転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0321話

 決闘の現場まで後少し。そこまで近づいた時に、ふと見覚えのある顔が2つ程空中に浮かんでいるのを見つける。

 

「ネギに……カモ?」

「え? ネギ先生ですか?」

「アクセル君、刹那さん。良かった、無事でしたか」

 

 そう声を掛けて来たネギ。その大きさは何故かカモと同程度にまで縮んでおり、同時に空を飛んでいたりした。

 俺と桜咲は他の魔法を知らない面々に見えない位置にSD化したネギを庇いつつ話を続ける。

 

「いきなり式神が消えたから、どうなったかと思ったんすけど……2人とも無事で良かったっすね、ネギの兄貴」

 

 カモのその言葉を聞いて、事の次第を理解する。それまでネギ達と一緒に行動をしていた式神が突然動かなくなったかどうかしたので、心配になってこっちの様子を探りに来たのだろう。

 

「なるほど、奴等に追われてネギに付けていた式神まで気を回せなくなったか」

「らしいですね。で、僕が式神のちび刹那の紙型を使って気の跡を追ってここに来た訳です」

 

 何気なく言っているネギだが、やってるのは相当にレベルが高い。と言うか、関西呪術協会の存在すら知らなかったネギだから当然陰陽術についても同様だろう。それをこの短時間で多少なりとも使っているというのだから、さすがに次世代の英雄と期待されているだけの事はある。ネギとそんな風に話していると、決闘の場所として指定されていた日本大橋へと到着する。

 

「ふふふ、大勢連れてきてくれておおきに」

「やあ、待ってたよアクセル・アルマー」

 

 橋の上でこちらを待ち受けるようにして立っている月詠とフェイト。その2人の視線が俺と桜咲を鋭く貫く。

 

「ほな、行きますえ? センパイもお嬢様も……ウチのものにさせてもらいます」

 

 穏やかな狂気、とでも表現すべき雰囲気を撒き散らしながらゆっくりとこちらへと歩み出す。

 

「せっちゃん、あの人なんか怖い。……気をつけて」

「安心して下さい、お嬢様。何があっても、例え誰が敵対したとしても、私が必ずお嬢様を守ってみせます」

「せっちゃん……」

 

 桜咲の言葉に嬉しそうな笑みを浮かべる近衛。

 

「うわ、まさに禁断の愛ね。これはチアリーダー部としては応援しなくちゃ」

「ちょっと、美砂。少しは空気を読んでよね」

「そう、これこそが百合の香り漂う禁断のラヴ臭! くぅーっ! 燃えてきたぁっ!」

「ハルナ、貴方も少しは空気を読むですよ」

 

 そんなテンションを上げている面々とは裏腹に、目の前にいる2人がどんな存在か薄々気が付いているあやか、千鶴、朝倉の3人はどこか不安そうにこちらを見ている。

 

「月詠、この人達は……」

「はい、センパイの言いたい事は分かってます。なので、そこの有象無象の輩にはこの子達に相手をして貰います。ひゃっきやこぉー」

 

 どこからか取り出した呪符を盛大に撒き散らしながらそう告げる月詠。すると次の瞬間にはその呪符からSD化された妖怪達が召喚される。……なるほど、SD化と言うか、可愛い感じのこいつらならCGなりSFXなりで誤魔化せるのだろう。多少予想外だが、おかげで俺も陰陽師の振りをする事が出来るな。

 

「っと!」

 

 そんな一見可愛らしい妖怪を目で追っていたのが悪かったのだろう。ふと気が付くと俺のすぐ横までフェイトが移動しており、その拳をこちらへと突き出そうとしている所だった。

 その拳の一撃を身体を半回転させる事で回避し、その勢いを付けたままフェイトの顔面へと肘の一撃を叩き込む!

 だが、その一撃はフェイトの掌でやんわりと受け止められ、その力を微妙にずらして肘の一撃を受け流す。

 

「砕いた肘がもう治ってるとはな」

「まぁ、あの程度なら回復魔法があればどうとでもなるさ」

 

 お互いに超至近距離、零距離とでも言うべき位置で会話をする。幸い小声での会話なので周囲には聞こえていないだろう。

 

「全く、本来なら僕の出番はもう少し先だったのにね。君のようなイレギュラーがいるというのはとんだ計算違いだよ」

「ふん。計算違いだからこそイレギュラーと言うんだろうに……なっ!」

 

 密着している零距離からのフェイトの腹を狙った膝蹴り……と見せかけつつ、左手でフェイトの首を……ちぃっ!

 

「一昨日の戦闘で君の馬鹿げた身体能力は既に見ているし、なにより君のその握力は実際に味わっているんだ。そうそう同じ手を食らう程に僕も間抜けじゃない」

 

 ふわり、と後方へと跳躍しこちらと距離を取るフェイト。

 チラリと周囲を確認すると、桜咲は月詠とほぼ互角にやりあっているのが見える。また、月詠の呼び出した大量のSD妖怪達は円の足下を走ってそれを踏みそうになってバランスを崩したり、拳大の丸い妖怪が夏美の頭の上や肩の上に乗っかっていたり、あるいは早乙女のスカートを捲ったりと好き放題に動き回っていた。

 ……まぁ、色々と言いたい事はあるが一般人に対して危害を加えようとは考えていないらしいので一安心といった所か。

 周囲の観客も、これが完全に劇だと認識しているのか歓声を上げて応援している。

 

「さて、次だ」

 

 フェイトの方を見ながら、小物として受け取った呪符を取り出す。

 

「……そんな物を取り出してどうするのかな?」

「それは見てのお楽しみってな」

 

 とは言った物の、陰陽術の呪文ってどんなのがあったか……まぁ、それっぽければいいだろう。どうせ本当に陰陽術を使う訳じゃないんだし。

 

『急急如律令 5の影槍!』

 

 呪符を構えてそれっぽい呪文を適当に唱え、それに混ぜて始動キーを省略して操影術の魔法を唱える。すると次の瞬間には俺の影が5本の槍と化してフェイトへと襲い掛かっていく。

 

「へぇ、面白い方法を使うね。それに操影術とはまたマイナーな魔法を。てっきり君は戦士だとばかり思ってたんだけどちょっと早計だったかな」

 

 相変わらずの無表情で、そう呟きながら影槍を最小限の動きで回避しながらこちらへと近寄ってくる。

 

「確かに面白い魔法だけど、この程度で僕を止められると本気で思ってるんだとしたらちょっと幻滅かな。さて、こっちも魔法には魔法で対抗させてもらうとしようか。あぁ、安心していい。君を見習って派手なものは使わないようにさせてもらうからね。『千刃黒耀剣』」

 

 その魔法を発動させると、いつの間にかフェイトの後ろに黒い短剣が浮いている。その数は5本。先程俺が使った影槍と同じ数だ。

 

「いくよ? 存分に踊るといい」

 

 その声と共に放たれる短剣。それぞれが独自の軌道を描いて俺へと襲い掛かってくる。

 

「ちぃっ!」

 

 咄嗟に瞬動を使ってその場から離れると、次の瞬間には俺がいた空間を2本の短剣が貫いていった。

 それぞれが独自の軌道を描きながら襲い掛かってくる5本の黒い短剣。SEEDの世界でクルーゼ操るプロヴィデンスが装備しているドラグーンと比べてもより厄介な攻撃だ。

 

『2の影槍!』

 

 俺のいた空間を通り過ぎていった短剣へと向かい、操影術の基礎ともいえる影槍で対抗する。だが、自由自在に空を舞う短剣と俺の影から伸びて短剣へと襲い掛かる影。速度で言えばフェイトの魔法の方が多少ではあるが上だった。

 

「アクセルさん、ネギ先生にお嬢様を任せたので今は時間を稼いで下さい!」

 

 月詠と斬り合いをしながら桜咲がそう叫ぶのを耳にする。

 黒の短剣が縦横無尽に空を飛び回る中で素早く周囲へ視線を走らせると、確かにネギと近衛の姿はない。どうにかしてこの場から離脱させたのだろう。なら確かにあの2人が逃げる時間を稼げば……

 そんな風に黒の短剣が踊り狂う中で回避に徹底していると、不意にフェイトの声が聞こえて来る。

 

「ねぇ、アクセル君。時間稼ぎもいいけど……そう簡単にさせると思うかい? 確かに千草さんからなるべく一般人には被害を出さないようにとは言われているし、僕の本意でもない。……でもね、例えば仮契約を結んでいる人は当然こっち側の存在なんだし一般人じゃないよね?」

 

 ゾクリ。

 

 フェイトが仮契約を結んでいる人、という単語を口に出したその時。強烈な悪寒が背筋を走る。

 咄嗟に周囲を素早く見回す。黒の短剣が1、2、3、4……4本だと!? もう1本はどこに……

 その瞬間、俺の目に入ってきたのは月詠の出したSD妖怪に群がれている綾瀬からそれらを取り除いてやっている美砂と、その美砂を狙って空を裂くように飛んでいく黒い短剣の姿だった。

 

「ちぃっ、加速!」

 

 瞬動と加速の同時使用。だが、それでも間に合わない。なら……いけるか? いや、やるしかない。

 

『戦いの歌!』

 

 精神コマンドの加速、この世界特有の技法である瞬動、そして身体強化魔法の戦いの歌。それら3つを多重使用する事により、美砂に襲い掛かる黒い短剣への絶望的なまでの距離を……0にする! そのまま黒の短剣を叩き落とし……いや、駄目だ。このまま弾いたら周囲のメンバーに当たる可能性がある。スライムで吸収? 間に合わない。なら!

 

「うおおおおっ!」

 

 ずさぁっとばかりに美砂の前まで移動し、突然目の前に現れた俺への驚きに声も出ないでいる美砂を守るように立ちはだかる。

 

「え? アクセル君?」

 

 ズンッ!

 

 そんな美砂の声を聞きながらも、黒の短剣は俺の脇腹へとその刀身を沈み込ませた。

 

「ぐぅっ!」

「え? あれ? 何、これ。……血? え? 何で? だってこれはCGとかそういうので……」

 

 俺の脇腹を抉った刀身はその衝撃で数滴の血を背後へと吹き飛ばしていた。そして俺の背後にいるのは当然美砂な訳で……

 熱した焼きごてを当てられたかのような熱さを感じつつも、チラリと後ろを向く。そこには頬についた数滴の血を擦った為だろう、見るからに目を惹くような赤い色が美砂の頬に広がっていた。

 

「大丈夫だったか?」

「え? うん。……じゃなくてっ! これ、血! 早く手当しないと!?」

 

 泣きそうな顔でそう言ってくる美砂だったが、残念ながらフェイトがそんな事をさせてくれないだろう。だが、美砂にとってこれは劇なのだ。だから。

 

「ちょっとした手違いだよ。それにかすり傷だから心配はない」

「嘘っ! だって、ほら、脇腹に刺さってるじゃない!」

 

 ……しまったな。白をメインにした陰陽師の衣装だけに黒の短剣は目立つ。幸い、短剣が刺さったままなので出血量はそれ程ではないし、それにSD妖怪による騒ぎで周囲はこちらの様子に気が付いてはいない。なら何とか誤魔化しきるしかない、か。

 

「大丈夫だ。これは短剣に見えても刃先が引っ込むようになっている手品用の道具だ。当然刃先は潰されているから見た目程に酷い傷じゃない」

 

 泣きそうになっている美砂を安心させるようにポンポンと軽く背を叩き、こちらへと歩み寄ってきているフェイトへと振り向く。

 

「美砂、ここにいたら劇の殺陣に巻き込まれるからちょっと離れててくれるか?」

「……本当に、大丈夫なんだよね?」

「ああ、問題無い」

「分かった。頑張ってね。でも、この劇が終わったらきちんと治療してね」

 

 それだけ言って、周囲で騒いでいた早乙女や綾瀬を連れてこちらから距離を取る美砂。

 チラリと周囲を見ると、さすがにフェイト達の事を知っている面々は誤魔化せなかったらしい。血の気の引いたような顔をしているあやかと千鶴。唇を噛み締めている朝倉の様子が窺える。

 

「へぇ、どうやら仮契約はしてるみたいだけど別に魔法使いって訳じゃないみたいだね。……まぁ、仮契約をしている時点で立派な関係者だけど。それより、その傷は確かに彼女に言ったように深い傷という訳じゃない。でも、だからと言って今まで通りの動きが出来る程に軽い怪我でもないのは分かってるよね? その状態で僕にどう対応するのかな」

 

 そう、実際問題確かにこの脇腹の傷はそれ程深い傷ではない。それこそ適当に縫って数日。いや、俺の身体能力を考えれば恐らく数時間もすれば問題無く動けるだろう。けれども問題なのは、今の時点でそれが出来ないという事なのだ。

 実際、少し動いただけでも灼けるような痛みを感じる。この状態のままフェイトとやり合うのは難しいだろう。だが……

 

「確かにこの状態でお前とやり合うのは難しいだろう。だが、それならこの状態でなくせばいいだけだ」

「……何だって?」

 

 フェイトに対して、ニヤリと笑ってそれを発動する。

 

『闇き夜の型』

 

 その瞬間、俺の身体の表面が闇の魔力に覆われ、両腕に紋章のような物が浮かび上がる。エヴァ直伝の闇の魔法の基礎の基礎。それでも肉体強化魔法の戦士の歌よりも強力な効果を持っている。

 

「それは?」

「さて、な!」

 

 フェイトに答えながら瞬動。闇き夜の型の効力もあって通常時よりも素早い行動を可能にしたその瞬動に、さすがにフェイトとしても驚いたのだろう。ピクリと動くのが精一杯だった。そのまま顔へと目掛けて拳を振り下ろすが……当然と言うか、魔法障壁に防がれる。だが、それは計算通り!

 

「はぁっ!」

 

 そのまま障壁ごと思い切り殴りつける。

 

「ぐぅっ!」

 

 障壁に包まれたまま吹っ飛ぶフェイト。それを見送り、ふと周囲を見回すと桜咲の姿が無い。また、周囲の観客にしても突然雰囲気の変わった俺へと視線を集中させていた。

 そして……

 

「聞いてるか、お嬢様の護衛2人。この鬼がお嬢様達を狙ってるのは見えるやろ? お嬢様の身を案じるんならこっちには手を出さんとき!」

「おい、あれも劇か?」

「うわ、凝ってるなぁ……」

「ちょっと、あれってもしかして木乃香じゃない?」

「……劇、ですか? これが?」

 

 周囲の面々も俺よりも目立つそちらへと視線を向けている。

 そこでは、シネマ村らしく戦国時代の城を模した建物があり、その屋根の上でネギと近衛が千草と鬼に追い詰められている所だった。

 いや、と言うか、何であんな所に追い詰められているんだ? 確か桜咲はネギに近衛を託したみたいに言っていたはずだが……まさか追い詰められてあの城の中に逃げ込んだ? まるで中身の分からない建物の中へ?

 だが、そんな俺の考えも障壁ごと吹き飛ばされたフェイトが現れたことにより強制的に中断される。

 

「なかなかやるね。その術式は初めて見るけど……力のブーストみたいな効果なのかな?」

「さて、どうだろうな。自分で味わってためしてみるんだな」

「ああ。ならそうさせてもらおうか」

 

 フェイトは瞬動を使い、一瞬でこちらの懐へと潜りこんでこちらの鳩尾へと肘を突き入れてくる。それを右手で弾くことで回避し、そのまま左手でお返しとばかりにこちらも鳩尾を拳で狙う。

 お互いが零距離での近接戦闘をこなして数分。それでも俺もフェイトも一撃も貰ってないし、一撃も当てられない状態で戦闘が続いていた。

 そして……

 

「キャーーーーっっっっ!」

 

 周囲の観客達からの悲鳴を聞き、瞬動でフェイトとの距離を取る。向こうもこちらと同じ思惑だったのか同じく瞬動で距離を取っていた。

 周囲の観客の視線を追うと、その先にあるのは先程ネギと近衛が追い詰められていた城の屋根。そこには何故か桜咲の姿があり、その左肩には矢が刺さっており……そのまま屋根から落ちていく。

 

「ちぃっ!」

「いかせ……」

「どけぇっ!」

 

 魔法発動体の腕輪に膨大なSPを注ぎ込み、影槍を1本無詠唱で作り出す。その影槍はフェイトへと襲い掛かり、当然のように魔法障壁へとぶつかるが、桁外れのSPを込めたおかげでそのまま消滅せずに魔法障壁と拮抗していた。

 

「せっちゃーーーーんっっっっ!」

 

 そう叫びながら桜咲の跡を追うように飛び降りる近衛。

 

「くそっ、間に合うか!?」

 

 精神コマンドの加速と瞬動、闇き夜の型でブーストされた今の俺なら……と思ったのだが、次の瞬間には落ちていた2人から膨大な光が満ちてそのまま地面へとゆっくり着地していた。

 ……近衛の魔力が覚醒した、のか?

 

「……やれやれ。今日の所はこれで終わりだってさ。良かったね」

 

 その声を残して、いつの間にかフェイトの姿も消えていた。

 

「何とかなった……か」




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    ???

撃墜数:376

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