転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0320話

 3日目の午前中。俺達1班は予定通りにシネマ村へとやってきていた。

 顔を合わせると頬を赤くしながらも笑みを浮かべる円と、いつもと変わらないように見えてもどこか挙動不審な美砂。そんな2人をジト目で見ているあやかに、自分達は傍観者だとでも言いたげに眺めている千鶴、夏美。そんな状態で始まった自由行動だったが、シネマ村へとやってくるまでの間にぎこちない雰囲気は幾らか和らいでいた。

 

「へぇ、ここがシネマ村か」

「やっぱり留学生のアクセル君はここに来るのは初めてだよね?」

 

 俺の手を握りながら円がそう尋ねてくる。

 

「まあ、初めてなのは間違い無いな」

「ね、ね、そこのお店で着物のレンタル出来るんだって。折角なんだしコスプレしてみない?」

「あ、ちょっと面白そうかも。ちづ姉はどうする?」

「うーん、夏美ちゃんがやるというのなら、私もやろうかしら。あやかもいいわよね?」

「え? ええ。構いませんけど……ちょっと、釘宮さん!? あまりアクセル君にベタベタしないで下さるかしら?」

 

 千鶴の言葉に頷きながらも、俺と手を繋いでる円へとクレームをつけるあやか。

 だが、円は余裕の表情でそれを受け流す。

 

「別にアクセル君が嫌がってる訳じゃないんだし、いいじゃない」

「ムキーッ、大体貴方はアクセル君に対して興味ないとか言ってませんでしたか?」

「別にそんな事は言ってないわよ。その、前から好意は持っていた訳だし」

「おお、円やるね。委員長に対して宣戦布告?」

「柿崎さん! 貴方も貴方です。アクセル君にキ、キキキ、キスだなんてそんな羨ま……ふしだらな真似をして」

 

 ちなみに、どうやら俺の部屋の前にあった防犯カメラは朝倉やカモが仕掛けた物らしく、昨日のラブラブキッス大作戦はクラス中に放映されていたらしい。なので部屋の中で俺とキスをした円はともかく、そのカメラの前でキスをした俺と美砂の映像に関してはクラス中に見られていた訳で……

 つーか、旅館の人に黙ってカメラを仕掛けるとかよくバレなかったなと感心するレベルだ。

 

「ほら、あやか。まずは着替えましょ。アクセル君は男の子だからあっちね。私達はこっち」

 

 ニコニコと笑いながらまだ怒っているあやかを連れて、店へと入っていく千鶴と他の班員達。その後ろ姿を見送ってから俺もまた店へと入っていく。

 

 

 

 

 

「陰陽師ねぇ……」

 

 鏡に映っている俺は狩衣とかいう着物を着た、いかにも陰陽師! といった格好をしていた。……当然、俺の身長を考えた場合は子供用の物なのでどちらかと言えばお子様陰陽師といった感じだが。ついでに小道具の呪符も数枚渡されている。

 陰陽師の格好に仮装してから店の前で待つ事30分程。俺の写真を撮りたいと言ってきた女子大生くらいの女達と話したり、ソフトクリームを奢って貰ったりしているとようやく店の中から仮装を完了した他の面々が出て来た。

 あやかは花魁、夏美は町娘、千鶴は明治時代の貴族のような男物のスーツ姿、円はクノイチ、美砂はお姫様といった具合だ。

 

「へぇ、アクセル君って年上の女の人が好みなんだ」

 

 皆が着替えている間に話し相手になってもらっていた女達に軽く手を振り、近付いてきた俺に円が言った第一声がそれだった。

 

「ほら、円。アクセル君にしてみれば私達だって当然年上のお姉さんなんだから。そういう意味ではアクセル君が年上好きで良かったじゃない」

「あー、いや。突っ込まないぞ」

 

 美砂の言葉で微妙に機嫌を直した円や、他の面々の仮装姿を褒めながらシネマ村を観光して回る。

 仮装した状態で写真を撮って貰ったり、アトラクションの忍者屋敷やお土産、昼食といった感じでシネマ村を満喫していると、ふと目に入ってきた人物達がいた。

 それは他の面々も同じで、円が不思議そうに呟く。

 

「あれって、このかと桜咲さん? でも3班ってシネマ村の予定じゃなかったと思うんだけど」

 

 そう、俺の視線の先にいるのは柿崎のようなお姫様の仮装をしている近衛と、新撰組の仮装をしている桜咲の姿だった。特に桜咲の男装が人気なのか、数人から写真を撮って貰っている。

 まぁ、桜咲は美形なのは間違い無いし、体型に関しても女らしいとは……もとい、スレンダーだ。男装がよく似合うのも分からないではない。

 

「あ、いいんちょ。それに他の皆も。そか、シネマ村に来てたんやったよね」

 

 こちらを発見した近衛が笑顔を浮かべながら桜咲と共に近付いてくる。

 

「アクセルさん……丁度良かった」

 

 こちらへと声を掛ける桜咲はどこか安心したような表情をしている。

 これは、恐らく……

 

「初日の?」

 

 それだけで俺の言いたい事が分かったのだろう。苦い顔で頷く桜咲。

 

「ええ。なのでここに」

 

 魔法に関して全く知らない円、美砂、夏美、近衛がいる為に言葉を濁しながらお互いの情報を交換する。それによると街中で誰かに襲撃されて、それから逃げているうちにこのシネマ村へと辿り着いたらしい。ちなみに他の班員に関しては巻き込まないように置いてきたとの事だ。ただ問題なのは何故か親書を届けに行くと言っていたネギや神楽坂が一緒にいたという点か。色々とあって結局行動を共にしていたらしい。……もっとも、途中でネギ達は3班から離れて関西呪術協会へ向かったという話だが。

 他にもネギ達が消えた後に宮崎も姿が見えなくなる等、色々と厄介な事態に巻き込まれているようだな。

 

「へぇー。アクセル君は陰陽師か。似合おうてるなぁ。一緒に写真撮ってもええかな?」

 

 桜咲と情報を整理していた俺の方へと近衛が近付いてきて、返事を聞く前に引っ張っていく。

 チラリと桜咲の方を見ると、ペコリと頭を下げているのが分かった。

 そんな風に一時の休憩を楽しんでいると、馬の蹄の音らしき物が聞こえて来る。しかも次第にこちらへと近付いて……

 

「あら、あれは馬車かしら」

「……馬車ですわね」

 

 千鶴とあやかの見ている方へと視線を向けると、そこには2頭立ての馬車がこちらへと向かって来ている所だった。そしてその馬車に乗っているのは月詠とフェイトの2人。

 なるほど、そう来たか。

 確か修学旅行前に夏美から借りて読ませて貰ったガイドブックによると、シネマ村では客を巻き込んで芝居が始まったりするらしい。それを利用して近衛を連れてくのが狙いか。

 そんな風に考えていると、馬車が止まり月詠とフェイトが降りてくる。

 

「どうも、神鳴流ですぅ」

「お嬢様の護衛だ」

 

 お嬢様風の仮装をした月詠に、タキシードを着たフェイト。そんな2人だが当然油断なんてものはしてる筈もなく、こちらの隙を探るような視線を向けてくる。

 

「あやや、間違ってもうた。神鳴流ではなく金貸しの貴婦人とでも呼んで下さい。そこの剣士はん、以前からのお約束通りに借金のカタにお嬢様を貰っていきますえ」

「な、何だ? 何をこんな所で……」

「桜咲さん、これはお芝居らしいよ。シネマ村では観光客を巻き込んで突発的なお芝居をするらしいから」

 

 いつの間に追いついていたのか、他の3班のメンバーの姿がそこにはあった。

 桜咲に事情を説明しているのは早乙女に綾瀬の2人だ。朝倉は俺や桜咲の様子を見て大体の事情を察したのか、どこか厳しい顔で月詠とフェイトの2人を見ている。

 

「このかお嬢様は私が守る! 貴様には手を出させん!」

「へぇ、そういう事なら……」

 

 ニコリと、一見邪気のない笑顔を見せながら左手の手袋を外して桜咲へと投げつける。

 これはまた、随分と古風な決闘の申し込みだな。

 

「お嬢様を賭けて決闘と洒落込みましょか。私達が負けたらお嬢様は諦めます。ただし私達が勝ったら……」

 

 ニタリ、と笑った月詠からは狂人とも言える程の殺気が滲み出ていた。

 それを肌で感じ取ったのか、ビクリとする近衛。

 

「そっちの陰陽師君も……分かってるよね?」

 

 フェイトが俺を見ながら相変わらず無表情にそう尋ねてくる。

 

「……だと思ったよ。場所と時間は? まさか今すぐここで始める気か?」

「いややなぁ。そないな無粋な真似をする訳ないやあらへんか。30分後、シネマ村の正門横にある日本大橋で。2人共お待ちしてますので忘れずに来て下さいな。……もし忘れられたらウチ、どうなるか分かりまへんので」

 

 再び殺気を放つ月詠。それを向けられているのは当然桜咲……かと思いきや、どうやら俺も奴の興味の対象になったらしい。

 

「分かった。30分後だな」

「ええ。援軍を連れてきても構いまへんので」

 

 それだけ言い残し、フェイトと共に月詠は馬車で去っていった。

 さて、どうしたものか。月詠と桜咲に関しては武器が刀という関係もあり、このシネマ村でやりあっても周辺の観光客も違和感がないだろう。そしてあのフェイトとかいうのも一昨日の夜にやり合った感じでは近接戦闘の得意な格闘家といった印象だ。それに対して俺は一応軍隊で使う格闘技を修めているとは言っても、PTやAMのようなものが存在しないこの世界で、しかも裏の存在を相手に通用するかと言われればちょっと難しい。スライムやら空間倉庫に入ってる武器を使ってもいいのなら勝てる自信はあるが、周囲の環境がこれではとてもじゃないが不可能だ。

 また、仮契約によるアーティファクトと人前で使えない魔法を戦闘のメインにしているあやかや千鶴も同様だ。俺と仮契約を結んでるとはいえ、魔法に関して何も知らない円や美砂に至っては論外だろう。

 そうなると、やはり不利を承知で近接戦闘をするしかないか?

 

「へぇ、アクセル君は陰陽師なんだ。結構似合ってるじゃん。しかも小道具にお札まであるとか随分とサービスいいのね」

 

 悩んでいる俺にそう声を掛けて来たのは早乙女だった。先程までは桜咲に近衛との禁断のラヴ臭! とか言って騒いでいた筈だが……

 

「ああ。仮装の店でこの陰陽師を勧められてな」

 

 頭の中でどうやってフェイトと戦うかを考えつつ、上の空で早乙女に言葉を返す。

 

「へぇ。なかなかいいじゃない。今度のネタに使わせて貰おうかな。ね、ちょっとお札持ってポーズとってくれない? こう、陰陽術を使うような感じで」

「ん? えーっと、こう……か?」

 

 そこまで言って、まるで天啓が降りてきたかのようにその事実に気が付く。そうだよ、今の俺は陰陽師なんだから、陰陽術を使うような振りをして魔法を使えば演出として誤魔化せるんじゃないのか? 当然派手な魔法を使うのは無理だろうが地味な魔法、特に操影術なんかの影槍は誤魔化しやすいだろう。

 

「早乙女、助かった」

「ん? 何が?」

 

 ふと我に返り早乙女にそう礼を言うと、何故か俺は薔薇の花を手に持った格好で妙なポーズを取らされている所だった。

 

「……おい」

「あ、ゴメン。ちょっと動かないでくれる?」

 

 そういいながら、スケッチブックに何やら素早く描いていく早乙女だった。

 その後、月詠の相手を桜咲、フェイトの相手を俺といった簡単な打ち合わせを桜咲と済ませる。尚、他の面々は何故か付いてくる気満々だったのが多少困りものだが、あくまでもこれを劇の一部として認識しているのだからこちらとしても来るなとは言えない。

 ……せめて、月詠やフェイトが一般人には手を出さない事を祈るしかないだろう。

 そうして大まかにだが作戦を決めた俺達は、少し早めになるが決闘の場所である日本大橋とやらへ向かうのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    ???

撃墜数:376

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