炭治郎達と行冥の件を引き受けたエヴァは、早速行冥の様子を見に俺と一緒に戻る事になった。
エヴァにしてみれば、まだリハビリが終わっていないような相手との模擬戦はあまり意味がないといった様子ではあったが。
それでも俺の言葉を素直に聞いてくれる辺り、エヴァもまた行冥に興味はあるのだろう。
以前耀哉達がホワイトスターに来た時、エヴァは実弥と模擬戦を行っている。
実際には模擬戦とは言えないような……それこそ実弥にしてみればエヴァを殺しても構わないといった様子の戦いだったのだが、そんな実弥をエヴァは容易にあしらった。
勿論、実弥としても最大の力を発揮したといった訳ではなく、ある程度の余力を残しての戦いではあったのだろうが。
そんなエヴァが何故行冥に興味を持ったのか。
やはり行冥が義眼を入れる為、素直にシャドウミラーに協力を頼んだというのが大きいんだと思う。
結果として、それがエヴァの興味を惹いたと考えれば、行冥のその選択は二重の意味で間違っていなかったことになる。
そうしてエヴァと……当然ながらエヴァの保護者の茶々丸が、俺と一緒に行冥がリハビリを行っている場所に到着する。
「アクセル殿、そちらが……」
行冥が改めてエヴァを見る。
エヴァがどれだけの力を持っているのかは、実弥との戦いの場に行冥もいたのだから知っているだろう。
しかし、その時の行冥はまだ目が見えなかった。
そんな行冥だけに、こうして間近で実際にエヴァの姿を見て何か思うところがあったのだろう。
「ああ、エヴァだ。行冥と会うのは2回目だな。もっとも直接その姿を見るのはこれが初めてになるだろうが。エヴァ、こっちが行冥だ」
「ふむ。……それなりに鍛えられているな。まぁ、鍛えられているという点では以前の男もそれなりに鍛えられてはいたが」
エヴァは行冥を見てそう告げる。
感心している訳でも、侮っている訳でもなく、純粋に自分が思ったことをそのまま口にしたといった感じか。
「ふむ。お前は具体的にどのような戦い方をする? 見る限りでは速度よりも力を重視するようだが」
「うむ、その通りだ」
行冥はエヴァの言葉にそう返す。
俺に対しては丁寧な言葉遣いだが、エヴァに対しては普通の言葉遣いだな。
まぁ、エヴァもその辺は特に気にした様子はないが。
勿論、自分を馬鹿にするような言葉遣いといったような真似をした場合は、笑って受け流すといったような真似はしない。
しかし、こうして普通に話し掛けられるといった程度なら、何の問題もないのだろう。
「鬼殺隊では日輪刀とやらを武器にすると聞いてる。それに、実際、以前私が戦った男も日輪刀を持っていた。だが、お前は日輪刀は持っていないのか?」
「治療の為にここに来ているし、何よりも私の日輪刀は普段の生活で持ち歩けるような物ではない」
「……アクセル?」
エヴァが行冥の言葉を理解出来なかったのか、どういうことだといった様子でこちらに視線を向けてくる。
「行冥の日輪刀は、名前こそ日輪刀だが、実際には鎖つきの鉄球なんだよ」
「それで日輪刀と呼んでもいいのか?」
不思議そうなエヴァの言葉。
その気持ちは分からないでもない。
実際、俺も行冥の持つ鉄球を日輪刀と呼んでもいいのか? と疑問に思うのだから。
とはいえ……
「鬼殺隊では普通に日輪刀と呼ばれてるみたいだし、日輪刀でいいんじゃないか?」
「むぅ」
「アクセルさん。マスターが不満なのは、日輪刀……日本刀なのに、日本刀ではないのは、日本の文化を好むマスターの嗜好に合っていないからだと思います」
「茶々丸!」
自分が不満を抱いている理由を話されたエヴァは、半ば焦りながら茶々丸の名前を呼ぶ。
そんなエヴァと茶々丸の様子を見ていた行冥は、口元に笑みを浮かべていた。
自分が笑っていることに、行冥本人は気が付いているのか、いないのか。
その辺に関しては俺も分からないが、エヴァが行冥の知っている鬼……鬼滅世界の鬼と違うというのを分かってくれるといいんだが。
「すいません、マスター」
「ぐぬぬ……まぁ、いい。それで、どうする? 今すぐに模擬戦を行うか? 行冥だったか。お前の武器はここにはない以上、模擬戦をやるにしても実力を発揮出来ないのだろう?」
「呼吸を使ってもいいのなら、ある程度の戦闘は出来るだろう。私はホワイトスターに来た事によって、鬼殺隊の者達に迷惑をかけている。そうである以上、少しでも強くなる必要があるのだ。それに……目が見えるようになった事によって、どのような戦い方になるのかを実際に確認する必要がある」
「ふむ」
行冥の様子を見て、エヴァは少しだけ感心したように鼻を鳴らす。
今の行冥の言葉は、エヴァに若干ではあっても感心させるには十分なものだったらしい。
「よかろう。では、少し試してみるか。安心しろ、あの実弥とかいう男と同じように、手加減はしてやる」
その言葉に行冥はエヴァと向き合って構える。
俺は茶々丸と一緒に、エヴァと行冥から離れる。
「どうなると思う?」
「マスターの勝敗ではないですよね?」
確認するような茶々丸の言葉に頷く。
実際、日輪刀を持っている実弥であっても、エヴァにはあっさりと負けてしまったのだ。
「当然だ。……というか、もし行冥がエヴァに勝てるのなら、それはある意味もの凄いぞ」
シャドウミラーの中で生身の戦いに限定した場合、エヴァに勝てる奴はどのくらいいるのやら。
ちなみにムラタや刹那のように神鳴流を使えるのなら、戦い方次第で勝てるかもしれない。
俺も……まぁ、念動力やら魔力やら、それ以外にも特殊能力の類を使えば、ある程度どうにかなるだろう。
というか、ぶっちゃけ俺の血の原液をそのままエヴァに飲ませられれば、その時点で俺の勝利は決定したりするのだが。
エヴァにとって、俺の血は魔力が濃密すぎて薄めなければとてもではないが飲めないらしいし。
そういう意味では俺が意外とあっさり勝利出来そうな気がするな。
「では、あの行冥という方がどれだけマスターとの戦いに耐えられるか、でしょうか?」
「そんな感じだな」
行冥にしてみれば、今はとてもではないが本調子という訳ではない。
産まれた時からなかった視力が手に入り、その視力という感覚に身体を慣らす。
それだけではなく、武器も手にしていない。
そんな今の状況において、エヴァと戦って勝てる可能性は皆無だろう。
これがエヴァ以外の相手なら、全集中の呼吸によって高まった身体能力で押し切るといった真似も出来るだろうが。
元々、行冥は柱の中でも純粋に力だけならトップクラスだ。
……まぁ、それはあくまでも柱、人間の中でのトップクラスであるというだけあって、当然のようにエヴァには劣る。
「ぬ……ぬおおおおお!」
そんな俺の予想を裏付けるような光景が、現在視線の先にあった。
2m以上の身長を持つ行冥が、小柄なエヴァを全力でどうにかしようとしているものの、エヴァは掴みかかってくる行冥の手を自分の掌……ではなく、指だけで受け止めている。
「ああ、マスター。楽しそうで何よりです」
何故かハンカチで目元を拭う様子を見せつつ、茶々丸が呟く。
楽しそう……楽しそうか、あれ?
いやまぁ、エヴァの性格を考えると確かにこの状況を楽しんだりすると思うんだが。
「ほら、これでどうだ?」
「ぬぅっ!」
行冥の力を受け流すようにするエヴァ。
そんなエヴァの行動に一瞬バランスを崩す行冥だったがそれでもすぐに体勢を立て直す。
この辺り、さすが柱といったところか。
こうして見ると、行冥がエヴァに一方的にやられている雑魚のようにしか見えない。
だが実際には、当然ながら行冥は雑魚などといった弱者ではない。
その実力は、それこそ一流と呼ぶに相応しい。
しかし、この場合は行冥にとって相手が悪いとしかいいようがない。
行冥は確かに一流と呼んでもいい実力者だろう。
だが、エヴァはそんな行冥と比べても、更に上の実力を持っているのだ。
そして、当然ながらそのような実力の持ち主でもないと、シャドウミラーで戦闘訓練を行うなどといったような真似は出来ない。
「何だかんだと言いながらも、エヴァはそれなりに行冥に友好的だな」
「そうですね。マスターにしては少し珍しいですが」
茶々丸の言葉に、やっぱりそういうものかと納得する。
とはいえ、エヴァを知っている者なら、茶々丸の言葉に同意する者も多いのだろうが。
そんな風に考えている間に、今度は力比べから格闘戦に移っていく。
当たれば岩でも破壊するのではないかと思える程に強力な一撃を振るう行冥。
エヴァはそんな行冥の攻撃を次々にいなし、回避し、あるいは防ぐ。
防戦一方のエヴァだが、当然ながらそれはエヴァにしてみれば意図的に行っている事だ。
もしエヴァが本気になった場合、その一撃は間違いなくあっさりと行冥を沈めるだろう。
行冥も今までのやり取りでそれが分かっているからこそ、何とかエヴァの防御を崩そうとしているが、そう簡単にはいかない。
振るわれる行冥の一撃は、エヴァに有効打を与えるような真似はとてもではないが出来なかった。
そんなやり取りが続き……やがて1時間程が経過する。
「その辺りにしておけ。これ以上はやっても意味がない」
エヴァのその言葉と共に、行冥は拳を止める。
1時間程全身運動をしていても、行冥は少し息が荒くなっているだけだ。
攻撃が回避するというのは、想像以上にスタミナを消費する。
そのような状況でもこうして軽く息が荒くなっている程度なのは、さすがと言うべきか。
「感謝する。おかげで、現在の自分の状況をしっかりと確認出来た」
「そうか。まぁ、そこそこの実力者だったとは思うぞ。呼吸か。身体強化という意味では興味深いな」
実弥の時はすぐに戦いを終わらせたものの、行冥との戦いではしっかりとその実力を見た。
そのおかげで、全集中の呼吸によって高まった身体能力はエヴァの興味を惹くには十分だったのだろう。
これでエヴァが呼吸を習って……いや、エヴァが誰かに教えを請うといったような光景は、ちょっと想像出来ないな。
というか、呼吸というのはあくまでも鬼殺隊が……人間が使う技術だ。
混沌精霊の俺や吸血鬼のエヴァが呼吸を使えるかどうかは、正直なところ分からない。
俺としては、出来れば使ってみたいとは思うんだが。
ただ、俺の場合は混沌精霊でるあるという以外にも、問題があるんだよな。
それが、俺のステータスだ。
ステータスを確認すると、スキル欄は全て埋まってしまっている。
ネギま世界の魔法をスキルで習得出来たのを考えると、多分……本当に多分だが、呼吸もスキル欄に空欄がないと習得出来ないような気がしていた。
勿論何でもかんでもスキル欄が必要という訳ではない。
例えば、PTの操縦とかはそういうスキルが存在しないが、普通に操縦出来る。……ああ、でもこれは射撃とか格闘とかのステータスがあるから、例としては悪いか。
だとすると、簡単な料理は出来るが、ステータスに料理というスキルがある訳ではない。
つまり、スキルの欄になくてもどうにか呼吸を習得出来るかもしれない訳だ。
可能性としては、十分にあると思う。
とはいえ、多分難しいだろうなとは思っているが。
「アクセル」
「どうした? もういいのか?」
行冥を向こうに残したエヴァが、俺に近付いてきて声を掛けてきた。
エヴァは俺の言葉に笑みを浮かべて頷く。
笑みとはいえ、それはニヤリといった表現が相応しいような笑みだったが。
「ああ。それなりに面白いものを見せて貰ったからな。……先程言った事は事実か?」
「先程? 何の事だ?」
「私に鍛えて貰いたい者がいるという話だ。その者達は才能豊かな者達なのだろう?」
「俺はそう思っている」
炭治郎が主人公で、善逸や伊之助がその仲間だというのもあるが、それを抜きにしても十分に才能があると俺は判断していた。
本人達にその自覚があるかどうかは、また別の話だが。
実際、カナヲとの機能回復訓練で炭治郎や伊之助は自信を失っていたし。
それを思えば、才能はあるが今の実力はまだまだといったところか。
そういう意味では、エヴァが本気で鍛えるに値するかどうかと言われると、正直微妙なところではあるのだが。
「ふむ。取りあえずアクセルの目で判断して才能があるというのなら構わん。実際にその者達を見て、それで気にくわないのなら、鍛えるのは止めることになるのだろう。それで構わんな?」
「それはしょうがないだろうな」
個人的には才能がないと思っても鍛えて欲しいとは思う。
思うが、その辺を左右するのはあくまでもエヴァなのだ。
そうである以上、俺が出来るのは炭治郎達がエヴァに気に入られるように祈る事だけだ。
炭治郎辺りは、正直すぎて……そして素直すぎて、どうだろうな。
禰豆子ならエヴァも気に入ると思うんだが。
実際のところ、その辺りは成り行きに任せるしかないといったところだろう。
そんな風に思いつつ、俺はエヴァと話をするのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730