、よ」

「円の言う通りね。それに記憶を失うとなると、色々と大事な思い出も消えちゃいそうだし……ね」

 

 と、流し目で俺の方を見てくる美砂。

 

「ちょっと、美砂。あんたも……」

「失礼します、何やら旅館の方で騒ぎになっていると連絡が来てるのですが」

 

 円の声を遮るようにして茶々丸が声を掛けてくる。詳しい話を聞くとなにやら詠春の用意した式神が色々と暴走しているらしい。

 その後は特に詳しい話をする暇もなく、詠春の部下が運転するバスに乗って旅館へと戻るのだった。

 

 ……ちなみに、式神は何故か俺を中心にしたハーレムを形成していた。当然俺に関係のあるメンバーだけじゃなく、神楽坂、近衛、桜咲、朝倉といったメンバーもだ。ただ、その中でもネギと宮崎の式神はイチャイチャとして周囲から生徒と教師の禁断の愛!? とか騒がれていたとか何とか。まぁ、何とか誤魔化せたんだが。

 

 

 

 

 

 旅館に戻って数時間。俺は自分の部屋……では無く、あやか達1班の部屋で休憩していた。いや、俺自身は関西呪術協会の本山で目を覚ましてからはすこぶる絶好調なのだが、それ以外のメンバーはあの戦いを潜り抜けた疲れが抜けていなかったのだ。一応あっちで数時間の睡眠は取っているらしいんだが、さすがにそれでは足りなかったらしい。

 ネギも俺と同じく今頃は3班の部屋で休んでいるだろう。

 ちなみに1班の中で唯一昨日の騒ぎに巻き込まれなかった夏美は、2班の運動部連中と一緒に遊びに出掛けている。俺達の様子も気になるようだったが、折角の修学旅行をこっちの事情に付き合わせるのも悪いので千鶴に半ば無理矢理送り出して貰った。

 

「疲れましたわね……」

「そうねぇ。修学旅行の筈が魔法のトラブルで、おまけに全く関係の無い釘宮さんや柿崎さんまで巻き込んで」

 

 そんな千鶴の言葉に2人が苦笑を浮かべる。

 

「別に気にしなくていいよ。巻き込まれたのは確かだけど……アクセル君に、そして魔法に踏み込むと決めたのは私自身なんだから」

「そうそう、円の言う通り。それにいいんちょや那波さんに負けていられないし……ね!」

 

 そう言い、俺に抱きついてくる柿崎。

 

「ちょっ、柿崎さん!? 何をしてるんですの!」

「何って……ナニ?」

「柿崎さん! 貴方ねぇっ!」

「あらあら」

 

 そんな風に結局いつものように騒ぎ、それが日常に戻ってきたと感じていると突然襖がガラリと開かれる。

 

「お前達、詠春の馬鹿がナギについて話があるらしい。関西呪術協会の本山へ行くぞ!」

「えー、エヴァちゃん横暴だよ。旅館に戻ってきてからまだ数時間しか経っていないのに」

「黙れ。ここでダラダラとしているよりは余程いいだろう。そもそも、柿崎美砂。貴様と釘宮円はこちらの世界に踏み込むことを選択したのだろう? なら私の言う事は聞いておいた方がいいぞ」

「……何で?」

 

 エヴァの言葉に不思議そうな顔をする円と美砂。その2人に苦笑しながら口を開く。

 

「何しろ俺はネギと違って魔法学校を出た訳でもないから、魔法とかのアドバイスはエヴァに任せきりなんだよ。魔法の練習にしてもエヴァの持ってる魔法のアイテムを使わせて貰ってるし」

「うー……分かったわよ。それで、私達だけ? ネギ君やアスナ達は?」

「もちろん全員だ。そもそもナギに関する事なんだから、ぼーやを連れていくのは当然だろう」

 

 そう言って、俺達を引き連れて3班の部屋へと向かうエヴァ。向こうの部屋でも勘弁してくれという悲鳴が響いたが、結局はエヴァに引き連れられて関西呪術協会の本山へと向かうのだった。ちなみに、昨日巻き込まれた綾瀬はともかく魔法を知らない早乙女も一緒なのだが……まぁ、その辺はネギの問題としておく。

 

 

 

 

 

「やあ、皆さん。よく休めましたか?」

「長さん、よろしくお願いします」

 

 軽く挨拶を交わし、待ち合わせをしていた場所から道を奥へと進む。

 

「そう言えば、長さん。小太郎君はどうなりましたか?」

 

 ネギに問われた詠春が、一瞬こちらへと視線を向けてから口を開く。

 

「一応こちらで保護しております」

「保護?」

「ええ、その……余程怖い目にあったらしくて」

 

 その話を聞いていた神楽坂がこちらへとジト目を向けてくる。

 

「アクセル、あんたちょっとやり過ぎたんじゃないの?」

「え? アクセル君が小太郎君と戦ったんですか?」

「いや、あれは戦ったなんてレベルじゃないわよ。一方的な蹂躙ね。『お前は少し恐怖を知れ』とかあからさまに悪役だし」

「アクセル君……」

「……」

 

 神楽坂と同じくジト目でこちらを見ているネギに、俺は無言で目を逸らすだけだった。

 そんな俺の横でニヤリと邪悪な笑みを浮かべたエヴァが口を開く。

 

「スクナはどうした? 再封印したのだろう?」

「ええ、それが……再封印するにはしたのですが……妙に弱体化しているようでして。エヴァ、何かしましたか?」

「さて、な。もしかしたらどこかの誰かがスクナを喰い尽くしたのかもしれんぞ?」

 

 エヴァの台詞だけで大体何が起こったのか分かったのだろう。神楽坂とネギ以外もこちらへとジト目を向けてくる。そうしていないのは、少し先を進んでいる早乙女、宮崎、綾瀬の3人のみ。

 俺はもちろん無言で目を逸らし続ける。

 そんな針のむしろの状態も天文台のような建物が見えてくるまでだった。

 

「わぁっ、あれが父さんの……」

 

 まずはネギが走り出し、それに3班の皆が続いていく。それを他の面々はゆっくりと追いかけていく。

 建物の中は本がぎっしりと詰まっており、どこかモダンな雰囲気を感じさせる。他の面々は珍しがって建物の中を探検していたりしていたが、その時、ふと俺の隣にいた千鶴が首を傾げる。

 

「あら?」

「どうした?」

「いえ、この地図ですが……」

 

 千鶴の視線の先にあるのは一枚の地図だった。ただし俺にとっても見覚えのない地図でどこのものなのかははっきりとしない。

 

「……どこの地図だ?」

「これ、恐らく火星の地図よ」

「火星?」

「ええ、ほら、地球儀ってあるでしょ? あれと同じで火星儀っていうのもあるんだけど、それで見た事があるもの」

「火星の地図、ねぇ……なんだって魔法使いがそんな物を」

 

 首を傾げていると、いつの間にか周囲が静かになっているのに気が付く。良く見ると詠春を中心にネギに関わりのある面々が集まっているのが見える。エヴァと茶々丸もだが。

 興味を惹かれたのでそちらへと向かうと1枚の写真を前に詠春の紅き翼時代の昔話をしていたらしい。それをなんとなく聞き、その後は朝倉に写真を撮って貰うのだった。

 ……ちなみに、1班は夏美がいないという関係上旅館に戻ってから改めて写真を撮って貰った。こうしてその日の夜はさすがにこれ以上の騒ぎは無く翌日には麻帆良へと帰り、色々と厄介ごとのあった修学旅行も終わりを告げたのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    鬼神化

撃墜数:376

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