敵のニュータイプ用MSは、近付いてくるヴァサーゴに向かって小型のビットによるビーム砲だけではなく、手の先に内蔵されているビーム砲も連射してくる。
向こうは小型のビットを使っているのを見ても分かるように、中距離の戦いを好んでいるらしい。
近接戦闘も出来ないという訳ではないだろうが、ヴァサーゴが味方MSの近くにいる状態になれば、当然ながらビットの攻撃はそう簡単には出来ない。
下手に小型のビットでヴァサーゴを狙った場合、俺が回避すればその攻撃が味方に当たるといったことにもなりかねないのだから。
ヴァサーゴが近接している状態である以上、小型のビットでも横か後ろからしか攻撃は出来ない。
そういう状況にならないようにするのが、MSパイロットとしての技量なのだが……向こうのニュータイプは、ニュータイプ能力とニュータイプ用MSの力で今まで苦戦をする事もなく敵を圧倒出来たのだろう。
だからこそ、俺に近付かれると対処のしようがない。
そうして十分に近付いたところで、敵のMSは小型のビットやビーム砲による攻撃を諦めたのか、ビームサーベルを構えた。
「けど、遅いな!」
向こうにしてみれば、まさか自分がここまで近付かれると思っていなかったのか……あるいはそれ以外の理由によるものか、ビームサーベルを構えるのが遅かった。
ヴァサーゴに向かって振るわれるビームサーベルを、スラスターを使って機体を急制動させ、後ろに移動することで回避する。
ヴァサーゴの前をビームサーベルが通りすぎた瞬間、再びスラスターを全開にして一気に敵MSとの間合いを詰める。
普通のパイロットであれば、耐G能力の限界を越えてもおかしくはない動き。
そんな動きをしつつ、俺は全く気にした様子もなくビームサーベルの切っ先を敵MSのコックピットに突きつける。
もし敵が少しでも動こうものなら、俺はビームサーベルをコックピットに押し込むだけで、コックピットを貫く。
つまり、敵の生殺与奪の権利を俺は奪った訳だ。
「降伏しろ。……ちなみに、小型のビットで俺を狙った場合も手が滑ってそっちのコックピットを貫くことになるから、お勧めしないぞ」
向こうはコックピットにビームサーベルを突きつけられた状態であっても、何とか逆転の手を探していたのだろう。
ヴァサーゴの背後で小型のビットが動いたのを確認すると、そう告げる。
『小型の……ビット……?』
向こうのMSからの通信が入り、何故か戸惑った様子でそう言う。
映像モニタに表示されたのは、ガロードやティファと同じくらいの年齢の男。
新しく出て来たニュータイプがこのくらいの年齢だとすると、やっぱりこの世界の原作の主人公がガロードだという可能性はまた一段高くなったな。
にしても、何で戸惑う?
一瞬そう思ったが、よく考えれば当然だろう。
俺はこのMSが使っているビットを小型のビットと呼んでいたが、それはあくまでもUC世界の認識からきたものだ。
X世界においてもビットという名前で呼ばれているのかどうか、それは分からない。
事実、シャドウミラーの間ではファントムと呼ばれているし、SEED世界ではドラグーンと呼ばれている。
「とにかく、降伏しろ。お前の部下も……全滅したようだぞ。死んではいないから、全滅という表現は相応しくないのかもしれないが」
そう言い、映像モニタを確認する。
するとそこには、スノーボードを使っていた敵MSの全てが撃破されるなり、鹵獲されるなりしている。
撃破された機体のパイロットは死んでいる可能性もあるが……そもそも、向こうから攻撃をしてきた以上、当然向こうも死ぬ覚悟があったのは間違いない。
『く……何故……』
ニュータイプの男は、悔やむように言う。
この男にしてみれば、まさか自分達がこうも完全に負けるというのは、予想外だったのだろう。
あるいはフリーデンだけなら、この男の思い通りになったかもしれない。
しかし、俺達がいる以上、こちらの戦力は非常に高くなっていた。
そもそもテンザン級に乗っているのは、俺を含めて全員がエースと呼ぶべき実力の持ち主だ。
ニュータイプだけに、このまま戦えば自分達が負けるというのは予想出来たと思うんだが。
あるいは自分がニュータイプだからこそ、まさか負ける訳がないと思い込んでいたのか。
「これが最後だ。降伏しろ。降伏しない場合は、残念だがこのままコックピットを貫かせて貰う」
向こうはかなり悔しそうにしていたものの、それでも今の状況では他に何も出来ないというのは理解したのだろう。
やがて大人しく頷く。
『分かりました。降伏します』
「よし、降伏を受け入れる。……小型のビットを回収しろ。もし攻撃するような真似をした場合は、どうなるか分かっているな?」
そう指示を出すと、男は素直に小型のビットを回収していく。
それを見ていると、不意にニュータイプの男が口を開く。
『貴方の名前を聞かせて貰ってもいいでしょうか? 僕はカリス・ノーティラスといいます』
「アクセル・アルマーだ。……一応確認しておくが、お前がニュータイプで間違いないな?」
『はい。ですが……貴方は一体? 僕の操縦するベルティゴをここまで圧倒するとは……貴方もニュータイプですか? いえ、貴方からはニュータイプの力は感じられません。ですが、それとは違う何かがあるのは分かります』
自分の攻撃が全く通用しなかったのが不思議なのだろう。
カリスが理解出来ないといった様子で呟く。
ここで重要なのは、カリスがティファと同じように俺にニュータイプと違う何かを感じ取っている事だろう。
ああ、なるほど。
カリスの反応が何か鈍いと思ったんだが、その辺が影響してるんだろうな。
「その辺については……そうだな。また機会があれば教えてやれるかもしれないな。それより、コックピットから出て来い。お前を捕虜にしたが、MSに乗せたままにする訳にはいかないからな。殺すという真似はしないから安心しろ」
『……了解しました』
そう言いつつも、カリスの目に諦めはない。
この状況でもどうにかして脱出しようと考えているのだろう。
とはいえ、そう行動したいと分かっているのであれば、むざむざ逃がす訳にはいかない。
「よし、まずは地上に降りろ」
俺の指示に従い、カリスはベルティゴを地上に降ろす。
当然だが、俺はそれを黙って見ている訳ではない。
ヴァサーゴのビームサーベルを構えたまま、俺もまた地上に向かう。
「ジャミル、聞こえているか?」
『ああ』
ベルティゴとの通信を一旦切ったとところで、フリーデンに向かって通信を送る。
するとフリーデンは即座に通信に出たジャミルが返事をしてくる。
「敵のニュータイプ、カリス・ノーティラスを捕らえた。そっちに連れていけばいいのか?」
『そうしてくれると助かるが……いいのか?』
ジャミルにしてみれば、ガロードが負けた相手を俺が倒して、カリスを捕らえたのは俺だ。
そうである以上、カリスをフリーデンに渡してもいいのか、そんな風に思ってもおかしくはないだろう。
「カリスを渡すのは構わない。そもそも、カリスの存在を察知したのはフリーデンにいるティファだ。なら、カリスはティファのいるフリーデンに渡すのが当然だろう? ただし、ベルティゴはこっちで確保させて貰う」
『分かった。それでいい』
ベルティゴはX世界のニュータイプ用MSだ。
シャドウミラーにしてみれば、かなり興味深いMSなのは間違いない。
唯一にして最大の難点は、この世界のニュータイプとテンザン級に乗っているクスコやマリオンの出身世界であるUC世界のニュータイプは、名前は同じニュータイプであっても実際にその能力は似て非なる者といったところだろう。
フラッシュシステム対応機に乗っても、クスコやマリオンは機体を動かせなかった。
だとすれば、ベルティゴに乗っても多分使いこなせないと思う。
いやまぁ、小型のビットを抜きにして純粋にMSの性能という点で見た場合、ベルティゴはかなり高性能MSなので、使ってもいいんだが……ただ、1機しかないのを思うと、出来ればベルティゴはこっちで確保しておきたい。
『それとジュラッグの改修機はどうする?』
ジュラッグの改修機? と少し疑問に思ったのだが、すぐにその言葉の意味を理解した。
あのスノーボードに乗っていたMSだろう。
なるほど。あの機体はジュラッグという名称なのか。
「こっちで確保した分はこっちで貰う。ウィッツとロアビィが倒した分は、フリーデンで回収してくれ」
ベルティゴと違い、ジュラッグはかなりの機数がある。
そうである以上、ジュラッグはフリーデンの方で確保してもいいだろう。
カリスを捜してフォートセバーンまで来たものの、フリーデンはあくまでもバルチャーだ。
収入の類がなければ、フリーデンにいるクルー達に給料は出せないだろう。
それ以外にも、ウィッツやロアビィの問題もある。
この2人は長期間フリーデンに雇われるという契約を結んだが、それも当然のように無料ではない。
その2人は相応の報酬を貰っているからこそ、フリーデンに雇われているのだ。
同じMS乗りでも、ガロードの場合はティファに惚れている件もあってフリーデンの専属といったような形だが。
そんな訳で、フリーデンにもきちんと儲けさせる必要がある。
……まぁ、ぶっちゃけ純粋な戦力という点では俺達がいるから、無理にウィッツやロアビィはいなくてもいいんだが。
ただ、ガンダムのデータは是非とも欲しいから、まだいなくなられては困る。
他にもこの世界の原作の件もあるし。
今のところはウィッツとロアビィがいなくても、問題がない。
しかしそれはあくまでも今のところだ。
この先、ウィッツとロアビィがいないとどうしようもなくなる……といった可能性はある以上、ここであの2人にいなくなられる訳にはいかない。
その辺も考えて、フリーデンにもしっかりとジュラッグを渡しておいた方がいい。
『分かった。そうさせて貰う。……助かる』
「気にするな。ベルティゴをこっちで貰えたのは大きいからな。それと……気を付けろ。カリスと少し話してみた感じだと、本人は捕虜になったからといって諦めている様子はない。隙を見せれば逃げ出したり、あるいはフリーデンで破壊工作を行ったり、ティファを奪ったりといった真似をしかねない」
『気を付けよう』
「そっちはそれでいいとして、ガロードの方はどうだ?」
『機体の損傷は厳しいが、コックピットにダメージはなかったらしい。身体的には問題ないだろう。だが……精神的にはどうかな』
精神的にか。
元々ガロードはフリーデンと関わるまでは1人で生きてきたのだ。
団体行動が苦手なのは、ガロードが家出した件の原因を考えれば明らかだろう。
だが、それだけに1人で生きてきたガロードは、精神的な強さを否応なく身に着けなければならなかった。
しかし、手も足も出ずカリスにやられたのは、そんなガロードを精神的に追い詰めるのには十分な出来事だっただろう。
その辺は、ティファに頑張って貰うしかないか。
ガロードの事だから、ティファに励まされれば即座に元気を出すだろう。
……これでもしティファとガロードが付き合っていて、いわゆる大人の関係になっていたらティファがガロードを身体で慰めるなんて真似も出来たんだろうが。
ただ、ティファとガロードは15歳。
そして15歳というのは、中学3年。
つまり、俺がネギま世界に転移した時のあやか、千鶴、円、美砂と同じ年齢だ。
ぶっちゃけ、あの4人に限らず15歳とは思えない色気を持っている者達も多かったんだが……この辺はティファの性格か。
もしくは、X世界というネギま世界という事で、育ってきた環境が違うからという可能性も否定出来ない。
「そっちの方はティファに任せるよ。じゃあ、取りあえずカリスをフリーデンに連れていく。受け入れの用意をしてくれ。それと……カリスは当然だが、フォートセバーンが有するニュータイプだ。そのカリスが捕らえられた以上、取り戻しに来る連中もいるだろうから、その時の為の対応もよろしく頼む」
『分かった』
言葉短く呟くと、フリーデンからの通信が切れる。
それを確認してから、俺はヴァサーゴの右手をベルティゴの方に向けて外部スピーカーのスイッチを入れる。
「乗れ」
その言葉に、カリスは素直にヴァサーゴの右手に乗る。
あるいはこのまま飛び降りて逃げ出すかも? と思ったが、ニュータイプというのは高い能力を持ってはいるが、それは純粋な身体能力という意味ではない。
いやまぁ、ニュータイプ能力を使えばあるいは敵と生身で戦う時に有利だったりするかもしれないが。
ともあれ、単純に高い場所から飛び降りて逃げるといったような行為には向いていない。
『すいません、アクセル。僕のベルティゴはどうなるでしょうか?』
「安心しろ。お前のMSは俺が貰う。フリーデンじゃなくてテンザン級の方に運ぶから、ベルティゴに乗って逃げるような事は出来ないぞ」
その言葉に、カリスは動きを止めるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1915
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1751