十二鬼月の中でも上弦の伍である玉壺を倒したので、現在の俺は刀鍛冶の里を襲ってきた最後の上弦の鬼、半天狗のいる場所に向かっていた。
そんな中で先程よりは飛ぶのに慣れてきた狛治に、ふと尋ねる。
「そう言えば、何でこの刀鍛冶の里を襲って来たのは上弦の鬼だったんだ? 雑魚の鬼を大量に連れてくるのなら、下弦の鬼を何人か連れてきた方がよかったんじゃないか? 俺達が倒したのは山にいた蜘蛛の糸のような血鬼術を使う奴と、汽車にいた奴だけだ。だとすれば、まだ他にも下弦の鬼はいたと思うんだが」
「いない」
俺の隣を飛ぶ狛治は、端的に……短くそれだけを言う。
言うのだが……いない? それは一体どういう事だ?
「何でいないんだ? 十二鬼月ってくらいなんだから、まだ最低でも4匹は下弦の鬼がいる筈だろう?」
4人ではなく4匹と表現したのに、少しだけ狛治は面白くなさそうな様子を見せる。
ああ、そう言えば俺が鬼を……正確には鬼舞辻無惨やその部下の鬼を数える時に人ではなく匹と表現しているのを狛治も知らなかったか?
俺とそれなりに面識があったのだから、その辺についても理解していてもおかしくはないと思うが。
ともあれ、4匹と聞いて反応したのは一瞬だけ。
すぐに表情を元に戻して説明する。
「その蜘蛛の糸の血鬼術を使う下弦の伍をお前達が倒した事により、鬼舞辻無惨は下弦はもう役に立たないと判断して、汽車の鬼……下弦の壱以外は全て殺した」
「うわぁ……」
あまりにも予想外のその言葉に、俺の口から驚きの声が漏れる。
とはいえ、考えてみればそうおかしな話でもないのか?
聞いた話によると、ここ100年くらいの間、上弦の鬼が倒されたという事はないらしい。
この前の戦いで上弦の陸を倒したのは、そういう意味では100年ぶりの快挙とも言える。
そう考えると、耀哉があれだけ喜んだのも十分に納得出来る。
また、上弦の鬼がそういう感じだったとなると、今の柱の中で十二鬼月を倒して柱になった者が倒したのは、全て下弦の鬼だった事になる。
勿論、柱になるにはそれ以外にも手段はあるので、具体的にどのくらいが下弦の鬼を倒して柱になったのかは分からなかったが。
そういう意味では、鬼舞辻無惨が十二鬼月の中で下弦の鬼を処分するといったような事をしても納得は出来る……か?
けど、十二鬼月を倒せば柱になる。それはつまり、鬼舞辻無惨もある意味で柱になる資格があるという事だよな。
呼吸の属性の柱となる。
例えば無一郎は霞の呼吸の使い手なので、霞柱と呼ばれている。
だとすれば、鬼舞辻無惨は……
「鬼柱、か」
「……何がだ?」
狛治は俺が一体何を言ってるのか理解出来ないといった様子でこちらに視線を向けてくる。
「いや、鬼舞辻無惨は下弦の鬼を4匹倒したんだろう? なら、十分に柱となる条件を満たしたことになる。そうである以上、鬼舞辻無惨は鬼柱と呼ぶに相応しいと思ってな」
「それは……」
狛治の口から、呆れたような言葉が漏れる。
もっとも、俺も本気で言ってる訳ではない。
そもそも、柱となるのはあくまでも鬼殺隊の剣士だけだ。
当然ながら、鬼舞辻無惨は鬼であって鬼殺隊の剣士ではない。
……ただ、鬼舞辻無惨を挑発する目的として、鬼柱の称号を与えるのは十分だと思う。
思うんだが……鬼殺隊にとって、柱というのは非常に大きな意味を持つ。
それこそ鬼殺隊の者達にとって、精神的な支えとも呼ぶべき柱の称号を鬼のボスである鬼舞辻無惨に与えるというのは、鬼殺隊の者達にしてみれば許容出来ない可能性が高い。
とはいえ、鬼舞辻無惨に対して有効な挑発であった場合は、それを使った方がいいとは思うんだが。
この辺は後でちょっと耀哉に聞いてみるか。
もし耀哉が鬼柱という名称を使ってもいいと言うのなら、鬼舞辻無惨と遭遇した際に使ってみるとしよう。
もし駄目なら、それはそれでもう使わなければいいだけなので、特に気にするような事はない。
「鬼柱の件についてはそれでいいとして、今はまず半天狗か。玉壺みたいなタイプなのか?」
狛治が鬼だった時は、正面から戦う典型的な戦士タイプとでも呼ぶべき存在だった。
しかし、童磨と玉壺は血鬼術をメインとした戦い方だ。
堕姫や妓夫太郎もまた、どちらかと言えば狛治よりの戦い方だったが、毒を使ったりしていた。
そう考えると、十二鬼月の中では狛治がある意味で特殊だったのだろう。
「そうだな。何と言えばいいか……半天狗の場合は分類の仕方に迷うな」
「どういう意味だ?」
「半天狗の能力は、単純に言えば自分の分身を生み出すといったような能力だ。半天狗そのものはそこまで強い訳ではないにしろ、その分身はかなりの力を持つ」
「また、随分と特殊な戦い方だな」
とはいえ、戦う方としては玉壺のように数で襲ってくるよりは戦いやすいのか?
ただし、玉壺よりも半天狗の方が序列が上という事は、当然ながら半天狗の方が強いのだろう。
だとすると、その分身が余程強いのか。
実際に戦ってみないと何とも言えないな。
そんな風に考えながら空を飛んでいると、やがて地上で行われている戦いが見えてきた。
見えてきたのだが……
「蜜璃?」
そう、何故かそこには蜜璃の姿があった。
鞭と刀が合体したような……連接剣の類とは違う、言ってみれば新体操で使うリボンが刀となったかのような、そんな日輪刀を使い、木で出来た化け物と思しき相手と戦っている。
蜜璃は日輪刀の調整が終わって、数日前に刀鍛冶の里から自分の担当の地区に戻っていった筈だったんだが……恐らく、刀鍛冶の里が襲撃されたという事で、鎹鴉から連絡が行き、援軍としてやって来たのだろう。
蜜璃の件はともかく、炭治郎達は一体どこに? と疑問に思うが、何故か炭治郎達は半天狗の用意した木の化け物と戦うのではなく、山の中にいるらしい。
「狛治、どういう状況か分かるか?」
「俺も半天狗の能力の全てを理解している訳ではないが……恐らくあの木も半天狗の分身が生み出した存在だろう。以前に少しだがそれらしい話を聞いた覚えがある」
「木を操る能力を持つ分身を生み出すか。……こういう場所では厄介な相手だな」
これが大正ではなく平成といった頃になれば、自然のない場所もかなり多くなる。
……あ、でも結局のところ公園とか街路樹とかあるのを考えると、何だかんだと武器になる木が多いのか。
ともあれ、血鬼術として木を操る以上、あの木はただの木という訳ではないだろう。
恐らくはかなり強化されていると考えてもいい。
だとすれば、俺としてはここで放っておくといったような真似をする訳にもいかない。
何よりも、蜜璃は結構苦戦しているように見える。
「狛治、蜜璃を助けるぞ」
「俺はまた見学か?」
「いや、蜜璃の性格を考えれば、自分で倒したいから攻撃しないで欲しいとは言わない筈だ。なら、俺達があの木を操っている分身を倒すのも許容する筈だ」
「それは……だが、あの木を操っているのは所詮分身だ。そうである以上、本体を倒さなければ意味はないぞ?」
「そうなのか? ……なるほど。何で蜜璃があの木を操ってる奴と戦っているのかが分からなかったが、そういう事か」
現在ここに……半天狗のいる場所にいる中で最大戦力は、間違いなく蜜璃だ。
日の呼吸を使える炭治郎も十分に強くなっているのだが、それでもまだ柱の蜜璃には及ばないだろう。
他の面々も、善逸、伊之助……後は禰豆子と、いるかどうかは分からないが玄弥。
そういう連中も相応に強いが、それでもやはり柱の蜜璃には及ばない。
そんな訳で、柱の蜜璃に一番強い相手を任せ、他の面々は本体を追っているのだろう。
分身である以上、倒しても意味はない。
だが、戦闘力という点では蜜璃と互角……いや、ああして見る限りでは、蜜璃を上回っているのは間違いない。
元々上弦の鬼は基本的に柱が数人でようやく互角という相手が多い。
そうである以上、蜜璃だけで半天狗の分身を押さえるというのは、かなり難しいところなのだろう。
「しょうがない。あのままだと蜜璃が危ないから、半天狗の分身を攻撃する……いや、最初は俺もそっちに回るが、蜜璃に狛治の事を話して一緒に行動して貰う。それで構わないか?」
「俺は構わないが、向こうがそれを承知するか?」
狛治がそんな風に尋ねてきたのは、先程玉壺のところで無一郎が狛治に対して疑惑の視線を向けていたからだろう。
実際、もし半天狗の分身と戦っているのが無一郎や……それ以外にも他の相手なら、このような事は考えなかっただろう。
だが、半天狗の分身と戦っているのは、蜜璃だ。
そして蜜璃は、柱の中でも禰豆子に対して友好的に接している。
狛治は元上弦の参という事で禰豆子とはちょっと事情が違うが、それでも俺が味方だと判断すれば、取りあえずいきなり敵対するといったような事はないと思う。
先程の無一郎も、狛治の存在が気にくわないといった態度ではあったが、それでも問答無用で攻撃するといったような真似はしなかったし。
であれば、蜜璃なら恐らく大丈夫だろうという認識がある。
「恐らくは大丈夫だ」
「分かった、今のアクセルは俺の主だ。その主がそう言うのなら、俺もその言葉を信じよう」
最終的にそう言い、狛治は俺の言葉に従うことにしたのだった。
木の枝と根が大量に蠢き、真っ直ぐ蜜璃に向かう。
蜜璃はそんな攻撃を柔らかな動きで回避しつつ、日輪刀を振るって切断していく。
それでもかなり押されているのは分かるが……そんな状況の中に、白炎を放つ。
轟っ、と。
蜜璃に向かおうとしていた木々は、瞬く間に燃えて灰となっていく。
「無事か、蜜璃?」
「きゃーっ! 危ない時に駆けつけてくれるなんて!」
うん、相変わらずだな。
蜜璃のこの態度は、もし何も知らないような自信過剰な者がいたら、即座に勘違いするだろう。
……問題なのは、蜜璃のこの好意的な言動は、そう見せ掛けているだけではなく、その場では本気だという事だろう。
だからこそ、もしそんな蜜璃の言葉でその気になった者が言い寄るような真似をした場合、もしかしたら蜜璃はそのまま流されてしまうように関係を持ってしまうのではないか。
そんな不安を抱くが、取り合えずそれは黙っておいた方がいいか。
「何者だ、貴様! 貴様も弱き者をいたぶる悪か!」
白炎で燃えた向こう側から、不意にそんな怒声が響いてくる。
誰だ? と一瞬思ったが、その声の主が恐らく半天狗の分身なのだろう。
「悪ね。悪か。……そうだな、鬼を滅ぼすという意味では、鬼にしてみれば悪と言われても仕方がないし、今までやって来た俺の行動を思えば、決して正義とは言えないだろうな」
「やはり、悪か! ならば儂が殺してくれる!」
「黙れ」
その言葉と共に、白炎を発生させて分身のいる方に放つ。
同時に百匹近い炎獣を生み出し、分身に向かって攻撃させる。
「蜜璃、事情は理解している。この敵は半天狗……上弦の肆の分身で、こいつを倒すには本体の方を倒す必要があるんだな」
「え? ええ」
きゃーきゃー言っていた状況から元に戻り、同時に俺が放った白炎や炎獣を見て驚いていた状態から我に返ってそう告げる。
「で、その本体の方を炭治郎達が追っている」
コクリ、と。
俺のその言葉に蜜璃が頷く。
どうやら俺の予想は間違っていなかったらしい。
「分かった。なら、俺は炭治郎の方に向かう。お前は……狛治」
「ああ」
俺の言葉に狛治が翼を羽ばたかせながら、降りてくる。
「え?」
当然だが、蜜璃はそんな狛治の姿を見て驚きを露わにする。
それでも即座に攻撃しなかったのは、鬼の気配がなかったからだろう。
額から生えている角から、鬼という風に認識されてもおかしくはなかったのだが。
あるいは、俺が呼んだから降りてきた……つまり俺の仲間であると認識したからか。
「こいつは狛治。俺の召喚獣……まぁ、部下だ。色々と事情があって、上弦の参だったこいつは俺の部下になった。俺は今から炭治郎達の方に向かうから、蜜璃は狛治と一緒に分身の相手をしていてくれ」
「え? 鬼? 上弦の参? ……え?」
一気に情報を与えたのが不味かったのか、蜜璃の口からは混乱した声が漏れる。
とはいえ、ここで狛治が元上弦の参だと言っておかないと、半天狗の分身と戦っている時に向こうからそんな風に言われて蜜璃が動揺し、それが致命傷に繋がる……といったような事にならないとも限らない。
そうならないようにする為には、最初にきちんと狛治の正体を教えておいた方がいい。
蜜璃なら狛治が意図的に攻撃するような真似をしない限り、俺の言葉を信じて狛治と一緒にこいつをどうにかしてくれるだろう。
「狛治、蜜璃と協力して半天狗の分身の相手を頼む」
「了解した。蜜璃だったな。アクセルからの頼みである以上、俺はお前を守ろう」
「きゃあああああっ!」
……何故か狛治の言葉に悲鳴を……それも悪い意味の悲鳴でなく、歓声に近い悲鳴を上げる蜜璃。
狛治は顔立ちがそれなりに整っているので、そんな狛治に守って貰えると言って貰えた事が嬉しかったのだろう。
そんな風に予想するのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730