「これは、また……確かに珍しい店だな」
シェリルとルリ、ラピスに行き先を告げられずにやって来たのは、ペットショップだった。
正直なところ、ペットショップそのものならそこまで珍しいものでもないだろう。
だが、そのペットショップのある場所がホワイトスターとなると、当然のように話が違ってくる。
しかもペットショップというイメージとは少し違い、かなりの広さを持つ。
この広さは、ペットの動ける範囲を出来るだけ広くして、ストレスを感じさせない為の処置なのだろう。
猫や犬といったような一般的な動物以外にも、蛇やトカゲ、亀といったような珍しい種類の生き物もいる。
それだけではなく、一目見ただけではどういう生き物か分からないような、そんな動物の姿もあった。
これは……マクロス世界から輸入したのか?
現在ホワイトスターを中継点として、色々な世界に行く事が出来る。
だが、その世界の殆どは地球であり、当然ながらそこに生きている生物は多くの者が知っている存在になるだろう。
勿論、実はどこかの世界ではもう全滅している生き物であったり、もしくはその世界ではまだ発見されていないような生き物だとか……そんな感じではある。
それに対して、マクロス世界は地球から旅立ち、様々な銀河で移住が行われており、それらの星には地球に存在しない、全く未知の生物がいてもおかしくはない。
……門世界と繋がったままなら、それこそファンタジー生物とかが入手出来たかもしれないが。
あるいはネギま世界ならグリのような存在もいる。
ただし、門世界はもう行き来出来ないようになっているし、ネギま世界に関しても魔法界に行くのはそれなりに手間だ。
魔法の存在が公になっているのなら、その辺はどうにか出来るのかもしれないが。
それに比べると、マクロス世界は特に隠したりとかはする必要がないので、自由に生き物を輸出したりといった真似は出来るのは大きい。
「どう? 珍しいお店でしょう?」
ふふん、と自慢げに笑みを浮かべて言ってくるシェリルに、俺は素直に頷く。
ちなみにルリとラピスは、店の中にいる動物を見て回っていた。
SEED世界でオーブの学校に通っているルリやラピスだが、そんな2人にとってもこの店にいる動物というのは愛らしいのだろう。
2人揃って、そこまで露骨に表情に出している訳ではないにしろ、嬉しそうにしているのは分かる。
「そうだな。まさかホワイトスターでこういう店を見ることが出来るとは思わなかった。とはいえ……色々と大丈夫なのか?」
「何が?」
「犬とか猫ならともかく、マクロス世界の生き物は色々と特殊だろ? それを買って自分の世界に戻って……それが何らかの理由でホワイトスターについて知らない相手に見られたりしたら、間違いなく騒動になるだろう?」
新種発見といった事で、最悪TVや新聞とかで話が広がる可能性は十分にある。
あるいは、その世界にもよるけどネットとかが発達していれば、TVや新聞なんかよりもかなり早く情報が拡散するだろう。
そうなると、間違いなく色々と問題になるのだが……
「その辺は大丈夫だと思うわよ? 政治班の方で許可を出している以上、当然その辺については想定してるでしょうし」
「なるほど」
エザリアやレオンを始めとした、有能な面々が集まっているのが政治班だ。
その政治班が許可を出した以上、俺が考えるような事は当然ながら想定されているだろう。
それを理解した上で許可を出したのだから、その辺については心配する必要もないか。
「客の数も多いし、随分と流行ってるのは間違いないらしい。……ん? これは……銀河毛長ネズミ?」
恐らくこれもマクロス世界からやって来た存在なのだろう。
一つの大きさの入れ物の中に自然環境が再現されており、そこに銀河毛長ネズミが多数存在している。
名前にネズミとついてはいるものの、外見は毛玉にしか見えない。
そして愛らしい様子を見せており、何人かの女がそんな愛らしさに目を奪われていた。
「ああ、これ……グババという個体が有名よ?」
「グババ?」
「ええ。ファイアーボンバーのメンバーの1人が飼ってるのよ」
ファイアーボンバーってのは、マクロス世界では伝説的なバンドだ。
それこそシェリルやオズマもファイアーボンバーのファンで、シェリルの決め台詞……決め台詞? ともかく『私の歌を聴け』というのもファイアーボンバーのボーカル熱気バサラの影響を受けたものだろうし、オズマが戦闘で使うフォーメーションはファイアーボンバーの歌だ。
そういう意味では、かなり大きな影響を与えたバンドなんだよな。
そんなファイアーボンバーのメンバーの1人が飼ってるのなら、それは有名になってもおかしくはない。
「ふーん。……鎹鴉とか、結構売れそうだな」
鬼滅世界の鎹鴉は高い知能を持ち、人の言葉を喋る事が可能だ。
話し相手が欲しい者にしてみれば、鎹鴉はありがたい存在だろう。
ただし、知能が高いという事は場合によってはホワイトスターについて話したりするという事になる以上、自分の世界に連れて帰るといったような真似は出来ないだろうが。
「鎹鴉って、聞いた話だと外見は普通の鴉なのよね? だとすると、ペットとしては……どうかしら?」
「話し相手が欲しい人物……1人暮らしとかなら、鎹鴉を歓迎してもおかしくないと思うけどな」
そんな風に会話をしていると、やがて子猫を見ていたラピスが俺とシェリルに向かって近付いて来る。
「ラピス、どうした?」
「……可愛い」
一言だけ告げるラピスだったが、その言葉の意味は十分に理解出来る。
「ラピスはこの店に来るのは初めてなのか?」
この店に来て喜んでる様子のラピスに尋ねてみるが、ラピスは首を横に振る。
そしてルリが近付いてくると、そんなラピスの言葉を捕捉するように口を開く。
「今までも何回かこのお店に来た事はあります。ですが、何度来てもこのお店は楽しいですから」
その言葉に周囲の様子を見ると、実際に何人もが愛らしい様子の動物を見て、頬を緩めている。
「猫カフェ……いや、猫じゃなくても、人懐っこい動物と触れあえる喫茶店とかやったら結構儲かりそうだな」
このペットショップがそれをやれば、ここで売られているペットと触れあえる場所となるだろう。
飲食店だけに動物と触れあうのは不味いのでは? と思わないでもないが、猫カフェとかは普通に存在しているのを考えると、そんなに悪い選択肢ではないと思う。
このペットショップの店主にやる気があれば、だが。
「あははは。見て、アクセル。あそこの子猫」
不意にシェリルが面白そうに笑ってそう言うので、シェリルの視線を追うと……そこでは、子猫が3匹横になっていた。
それもただ横になっているのではなく、三匹が重なって横になっていたのだ。
見た感じ、一番下の子猫が重そうだと思うんだが……それでも特に嫌がっている様子がないのを見ると、もしかしたら子猫が必要以上に丈夫なのか、あるいは子猫の入っているケージに何らかの仕掛けがあったりするのかもしれないな。
「……可愛い」
何だかラピスはさっきから同じ言葉しか言ってないように思えるんだが。
とはいえ、その気持ちは分からないでもない。
広いペットショップの中を見て回っていると、不意にレモンから通信が入った。
「どうした?」
『行冥の手術が終わったわよ』
あっさりと伝えられるその言葉に、驚く……ような事はない。
そもそも、手術をするのがレモンなのだ。
それを考えれば、寧ろ手術の終了が遅かったと思ってもおかしくはないと思う。
「そうか。なら……ちょっと待ってくれ」
『構わないわよ。ああ、そこに行ってたのね』
空中に浮かぶ映像スクリーンから、俺の後ろを見たのだろう。レモンは納得した様子を見せる。
どうやらレモンもこの店の事は知ってるらしい。
「ホワイトスターにしては珍しい店だとは思う。……シェリル、レモンに呼ばれたから、俺はちょっと行ってくるけど、お前はどうする?」
「レモンに? うーん、そうね。この子達の事もあるし、私はここに残るわ」
この子達というところで、シェリルの視線は2人揃って拳くらいの大きさの亀を見ているルリとラピスに向けられる。
確かにあの様子を見ると、レモンに会いに行くからそろそろ店を出ると言っても納得しそうにない。
「悪いな」
「いいわよ。少しの時間だったけど、アクセルとデートも出来たし。……まぁ、あの子達がいたから、2人きりの甘いデートとはいかなかったけどね」
シェリルは言葉では不満そうにしながらも、その表情は優しい。
強気な性格をしているシェリルだけに、不意にそんな表情を見せられるとドキリとする。
そのままシェリルを軽く抱きしめると、抱きしめられた本人は少し驚いた様子をみせつつも、しっかりと抱き返してくる。
そうしてシェリルの柔らかな感触を堪能してから、俺はレモンのいる場所に影のゲートで向かうのだった。
「あら、アクセル。行冥が目覚めるまでは、まだそれなりに時間が掛かるわよ?」
「だろうな」
影から姿を現した俺を見ても、当然ながらレモンは特に驚いた様子を見せない。
この程度で驚くのなら、それこそレモンっぽくないのだから当然だろうけど。
「それにしても、相変わらずだな」
「何がかしら?」
「俺がここから離れて、まだ数時間ってところだろ? その間に、行冥の身体に異常がないかどうかを確認して、義眼の手術をやったんだ。これで驚くなという方が無理だと思う」
「そう? 数時間もあれば、この程度の手術くらいは難しくはないわよ?」
「いや、それはレモンだから言えるんだと思う」
まぁ、マクロス世界とかならかなり科学技術も進んでいるし、そういう真似も出来るかもしれないが。
「それで、行冥はいつ目を覚ますんだ?」
ちなみに現在の行冥は、ベッドの上で眠っている。
眼球を摘出して義眼を埋め込むといった手術だけに、当然ながら部分麻酔といったことではなく、全身麻酔での手術だ。
そして頭部には、安眠マスクのような目の辺りを覆っているマスクがあった。
これも分からないではない。
行冥が目覚めた時、反射的に目を開くといったような真似をした場合、いきなり視覚を得た事によって混乱する可能性は否定出来ないのだから。
それ以外にも、生まれてからずっと盲目だった行冥が、いきなり視覚を得て脳がそれを処理しきれないといった可能性も否定は出来ない。
そんな訳で、取りあえず行冥が目覚めた時はショックを受けないようにしておくのは重要だろう。
「普通の人間なら半日くらいは目を覚まさないんだけど……行冥の場合はどうかしらね」
行冥……というか、柱は全集中の呼吸を常に行う、常中というのをやっている。
それはつまり、普通なら半日近く起きないような時であっても、行冥ならもっと早く起きてもおかしくはない。
……というか、常中の事を考えれば、場合によっては手術の最中に麻酔が切れて目覚めていた可能性もあるのか。
正直なところ、もしかして結構危なかったのでは?
取りあえず問題がなかったという事で、その辺は気にしないでおこう。
実際、レモンならその辺りを考えた上で手術をしていたりしても、おかしくはないのだから。
「レモン的には手術はどうだったんだ?」
「成功したわ」
成功したと思うといった風ではなく、成功したと断言する。
この辺り、レモンが自分の技術力に自信を持っている証だろう。
「そうか。……ちなみに義眼はやっぱりレーザーを発射する奴か?」
「そうなるわね。本当ならもっと色々と面白い機能を持った義眼を使いたかったんだけど」
「いや、それは止めておいてくれ」
これはレーザー発射機能付きの義眼だったことを喜ぶべきなんだろうな。
とはいえ、その気持ちも分からないではない。
量産型Wとかの関係で、義眼とかそういう関係の技術はかなり高い。
そんなレモンにしてみれば、どうせならもっと高性能な義眼を……といったように考えても、おかしくはないのだろう。
それに行冥もどうせなら高性能の義眼の方がいいだろうし。
問題なのは、それを使いこなせるかどうかだが、その辺は習うより慣れろだな。
行冥の能力を考えれば、それこそすぐにでも慣れて使いこなしてもおかしくはない。
柱というのは、それだけ特別な者達が揃っているのだから。
「で、そのレーザーの威力は具体的にどのくらいなんだ?」
「そうね。人の身体を貫く程度の威力はあるから、心臓や胴部に命中すれば即死でしょうね。……人間なら」
「人間ならな」
レモンの言葉が何を意味しているのかは、明らかだ。
頭部や心臓を貫かれても、鬼が相手であった場合、それはダメージにはなるが致命傷にはならない。
それが分かっているだけに、レモンは今のような表現をしたのだろう。
「それでも行冥なら、強力な武器だけに使いこなせると思うぞ。……リハビリが終わるまで、どれくらい掛かるかは分からないけど」
そう告げる俺の視線の先で、行冥の指がピクリと動くのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730