転生とらぶる1   作:青竹(移住)

344 / 3408
0318話

 2日目の奈良観光も終わり、旅館へ戻ってきた俺達。部屋に戻って買ったお土産を適当に整理するとやる事も無くなったので、ジュースでも買うかと自販機へと向かったのだが……

 

「何してるんだ?」

 

 自販機の前でゴロゴロと床を転げ回ったり、うろうろしたりと完全に挙動不審なネギの姿があった。多分宮崎の告白の件だとは思うが、何もこんな人目に付く所で悶えなくてもいいものを。

 

「アクセル君、こんな所でどうしたの?」

 

 ネギをどうするべきか迷っている俺に声を掛けて来たのは佐々木だった。その後ろには椎名、明石の姿もある。

 

「いや、アレをどうした物かと思ってな」

「アレ……? あ、ネギ君……けど、何があったんだろ?」

 

 佐々木の視線の先ではウロウロと落ち着き無く周囲を歩いているネギの姿が。

 

「確かアクセル君の班って、今日はネギ君と一緒だったんだよね? どうしたの?」

 

 確か、佐々木はネギに対してかなり好意を持っていた筈だ。そんなネギが宮崎に告白されたなんて知ったらまず騒ぎになるのは確実だろう。……3-Aだけに。

 なので、取りあえずは誤魔化す方向で話を進める。

 

「さぁ? 旅館に戻ってくるまではまともだったんだが……」

「うーん、分かった。じゃあ私が話しを聞いて来るね」

「ちょっ、まき絵!」

 

 明石のそんな声を背に受けつつ、ネギへと向かっていく佐々木。……ここで躊躇しないのがバカピンクの由縁か。まさかこんなに直球的な行動に出るとは思わなかった。すまん、ネギ。

 

「ねーねー、ネギ君。こんな所で何怪しい動きしてるのー?」

「ま、まき絵さん!? いえ、べつにその、誰も僕に告ったりなんか……あ」

 

 告った。その言葉を聞いた他の面々の行動は素早かった。

 

「え、告った!? 誰が!」

 

 ギャーギャーと騒ぐ3人を目に、そろそろ止めようかと思った次の瞬間。

 

「はいはい、そこまでそこまで。ネギ先生に関しての取材は私を通して貰わないと」

 

 いつの間にか現れた朝倉がネギと佐々木達を分断するように立ちはだかったのだ。

 

「ちょっと、何で朝倉が仕切るのよ」

「ふふーん。私はネギ君とちょーっと仲がいいんだ。そうだよね、ネギ君?」

「え? ええ。確かに朝倉さんには色々とお世話になっています」

 

 色々とお世話。魔法に関して理解して貰えるのだからネギの言葉に嘘は無いだろう。ただし、言い方に含みを持たせすぎだ。そして実際、その言葉に反応したのは当然ながらネギに対して好意を持っている佐々木だった。

 

「ちょっ、どういう事!?」

「どうもこうも、そういう事だよ。ほら、ネギ君。ここは私に任せてくれればいいから、お風呂にでも入って気分転換してきな」

「あ、はい。ありがとうございます。じゃあ、お風呂にでも……あ」

 

 朝倉の言葉に頷き、そこでようやく俺の存在に気が付いたのだろう。どこか決まり悪そうな顔で頬を掻きながらも口を開く。

 

「その、アクセル君。お風呂に行かない?」

「俺は構わないが、いいのか?」

 

 正確には俺と距離を置いていたのに、構わないのか? という問いかけだ。ネギもすぐにそれに気が付いたのか、小さく頷く。

 

「うん、色々と話も聞きたいし」

 

 という訳で、俺はネギと共に風呂へと入る事になったのだった。

 

 

 

 

 

「ふぅ、いい湯だな」

「うん、頭を洗わなくてもいいならお風呂も気持ちいいよね」

「……頭くらい洗えよ……」

「あうー、だって目にしみるんだもん」

「アクセルの兄貴、ネギの兄貴はどうしても一人で頭を洗うのが苦手なんすよ」

「子供か! ……あぁ、子供か」

 

 ネギを見てると確かにこいつはある種の天才なんだろうと思う。それ故にいつの間にか実年齢以上に扱っても当然と思う時もあるのだが……こういう所を見ると、やっぱりまだまだ子供だな。

 そんな風にゆっくりと湯に浸かってから10分程。静寂を破ったのはネギだった。

 

「ねぇ、アクセル君。アクセル君は前に言ってたよね。敵として殺した相手を背負えるのか、って」

 

 それは、茶々丸に対して不意打ちを仕掛けたネギへと言った言葉だ。

 

「ああ」

「じゃあ、アクセル君は……あの、フェイトって人を殺したとしてもそれを背負えるの?」

「まぁ、そうだろうな」

 

 軽い感じに返すと、ネギは信じられないといった表情で俺の方を見る。

 

「何でそう簡単に背負えるなんて言えるの?」

「ネギ、人っていうのは何にでも慣れるものなんだよ。例え人の死だろうとな」

「……慣れる?」

「アクセルの兄貴、あんた一体……」

「ま、お前も薄々気が付いていると思うが、俺は平凡な人生を歩んできた訳じゃない。と言うか、俺以上に非常識な人生を送ってきた奴なんて数える程しかいないだろうさ」

「……」

「そんな俺だからこそ、敵を倒す……いや、敵を殺すというのにはもう何も感じなくなっているんだろうな」

「そんな事ないよ!」

「……ま、とにかくお前の態度はそれはそれで正しい。俺みたいなのが異常なんだろうさ。だからお前が俺に抱く気持ちは間違ってはいない。少なくてもこの平和な世界では、な」

「うわっ、ちょっ、アクセル君!?」

 

 バシャッと風呂のお湯をネギへとかける。

 

「だから気にするなって事だよ。ほら、そろそろ職員用の入浴時間も終わりだ。また昨日みたいなことにはなりたくないだろう? さっさと上がるぞ」

 

 呆然としているネギをその場に残し、さっさと脱衣所へと向かうのだった。

 ったく、何を柄でもなく語ってるのやら。そんな風に内心苦笑しながら。

 だが、それでも……あのフェイトから感じた危機感は生半可なものではなかった。奴を仕留めるチャンスがあれば、次は間違い無く仕留めた方がいいだろう。そしてそれはまだ子供のネギでは無く、俺の役目であるべきなのだ。

 

 

 

 

 

「この旅館の食事はそれなり、といった所か」

 

 夕食を食べ終えてから部屋へと戻り、窓の近くにある椅子へと腰を下ろす。

 それにしても修学旅行に入ってからは毎日が忙しいな。初日は蛙騒動や清水寺の日本酒混入、近衛の誘拐事件。2日目は宮崎の告白。この分では明日は何が待ってるのやら。

 ただ、明日は特に何も起きないで欲しい所だ。何しろ本来なら神楽坂の班と行動を共にする予定だったのが、桜咲に押し切られて本来の予定通りにシネマ村に行く予定なのだから。……自分が近衛を守るから折角の修学旅行を楽しんでくれと千鶴とあやかが桜咲に押し切られたらしい。初日にこちらの戦力を大体把握して2日目を使って戦力を整える。そして今夜再び襲ってくる。……あるいは明日襲ってくる、というのがありそうだからちょっと気が進まないんだがな。

 仕事に私情を挟むのか? とも思うが、明日はそれなりの班がシネマ村に向かうらしくそちらの護衛を兼ねて、とも言われたらしい。まぁ、実際こっちの人質として他の班が狙われる可能性が無いとも言えないので、桜咲の案に乗る事にした訳だが。

 

「全く、若いうちの苦労は買ってでもしろと言っても、苦労しすぎだと思うんだがな。……いや、外見で言えば俺の方が若いのか。とにかく明日に備えて今日はゆっくりと英気を養わせて貰うか」

 

 そう判断し、脳裏に空間倉庫のリストを展開して麻帆良の本屋で買った漫画や小説、あるいはエヴァから借りている魔法書等を適当に取り出す。俺の空間倉庫は容量が無限な訳で、麻帆良で買った本が結構な量入っていたりする。……まぁ、金の関係上無制限にとまではいかないのだが。

 椅子の上で本を読み始めてから暫く時間が経ち……ふと、ソレに気が付く。

 

「何だ? 魔法陣?」

 

 まるで旅館全体を覆うかのように何らかの魔法陣が展開されたのを感じたのだ。

 

「……関西呪術協会? いや、違うな。この感じは陰陽術というよりは仮契約の時のものに良く似ている」

 

 仮契約の魔法陣ではないと判断した理由。それは、俺自身が2回経験した仮契約の時に感じた魔法陣のように俺のSPが共振する感覚が無いからだ。

 となると、恐らくネギか……あるいは、他の魔法を使える生徒が展開した防御用の魔法陣と考えるべきだろう。

 魔法陣を感知した事により集中が途切れる。時計を見ると、既に午後11時を回っていた。どうやら随分と読書に集中していたらしい。

 

「んー……」

 

 背筋を伸ばすと、骨がゴキゴキと鳴るのが分かる。骨を鳴らすのは身体に良くないと何かで見た覚えがあるが……まぁ、いいか。それよりもさすがに4時間近くも本を読んでいただけあって喉の渇きを覚えた。

 

「うーん、やっぱり千鶴の淹れてくれたお茶の方が美味いな」

 

 自分で茶を淹れて飲んでみるが、正直物足りないと言うか、いまいち感がある。

 そんな風にお茶を飲んでいると、コンコンというノックの音が。

 ……誰だ? 確か夜に出歩くのは禁止されてた筈。……いや、3-Aの生徒なら普通に遊びに来るか。昨夜は酒のせいでダウンしていた奴が多い分、余計に騒ぎそうな気がする。

 ただ、一応昨日の今日という事もあり意識をリラックス状態から戦闘状態に戻していつでも反応出来るようにして襖を開けた。そこにいたのは……

 

「や、アクセル君。良かった、まだ寝てなかったんだね」

 

 妙にテンションの高い柿崎と。

 

「……こんばんは」

 

 いつもの凛々しい様子は鳴りを潜めて、どこかしおらしい様子を見せる釘宮だった。

 ……だろうな。まさかフェイトもこんな所で襲ってくるなんて真似はしないだろう。

 

「まぁ、取りあえず入れ。新田に見つかったら怒られるぞ」

 

 襖から離れて……ふとこの部屋の出入り口付近を向いている防犯カメラに気が付く。

 ん? あんな所に監視カメラあったか?

 

「アクセル君?」

 

 柿崎に声を掛けられ、我に返る。

 

「いや、何でも無い。ほら、入ってくれ」

「お邪魔しまーす」

「……」

 

 いつもの柿崎と、どこかいつもと違う釘宮。そんな対照的な2人を部屋の中へと案内し、窓際にある椅子で向かい合わせに座る。

 

「あれ? 何この難しい字。英語じゃないよね?」

 

 柿崎がテーブルの上に置かれている魔法書をペラペラと捲りながらそう呟く。

 しまったな。まさかこの時間に誰かが来るとも思ってなかったから読み終わった魔法書とかをそのままテーブルの上に出しっぱなしだった。さすがにこの2人の目の前で空間倉庫を展開する訳にもいかないので部屋の隅へと纏めておく。

 幸いなのはラテン語で書かれているので柿崎達には読めないって事か。

 

「漫画に、小説、学術書? なんか手当たり次第って感じだね。ユエちゃんとかと話合うんじゃない?」

「どうだろうな。少なくても俺は哲学とかそういうのには興味ないよ。……で、用件は? 釘宮の様子を見る限りだと単純に遊びに来たって訳でも無さそうだし」

 

 俺の言葉に、びくりと反応する釘宮。柿崎はその様子を苦笑しながら眺めつつ、口を開く。

 

「ちょっと円がアクセル君に話があるって言ってね。私はその付き添いみたいなものよ。ほら、円。私はちょっと席を外すから」

 

 まるで励ますかのように、釘宮の肩をポンと叩いて部屋から出て行く柿崎。そうして俺の部屋に残ったのは何故か顔を赤くしながら緊張している釘宮と、そんな釘宮に困惑する俺が残されたのだった。

 

「……」

「……」

 

 柿崎が出て行ってから数分。お互いが黙り込んで部屋の中を静寂が支配する。その沈黙に最初に耐えきれなくなったのは釘宮だった。意を決したように口を開く。

 

「アクセル君、私と初めて会った時の事を覚えてる?」

 

 釘宮と初めて会った時……あぁ、麻帆良に転移してきた翌日だな。エヴァの家に向かう途中で柿崎共々強引なナンパに遭っていたのを助けたんだ。

 ……そう言えば、ネギの歓迎会準備の時にもそのナンパ男達と遭遇したが高畑が追い払ってくれたんだよな。後で聞いた話によると、その後も色々と問題を起こして停学になったらしい。……それとも退学だったか? 

 

「あの時、アクセル君が助けてくれなかったら多分大変な事になってたと思う。それにその後で同じ奴等に絡まれた時も」

 

 話しているうちに、大分落ち着いてきたのかいつものように話を続ける。

 

「他にも一緒に買い物行ったり、牛丼食べに行ったり……そう言えば、スーパーで会ってすき焼きパーティをした時はクラスの皆が集まってきて大変だったっけ」

「ああ、そうだな。あの時は凄い騒ぎになったな」

 

 顔を向け合い、どちらからともなく苦笑を浮かべる。

 

「それに昼休みにご飯を食べる時も那波さんやいいんちょ、村上と一緒に食べるようになって」

「釘宮は殆ど毎日柿崎や椎名にからかわれてたな」

「ふふっ、そうそう。それに那波さんの料理が美味しすぎて負けてたまるかーって、料理の勉強したりもしたなぁ」

「なるほど、最初は出来合いの物が多かったのに最近では弁当が多くなってきたのはそれが理由か」

「そうよ。……まぁ、もっともまだまだ那波さんには敵わないけど」

 

 確かに千鶴の料理の腕に追いつくのにはまだまだ時間が掛かるだろう。千鶴は元々そういうのが好きだというのもあるが、あやかや夏美の食事を2年以上作り続けてきたのだ。その経験はそう簡単に覆せる物ではない。

 

「ま、そういう風に色々あったけど……あ、そう言えば今日、本屋ちゃんがネギ君に告白するようにってパルとか夕映が私達を引き離したじゃない。で、その後私はアスナごと桜咲さんに連れて行かれて……そしたら、さ。その先で本屋ちゃんに会ったのよ。ネギ君に告白しようとしたんだけど、どうしても出来ないって言って。でも話しているうちに覚悟を決めたらしくて……ネギ君に告白したんだ。成り行きでそれをアスナ達と見守ってたんだけど、ビックリしたわ。あの本屋ちゃんにそこまで勇気があるんだなーって。そしたら、さ。やっぱり私もそろそろ自分の気持ちを誤魔化すのは格好悪いかなって思ったんだ」

 

 そこまで言うと、椅子を立ち上がってこっちに近づき中腰になって俺の顔を覗き込むように見る釘宮。

 その顔は頬を赤く染めつつも、中学生というよりは女の顔をしていた。

 さすがにここまで来れば釘宮の気持ちには気が付く。気が付いてしまう。そう、釘宮は……

 

「アクセル・アルマー君、私は君の事が……好きです」

 

 そう言い、釘宮の顔が近付き……俺の唇と重なった。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    ???

撃墜数:376

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。