転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0296話

 ネギと一触即発だったエヴァ。それが何故かいきなり倒れ込んだ為に、決闘どころの騒ぎでは無くなっていた。

 

「ちょ、ちょっと、どうしたんですか! エヴァンジェリンさん!?」

 

 ネギが慌てた様子で茶々丸の腕の中で気を失っているエヴァに声を掛けるが、気を失っている状態では答えようがない。

 

「アクセルさん、ネギ先生。申し訳ありませんがマスターを2階のベッドに寝かせたいので手伝って貰えませんか?」

「あ、はい。分かりました」

「……ま、しょうがないか」

 

 溜息を吐き、ネギや茶々丸と一緒に階段を上がっていく。

 そう言えば何度かエヴァの家には来ているが、2階に上がるのは初めてだな。

 そんな風に思いつつ、エヴァの私室へと足を踏み入れる。

 基本的にはベッドの他に本棚があるくらいで、普通の私室と言ってもいいだろう。……茶道で使うような畳敷きの一画が無ければ、だが。

 と言うか、洋室と和室が合わさって微妙にミスマッチな印象を受ける部屋だ。

 

「な、何か凄く苦しそうですよ?」

「無理もありません」

 

 俺が部屋に驚いている間に、茶々丸とネギは気を失ったエヴァを素早くベッドへと寝かせ付け、その様子を心配そうに見つめていた。

 

「登校地獄の呪いにより、魔力が減少した今のマスターは元の肉体である10歳の少女のそれと全く変わりませんので」

「え? そうなんですか?」

 

 驚きの声を上げるネギだが、俺もその言葉に内心で驚いている。封印により弱体化しているというのは知っていたが、まさか10歳の少女と変わらない身体能力だとは。なるほど、それなら確かにその辺のウィルスにやられる可能性もある訳だ。

 

「アクセルさん、ネギ先生。私はこれから伝手のある大学から良く効く薬を貰ってきますのでその間、マスターを見て貰えませんか? ……猫に餌もやらないといけませんし」

 

 最後はボソッと口の中で呟いただけだったが、俺の耳にはしっかりと聞こえていた。茶々丸も実は相当3-Aに毒されてきているんじゃないだろうか。

 

「えぇっ、僕達がですか!?」

「はい。お2人になら任せられると判断しました」

「いや、ちょっと待って下さい。僕とエヴァンジェリンさんは……」

「では、お願いします」

 

 ネギが言い募ろうとしたが、茶々丸はそれをスルーして頭を下げてからエヴァの私室を出て行った。

 

「……どうしよう?」

 

 どこか不安そうな様子で俺の方へと視線を向けるネギ。

 

「ま、頼まれたんだしやるしかないだろ」

「う、うん。……でも僕、看病なんてした事が無いんだけど」

「それは俺も同じだ。ま、何とかなるだろ。漫画やら小説やらドラマやらで似たような場面は何度か見た事あるし」

「へぇ、アクセル君って漫画とか読むんだ。ちょっと意外かも」

「そうか? 別に普通の……」

「ケホッ、ケホッ」

 

 俺の言葉に割り込むようにして、エヴァが咳き込む。

 

「わ、わわわ。ど、どうしようアクセル君」

「そうだな……ネギ、お前は魔法学校を卒業したんだよな?」

「え? うん」

「なら回復魔法とか使えないのか?」

 

 俺のその質問に、ネギは力無く首を振る。

 

「僕の治癒呪文は外傷……擦り傷くらいにしか効果がないんだ」

「そう、か」

 

 魔法と言っても個人個人で得意な属性があるが、ネギのそれは回復魔法には向いていないのだろう。

 

「アクセル君は?」

「俺も同じくだ。と言うか、現状での俺は基本的に炎の魔法とこの前見せた操影術くらいしか使えないな」

「そっか。うーん、じゃあどうすれば……」

「喉、喉が……」

 

 まるでタイミングを見計らっていたかのように寝言を呟くエヴァ。

 にしても、喉……ねぇ。

 

「えっと、水……は、飲んでくれない。お茶? コーラ?」

 

 水差しを口元に持っていくが、無意識にだろうそれを拒否するエヴァ。そしてお茶やコーラ……って、おい。

 

「さすがにコーラは無いだろう」

 

 ネギが差し出そうとしたコーラを止める。

 

「じゃあ何を飲ませたらいいと思う?」

「普通なら風邪を引いた時は湯冷ましとかスポーツドリンクなんだが……知っての通りエヴァは吸血鬼だ。なら分かるだろう?」

「え? 血!?」

「正解。取りあえず献血だとでも思って吸わせてやれ」

「僕だけ? アクセル君は?」

 

 自分だけが血を吸わせるというのがイヤだった――と言うか、怖かったのか――そう言ってくるネギ。

 

「悪いが、俺の血は魔力量が多すぎるらしくてな。一種の劇薬的な扱いらしい。通常の状態のエヴァならともかく、病気で弱ってるエヴァには厳しいだろう」

 

 そもそも別荘の中である程度の魔法が行使出来る状態になっていたエヴァでも数滴飲んだだけで飛び退いた程なのだ。現在の弱っているエヴァに俺の血を与えたりしたら冗談無しに命に関わる可能性が高い。

 

「アクセル君、エヴァンジェリンさんに血を飲ませた事あるんだ」

 

 ボソッと小さな声で呟き、何かを考える仕草をしながらも指をそっとエヴァの口元へと伸ばす。

 

「す、少しだけですよ。本当に少しだけですからね」

 

 ちうちうとネギの血を吸うエヴァ。その後も、暑いと言えばカーテンを閉め、汗で冷えて寒いと言えばエヴァの服を着替えさせた。

 ちなみに前者が俺で後者がネギの担当だ。

 

「つ、疲れたね……」

「そうだな」

 

 病人の世話というのがこうも疲れるものだとは思いもしなかった。

 だが、その甲斐もあり現在のエヴァはスヤスヤとベッドで眠っている。

 丁度そんな時だ。エヴァの口から寝言が漏れたのは。

 

「ん、サウザンドマスター……待て。……やめろ……」

「サウザンドマスター? それって……」

 

 エヴァの寝言に、チラリとネギの方を見る。そこにはどこか真面目な顔でエヴァを見つめるネギの姿があった。

 

「……アクセル君。女の子の夢を覗き見するのっていけない事だよね」

 

 やはり父親の事が気に掛かる、か。

 

「さて、どうだろうな。だがネギとエヴァは一応現在敵対中だろう? なら情報収集的な意味ではありなんじゃないか?」

「本当にそう思う?」

「ああ」

「……その、悪いんだけどアクセル君も一緒に来てくれないかな」

「来て? どこに?」

「エヴァンジェリンさんの夢の中」

 

 そう言って、杖を構えるネギ。

 

『ラス・テル・マ・スキル・マギステル 夢の妖精 女王メイヴよ、扉を開けて夢へといざなえ』

 

 その呪文をネギが唱え終わると、俺はいつの間にかどこかの砂浜に立っていた。……全裸で。

 

「おい、ネギ? 何で全裸?」

「あ、ゴメン。そういう仕様なんだ」

 

 この魔法を作った奴は一体何を考えてこんな仕様にしたのやら。

 そう思いつつも、周囲を見ると海辺の近くに2人の人影を発見する。

 金髪のロングヘアーをした長身の女と、ローブを被っている魔法使いらしき男。

 ……ローブを被っている魔法使いとなると、俺が吸収した魔法使いを思い出してどうもいい気分がしないな。

 そう思い、視線を金髪の女の方へと向け……ソレの存在に気が付く。

 

「え、あれ? あれってチャチャゼロか?」

 

 そう。金髪の女が持っている人形。それはどこからどう見てもキリングドールのチャチャゼロだ。つまりは……

 

「あの女がエヴァンジェリン?」

「これが昔のエヴァンジェリンさん? 今と全然違う……」

 

 ネギもまたあの金髪の女がエヴァだと認識したのか、驚きの表情で眺めていた。

 当然の事ながら、そんな俺達を他所に2人の会話は続いていく。

 

「ついに追い詰めたぞサウザンドマスター。まさかこの極東の島国まで私から逃げ続けるとはな。今日こそ貴様の血肉を私の物にしてくれる」

「『人形使い』『闇の福音』『不死の魔法使い』エヴァンジェリン……恐るべき吸血鬼よ。己が力と美貌の為にどれ程の者を毒牙にかけた? その上、俺を狙い何を企むかは知らないが……諦めろ。何度挑んでも俺には勝てんぞ」

 

 ローブから微かに覗く赤毛とどこかネギに似た顔立ちが、あのサウザンドマスターと呼ばれた人物とネギの関係を如実に表している。

 

「うわ、この人がサウザンドマスター。僕のお父さん? か、格好良い。すごいすごい。まさに僕のイメージ通りの最強の魔法使いだ」

 

 ネギもまた、そんなサウザンドマスターを見て喜色満面に喜んでいた。

 

「パートナーもいない魔法使いに何が出来る! 行くぞチャチャゼロ!!」

「アイサー、御主人!」

 

 エヴァとチャチャゼロがそう叫びながらサウザンドマスターへと襲い掛かっていく。それに対してサウザンドマスターが取った手段は、ただ自分の場所を調整するかのように小さく動いただけだった。

 ……調整?

 その様子に微妙に違和感を覚えたが、エヴァはそれに構わずにサウザンドマスターへと向かって突っ込んでいく。

 隣ではネギもまた、2人の魔法使いによる派手な魔法戦が起きると予想していたのだろう。どこか期待した表情で2人の激突を眺めていたが……

 

「うわぁっ!」

 

 サウザンドマスターのすぐ手前でエヴァンジェリンの踏んだ地面が崩れ去り、チャチャゼロごとその地面の穴へと埋まる。

 

「こ、これは!?」

「落トシ穴ダ、御主人!」

「見れば分かる!」

 

 そこから先は、何と言うか酷かった。落とし穴に用意された水か何かで碌に身動きが出来ないエヴァ。そこにサウザンドマスターがニンニクや長ネギをまるで料理でもするかのようにドボドボと豪快に放り込み、かき混ぜる。吸血鬼ならニンニクが苦手というのは理解出来るが、何故長ネギも苦手なんだろうな? そんな風に思っている間に、長身の女だったエヴァは今の俺も知ってる同年代程度の少女の姿へと変化する。……と言うか、会話を聞くには幻術で姿を変えていたらしい。魔法で勝負しろと告げるエヴァに、自分は魔法学校中退で5~6個しか魔法を使えないと自慢気に言い張るサウザンドマスター。千の呪文の男と書いてサウザンドマスターと読むのに実は10個も魔法を使えないとかどうなんだろう。

 サウザンドマスターに、自分のどこがイヤなのかと尋ねるエヴァだがガキだったりおばはんだったりとまともに相手にはして貰えず……かなりの魔力を使って登校地獄の呪いを発動する。

 ……目算だが、俺のSPにして100以上は使った呪いじゃないだろうか。その量の魔力を暴発させずに呪いを完成させるその技量は確かに英雄と呼ばれるに相応しいだろう。……5~6個しか呪文を使えない千の呪文の男であったとしても。

 

 

 

 

 

「……はっ!?」

 

 その声と共に、視界が再び変わる。目に入ってきたのは、先程まで俺達が存在した海辺の砂浜ではなくエヴァの私室だ。

 

「アクセル?」

「起きたのか」

「ああ。……ぼーや?」

 

 俺に声を掛けた事により、自分のベッドに顔を突っ伏して眠っているネギに気がつくエヴァ。

 

「何でこいつがこんな所に……」

「茶々丸に言われて俺と2人で看病してたんだよ」

「茶々丸に? 貴様が?」

 

 疑わしそうなエヴァの視線に苦笑を浮かべながら口を開く。

 

「とは言っても、大部分をやったのはネギだがな。俺がやったのはカーテンを閉めるくらいだ」

「ふん、なるほどな。お前らしいと言えばらしい話だ。……ん? 起きたか」

 

 俺とエヴァが会話をしているとそれが五月蠅かったのかネギが目を覚ます。

 

「ん……はっ、しまった。寝てた。大丈夫ですか、エヴァンジェリンさん」

「大丈夫だ。見た所、随分と世話になったようだから今日の所は見逃してやる。風邪は治ったからさっさと帰れ」

 

 そっぽを向いてそう告げるエヴァだが、その頬は照れで赤く染まっていた。

 それに気が付いたのか、気が付かないまま無意識なのか。とにかくネギは持っていた決闘状を懐へとしまい込む。

 

「取りあえず今日はこの辺で失礼します。決闘状も今日は仕舞っておますね。じゃあ、僕はこの辺で失礼します」

 

 ペコっとばかりに頭を下げて、部屋を出ようとするネギ。だが、その慌てぶりが気になったのだろう。どこか観察するようにネギを見ていたエヴァがふと気が付く。

 

「……おい、貴様。何故寝ながら杖を握ってたんだ?」

 

 エヴァのその言葉にビクッと震えるネギ。

 それだけでネギが何をしたのか分かったのだろう。ピクピクと頬を引きつらせる。

 

「まさか、貴様……私の夢を?」

 

 ゴゴゴ、とばかりに魔力を溢れさせるエヴァ。

 

「何を見た!? どこまで見たんだ。言え貴様ぁっ!」

「べ、別に何も……」

「嘘をつけーっ! 貴様等は親子揃って……殺す! やっぱり今殺す!」

「うひぃーっ!」

 

 目の前で行われているやり取りを見ながら、溜息を一つ。

 

「やれやれだ」

「……おい、アクセル。まさか貴様もお咎め無しだと思ってるんじゃないだろうな?」

 

 ギロリとした視線で俺を睨みつけるエヴァだった。

 その後は、茶々丸が帰ってくるまでネギと共にエヴァから逃げ回っていたのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    ???
    ???

撃墜数:376

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