しのぶと共に月に行ってから数日……俺はいつものように鬼滅世界にやって来た。
ちなみに狛治は今日もホワイトスターで行動している。
やはり江戸時代の常識からいきなりホワイトスターにやって来た狛治にしてみれば、そう簡単に生活に慣れるという事はないのだろう。
政治班によって住居を与えられ、コバッタと共に住んでいるのだが……まだ慣れない事が結構あるらしい。
ちなみに狛治は俺の召喚獣という扱いだが、一応意思があるという事で、シャドウミラーに所属しているという事になる。
とはいえ、どんな仕事をするのかは……まだ決まってないのだが。
将来的にどんな仕事をするのかは分からないが、まずはとにかくホワイトスターの生活に慣れるのが最優先なのだから、仕方がない。
最悪ネギま世界の魔法界にでも行かせてみるということになるかもしれないが。
そんな訳で、今日は俺だけでこうして鬼滅世界に来ていたのだが……
「それは……本当なのか?」
「はい、何度も実験をしてみました。間違いなく……鬼を人に戻す薬が成功しました」
しのぶが満面の笑みを浮かべ、そう言ってくる。
いつも浮かべている笑みではなく、本当に心の底からの笑み。
だが、しのぶの話が本当なら、そんな様子を見せるのは理解出来る。
「目出度いけど、よくこんな短時間で出来たな」
「何を言ってるのです? この薬が出来たのは、アクセルさんが鬼舞辻無惨の血を入手したのが大きいのですよ?」
「ああ、珠世に渡した奴か」
正確には俺が直接珠世に血を渡した訳ではなく、炭治郎を通して珠世に渡した奴だな。
それによって、珠世の研究は一気に進んだのだろう。
炭治郎から聞いた話によれば、十二鬼月の……少しでも鬼舞辻無惨の血が濃い相手の血を持ってくるように珠世から言われていたらしい。
そんな中で、いきなり鬼舞辻無惨本人の血が……それも少量といった訳ではなく、結構な量を入手したのだから珠世の研究が進むのは当然の話だろう。
「ええ。そのおかげで、研究は大きく進みました。この薬が出来たのも、アクセルさんのおかげです。……もっとも、この薬はかなり限定的なものですが」
「……限定的? 誰にでも使える訳じゃないのか?」
「はい。禰豆子さんに効果があるように開発されたので、禰豆子さんに効果があるのは間違いありません。それと、禰豆子さんと同じ血筋……この場合は炭治郎さんですね。そちらにも効果があるのは間違いないですが、それ以外となると難しいかと」
つまり、普通の鬼に対してその薬を使っても効果はないのか?
「まぁ、少しでも早く禰豆子を人に戻すという意味では、そういう風になってもおかしくはないのか」
「ええ。……ああ、それと鬼舞辻無惨に対しても一定の効果が発揮されるのはまちがいありません」
「あー……だろうな」
禰豆子を人に戻す薬は、鬼舞辻無惨と禰豆子の血を使って開発されたのだ。
その薬が禰豆子に効果があるのなら、鬼舞辻無惨に効果があってもおかしくはない。
鬼舞辻無惨を倒す際には、俺を含めて全戦力で出る事になる。
そうなれば薬を使うといった必要はないと思うが、それでもやはり薬があった方がいいのは間違いないだろう。
いざ戦いになれば、一体どういう風になるのか全く分からないのだから。
あるいは、その薬こそが鬼舞辻無惨打倒の鍵になる可能性も否定は出来ない。
「話は分かった。それでいつその薬を禰豆子に使うんだ?」
「お館様から許可が出れば、すぐにでも」
そう言ってくるしのぶの言葉に、俺は頷く。
しのぶは何気に禰豆子を可愛がっている。
鬼と共存したいと考えるしのぶにしてみれば、鬼であっても人を食べた事のない禰豆子は非常に貴重な存在なのだろう。
「そうか。まぁ、禰豆子も鬼になって太陽の下を移動出来なくなったというのは、かなり残念だろうしな」
鬼にとって、太陽の光というのは致命的な存在だ。
だからこそ、鬼舞辻無惨はどうにかしてそれに対処しようと考え、色々と動いているのだろう。
その薬を使えば、鬼舞辻無惨も一応は人間になるのだろうが……そういう意味では、鬼舞辻無惨がその薬の存在を知れば、是が非でも欲するのか?
いや、けどその薬はあくまでも人に戻るというものだ。
鬼舞辻無惨が目指しているのは、鬼のままで太陽を克服することであって、人に戻るというものではない。
狛治から聞いた話によると、鬼舞辻無惨は自分を人間の上位存在という風に認識してるっぽいし。
それだけに、太陽を克服出来るとしても人に戻る薬を使いたいとは思わないだろう。
「ええ。それで……アクセルさんはどうします? もしよろしければ、一緒にその薬が使われるのを見てもいいと思いますが。何しろ、アクセルさんがいなければ、薬を作るのにもっと時間が掛かっていたでしょうし」
「俺がか? いや、そうだな。なら俺も参加させて貰うか」
俺が鬼舞辻無惨の血を奪ったからこそ、こうして早く薬が出来た。
だとすれば……原作ではどうなっていたんだろうな。
十二鬼月の血を奪って、それで禰豆子の薬が完成していたのか、それとも最終的に薬は完成しなかったのか。
その辺が少し気になったものの、考えてみれば今更そこまで気にする事でもないか。
原作は原作、俺が介入したこの世界はこの世界なんだし。
そんな風に考えていると、こちらに向かって鎹鴉が飛んでくるのが見えるのだった。
鎹鴉の伝言を受け、関係者一同は産屋敷家までやって来た。
やって来たのは、薬を開発した珠世としのぶ。そして薬を使う禰豆子。禰豆子の兄である炭治郎と、鬼舞辻無惨の血を入手した功績から俺。
他には当然ながら耀哉と、その後継者である輝利哉。あまねもいる。
そして柱としてしのぶと同様に鬼殺隊の隠れ里に家を持つ炎柱の杏寿郎。
個人的には鬼に対して強硬派である実弥や小芭内辺りにもいて欲しかったのだが……残念ながら無理だった。
ちなみに愈史郎は、耀哉に対して……というか、あまねに対して不細工とか言う可能性が高いので、この場にはいない。
本人は必死に出たいと思っていた様子だったが、今までの行いを考えれば当然の事だろう。
「さて、これから薬の投与を行う」
「むー? むー、むー」
耀哉の話を聞きながらも、禰豆子は小さくなったままで畳の上を転がっていた。
本来ならそんな真似は許されないのだが、禰豆子は鬼になった影響で精神年齢が下がっているしな。
また、ここには礼儀に厳しい者もいない。
いやまぁ、もしこのような真似をしてるのが伊之助とかだったりしたら、それが許容されるような事はないだろうが。
それが許容されるのは、あくまでも禰豆子だからなのだろう。
禰豆子の様子を見て怒るどころか、多くの者が微笑ましそうな笑みを浮かべている。
「では、始めます」
そう言い、しのぶと珠世が前に出る。
手に持っているのは、飲み薬の入った瓶。
本来なら注射器を用意してもよかったのだが、珠世は薬を最初から飲み薬として作っていた。
それ以外にも、精神的に後退している禰豆子の場合、注射器に痛がって暴れる可能性も否定出来なかった。
それ以前に、高い再生力を持っている禰豆子に注射器の針が刺さるのかといった問題もあったが。
とはいえ、禰豆子の口には人を食わないようにと、竹による猿轡がされている。
薬を飲ませるということは、当然ながら猿轡を外す必要がある。
「ほら、禰豆子。こっちに来てくれ」
「むー!」
炭治郎が禰豆子を呼ぶと、禰豆子はそちらに向かって移動する。
炭治郎はそんな禰豆子を撫でながら、口を開く。
「いいか? これから猿轡を外して、薬を飲ませる。禰豆子にとっては違和感しかないかもしれないけど、その薬を飲めば人に戻れるんだ。太陽にも当たれるようになる。だから、大人しくしててくれ」
「むー?」
禰豆子は炭治郎の言葉を理解してるのかいないのか。
その辺は生憎と俺にも分からなかったが、今までの禰豆子の行動を見ていれば、恐らく大丈夫だろうとは思う。
それでも、もし何かがあったら……そうなったら、すぐにでも禰豆子を押さえられるように準備をし……そして炭治郎が竹の猿轡を外す。
そして禰豆子が妙な行動をする前にと、しのぶと珠世が禰豆子に薬を飲ませる。
最初こそはいきなり口の中に入ってきた薬に対して吐き出そうとした禰豆子だったが、しのぶと珠世、それと炭治郎が必死になったおかげで、何とか薬を飲ませる事に成功する。
そして禰豆子が薬の苦さか、それとも薬の効果かは分からないが、苦しそうに痙攣し……そして、不意に意識を失って倒れる。
「禰豆子!」
炭治郎が真っ先に動き、倒れそうになった禰豆子を抱き留める。
「これは……どうなったのかな? 薬の効果は成功したと思ってもいいのか、それとも失敗したと思ったらいいのか。どちらだい?」
今の行動を見ていた耀哉が、しのぶにそう尋ねる。
しのぶと珠世が開発した薬の効果がどう発揮されるのか分からないので、尋ねたのだろう。
何しろ鬼を人に戻すというのは、歴史上これが初めての行為だ。
いやまぁ、鬼殺隊の歴史に残っていないだけで、実は以前にも同じような事が行われたという可能性は否定出来ないのだが。
「恐らくは成功したと思います。目が覚めた時には、彼女は鬼から人に戻っているかと」
「なるほど。では、目が覚めるのはいつくらいになるのかは分かるかな?」
「身体を鬼から人に作り替えているので、恐らく最低でも一晩……え?」
しのぶは説明の途中で、戸惑った様子で声を出す。
いや、それはしのぶだけではなく、しのぶと共に薬を作った珠世も同様だった。
そんな2人の視線が向けられていたのは、炭治郎……ではなく、炭治郎が抱いている禰豆子。
つい1分程前に気絶したばかりの禰豆子だったが、何故か今もう目を覚ましているのだ。
炭治郎も最初は禰豆子の状況には気が付かなかったみたいだったが、しのぶ達の視線で禰豆子がもう目覚めているのに気が付いたのだろう。
慌てた様子で禰豆子に声を掛ける。
「ね、禰豆子!? 大丈夫なのか? 兄ちゃんが分かるか?」
「……うん」
炭治郎の言葉を聞き、禰豆子は間違いなくそう答えた。
今までは『むー』としか答えられなかった禰豆子が、だ。
……いやまぁ、竹の猿轡をしていたんだから、それは当然なのかもしれないが。
「禰豆子……」
「大丈夫……だよ」
そう言い、禰豆子は目を閉じて今度こそ本当の意味で眠る。
「これは……まさか……こんなことが?」
禰豆子の様子を見て、しのぶの口からはそんな驚きの声が漏れる。
とてもではないが、今の状況では一体なにがどうなったのか、しのぶには分からなかったのだろう。
いや、分からないのではなく、分かってしまうが納得出来ないといった様子か。
珠世の方はどうだ? と視線を向けてみたところ、珠世もまたしのぶと同様に驚いた様子を見せていた。
ただし、しのぶ程には驚いた様子がないのは……それだけ禰豆子の特異性については理解していたといったところか。
「輝利哉、炭治郎と禰豆子を客室に案内してあげなさい」
「はい、分かりました」
父親からの指示に従い、輝利哉は禰豆子を抱き上げた炭治郎を客室に向かって案内する。
これは輝利哉の優しさからの行動なのは間違いなかったが、同時に少し危ない事であるのも事実だ。
禰豆子だから大丈夫だとは思うが、薬が変な方向に効果を発揮して、その結果として禰豆子が凶暴な鬼になってしまうという可能性は……かなり低いが、それでもない訳ではない。
あるいは凶暴になった禰豆子が襲ってきても、義眼によって相手の行動が先読み出来る耀哉ならそれをどうにか出来ると、そう思っているのかもしれないな。
最悪の場合、レーザーも撃てるし。
それでも油断するのはどうかと思うけど。
「さて……とにかく、鬼から人に戻すことが出来る薬を作ったというのは大きい。それとしのぶは……強化された藤の花の毒を持ってるね?」
「はい、お館様」
この強化された毒というのは、多分マリューが作った奴だろうな。
銃弾に入ってる奴。
あるいは、しのぶの薬関係の技術は非常に高いから、マリューの改良した毒を量産している可能性も否定は出来ない。
それどころか、マリューが改良した毒を更に強化している……といったようなことになっている可能性も否定は出来ないだろう。
「そうか。では、その毒を……君の姉の仇を倒す為に使って貰えるかい?」
「え? それはもしかして……」
期待……いや、熱望と表現した方がいいだろう表情を浮かべるしのぶに、耀哉は頷く。
「ああ。近いうちに万世極楽教に襲撃を行う。その際には、しのぶにも参加して貰おうと思っているんだが、構わないかな?」
「はい。是非お願いします」
やる気に満ちたしのぶの声。
姉の仇を討つ為には、絶好の機会なのだろう。
「けど、その宗教は童磨が教祖をしているとはいえ、基本的には人の宗教なんだろ? 鬼殺隊がちょっかいを出してもいいのか?」
「ああ。幸い、規模的にはそこまで大きくはないし、政府の方に手を回せば何とかなると思うよ」
俺の問いに、耀哉は自信満々に頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1815
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1731