ドロのお披露目をしてから数日……ドロは、鬼殺隊でかなりの人気となっていた。
やはり空を飛んで移動が出来るというのは、鬼殺隊の剣士にとっても嬉しい出来事だったのだろう。
呼吸の力によって身体能力が高まっているとはいえ、それでもやはり地面を走って移動するよりもドロに乗って空を飛んだ方が速いのは間違いない。
それに日輪刀を隠したりといったような必要もないし。
問題なのは、やはりその目立つ外見だろう。
一応移動するのは夜だけとなっており、その際も街中には近付かないようにとなっている。
これが昭和や平成なら、夜になっても明かりが消えない場所も多いのだろうが。
大正のこの世界においては、まだ夜は暗いというのは常識だった。
そんな訳で、ドロを使って村や街から離れた場所に降りれば、そこまで問題にはならない。
ドロの操縦も、そこまで難しいものではないので多くの者が操縦出来るだろうし。
ドロはバイストン・ウェルの人間……剣と魔法のファンタジー世界の者であっても操縦出来るようにとショットやゼットが開発したオーラボムだ。
そうである以上、そういうファンタジー世界の住人よりはまだ機械に慣れている者達だけに、ドロの操縦はそれなりに楽に覚えられたのだろう。
そんな風に鬼殺隊の方では色々と活発に動いていたが……それと同時に、ホワイトスターの方でも重要な出来事が起きそうになっていた。
「アクセルさん、父上は……本当に大丈夫なのでしょうか?」
輝利哉がバルシェム生成チャンバーの中にいる耀哉を見ながら、そう言ってくる。
そう、ここには現在輝利哉やあまね、それ以外にも輝利哉の妹達といったように、産屋敷家の面々が揃っていた。
その理由が……
「大丈夫だ。レモンから話を聞いただろ? 耀哉の治療は終わった」
そう、バルシェム生成チャンバーで治療をしていた耀哉が、何の問題もなく治療が完了した為だ。
勿論治療が完了したとはいえ、それはあくまでも現在においての耀哉の身体の悪い場所の治療をしたというだけで、呪いはまだ解呪されていない。
それ以外にも、耀哉に義眼を移植する手術はまだ行われていない。
呪いによって耀哉の視力がなくなった以上、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、耀哉の呪いが解呪されると視力も元に戻るといった可能性は否定出来ない。
その時、もう義眼の移植手術をしていたとなれば、耀哉も納得出来ないだろう。
そんな訳で、耀哉に対する義眼の移植手術は解呪が終わった後での話となっていた。
ゴポリ、と。
バルシェム生成チャンバーの中にある液体が排出され始めた。
そうして内部の液体が全てなくなると、量産型Wが耀哉をバルシェム生成チャンバーから出して運んでいく。
「アクセルさん」
「ああ、行ってやれ」
あまねに最後まで言わせずにそう告げると、あまねは急いで俺の前から立ち去る。
輝利哉を始めとした他の子供達も、そんなあまねを追っていく。
「それにしても、思ったよりも治療に時間が掛かったな」
この場に残ったレモンにそう尋ねる。
俺の知ってる限りでは、バルシェム生成チャンバーというのはかなり治療の効果が高い。
そんなバルシェム生成チャンバーであっても、耀哉の身体を治療するのにそれなりの日数が必要となった。
それも以前バルシェム生成チャンバーに入った時に、基本的な情報があったにも関わらずだ。
「呪いというのは、かなり厄介なんでしょうね。……これからの事を考えると、その辺をどうにかして改良した方がいいと思うけど」
「だろうな」
レモンの意見には俺も賛成だった。
何しろ、これから俺達が接触する世界がどういう世界なのかは分からない。
バイストン・ウェルのようなファンタジー世界や呪いの存在する鬼滅世界の事を考えると、これからも呪われた人物の治療をする必要が出て来る可能性は否定出来ない。
このバルシェム生成チャンバーというのは、シャドウミラーにとって非常に大きな意味を持つ。
これのおかげで、重病や重傷が回復してシャドウミラーに所属するようになったり、あるいは所属はしなくても協力的な立場になったりといった者は今まで結構な人数がいる。
そうである以上、やはり今回のように治療に時間が掛かるというのは、色々と問題だろう。
時間が掛かっても治療が出来るというだけで、悪い話ではないのだろうが。
「とはいえ、これが科学的な理由なら技術班の方で対処も出来るんでしょうけど……呪いとなるとちょっとね」
レモンもエヴァとの訓練を受けており、魔法の類はそれなりに使える。
だが、魔法と呪いは違うし、それをバルシェム生成チャンバーにどう影響させるかとなると、それもまた難しい。
そもそもバルシェム生成チャンバーはホワイトスターに元々存在していた装置だ。
レモンの能力からして、どのように動いているのかといったような事は判明してるだろうが、それに呪いとかをどうこうするといった機能を増設するのは……少し難しいらしい。
「あの……身体を拭き終わりましたけど、あの人がまだ目覚めないのですが」
量産型Wと一緒に耀哉を運んで世話をしていたあまねが、顔を出して不安そうにそう言ってくる。
あまねにしてみれば、ホワイトスターで行われている治療は完全に理解不能のものだ。
そうである以上、バルシェム生成チャンバーから出したのにまだ目覚めない耀哉を心配するのは当然だろう。
「心配しなくてもいいわ、今はまだ眠ってるだけだから。もう少しすれば自然に目覚めるわ」
レモンの説明に安堵するあまね。
やはり主治医であるレモンの言葉は、説得力があるのだろう。
……俺が同じような事を言っても、多分あまねは素直に納得はしなかったと思うし。
「そうですか。ありがとうございます」
そう言い、耀哉のいるベッドに戻るあまね。
「随分といい奥さんね」
「だろうな。実際耀哉の足りない部分をあまねが補っているのは間違いない。そういう意味では、あの2人はいい夫婦だよ。仲もいいしな」
というか、仲がよすぎだろう。
耀哉は呪いの影響もあって決して身体が健康ではないのに、輝利哉を始めとして何人もの子供がいるというのは……うん、頑張ったんだな耀哉。
それともあまねがいわゆる床上手という奴なのか。
「アクセル? どうしたの?」
「いや、何でもない。夫婦仲がいいなと思ってな」
「あら、別に夫婦仲に限らなくても、恋人同士であってもそれは変わらないわよ? もしアクセルが耀哉と同じようにバルシェム生成チャンバーで治療したら、私もあまねみたいにしっかりと世話を焼くでしょうね。……まぁ、その場合は私だけじゃなくて、他の子達も同じだけど」
「というか、そもそも俺はバルシェム生成チャンバーを使えるのかといった問題もあるけど」
バルシェム生成チャンバーは、あくまでも生身の身体を持つ者を対象として使われる。
混沌精霊の俺がバルシェム生成チャンバーを使った場合、どうなるか。
俺の身体は基本的に魔力で構成されているのだから、それがどう関係するのか疑問だった。
「そう言えばそうね。後でちょっと試してみておいた方がいいかもしれないわね。いざという時に困らないように」
そんな風に言うレモンの言葉に頷きつつ、耀哉の件は産屋敷一家に任せて俺はレモンと2人で話をする。
とはいえ、それは俗に言う甘い会話という訳ではない。
「へぇ。ならウィル・ウィプスの方は修復が結構進んでるのか?」
「ええ。ブリッジがかなり被害を受けているけど、他の場所を参考にして修復しているわ」
「だろうな」
ウィル・ウィプスそのものの被害は、そこまで大きなものではない。
いや、あの戦いに参加したのだからそれなりに被害を受けてはいるものの、ゴラオンのオーラノバ砲が直撃したブリッジに比べれば、そのダメージはかなり少ないだろう。
……この場合はブリッジの被害が大きすぎたというのが正しいか。
そんなブリッジだけに、修理するのは技術班であってもそれなりに苦労しているらしい。
これでウィル・ウィプスがオーラバトルシップではなく普通の機械で出来た軍艦であれば、修理するのにそこまで苦労するようなこともなかっただろうが。
「なら、ウィル・ウィプスじゃなくてゴラオンとかヨルムンガンドとかグラン・ガランを優先してもいいんじゃないか?」
「でも、ウィル・ウィプスがオーラバトルシップの基本なんでしょう? なら、やっぱりまずはそちらでしっかりとした技術を入手したいわ」
そう言われると、俺もそれ以上は何も言えない。
実際にはウィル・ウィプスがオーラバトルシップの基本であるのは間違いないものの、オーラバトルシップは個々によって大きく性質が違っている。
そうである以上、基本云々というのはあまり役に立たないと思うんだが。
ただ、技術班を率いるレモンがそのように判断したのなら、それで間違いはないのだろう。
そんな風に会話をしていると、やがてあまねが姿を現す。
「主人が目を覚ましました」
「そう、なら行きましょうか」
そう言い、レモンは俺と一緒に奥に向かう。
耀哉は不思議そうに身体を動かしていた。
「耀哉、どうした?」
「アクセルかい? どうも身体の調子がいつもと違ってね」
そう言いながらも、やはり耀哉の視線は俺のいる方に向けられてはいるものの、微妙に逸れている。
バルシェム生成チャンバーで治療をしても、やはり視力は戻らなかったのだろう。
この辺は前もってレモンに言われていたので、耀哉も特に気にした様子はない。
視力を失ってからも普通に生活をしてきたのだ。
そうである以上、治療を終えても視力が戻っていないところで問題はないのだろう。
「調子が悪いのか? レモンの治療ならそんな事はないと思うんだが」
「いや、逆だよ。調子がよすぎる。……以前ホワイトスターに来て治療して貰った時もそうだったけど、今こうしているのは……正直、調子がよすぎて困っているくらいだ」
耀哉の言葉にレモンが呆れの視線を向ける。
一体何故呆れの視線を? と疑問に思ったのだが、レモンは俺の様子を気にせず口を開く。
「私としては、寧ろあの状況で普通に生活出来ていた方が驚きよ。言っておくけど、今の状態は調子がいいんじゃなくて、普通の状態なの。木乃香の魔法で回復しても、それも完全じゃないわ。それに鬼滅世界に戻れば自覚のあるなしはともかく、呪いの影響で身体は弱っていった筈だし」
なるほど。
つまり耀哉にとって身体の調子がいいと思っていたのは、実は普通なら身体の調子が悪い状態だった訳だ。
普通に考えれば、かなり無理のある話だが……下手に耀哉の精神力が強かったので、痛みに我慢出来ていたのが問題だったのだろう。
「なら、どうするんだ? 今日これからもう解呪をするのか? 必要なら木乃香達を呼んで来るが」
「いえ、解呪は明日……だと少し早いわね。3日くらいは様子を見てからにしましょう」
「何? それは少し困るね。見ての通り、私の身体の調子はこれまでにないくらいにいい。鬼殺隊の指揮もあるので、出来れば早くしてくれると嬉しいのだが」
「駄目よ」
鬼殺隊の柱であれば、耀哉にこう言われれば大抵の事は受け入れるだろう。
だが、レモンは柱ではない。
耀哉の言葉にも、はっきりとNoを突きつける。
「いい? 身体の調子がいいのは分かってるわ。けど、耀哉にとって今の状況は決して普通という訳ではないでしょう? それはさっきの言葉からも明らかよね。だから、耀哉にはまずその状態に慣れて貰う必要があるの」
レモンの言葉に耀哉は無言のままだ。
その言葉に納得してるのか、それとも最後まで話を聞いてから何かを言おうとしてるのか。
その辺は正直なところ俺にも分からなかったが、レモンの言葉は続く。
「解呪をするのなら、万全の状態でやりたいわ。中途半端な状況で解呪をして、その結果中途半端に呪いが残るといったような事になったら困るでしょう? 解呪には、本人の意識というか認識も大きく関わっているらしいから、まずは今の状態に慣れてちょうだい」
その言葉には、耀哉も反論出来なかったのだろう。
自分の身体のことだけに、今の自分の身体が色々と特殊な状態にあるというのは、それこそ本人が一番納得していたのは間違いない。
そうである以上、今は素直にレモンの言葉に頷く。
そんな耀哉を、あまねや輝利哉、他の娘達も心配そうに眺めていたものの、耀哉が素直にレモンの言葉に従ってベッドで横になったことに安堵した様子を見せる。
「解呪の件は、こっちで準備しておくわ。義眼の方も……そうね。行冥の件で少し改良点が出て来たから、期待してちょうだい」
レモンの様子からすると、一体どんな義眼になるのやら。
下手をすれば、レーザーよりも凶悪な機能が内蔵されそうだな。
鬼殺隊を率いる耀哉の立場からすれば、いざという時に備えるのはそんなに悪い話ではないだろうが。
いつも誰か護衛がいるとは、限らないのだから。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730