転生とらぶる1   作:青竹(移住)

337 / 3408
0311話

 神楽坂の誕生パーティを行った翌日の早朝。俺の姿はいつも通りに女子寮の部屋のベッドの中……ではなく、エヴァの家であるログハウスの中にあった。

 あやかや千鶴も付き添いとして来ると言ったのだが、夏美に不審を抱かれる危険性を考えるとそうも出来なかった。

 

「にしても、ちょっと早すぎないか?」

 

 チラリとリビングに置かれている時計へと目を向ける。そこに表示されているのはAM05:00。つまりは朝の5時だ。

 

「ふん、理論上ではともかく実際に行うのはこれが初めてなのだ。どれくらい時間が掛かるか分からんから念の為だ」

「マスターは昨日の夜から今日の修学旅行が楽しみでよく眠れなかったようです」

 

 勿体ぶって言ったエヴァだったが、茶々丸がエヴァの秘密をあっさりと暴露する。

 

「茶々丸!?」

「アクセルさんには今日の為に全面的に協力して貰っているので隠し事をするのは義理に欠けると判断したのですが……駄目だったでしょうか?」

「……ふんっ」

 

 茶々丸の言葉に面白く無さそうに視線を外すエヴァ。

 

「にしても、何で前もって実験してなかったんだ? 理論上は上手く行ってるとは言っても、ぶっつけ本番はエヴァらしくないんじゃないか?」

「ふん、数日でも私の封印を解くなんて真似をそうほいほいやってみろ。私の事が気に食わない魔法先生の突き上げでじじぃの胃に穴が開くわ。じじぃがどうなろうと私の知った事ではないが、入院なんかして代理で来た奴がじじぃよりもマシな可能性は少ないしな」

 

 なるほど、近右衛門と高畑以外にはエヴァは余り好かれてないんだろうな。

 

「なら別荘の方は?」

「それも考えないではなかったが、別荘が魔力で動いている以上はどんな干渉があるか分からんしな。それにぼーやの血液をそんなに大量に貰うというのも、模擬戦に負けた身ではちょっとな」

 

 懐からネギの血が入っているのだろう試験管を取り出しながらそう言う。

 

「ん? ネギは来ないのか?」

 

 この場にネギの姿が無いのは気になっていたが、恐らく遅れているだけだろうと判断していた。だが、あの試験管に入っているのがネギの血だとしたらこの場にネギが来る必要は無いだろう。

 

「……あのな。お前は忘れっぽいようだから、以前にも言ったが改めて言っておいてやる。お前の血は魔法使いにとっては魔力回復薬としても、研究材料としても超の付く一級品だ。例えぼーやでも……いや、ぼーやだからこそ、それを知られるのは避けるべきだ」

「あー、いや……確かにな」

 

 ネギ自体が俺の血の秘密を知って、それを他人に意図的に漏らすとは考えていない。あの馬鹿正直なネギの事だ。秘密だと約束をすれば絶対に他人に話すなんて真似はしないだろう。……だが、ネギのドジっぷりもまた事実なのだ。どこでどんな風に口を滑らせるのかと考えると、確かにネギには話さない方が得策だろう。

 

「まぁ、それについては否定出来ないな。で?」

「うむ。私が魔法薬で調整が完了したぼーやの血を飲んだら以前のように腕を出せ。アクセルの血でぼーやの血を強化して一時的にだが登校地獄を正常な状態に戻せる……筈だ」

 

 そこまで言うと、ネギの血が入っている試験管を口へと持っていく。

 その白い喉がコクンと動いたのを見て、俺もまた腕をエヴァの口の前へと持っていく。

 チラリと一瞬だけ俺の方を見たエヴァが、そのまま腕にカプリと噛みつき数滴の血を口へと含む。以前にも言っていたように相当不味いようで、顔をしかめながら口の中の血を飲み込んでいく。微妙に目の端に涙が浮かんでいるのを見ると、子供を苛めているような気分になってくる。……いや、俺も今は子供なんだけどな。

 

「ぐぅっ!」

「マスター!?」

 

 踞り、何かに耐えるように呻くエヴァ。そしてそのエヴァを心配して茶々丸が側に付く。そんな状態でエヴァが呻いているのが数分程続くと、やがてエヴァが何事もなかったかのように立ち上がる。

 

「……どうだ?」

「さて、どうだろうな。感覚的にはそう変化したように感じられないが……まぁ、そもそも登校地獄を正常な状態に正した訳だからしょうがないか。成功しているかどうかは、結局麻帆良の外に出られるかどうか、だな。……茶々丸」

「はい、マスター。荷物はここに」

 

 リビングにあるソファの後ろからボストンバッグを取り出す茶々丸。

 

「良し、早速行くぞ!」

「って、ちょっと待て! まだ5時過ぎだぞ!?」

 

 京都行きの生徒は、大宮駅に9時集合という事になっている。さすがにこの時間から行っても暇をもてあますだけだろう。

 

「何を言う、15年ぶりの外だぞ。それに行き先は京都なのだ。時間は幾らあっても足りん!」

 

 いや、幾ら早く大宮駅に着いても出発時刻が決まっている以上は、見学に使える時間は変わらないんだが。

 そんな事を内心で考えている間に、既に俺の目の前からエヴァの姿は消えていた。

 

「アクセルさん、朝からすいませんでした。私は早速マスターを追いますので」

「ああ、そうしろ。あの様子じゃ迷子になって大宮駅に着くのもいつになるやら」

 

 そんな2人を呆れながらも見送り、まぁ、しょうがないかと内心で呟く。本人も言っていたが、15年ぶりの麻帆良の外なのだ。おまけに茶道部に入っていたり寝室に小さいながらも茶を点てる部屋があったりと日本文化を好むエヴァが、その代表とも言える京都へと行ける。エヴァにしてみれば関西呪術協会? 何それ? 美味しいの? って所だろう。

 もし関西呪術協会の強硬派がエヴァの観光を邪魔する事にでもなれば……

 

「下手をしたら京都壊滅なんて事態もあり得る? ……いや、ないな」

 

 日本文化を愛するエヴァだ。京都を壊滅させるなんて真似はしないだろう。関西呪術協会はともかく。

 なにしろ、エヴァの力を押さえている麻帆良の結界が無い京都に行くのだ。登校地獄の影響である程度の力は押さえ込まれているとは言っても、それも所詮ある程度だ。

 

「……関西呪術協会の冥福を祈るか」

 

 何となく脳裏に瓦礫の中で高笑いを浮かべているエヴァの姿が浮かび、思わず呟いて寮へと戻る事にした。

 

 

 

 

 

「おはよう、アクセル君」

 

 寮に戻って朝食を食べ、修学旅行の準備を完了して部屋を出る。そのままあやか達と玄関へと向かおうとしたら声を掛けられた。

 声のした方に振り向くと、いつものチアガール3人組の姿が。

 もちろんあっちも修学旅行の準備は万端で手にそれぞれ大きなバッグを持っている。

 

「そっちも準備万端だね」

 

 椎名が笑顔で話し掛けてくる。その機嫌はいつも以上に上機嫌で、修学旅行を楽しみにしていたのが丸わかりだ。

 ……この修学旅行に感じている俺の嫌な予感、外れてくれればいいんだけどな。

 そんな風に思いつつも、皆で話ながら麻帆良を出て大宮駅へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「うわ、もうかなり集まってるわね」

 

 大宮駅の中でも麻帆良の生徒が集まっている場所を見て柿崎が呟く。

 確かにそちらの方を見れば、麻帆良の中でも修学旅行先に京都を選択したクラスがかなりの数集まっていた。

 ちらほらと3-Aの生徒達の姿も見える。そして……

 

「フハハハハ! 見ろ、茶々丸! この駅弁の数々を! さて、どれを食べるべきか。ここはやはり無難に幕の内弁当にするべきか? あるいはこの30品目バランス弁当や鯖寿司といったものもいいな。……ええいっ! 皆纏めて買ってくれる!」

「マスター、買いすぎても食べきれないのでは」

「ふんっ、余ったらアクセル達にでもくれてやればいいのだ!」

 

 そんな風に大声で話している主従の存在が一際目立っていた。

 

「……だってよ?」

「アクセル君って、エヴァちゃんと仲いいよね。やっぱり席が隣だから?」

 

 釘宮と柿崎に思わず苦笑を返してしまった俺は悪くない筈だ。

 

「あら、あっちにいるのは綾瀬さんと宮崎さんね。枕を持ってるけど……」

 

 千鶴の視線の先にいるのは図書館探検部達に神楽坂達だった。確かに綾瀬と宮崎の2人は枕を持っている。

 

「……何でだ?」

「うーん、多分枕が変わると眠れないタイプなんじゃないかしら」

 

 そんな風に話をしているとやがて集合の時間となり、クラス別に並んで教師の話が始まる。

 ちなみにこの大宮駅に集まっている、即ち京都行きのクラスは俺達A組の他にD、H、Sの合計4組だ。ただし、泊まる旅館は3-Aのみ別だったりする。一応これは魔法関係に他のクラスに巻き込まないようにする為の近右衛門の配慮……だといいなぁ。まさか問題児が集まっている3-Aだけを隔離する為なんて理由じゃない事を祈りたい。生徒指導の新田がこっちの宿に来るらしいけど。

 その後、点呼が終了して新幹線へと班別に乗り込んでいく。ちなみに、班は以下の通りだ。

 

1班:あやか、千鶴、夏美、柿崎、釘宮、俺。

2班:明石、佐々木、和泉、大河内、椎名。

3班:近衛、神楽坂、綾瀬、宮崎、早乙女、朝倉。

4班:古菲、超、葉加瀬、四葉、龍宮。

5班:鳴滝姉、鳴滝妹、長瀬、春日、長谷川。

6班:桜咲、エヴァ、茶々丸、ザジ、相坂。

 

 ……6班の最後にいる相坂というのは誰だ? まぁ、クラスの誰かの悪戯だと判断する。

 その後、それぞれが席に座るとネギと源が修学旅行の注意を始める。

 だが、それも束の間。

 

「うわぁっ!」

 

 背後から売り子に追突されたのだ。

 

「……ん?」

 

 ネギに追突した売り子だが、どこか違和感がある。そう、念動力が何かを教えようとしているかのように。多少気になり、ステータスをチェックするとSPの数値が100を越えていた。もちろん、その数値は近衛、あるいはエヴァといった存在には及ばない。だが他の一般人のように何も鍛えていないような存在では決してない。

 となると、近右衛門が派遣してくれた影からの護衛とかか? あるいは関西呪術協会における強硬派の偵察員か何かか。

 そう思い、スキルの覧を見るとそこには『陰陽術』と記載されている。これで近右衛門が雇った護衛の線は無くなったと思っていいだろう。そうなると関西呪術協会の手の者と考えるべきか。

 ……まさか、陰陽術を使えるような術者が本気で売り子をやってるなんて事は……無い、よな?

 ネギが親書を持って関西呪術協会へと向かうというのは、当然向こうでも知っているだろう。強硬派としてはこれ以上関東魔法協会と近付くというのは避けたい筈だ。それをしない為にはどうする? 当然、ネギの持っているだろう親書を処分してしまうのが一番手っ取り早い。

 ……いや、俺個人としては今回の親書に関してはある種出来レースや八百長じみたやり取りだと判断しているので親書をどうこうしてもどうにもならないとは思うのだが、強硬派がそれを知らないとしたら。

 

「一応注意はしておいた方がいいか」

「え? 何か言いましたか?」

 

 俺の右隣に座っているあやかがそう尋ねてくる。理由を話したい所だが、左隣には柿崎に押しつけられるように座らせられた釘宮の姿もある為に迂闊な発言も出来ない。

 

「いや、何でも無い。日本の新幹線技術は世界でもトップレベルだという話だし、興味あると言っただけだ」

「茶々丸、出発はまだか! いや、それにしても新幹線というのもなかなかに味があるものだな。これに乗って食べる駅弁はさぞ美味かろう! フハハハハ!」

 

 ……クラスではミステリアスな存在として認識されているエヴァのそのはしゃぎように、唖然とする釘宮を見て、思わず苦笑する俺だった。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    ???

撃墜数:376

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。