狛治をホワイトスターに連れていってから数日……その数日の間にも、狛治は何度か鬼滅世界に行っては耀哉を始めとする面々から色々と話を聞かれていたらしい。
ホワイトスターの生活に慣れるのが現在の狛治にとって大きな仕事なのだが、それ以外に鬼についての情報を聞くというのも、大きな騒動になった理由だった。
ちなみにその間に刀鍛冶の里での戦いについての事情聴取も終わった。
そんな中で一番大きかったのは、無一郎が赫刀を発動させた事だろう。
鬼に対して赫刀は非常に大きな意味を持つ。
だが、今まではシャドウミラーの者であったり、神鳴流の剣士であったりが赫刀を発動させることは出来ていたものの、鬼殺隊で赫刀を発動出来た者はいなかった。
その為、もしかしたら鬼滅世界の人間には赫刀を発動出来ないようになっているのでは? といったようにすら思われていたのだが……それを無一郎が破った訳だ。
無一郎が赫刀を発動出来た理由……それが、痣だった。
そして無一郎の説明からすると、体温が非常に高くなった時に痣が発動するということが判明した。
……ちなみに、刀鍛冶の里にいたもう1人の柱である蜜璃は、痣は出なかったらしい。
これは恐らく狛治が協力して半天狗の分身と戦っていたから、というのが大きな理由として考えられていた。
多分……本当に多分の話だが、もし狛治がいなくて蜜璃だけで半天狗の分身と戦うような事になっていた場合、痣が出ていたかもしれないな。
まぁ、それでも痣が出る理由が恐らくではあるが判明し、現在柱とかは何とか痣が発動するようにと行動していたのだが……
「そんな中で月に行くのか?」
「あら、でも以前そう約束してましたよね? 刀鍛冶の里に行ったら、月に連れていってくれるって」
しのぶはそう言って笑みを浮かべる。
体内にあった毒が解毒されたというのも影響してるのか、しのぶの浮かべる笑みは以前と比べてどこか柔らかい。
そして姉の仇を見つけたから、というのも大きいのだろう。
耀哉からこっそりと教えて貰ったのだが、しのぶの姉を殺した鬼は、童磨だったらしい。
道理で以前狛治から鬼についての話を聞いている時に童磨の話題になった時、動揺していた訳だ。
そして鬼についての情報が非常に詳しく入手出来た結果……現在、耀哉は青い彼岸花を使って鬼舞辻無惨の手が及んでいる貿易商に仕掛ける罠を進めている最中だ。
つまり、鬼との最終決戦が現在近付いてきている訳だ。
しのぶが月に行きたいと行ってきたのは、そういうのが影響している可能性も十分にあった。
最初どうするべきか迷ったが……約束していたのは間違いないし、しのぶの気分転換をさせるという意味でも、月に行ってみるのはいいかもしれないと思い直す。
「分かった。なら、行くか。……ちなみに、どうせならこれからすぐに月に行きたいと思うんだが、しのぶの方は問題ないか?」
「はい、今日の用事はもう終わらせてありますから。もし緊急の患者が来ても、量産型Wがいれば恐らく問題ないでしょう」
へぇ、俺が予想していたよりも随分と量産型Wを買ってるんだな。
いやまぁ、一緒に働いていれば嫌でも量産型Wの優秀さは理解出来るか。
「分かった。なら……そうだな。さすがにしのぶ用の宇宙服は持ってないから、一度ホワイトスターに行くぞ。あそこなら宇宙服は色々とあるし」
「宇宙服……ですか? 分かりました。お任せします」
そう言うしのぶと共に、俺はゲートを使ってホワイトスターに向かうのだった。
「へぇ……まぁ、アクセルの事だからいずれそうなるとは思っていたけどね」
そう言い、どこか面白そうな様子を見せるシェリル。
しのぶの宇宙服を用意する事になったのだが、何故かそれを用意する事になったのがシェリル。
いやまぁ、偶然シェリルが暇だったからというのが大きいのだが。
ただし、シェリルが暇だというのはかなり珍しい事だ。
マクロ世界は勿論、色々な世界で歌手として活動しており、どの世界でもトップクラスの歌手となっている。
そんなシェリルだけに、当然のように普段は忙しい。
今日こうして暇だったのは、本当に偶然そんな感じになった形だ。
「いずれそうなる、ですか? 一体どういう事でしょう?」
「何でもない。シェリルは悪戯好きな奴だから、気にするな」
「あら? 本当にそんな風に言ってもいいの? そういう風に言うのなら、悪戯をするわよ?」
「……止めてくれ」
そんな風にやり取りをしながらも、何とかしのぶの宇宙服の準備をするのだった。
「こうして見ると……何と言うか、圧倒的な迫力がありますね」
しのぶの視線がニーズヘッグに向けられていた。
現在俺達がいるのは、鬼殺隊の隠れ里の場所。
しのぶの身体は宇宙服に覆われており、微妙に動きにくそうにしていた。
ちなみに、周辺には当然のように多くの者達が集まってきている。
ニーズヘッグを見れば、一体何があったといったように集まってくるのは当然の話だった。
「まぁ、ニーズヘッグは色々と特殊だしな」
実際、これは決して大袈裟な話ではない。
ニーズヘッグはFate世界では宝具となったのだから、普通の機体とは呼べないだろう。
……まぁ、その外見は正義の味方というよりは、明らかにラスボスが乗っている機体といった感じだが。
俺もUC世界では月の大魔王とか言われているし、そういう意味でもそこまで間違いではない……と思う。
「特殊……そうですね。こうして見る限りではその言葉が相応しいと思います。これに乗って月に行くのですよね?」
ざわり、と。
そんなしのぶの言葉を聞いていた者達がざわめく。
月に行くというのは、当然のように鬼殺隊の面々にとっても驚くべき事なのだろう。
何人かは自分も月に行きたいといったような表情を浮かべている者もいるが、生憎と今日行くのはあくまでもしのぶだけだ。
……そのうち、将来的には鬼殺隊の面々を月に連れていってもいいのかもしれないな。
「ああ。いつまでもここにいる訳にもいかないし、そろそろ行くぞ。宇宙服のヘルメットはしっかりと被っておけよ。シェリルに習っただろう?」
そう言うと、しのぶは宇宙服の頭部のカバーを下ろす。
そんなしのぶを確認し、ニーズヘッグのコックピットに入る。
機体が起動すると、ニーズヘッグの手をしのぶに伸ばす。
するとしのぶは全く躊躇なくニーズヘッグの手に乗った。
「よし、しのぶ。行くぞ。準備はいいな?」
外部スピーカーでそう尋ねると、宇宙服を着たしのぶは手を振ってくる。
これでしのぶにとっても、問題はないと思っているのだろう。
「システムXN、起動。転移座標入力……OK。転移フィールド生成開始」
システムXNを起動すると、光の繭がニーズヘッグを覆っていく。
当然ながらニーズヘッグの掌に立っているしのぶも、また周囲の状況を珍しそうに眺めている。
「転移フィールド生成完了。……転移」
転移フィールドの生成が完了し、次の瞬間にはニーズヘッグとしのぶは転移をし、その姿は月面上にあった。
映像モニタで確認すると、しのぶは少し混乱した様子で周囲を見ている。
「しのぶ、聞こえているか?」
『え? あ……アクセルさん!? ああ、そう言えばこの宇宙服というのは離れた場所にいる人とでも会話出来るんでしたか。その……ここが宇宙ですか?』
「ああ、そうだ。身体が軽いだろ? 月は地球の重力の6分の1だからな。体重もその分軽くなる」
その言葉を聞いたしのぶは、ニーズヘッグの掌の上で軽く跳躍する。
すると俺の言葉を実感出来たのだろう。少し驚いたように口を開く。
『これは……凄いですね』
月の重力が6分の1だってのは、いつから分かったんだったか。
しのぶは知らなかったのか、それとも知っていたけどいきなりだったので頭からすっぽ抜けていたのか。
実際、普通なら月に来るなんて事は考えられないしな。
これがもっと科学力が高くなれば、擬似的に月の重力を経験したり、もしくは無重力を経験したりといったような真似も出来るんだが……大正時代の技術力では到底無理だ。
「だろう? それと……ほら、あれが地球だ」
そう言うと、俺はニーズヘッグの手を動かしてしのぶに地球を見せてやる。
この鬼滅世界で、初めて宇宙から地球を見たしのぶは、そんな地球の姿に動きを止める。
そして数分が経過したところで、口を開く。
『地球は……青かったんですね……』
俺にとって、宇宙から地球を見るというのはそんなに珍しくはない。
しかし、それはあくまでも俺だからだ。
しのぶにしてみれば、ただひたすら初めて見る地球に感動していたのだろうが……今の台詞って、確か初めて宇宙に行った人物が口にした言葉だったような。
いや、細かいところは違うかもしれないが。
「そうだな。地球は青い。この景色を見た鬼滅世界の人間はしのぶが歴史上初めてだぞ」
とはいえ、宇宙に行ったり月に行ったりするのは、昭和になってからだ。
そういう意味では、もう少しでそんな時代がやって来るのは間違いない。
「それよりも、ちょっと月に降りてみないか? 俺もニーズヘッグのコックピットから降りるから」
『え? でもそうすると……会話が出来なくなるんじゃないですか?』
俺は生身で月面……どころか宇宙空間に出ても平気なのだが、当然ながら宇宙空間で機械もなしに会話をするといった真似は出来ない。
……あるいは、しのぶに念動力の素養があれば、テレパシーとかを使えるかもしれないが。
「ああ、そうなる。けど行動で示せば、大体の事は分かるだろ。それに折角月にやって来たんだ。2人揃って、月に足跡を残すくらいはしてもいいだろ? ……さすがに国旗を残すのは不味いだろうけど」
『ふふっ、それはそれで面白そうですね』
悪戯っぽく笑うしのぶ。
うーん……そんなしのぶの悪戯に乗っかって、日本の国旗をここに立てていこうか?
勿論、いつ立てたのかといった日付もきちんと書いて。
そうなれば、これが見つかった時にかなり面白い事になりそうだが……うん、それが見つかった時の日本政府を思い切り困らせてしまいそうだし、止めておいた方がいいか。
でも、足跡くらいなら問題ないだろ。……というか、ニーズヘッグで月面に降りた時点で足跡はあるんだし。
ニーズヘッグは起動している状態ではグラビコン・システムのおかげで1tを切るという、とんでもない軽さになっているが、それでも1tというのは結構な重量なのは間違いない。
以前はもっと重かった――それでも小型だけに一般的な機体に比べると軽かったが――のだが、W世界で入手したガンダニュウム合金によってT-LINKフレームを作った結果、もの凄く軽くなってしまった。
その分、近接戦闘をやる時はその軽さがマイナスになるんだが、その辺はグラビコン・システムによって一撃の重さを増やすような事が出来る。
まぁ、鬼滅世界でニーズヘッグの出番はシステムXNを使って宇宙に転移するくらいなので、そういう意味でその性能を十分に発揮している訳ではないのだが。
……ニーズヘッグの性能を知っている者が今のニーズヘッグの使い方を見たら、一体何て言うのやら。
「とにかく、月面に降りるぞ。折角月面に来たんだから、しっかりと楽しまないとな」
そう言い、俺はしのぶの返事を待たずにコックピットから出る。
俺にとっては重力が6分の1であっても、飛べるのでそう違いはない。
しのぶはニーズヘッグの掌の上で、俺の方を見ると軽く手を振った。
そんなしのぶの方に近付くと、そっと手を伸ばす。
宇宙服に包まれたしのぶの手は俺の手を掴み……そのまま、ニーズヘッグの掌の上から飛び降りる。
ふわり、と。
まるで体重を感じさせない動きで、俺としのぶは月面に着地する。
この短時間で月の重力に慣れる辺り、さすがだよな。
そんな風に思いながら、俺は自分としのぶの足元を指さす。
最初は俺の行動の意味が分からなかったしのぶだが、月面に俺としのぶの足跡が残っているのを見て、宇宙服のヘルメットに包まれたしのぶの顔には、悪戯っぽい笑みが浮かぶ。
そうして俺としのぶは手を繋いだまま、1歩、2歩、3歩と月面を歩く。
その度に俺としのぶの足跡は月面にはっきりと残っていく。
数分程月面を移動しただろうか。
やがてしのぶに腕を引かれて、俺は動きを止める。
俺にしてみれば、月面を歩くというのは特に緊張するような事ではない。
しかし鬼滅世界の人間であるしのぶにしてみれば、当然のように緊張してしまうのだろう。
そうして動きを止めると、しのぶは改めて月面の様子を見る。
少し……本当に少しだけ残念そうなのは、月面が荒れた場所だからだろう。
日本では、月にはウサギがいると言われている。
勿論それはお伽噺や言い伝えの類だが、それでもこのような荒野と呼ぶに近い場所には、思うところがあるのだろう。
まぁ、しのぶの性格を思えば、まさか月に草原が広がっているとか、そんな風に想像はしていなかったと思うが。
……蜜璃とかなら、そんな想像をしていてもおかしくないと思うけど。
そんな風に考えながら、俺はしのぶと一緒の時間を楽しむのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1815
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1731