上弦の弐の童磨は、しのぶによって殺された。
正確にはマリューの開発した強化された藤の花の毒の込められた弾丸によって死んだ、というのが正しい。
塵となって消えていく童磨を見て、涙を流すしのぶ。
姉の仇討ちが出来た喜びからのものだろう。
それにしても……正直なところ、童磨を倒している最中に鬼舞辻無惨の邪魔が入るのだとばかり思っていたのだが、そんな様子は全くなかったのが驚きだった。
鬼舞辻無惨にしてみれば、童磨は自分の手元に残った数少ない戦力。
……童磨の性格を考えると、もしかしたら鬼舞辻無惨に嫌われていたという可能性はあるが……いや、それでも上弦の弐が死ぬのを黙って見すごすか?
何しろ下弦の鬼は鬼舞辻無惨の手によって殆どが殺され、上弦の鬼も肆から陸までは殺され、参の狛治は俺の召喚獣となった。
その上で上弦の弐も今日こうして殺されてしまった以上、鬼の中に残っている戦力は上弦の壱しかいない。
狛治からの情報によると、呼吸の使い手……つまり鬼殺隊の剣士が鬼になった相手だ。
つまり、鬼としての力と鬼殺隊の剣士として呼吸を使えるという、非常に厄介な相手。
ましてや、目が6個もある事から童磨のようにどこか決まった場所にいるといった真似は出来ない。
それを考えると、上弦の壱を殺すのは童磨のように青い彼岸花の罠を使う前に殺すのは不可能だろう。
つまり、彼岸花の罠をする時には鬼舞辻無惨と上弦の壱を同時に相手取るといった可能性もある訳だ。
ああ、十二鬼月とは別に転移の血鬼術を持っている鬼がいるという話だったし、それを思えば十二鬼月以外にも戦力はいるのか。
狛治が知らない切り札の類がある可能性も否定出来ないし。
他には十二鬼月でも何でもない、雑魚の鬼はいるか。
とはいえ、雑魚の鬼は雑魚である以上、戦力を期待するような真似は出来ない。
そんな風に考えながら涙を流しているしのぶを眺めていると、不意に気配を感じる。
その気配が一体誰のものなのかは、考えるまでもない。
「む……この様子からすると、もう終わってしまったのか」
そう言ったのは、俺の召喚獣である狛治。
姉の仇であるというしのぶも、童磨との間に因縁があった。
だが、狛治もまた童磨とは因縁があったのだ。
だからこそ、狛治も出来れば自分の手で童磨を倒したいと思っていたのだろうが……狛治にしてみれば、童磨を見つける事が出来なかったのは非常に残念だったのは間違いない。
「遅かったな。……見ての通りだ。童磨はもう死んだ」
「……そうか」
分かっていても、色々と思うところはあったのだろう狛治が、そう短く呟く。
「強かったか?」
「そうだな。狛治からの情報があったから、相手の能力は分かっていた。もし狛治からの情報がなければ、相応に被害が出たのは間違いないと思う」
童磨の血鬼術を使えて、それでいながら自律行動が出来て、破壊しても童磨に被害は及ばないという人形。
細かい氷を放ち、それによって相手の体内から攻撃する血鬼術。
童磨と戦う上で厄介なのがこの2つだった。
いやまぁ、それ以外にも厄介なところがあったのは間違いないのだが。
血鬼術が得意な童磨だけに、他の血鬼術も厄介だったのは間違いない。
また、血鬼術が得意ではあるが、近接戦闘も決して苦手という訳ではなく、扇を使った戦闘力は高かった。
さすが上弦の弐だけの事はある、か。
「ちょっと、アクセル」
狛治と話していたのだが、不意に凛がそんな風に声を掛けてくる。
「どうした?」
「あのね……いい? 女がああやって泣いてるのよ? それを見たら慰めてあげるくらいのことはしないでどうするのよ?」
凛の視線が向けられたのは、当然のようにしのぶ。
姉の仇討ちが成功したことで、未だに泣き続けていた。
慰める……か。
正直なところ、それは俺がやるべき事なのか? という思いがある。
とはいえ、このまましのぶを放っておくのも後味が悪いか。
「分かった。なら、凛は撤退する準備を始めてくれ。……あ、でもまだ万世極楽教の信者で捕まっていない奴がいるかもしれないから、そっちへの対処も頼む」
そう凛に頼んでから、俺はしのぶに近付いていく。
本来ならこういう場合、しのぶを慰めるのは俺よりも恋人……はいないらしいから、継子で妹的な存在でもあるカナヲだろう。
だが、そのカナヲは泣いてるしのぶを見ても反応出来ずにいる。
カナヲにとっても実の姉ではないとはいえ、童磨に殺されたのは間違いない、
そういう意味では、今の状況に色々と思うところがあるのだろう。
そしてそんなカナヲの側には炭治郎がいて、慰めている。
あっちの方は放っておいても大丈夫だろう。
「ほら」
「……何ですか?」
空間倉庫から取り出したハンカチを見て、しのぶはそんな風に言ってくる。
ハンカチって大正時代になかったのか?
いや、単純に未来の技術で作られたハンカチだけに、これがハンカチだとは思わなかったとか?
「ハンカチだよ。これで涙を拭け。お前にとって童磨を殺す事は、大きな理由があったんだろう? なら、泣くのは仕方がない。でも、涙を拭くハンカチくらいはあってもいいと思う」
「……ありがとうございます」
そう言ってしのぶはハンカチを受け取り、涙を拭く。
とはいえ、涙を拭いても次から次に涙が流れてくるのだ。
すぐにそのハンカチは涙を拭くといった事が出来なくなる。
次のハンカチを空間倉庫から取り出し、渡す。
「今は好きなだけ泣いておけ。けど……姉の仇討ちが終わったからといって、これで鬼の件が全て片付いた訳じゃない。まだ上弦の壱と鬼舞辻無惨が残っているんだ」
「普通、こういう時はもっと優しく慰めてくれるんじゃないですか? そんなので、よく希代の女好きって言われてますね」
「一体誰がそんな風に言ってるのかは気になるが……その様子を見ると、もういいみたいだな」
「はい。このまま泣いていると、私もアクセルさんに誑し込まれそうですから」
そう言い、しのぶは笑みを浮かべる。
その笑みはしのぶがいつも浮かべているような笑みとは違い、惹き付けられるような魅力的な笑みだ。
一瞬その笑みに目を奪われたものの、すぐ我に返って口を開く。
「童磨を殺す事が出来た以上、鬼の方でどう動くのかは分からない。まぁ、今は昼なんだから、この状況で何らかの行動には出ないと思うが」
「そうですね。そうなったらそうなったで、まだ対処のしようがあるのですが」
「上弦の壱が出て来たら、俺にとっては有利なんだけどな」
「アクセルさんが言うと、冗談には思えませんね」
いや、冗談じゃないから。
そんな風に会話を交わしていると、今回の戦いに参加した者達が次々とここに集まってくる。
ここで何があったのかというのを多くの者が聞き、驚く。
……神鳴流の剣士を始めとして、童磨と戦えなかったことを悔しがっている者もいたが。
「取りあえず、童磨は倒した。後は信者を捕らえるだけだ。……この建物を調べてみたいと思うところもあるけどな」
「そうね。宗教といえばお金を集めると決まってるだけに、そっちも探してみたかったわね」
宗教については、凛もまた日本人だけに俺と同じような認識なのだろう。
勿論、日本人だからといって全員が俺や凛みたいな宗教観という訳ではない。
いやまぁ、俺の身体はアクセルなので、実際には日本人と呼べないのかもしれないが……精神は日本人なので、それでよしとしておく。
ともあれ、日本人の中にも信心深い者もいるのは間違いない。
幸か不幸か、俺の知り合いにそういう奴はいないが。
「もし万世極楽教が金を貯め込んでいるのなら、政府が没収するだろ。……今回の一件を政府が許可したのは、その辺りの理由もあるのかもしれないな」
全くそんな感じはしないが、現在の日本は第一次世界大戦の真っ最中だ。
それこそ資金は幾らあってもそれで満足するといったような事はないだろう。
戦争というのは大量に金や命を消費する。
それだけに、金はあればあっただけいいのだ。
……もし日本政府に鬼舞辻無惨と繋がりのある奴がいれば、あるいは政府が手を組むのは鬼殺隊ではなく鬼だった可能性も……いや、ないか。
純粋に能力という点で考えれば、鬼というのは使い勝手がいいかもしれない。
だが、昼に戦えないというのは、マイナスの面が大きすぎる。
夜戦専門の特殊部隊としてなら、まだ可能性はあるが。
もっとも、鬼舞辻無惨が人間と手を組むといったような真似をするかと言われれば、微妙だろう。
何しろ同じ鬼であっても使えなかったり、気分を害すような事があればあっさりと殺すのだ。
人間が相手となれば、一体どうなるか……考えるまでもないだろう。
「第一次世界大戦ね。……あまり実感はないわね」
「ですが、噂だと鬼殺隊にその辺でちょっかいを出してきている相手もいるらしいですよ」
俺と凛の話を聞いていたしのぶが、そんな風に口を挟んでくる。
しのぶにしてみれば、場合によっては鬼殺隊が戦争に行くかもしれないという事で、気になっている話題ではあるのだろう。
普通に考えれば、昼に戦えない鬼よりも呼吸を使える鬼殺隊の剣士の方が、軍隊としては使い勝手がいいだろう。
とはいえ、第一次世界大戦では当然のように銃が一般的な武器だ。
日輪刀を使っている鬼殺隊の剣士は……柱や、柱までいかなくてもその下の階級とかなら、銃弾で狙われてもあっさりと対処しそうな気がするが、普通の隊員が銃弾を見切ったり、切り捨てたり、回避したりといった真似をするのは難しいだろう。
鬼殺隊の隊服は防刃の効果はあったと思うが、防弾はどうだった?
もっとも、もし防弾の効果があっても頭部を狙われたりすればどうしようもないんだが。
これがシャドウミラーの面々なら、気や魔力による身体強化で普通の銃弾なら容易に防いだり、障壁を展開したりとかで、どうにか出来るんだが。
「耀哉の性格を考えれば、鬼殺隊を戦争に行かせるといった真似はまずしないと思うけどな。……耀哉に交渉で勝つというのは、かなり難しいぞ?」
それこそ、鬼舞辻無惨を倒してこの世界の騒動が終わった後は耀哉にシャドウミラーの政治班に入って欲しいと思うくらいには。
とはいえ、耀哉がシャドウミラーに入る事は、まずないと思うが。
鬼舞辻無惨を倒した後は、鬼殺隊に所属している者達をどうにかする必要があるし。
鬼殺隊は数百年もの間、鬼と戦い続けてきた。
だが、鬼舞辻無惨を倒せば当然ながら鬼との戦いは終わる。
そうなった時、鬼との戦いしか知らない者はどうするのか。
こういう表現はどうかと思うが、まともな社会復帰が出来るのか。
鬼殺隊の中には、当然だが以前の獪岳のような自分勝手な者もおり、呼吸の力を使った悪事を働くといった可能性も否定は出来ない。
耀哉がそんな連中を含めて放っておける筈もない。
それこそ、鬼殺隊の剣士達を自分の子供といった風に認識してるのだから。
だとすれば、一番簡単で確実なのは耀哉が何らかの会社を興し、鬼殺隊の隊員を纏めて雇用する事だろう。
そうなると、問題なのは何の会社になるか。
鬼殺隊の剣士が揃っている以上、普通の……それこそ鬼舞辻無惨を罠に掛けようとしているような、貿易商とかそういうのは無理だろう。
鬼殺隊の中にはその辺をそつなくこなす奴もいるだろうが、全体的に見ればそれが無理な者の方が多い。
だとすると、鬼殺隊としての力を使うとなれば、警備会社か?
傭兵とかそういうのは……あるのかどうかは分からないが、鬼は斬れても人は斬れないって奴が多いだろうし。
そうなると、やっぱり警備会社が最善だろう。
いっそヤクザとかそっち関係でもいいんだが、能力的には向いていても性格的に向いてない奴は多いだろうし。
「アクセル? どうしたの?」
「ん? ああ、悪い。ちょっと考え事をしていた」
「……考えごと? アクセルがそういう風に考えてるとなると、嫌な予感がするんだけど」
凛は俺を一体何だと思っているのやら。
いや、凛だけではないな。綾子や……しのぶもまた、凛の言葉に同意するように頷いていた。
「あのな。……いや、鬼との戦いも終わりに近付いてきただろ。残ってるのは、鬼舞辻無惨と上弦の壱、それと厄介なのは転移の血鬼術を使う鬼くらいだ。だとすれば、鬼との戦いが終わった後で鬼殺隊がどうするのかといったようなことを考えておく必要もあるんだと思ってな」
「それは……まさか、アクセルがそんなことを考えているなんて、ちょっと予想外ね」
本気で予想外といった様子で呟く凛。
他の2人も以下略。
「一応言っておくが、俺達がこの鬼滅世界で手を組んでいるのは耀哉率いる鬼殺隊だ。その鬼殺隊は鬼舞辻無惨を殺せばなくなるんだから、その後をどうするのかといったようなことをしっかりと考える必要があるのは自然だろ」
「そうね。鬼殺隊がなくなると、また手を組む組織を決める必要があるもの。日本政府は……この時代だと、ちょっと止めた方がいいでしょうし」
凛のその言葉に、綾子は同意するように頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1815
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1731