転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0326話

「こっちです。私についてきて下さい!」

 

 桜咲のその言葉に、俺達は素直に後を追う。

 ちなみに、本来なら桜咲と同等の速度で走るなんて真似はここにいる面子だと俺と神楽坂以外にはまず無理なのだが、幸か不幸か残り4人は全員俺と仮契約している。そしてパクティオーカードには従者に対する魔力供給という機能があるので、それを使えば皆が魔力供給による身体能力強化で桜咲の速度についていける訳だ。

 もっとも、魔力供給という名称通り魔力を供給している限りは俺の魔力、即ちSPも常時消費されている。しかし俺にはSPブーストというチートスキルがある為に消費分とSPブーストに含まれているSP回復の効果が拮抗しているのだ。SPの減り具合と回復具合を見る限りでは恐らく後1~2人程従者がいてもSP消費無しで魔力供給が出来るだろう。

 ……ただし、当然魔力供給以外に魔力を使う行為。即ち、魔法やら瞬動やらを使ったりすれば消費量が回復量を上回るので従者全員に常時魔力供給をしながらの戦闘をする場合は魔法の無駄撃ちは出来なくなる。いや、ネギみたいに要所要所で数秒の魔力供給をやるというのも有りと言えば有りなんだが。

 

「本当に、魔力供給って、凄い、わね」

「うん、まるで、自分の身体じゃ、ないみたい」

 

 円と美砂が走りながらしている会話が聞こえて来る。

 元々チアリーディングという、その辺の運動よりも余程ハードなトレーニングをしてきた2人だけに魔力供給の効果もあってまだまだ余裕があるらしい。

 ……いや、それを言うなら魔力供給も無しにそんな俺達と併走している神楽坂の身体能力はどうなんだって話だが。

 毎日走って新聞配達をやっている効果か?

 そんな風に考えていると、先頭を走っている桜咲が素早く叫ぶ。

 

「見えました! 奴等です!」

 

 桜咲の視線の先には川があり、その中程にある大きな岩の上に目標である天ヶ崎千草、フェイトの強硬派2人に、気を失っているネギと口にガムテープを貼られて手足を縛られている近衛の姿があった。他にも天ヶ崎が召喚したのだろうサル型のファンシーな式神の姿も見える。

 だが、月詠とネギが昼間戦った小太郎とかいう奴の姿はどこにもないな。伏兵としてどこかに潜んでいるとかか?

 周囲を警戒している俺を他所に、桜咲は川の中へと突っ込んでいく。

 

「待て! お嬢様とネギ先生を返して貰うぞ!」

 

 既に目標である近衛に、その予備として使えるネギを手に入れたという余裕もあるのだろう。面倒臭そうにこちらへと視線を向ける天ヶ崎。

 

「なんや、またあんたらか。懲りんなぁ」

「天ヶ崎千草、明日には方々に散っていた腕利きの術者達が戻って来る。無駄な抵抗はやめて投降しろ!」

 

 腕利きの術者が戻ってくる? 桜咲の言葉が本当なら、今日関西呪術協会の本山にいたのは一線級の人材では無かったという事か。あっさりとフェイトにやられすぎかと思っていたらそういう裏があった訳だ。

 だが、追い詰められている筈の天ヶ崎は嘲笑の笑みを口元に浮かべる。

 

「応援がなんぼのもんや。あの場所に辿り着けさえすればそんな応援なんぞ十把一絡げにしたるわ」

「あの場所?」

「ああ、そう言えばあんさんもおったんやな。新幹線で初めて会った時にはどないな腕利きかと思うたけど、過大評価やったようやな。まぁ、いいやろ。丁度いいと言えば丁度いい。あんさんらにもお嬢様の力の一端……いや、お嬢様は後で使うんやったな。なら、こっちの予備を使わせて貰おか」

 

 どこかから取り出した呪符をネギの胸元へと貼り付け呪文を唱える。すると次の瞬間には周囲に召喚陣のようなものが大量に展開され、鬼や妖怪といった存在が無数に現れる。正確な数は分からないが、最低でも300体程度はいるだろう。

 

「ちょっとちょっとちょっと、こんなのありなの!?」

「くそっ、ネギの兄貴の魔力を使って手当たり次第に召喚しやがったな」

 

 自らのアーティファクトである巨大ハリセンを構えながらも敵の数にパニクる神楽坂と、悔しげに呟くカモ。俺の従者達に関しては千鶴を中心にして集まっており、いつでも守護領域を展開出来るように準備を整えている。

 

「あんたらにはその鬼達と遊んでて貰おか」

 

 意地の悪い笑みを浮かべながら鬼を見渡す天ヶ崎。

 

「ええか、そいつらを倒したら好きにして構わん。嬲るもよし、食ってもよし」

『おおおおおおおおおおお!』

 

 天ヶ崎のその言葉に、歓声を上げる鬼達。

 

「ちょっ、食べるって何!?」

「あん? そんなん言葉通りに決まっとるやん。よく考えてや? ここいるのは鬼や妖怪やし、食人の習慣を持ってても特におかしくはないやろ。……ほな、私らはこの辺で」

 

 猿の式神に口を塞がれてうーうーと唸っている近衛と、気絶したままのネギを持たせて空へと浮かび上がる天ヶ崎。フェイトもその後を追おうとするが、チラリとこちらへと視線を向けてくる。

 

「君には色々と貸しがあるからね、この程度の事でやられないでくれよ」

「……言ってろ。すぐに追いついてやるから、その首を洗って待っているんだな」

「ふふっ、それでこそアクセル・アルマーだ。では、ね」

 

 捨て台詞を残し、フェイトもまた天ヶ崎の後を追って空を飛んでいった。

 そしてこの場に残っているのは俺達と優に300体を越える鬼達のみ。

 鬼達は俺達を食ってもいいと天ヶ崎が許可を与えた事もあり、士気が天井知らずに上がっている。

 確かに普通の魔法使いなんかでは300体もの鬼や妖怪を相手取るなんて真似は出来ないだろう。それは魔法使いとしてはまだまだ未熟な俺でも同じ事だ。

 

「だが……」

 

 そう。だがしかし。魔法使いでない俺ならこの程度の数を相手にするのはそう難しくはないのだ。そもそも俺は世界に反逆し、その全てを敵に回して戦ったシャドウミラーを率いる者だ。その俺がこの程度の奴等相手をどうにも出来ないなんて事はない。

 既に近右衛門から俺が使える全ての技術やスキルを使用してもいいとの許可も取ってある。

 唯一の問題は時間を掛けすぎるとフェイトや天ヶ崎達に追いつけなくなる可能性か。

 

「ちょ、アクセル!? どうするのよこの数!」

 

 額に冷や汗を滲ませている神楽坂が、目の前の相手を見ながらも平然としている俺へとそう尋ねてくる。

 それに言葉を返したのは、俺ではなく油断せずに鋭い目つきで敵を見据えている桜咲だった。

 

「私達の事情に巻き込んでしまい、申し訳ありません。かくなる上は私がなんとか突破口を開くので、皆さんはそこから脱出を」

「刹那さん、余り馬鹿言わないで。幾ら何でもこんな所に刹那さん1人を残してなんていけないわよ。脱出するなら全員で、よ。それにこのかを助ける為にもこんな所でこいつらにやられる訳にもいかないでしょ」

「アスナさん……」

 

 最初の弱音はどこにいったのか、桜咲を励ますように神楽坂がそう言う。

 と言うか、つい数時間前まではお互いを名字で呼んでいたというのにいつのまに名前で呼び合うようになっているんだ?

 

「兄貴、兄貴」

 

 そんな風に思っていると、神楽坂の肩の上にいたカモが声を掛けてくる。

 

「どうした?」

「ここはあれっすよ。桜咲の姐さんとぶちゅーっと仮契約を! そうすれば戦力的には今よりマシになるんじゃないかと思うんすが、どうです?」

「え? わ、私がア、アクセルさんとキスですか!?」

「ちょっ、このエロガモ。いきなり何を言い出すのよ!」

「そうですわ! 乙女の唇を安売りさせるのは許しませんわよ!」

 

 仮契約、という言葉を出した瞬間にいつの間にかあやかが出していたアーティファクト、鮮血の鞭がカモへと巻き付いてあやかの手元へと引き寄せられる。

 

「ひぃっ! け、けどこのままじゃ不利すぎるし……」

 

 まぁ、カモの言い分も分からないではない。戦力が増える要素があるというのなら検討してみるべきだろう。だが。

 

「桜咲、お前の戦闘は基本的には気を主体にしたものだな?」

「え? はい、そうです」

「なら俺と仮契約を結んでも余り意味はないな」

「アクセルの兄貴?」

「以前エヴァに聞いたんだが、基本的に気と魔力というのは相反する性質を持つらしい。つまり俺が仮契約して桜咲に魔力供給をしても意味がないんだ。もしするなら気を供給しないといけないんだが、あいにくと俺は気は使えないしな」

 

 もっとも、世の中には気と魔力の両方を同時に行使するという超高難易度の技能もあるらしいが……この世界に来てからまだそれ程経っていない俺に使いこなせる筈も無いし、桜咲の様子を見るにこちらも無理だろう。

 

「……そうっすかぁ。いい考えだと思ったんだけどなぁ」

 

 カモが残念そうに呟いている間に、鬼がこちらの包囲を完了しようとしていた。

 

「なんやなんや。久しぶりに呼び出されたと思ったらガキばっかやないか」

「そう言うな。幸いガキは肉が軟らかくて臭みも少ない。……まぁ、この人数で食うなら量がちぃと足らんけどな」

「それに嬲るにしてもまだまだガキやしのぉ……いや、何人かいい具合のはいるが」

 

 食欲と性欲の2つが合わさった獣欲とでも呼ぶべき視線が俺達を撫でる。

 その視線にさらされた俺や桜咲といったそれなりに実戦を積んだ者以外は、多少なりとも恐怖心が湧き上がったのか微かに視線が揺れており、それは普段は勝ち気なあやかや神楽坂も同様だった。

 ……ただ、その中で1人。千鶴のみが鬼や妖怪達の視線を気丈にも真っ向から受け止めている。

 さすがと言うか何と言うか。一見すると天然風の優しそうな女にしか見えない千鶴だが、その芯の強さは折り紙付きだ。その様子に心強いものを感じながら口を開く。

 

「千鶴、守護領域を最大範囲で展開」

「はい。私を中心に半径5mに領域を指定。赤の石よ、その力を示せ」

 

 千鶴を中心として赤の領域がドーム状に広がり、俺、桜咲、神楽坂以外の全員を包み込む。

 

「あやか、お前は遠距離からの援護だ。近接戦闘は避けるように」

「ええ、わかりましたわ」

 

 パシーンッと鮮血の鞭を地面へと叩き付けながら頷く。

 

「円、美砂。お前達は千鶴の側から決して離れるな」

「うん」

「分かった。……無事でね」

 

 俺の言葉に頷き、守護領域内の中で千鶴の側でこちらを見る2人。その瞳には信頼と心配が混ざった複雑な色が浮かんでいる。……ここまで巻き込む気はなかったんだがな。

 

「カモ、お前は戦場全体の確認だ。妙な所を見つけたらすぐに知らせろ」

「へいっ!」

 

 あやかの鞭から解放され、千鶴の頭の上で頷くカモ。

 

「神楽坂、お前は千鶴やあやか達の護衛だ。確かそのハリセンは魔法無効化能力があるんだったな? なら恐らくあの鬼達はそのハリセンに触れただけで還される筈だ」

「え? そうなの? うん、分かった。皆は私が守ってみせるわ」

 

 ハリセンを手に、千鶴達の方へと向かう神楽坂。……還るとなると、恐らくこいつらを殺す事は出来無いだろう。つまりはPPや撃墜数を稼げないという事だ。基本的に俺の撃墜数やPPといったものは相手の命を奪って初めて増えるのだから。

 そして俺は視線を最後の1人、桜咲へと向ける。

 

「桜咲、お前は俺と一緒に鬼退治だ」

「はい」

「ただし、俺の戦い方は対多数用のものが基本となっている。迂闊に巻き込まれないようになるべく俺から離れて戦ってくれ」

「分かりました」

 

 これが俺の戦闘をよく知ってる相手であるレモン、コーネリア、ムウ、キラといった連中ならこちらの戦闘時の呼吸に合わせる事も可能だろう。だが、あいにく俺と桜咲はまだ数度の戦いしか共にした事はない。巻き込まないようにするのなら離れて戦闘をするのが無難だろう。

 ……まぁ、確実にというのなら桜咲もあやか達の護衛に回ってもらえばいいんだろうが、今はとにかく時間が無い。使える戦力を遊ばせておく余裕はないのだ。

 

「作戦会議は終わったか?」

 

 目の前にいる鬼が巨大な金棒を肩にそう尋ねてくる。そう、奴等としてはこれから起こるのは戦いではなく一方的な蹂躙であると考えているのだ。だからこそ、遊びの要素だとでもいうようにわざわざ俺が全員へと指示を出し終えるのを待っていた。

 ……だが、その勘違いを正してやろう。確かにこれから起こるのは一方的な蹂躙であるのは間違い無い。だが、蹂躙されるのがこちらだと……誰が決めた?




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    ???

撃墜数:376

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