転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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3056話

「う、うわああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 獪岳のそんな悲鳴が周囲に響き渡る。

 ……一体何がどうなってこうなった?

 そんな疑問を抱きながら、行冥を見て悲鳴を上げている獪岳を見る。

 行冥の義眼……それもただの義眼ではなく、視力がきちんと戻る、シャドウミラー製の義眼の手術の為に、行冥が任されている地区をシャドウミラーの先遣隊として来ている者達に任せてはどうか? という話になった。

 そんな訳で、俺と行冥は先遣隊の中でも最もやる気に満ちているムラタに会いに来たのだが、そんな俺達を……正確には俺と一緒にいた行冥を見た瞬間、ムラタと訓練をしていた獪岳の口から悲鳴が出たのだ。

 そうして悲鳴を上げながら逃げようとした獪岳だったが、ムラタもただごとではないと判断したのか、すぐに獪岳を取り押さえ……その結果として、現在獪岳はムラタに取り押さえられた状態のままで悲鳴を上げ続けていた。

 

「行冥、お前……獪岳に何をした?」

「いや、何も……待って欲しい。今、獪岳と。そう言ったのか?」

 

 いきなり聞こえてきた悲鳴に行冥は驚いた様子を見せるも、獪岳という名前を聞くとそう言い返してくる。

 

「ああ、獪岳。雷の呼吸の使い手で、ムラタに気に入られたせいか、現在集中的に訓練をしている人物だ。……いやまぁ、鬼殺隊の剣士なんだし、俺よりも行冥の方が詳しい……訳でもなさそうだな」

 

 言葉の途中で意見を変える。

 とはいえ、これは無理もない。

 鬼殺隊は小さい組織ではあるが、それはあくまでも国とかに比べての話だ。

 国とかではなく、純粋に組織としての大きさとして考えた場合は、かなりの規模でもある。

 行冥が柱……それもただの柱ではなく、実質的に柱を纏めている人物であるとはいえ、鬼殺隊に所属している全員の名前を覚えていられる訳がない。

 あるいは行冥が盲目ではなく普通に視力があった場合は、もしかしたら鬼殺隊全員の存在を認識していた可能性も否定は出来ないが……行冥は盲目だ。

 鬼殺隊の剣士全員を認識しろという方が無理な話だろう。

 ともあれ、行冥は獪岳という剣士の存在を知らなかった。

 しかし、俺の口から獪岳の名前が出た事により、その存在を認識したといったところか。

 

「獪岳……まさか、あの子供が……? アクセル殿、申し訳ないが、アクセル殿が言った獪岳という人物と話してみたいのだが、構わないか?」

 

 驚きの涙を流しながら尋ねる行冥。

 俺としては別に行冥と獪岳を話させる程度は何の問題もないので、素直に頷く。

 

「構わない。ただ……向こうがどうなのかは分からないが」

 

 悲鳴は収まったものの、獪岳は自分を抑えているムラタから何とか逃げようとして暴れていた。

 それこそ雷の呼吸すら使って暴れているのだが……ムラタにしてみれば、その程度の相手に対処するのは難しい話ではない。

 結果として行冥が近付くまでムラタに押さえられた獪岳は暴れ続けていた。

 そうして獪岳の前に立った行冥は、たっぷりと1分程沈黙した後で口を開く。

 

「獪岳、私を覚えているか?」

 

 涙脆い行冥ではあるが、今は涙を流していない。

 覚えているか? といったような事を尋ねたのだから、やはりこの2人は顔見知りなのだろう。

 

「ひっ、ひぃっ! しょ、しょうがなかったんだ! だって、あの時ああしなければ……俺は死んでたんだから!」

 

 行冥の言葉に対し、獪岳はそう叫び。

 普段の強気な……高い上昇志向を持っているような声ではなく、何とかしてこの場から言い逃れようとしているかのような、そんな声。

 死ぬ……ああしなければ……それを聞けば、何となく話の展開は読めた。

 強盗か、あるいはここが鬼滅世界である事を考えると鬼か。

 ともあれ、そのような存在に襲われた獪岳は、恐らく行冥を見捨てて逃げたといったところか。

 

「お前の行動により、私と沙代以外の子供達は、全てが鬼に喰い殺された」

 

 そんな行冥の言葉は、俺が予想していたよりも随分と酷いものだ。

 行冥と沙代という人物以外ということは、他にも何人も……それも子供がいたのだろう。

 

「だ……だからしょうがなかったんだ!」

「獪岳が夜に寺の外に出なければ、鬼と遭遇することはなかっただろう。そうなれば、鬼が寺に来る事もなかった筈だ」

「そ、それは……」

「私は、死んだ子供達の為にも、獪岳……お前を、この手で誅さねばならん」

 

 そう言い、行冥が拳を握り締める。

 行冥は柱の中でも最強と呼ばれており、純粋な身体能力だけを考えても柱の中ではトップクラスだ。

 そんな行冥が全力で拳を振り下ろした場合、岩をも砕く威力を出してもおかしくはない。

 ましてや、柱は全集中の呼吸を常に使う常中という技術を使っている。

 そんな行冥の拳が振り下ろされれば、人の頭部を砕くといったような真似をしてもおかしくはない。

 

「南無」

「ちょ……ちょっと待ってくれ!」

 

 拳を振り上げた行冥に、本気で殺されると思ったのだろう。

 獪岳は必死に叫ぶものの、行冥はそんな言葉を聞く様子もなく……

 

「待て」

 

 だが、その拳が振り下ろされる寸前にムラタが声を掛け、その動きを止める。

 

「何故止める?」

「何があったのかは、今の話を聞けば大体理解出来る。そしてお前が獪岳を殺そうと思っても仕方がないという事もな。だが……今、この獪岳を預かっているのは俺だ。お前が獪岳を許せない気持ちは理解出来るが、だからといって俺が鍛えている奴を横から殺されるのを黙って見ていられる訳でもない」

 

 そう言うムラタと行冥は、それぞれ絶対に退かないといった様子で睨み合う。

 行冥の場合は盲目である以上、睨み合うといった表現は正確ではないのかもしれないが。

 

「シャドウミラーの人物である以上、腕は立つのだろう。だが……だからといって、何をしても許される訳でもない」

「だろうな。それは俺にも理解出来るよ。だが、別に俺が何をやっても許されるとは思っていないが」

「では、ここは退いて貰えないだろうか?」

「そういう訳にもいかない。こんなのでも、一応見込みがあると判断して鍛えている奴だからな」

 

 2人の言い合う声を聞きながら、さてどうしたものかと考える。

 今のやり取りで知ったのは、獪岳と行冥の関係は俺が思っていた以上に深刻なものであったという事だ。

 行冥にしてみれば、自分の身勝手で夜は寺から出てはいけないという決まりを破り、それが原因で行冥の住んでいた寺が鬼に襲われ、行冥以外の子供達が1人を残して喰い殺されたらしい。

 その時の行冥は当然ながら呼吸の類も使えなかったらしいので、その鬼をどうしたのかといった疑問もあるのだが。

 鬼殺隊の誰かが駆けつけたという可能性が一番高いか。

 そんな状況であった以上、行冥が獪岳を決して許せないという気持ちは分かる。

 だが同時に、ムラタが獪岳を気に入ったというのも、俺としては簡単に見逃すような真似は出来ない。

 ムラタはシャドウミラーに来て色々と変わったが、それでも自分が強くなることが一番だと考えていたのは間違いない。

 にも関わらず、そんなムラタが獪岳を弟子……というのは少し大袈裟かもしれないが、鍛える相手として気に入ったのは間違いない。

 この場合、どちらを優先するか。

 

「行冥、その辺にしておけ」

「アクセル殿!?」

 

 俺からそんな言葉が出るとは思わなかったのか、行冥が驚愕の表情を浮かべる。

 行冥にしてみれば、獪岳は鬼に喰い殺された子供達の仇と言ってもいい存在だ。

 それを殺すのを邪魔するムラタを止めるのではなく、自分が止められるとは思っていなかったのだろう。

 

「別に俺は、復讐は意味がないとは言わない。寧ろ復讐をするのなら存分にやれと勧めるだろう」

 

 世の中には、復讐は何も生まないといったお題目を口にする者がいるが、そういう頭がお花畑の奴はそれこそ友人、家族、恋人といった者達を皆殺しにされたり、ましてやそれを自分の前で見せつけられるような真似をしてやり、そのような状況に陥っても復讐は何も生まないと言って相手を許すのかを確認してみたい。

 ともあれ、そんな訳で俺としては復讐そのものを止めようとは思わない。思わないが、それでも止めるべき事情があれば止める。

 

「けど、今は復讐云々よりも優先する事があるだろう? それこそ、獪岳が原因で子供達が死んだというのは許せる事じゃないが、鬼と戦うには戦力が必要となる」

「……獪岳がその戦力になると?」

「少なくても、ムラタが気に入るだけの何かを持ってるのは間違いない。なら、獪岳が原因で死んだ子供達の分も、鬼を殺す。それで満足出来なければ、鬼舞辻無惨を殺した後で行冥が獪岳を殺すなり、決闘をするなりすればいい」

「むぅ……」

 

 俺の言葉に一理くらいはあると思ったのか、行冥は握っていた拳から力を抜き、悩んだ様子を見せる。

 そんな行冥の姿に獪岳は安堵した様子を見せるが……

 

「獪岳、言っておくが安心するのはまだ早いぞ。今は鬼舞辻無惨との戦いがあるから、行冥を止めた。だが鬼舞辻無惨を殺した後で、それでもまだ行冥が獪岳を許せないと言った場合、次は止めるつもりはない」

「そんなっ!」

 

 獪岳の悲痛な声が周囲に響き渡る。

 

「いや、何でそこまで俺が面倒を見ると思ってるんだ? 俺はムラタがお前に興味を示したから、今回は止めただけだぞ?」

 

 正直なところ、行冥との因縁を聞かされる前なら獪岳を助けるという風に考えたかもしれない。

 だが、行冥との因縁を聞かされてしまえば、そんな気もなくなった。

 というか、そこまで自分勝手な真似をしておいて、何で助けて貰えると思っているのかが分からない。

 

「お前が死なない方法は、1つ。今から必死に訓練して強くなり、お前のせいで死んだ子供達のような者を出さない為に鬼を殺しまくる事。そして、行冥にその成果を認めてもらい……場合によっては、行冥と決闘して勝つ事だな」

 

 実際には、獪岳が生き残るだけなら他にも手段はある。

 一番手っ取り早いのは、鬼滅世界という世界を捨てて別の世界に移住する事だろう。

 とはいえ、獪岳がどんな真似をしたのかというのを知れば、他の世界で獪岳を受け入れたいと思う者は決して多くない筈だ。

 あるいは獪岳を引き受ける代わりにシャドウミラーが何らかの便宜を図るといったような真似をするなら話は別かもしれないが、ぶっちゃけ獪岳の為にそこまでするつもりはない。

 俺にとって獪岳というのは、あくまでもムラタが気に入っている剣士という意味しかない。……ああ、いや。もう1つあったな。

 

「話は変わるが、善逸を知ってるな?」

「っ!?」

 

 これまでとはまた別の意味で、獪岳の顔色が露骨に変わる。

 獪岳にしてみれば、まさかこの状況で善逸の名前が出て来るとは思わなかったのだろう。

 俺が獪岳に価値を見出す2つめ。それは善逸との関係だ。

 そして3つめが、鬼殺隊の剣士の中でも少ない雷の呼吸の使い手であるという事だ。

 勿論、少ないとはいえ希少といった訳ではないのだろう。

 それでも水の呼吸を使う者と比べると、雷の呼吸の使い手は少ない。

 そんな中で、獪岳は壱ノ型は使えないものの、それ以外の型は使えるという意味で貴重な存在ではある。

 

「善逸は……」

 

 そこまで言って、ここから何と言えばいいのか迷う。

 善逸はこの世界の主人公の炭治郎の友人。

 だが、そんな事をこのまま言っても信じないだろうし、信じれば信じたで納得出来ないだろう。

 なら、俺の弟子という扱いにするか?

 一応女関係で俺を師匠や先生と呼んでいるので、この表現も決して間違ってる訳じゃないんだが。

 とはいえ、それを言って獪岳が納得するとも思えない。

 だとすれば……

 

「俺が気に入ってる奴だし、俺と親しい人物の友人でもある」

 

 結局のところ、そういう事にしておくのが最善だろう。

 説明を聞いた獪岳は、信じられないといった視線をこっちに向けてくる。

 獪岳にとって善逸は弟弟子であっても、気に入らない相手なのだろう。

 それこそ行冥の一件を忘れたかのように、こちらに視線を向けていた。

 

「善逸の件は置いておくとしてだ。お前がやるべき事は分かったな? それこそ、鬼舞辻無惨をお前が殺す、もしくは十二鬼月の上位陣をお前が殺すといったような真似をしない限り、行冥を納得させるような事は出来ないだろうよ」

「ぐ……それは……」

 

 獪岳にしてみれば、俺の言葉は非常に厳しいものだったらしい。

 とはいえ、この場ではムラタがいるので行冥を止めたが、だからといって行冥の過去を考えれば獪岳の行動を完全には止めない方がいいだろう。

 それに行冥の話を考えれば、獪岳を完全に信用するといった真似も出来ない。

 具体的には、一度鬼から逃げる為に行冥達を売った獪岳は、この先も同じように自分が危険になった場合、獪岳は鬼に鬼殺隊の情報を話す可能性がある。

 いや、鬼殺隊だけならともかく、場合によってはシャドウミラーについての情報も話す可能性がある。

 そう考えると、獪岳にはきちんと見張りを付けておいた方がいいかもしれないな。

 そんな風に思いつつ、取りあえずもっと緊迫した時ではなく、今この時で今回の件が発覚したことに安堵するのだった。




アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1730

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